墓の中から奪われて、主を点々とし、欲深い人間っていうのはいつの時代もいるもんだと思っていたが、まさか人の身になってからもそれを実感するとは思わなかったぜ。
俺が顕現した時あいつはひどく喜んだ。最初はそんな姿を見ていたからか、「ああ、俺が来てこんなに素直に喜んでくれるなんてなぁ」と一瞬思ってしまったが・・・ふと隣の一期一振を見ると、悲しそうな顔をしていたから、一瞬で「ああ、違う」と感じ取ってしまった。いろんな人間を見てきたから、周りの人間の顔を見れはそいつがどういうやつか大体わかる。
あいつは、俺たちを人とも神とも思わず、ただの物として扱った。それはひどい扱いだったぜ。あまりのひどさに俺があいつを斬ろうとしたくらいだ。
だが、三日月のやつが「あんなやつを斬って堕ちることはない」というもんだから耐えた。耐えて耐えて耐えて、結局は三日月があいつを斬って審神者の交代だ。
人間そのものを受け入れることが嫌になっていた俺たちは何人かその後に来た審神者を追い返したが、そんな中でも強い結界に身を包み、見たことのない馳走を見せてくる小さな審神者。本から見えた馳走は見たことがないものだし、いい香りだってして、俺は驚いたさ。その顔に被り物をしていたのも驚いたな!
あの審神者がやってきてから、驚きの連続で、いつの間にか彼女たちは俺たちの心にもスッと入り込んできたんだ。俺も、まさか人間を再び主と呼ぶ日が来るなんて思ってもいなかったから、驚いたが、それはひどく心地良い驚きだったぜ!
しかも、ここはツッコミ不在で俺がツッコミ役ときた!どうだ!驚いたか!この俺が驚かされっぱなしなんだぜ!
こうして、俺たちは今日も、あの面白い主の周りに集まるのだった。
本当は怖いブラック本丸で双子生活 其の十六
その日、おれは何気なく、本当に、悪気なく落とし穴を掘っていた。
まぁこの本丸の奴らは機動も早いし、落とし穴に引っかかったくらいで怪我をするようなやわな奴はいないからな。
俺の頭がやっと出るかくらいの深い落とし穴。
落とし穴なんて、正直掘ったのは初めてだった。前の審神者の時はそんなことを出来る雰囲気じゃないし、最近やっとこの本丸も落ち着いてきたが、正直驚かすのは主の独壇場!主だけがいつも皆を驚かせていた。
ツッコミ不在の本丸で俺が皆を驚かせる機会もなく、せっかくなら俺も驚かせたい!と思い作ったのがこれだ!見た目では落とし穴とわからないからな、力作だぜ!
と思っていたのも束の間、
その落とし穴に落ちたのが、なんと・・・・・・・・・・
カオナシだった。
しかも、式神のはずなんだが、なぜだか怪我をしてしばらく動けなくなってしまったらしい。まぁ俺たちも怪我をするし、現世にいる式神は怪我くらいきっとするよなと思ったが、その怪我は審神者の力では治せないらしい。
俺たちと同じように審神者が治せると思っていたから驚いたが、それよりも今の状況のほうがもっと驚いている。
「ばかもの!!!!!」
俺は先ほど、ものすごく怒り狂った審神者に飛び蹴りされた。しかも誰もそれを止めないという・・・驚きだぜ・・・!
「鶴さん、どういうことかな・・・?」
なぜか、ものすごく笑顔だが光坊も怒っている。めちゃくちゃ恐ろしいなきみの黒い笑顔は・・・。
俺は今、大広間に呼ばれ、説教されていた。主と光忠と、ついでに長谷部と石切丸と一期一振と歌仙が同席している。おそらく襖の向こうには他の奴らも聞き耳立ててるんだろうなと思った。短刀達はカオナシの見舞いに行ったみたいだな。
カオナシが落ちた時、まぁ俺は当然近くで隠れて見ていたのだが、焦っていたのはカオナシと共に散歩をしていたらしい短刀たちだった。
急に目の前から消えたカオナシを心配し、穴を見て自分たちだけでは助けられないと、乱が助けを求めに行く。穴の中で動かないカオナシを心配して、五虎退が泣きはじめるし、虎が一匹落ちるし、秋田も穴へ入ろうとするし、それを小夜が止め、今剣が怒り狂って近くに潜んでいた俺を見つけて首元に本体を当てるから驚いたぜ。
さすがの短刀達の機動のおかげで、光忠が真っ先に飛んできてカオナシを助けていた。カオナシは痛くて動けないのか終始固まっていたな。いやぁ、本当に悪い事をした。
そんなこんなで、短刀達に泣き付かれたのか、一期一振も激おこだ!
ますたぁの大切な式神を怪我させたとかで、長谷部と石切丸と歌仙もご立腹だぜ!まさかこんなことになるとは思ってもみなかったな!!
「ガッカリしたよ・・・鶴さん・・・最近はこの本丸のツッコミ役として頑張ってるなって思ってたのに・・・落とし穴を作るなんて、他の本丸の鶴さんと同じじゃないか・・・!」
他の本丸の俺と一緒で・・・って俺は俺だろうwww何言ってるんだ光坊は・・・wwwそもそも俺はツッコミじゃないwww
と思って笑いそうになったが、みんなの目が怖かったので我慢した。
「鶴丸殿・・・弟たちが慕うカオナシ殿を落とし穴に落とした上、怪我をさせるなど・・・許されませんぞ!」
いやいや、弟たちが関わっているから怒っているのかきみはwww
と思ってついツッコみたくなったが、みんなの目が怖かったので我慢した。
あれ?
俺はやはりツッコミなのか?
「鶴丸・・・」
本気で一番やばいのは、実は主だった。
わかっていたが、本気だ。目が本気で怒っているのがわかった。
主は静かに俺の名を呼んだ。
「あんた、こんなことして本当に楽しいの?」
主は、俺にそう問いかける。
「人に怪我をさせることが、アンタの言う驚きなの?カオナシを怪我させたこと、わざとじゃないにしても、絶対に許せないよ」
その場はシーンと静まり返ってた。
そう、改めて言われると、俺も心がズキンと痛んだ。
ああ、確かに俺は怪我をさせたかったわけじゃなかった。
「・・・すまなかった・・・」
おれは主に頭を下げた。
しかし、主は更に言葉をつづけた。
「今後は、危ないこと禁止!落とし穴とか、網使って誰かを捕まえるとか、水入ったバケツ用意しとくとか、タライを落とすとか、とにかく全部禁止!!アンタたちは良いよ!?体丈夫だから!!短刀達も早いから引っかからないと思う!!アタシだって、そういうの勘が働いてわかるから、返り討ちにする。けどカオナシは違う!!!カオナシはめちゃくちゃ鈍くさいし、素直だから、絶対に引っかかるからな!!そのたびに怪我をさせる気かお前は!!!カオナシ怪我させたらマジで許さないからね!!!」
主が俺にそういうと、うんうんと隣の光忠も頷いた。
というか、俺は落とし穴以外にもそんなことをやると思われているのか・・・まぁ他の本丸の俺ならやるかもしれないが・・・確かに主の言うとおりここでは返り討ちに合ってしまうからなぁ・・・
「鶴丸、人を驚かせたいなら、もっと別の方法で驚かせな!人を傷つけるような驚きは絶対に許さんし、この本丸では禁止!!わかったね!!」
そう言うと、主は部屋を出て行った。
周りにいた奴らからも「反省しろ」と言われ、俺は肩を落とす。
・・・確かに全面的に俺が悪いな・・・。
どうやってカオナシに謝ればいいのだろうか?
おれはしばらく反応のために正座をさせられながら、そんなことばかり考えていた。
しばらくすると、粟田口の面々がヒョコッと襖を開けて顔を覗かせた。
俺は気まずそうに彼らに手を合わせて謝る仕草をすると、粟田口はこちらにやってきた。
そしてみんな口々に俺に話しかける
「鶴丸さん、反省しましたか!?」
「鶴丸さん!カオナシさんは無事でしたよ!」
「カオナシさん怒ってなかったよ~捻挫だったけど」
「しばらく歩けないから、出陣もできないって」
ああ、結局カオナシに怪我をさせることで、本丸のみんなも巻き込んでしまった。
俺は深く反省をする。
鶴「すまんなぁ、お前達も巻き込んでしまったな」
乱「うん、カオナシさんを怪我させたことは許せないけどね!」
秋「でも、カオナシさん怒ってませんでしたよ」
平「むしろ、逆に鶴丸さんのことを気にかけているようでした」
鶴「そうか、本当に悪い事をした。時を見て、俺も謝りに行ってくるよ」
今「もうカオナシのことを からかってはいけませんよ!」
鶴「からかわないさ。からかわないが・・・カオナシを笑顔にしたいとは思っている」
俺がそういうと、短刀達はポカーンとした。
いや、俺は本当に反省しているんだ。
いつも優しい手で手入れをしてくれたり、食事を作ってくれるカオナシに恩義があるんだ。そんなカオナシを怪我させて、いつまでも悲しい顔をさせているというのは、俺らしくないだろう。
薬「だが、笑顔にしたいといってもなぁ、カオナシの旦那をどうやって笑わすんだよ」
秋「カオナシさん、嬉しかったら笑いますよ」
鶴「何!?それは本当か!?」
秋「はい!お顔の口が少しだけ上がります。ニコッとするような顔になるんです」
僕の前ではいつもニコニコしてますよ!という秋田はさすがカオナシマスターだ・・・!だてにカオナシの膝にいつも座っているだけのことはある・・・!
乱「確かに僕たちといるとニコニコしてるよね」
虎「は、はい・・・カオナシさん・・・優しいです・・・」
鶴「俺には真顔にしか見えなかったが・・・そうか・・・笑うのか・・・しかし、どうすれば笑ってくれるんだ・・・」
俺がうーんと考えていると、
「ある」
そう言いながら、襖の陰から出てきたのは・・・
「鳴狐・・・!」
「鶴丸殿、鳴狐はカオナシ殿を笑わすことが出来る方法を知っています!」
「ど、どんな方法だ教えてくれ!」
「・・・びっくりする方法」
「びっくり?・・・おいおい、俺は驚かせることではなく、笑わせたいと・・・」
「・・・びっくりして、それから笑う」
「え?」
「それでは、鶴丸殿が反省が終わってから、特訓を開始いたしましょう!!!」
カオナシを喜ばせる方法が他に思いつかない俺は、鳴狐と、お供の言うとおり正座が終わってから特訓を開始することとなった。
―――――――数日後
俺は離れにやってきた。
玄関から入ると、主に追い出されそうになったが、光忠に頼んで作ってもらったふぉんだんしょこらを手渡すと、中に入れてもらえた。
主は、カオナシが寝ているという部屋に入り、カオナシの許可を得てから、俺に中に入ってもいいと声をかけた。
俺は中に入る。
そこには、大きな寝具に座っているカオナシがいた。
「やぁ、カオナシ」
(ペコリ)
「こないだは、すまなかった」ペコリ
(ブンブン)首をふる
「俺が悪かった、この通りだ!許してくれ!」
カオナシはオロオロと困ったように主のほうを見た。主は扉のところで、俺の様子をじっと見ているだけだった。
「詫び・・・と言ってはなんだが、カオナシ、きみに見てもらいたいものがある」
「?」
「カオナシ、ここを見ていてくれ」
俺が拳をスッと上げると、カオナシは不思議そうにそれを見た。
(よしっ!)
俺は練習の成果を出すように、そこに、フワッと白い布をかける。
そして・・・
ボンッ
布をとった俺の手には、小さな花束があった。
成功したことに安堵した俺は、その目ですぐにカオナシを見た。
カオナシは驚いたのか、動かなくなった。
が、
次の瞬間
(!?)
僅かだが、カオナシの表情が笑顔になった・・・気がした。
カオナシ歴の浅い俺にはイマイチよくわからなかったが、おそらく、花を見て、笑顔になってくれたと思う。
俺は、カオナシにそれを渡した。
「カオナシ、本当に悪かったな。次は、怪我ではなく、きみが笑顔になるような驚きを与えると約束する」
カオナシはペコリと頭を下げて、しばらくはその花を見つめていた。
その様子を見ていた主にも、「まぁそういう驚きなら合格点かな」と言われたので、俺は、
まじしゃんになった。
本丸では今日も、俺のいりゅーじょんが繰り広げられているぜ!
俺の目指す道はここだと、今日も皆を驚かせて笑顔にさせることに命をかけるのだった。
「みんなが戦術についていろいろと教えてほしいって言うんだけど・・・本丸に来てもらえないかな?」
「え、無理です」
即答した私に、彼は無言になった。多分、苦笑いしてると思う。多分っていうのは、私が彼の目を見て話せないからでもういやああああああ・・・!
2人きりとか何回かあるけど、今だに緊張して死にそうになるわ!!なんでよりにもよって、スタイル抜群の伊達男なんだよぉぉぉ2人きりになるなら短刀ちゃんがいいよぉぉぉ!!!目なんて見て話せるかよ!!!!
先日、「お花を探して、病気がちで外に出れないますたぁにあげたい」という健気な短刀ちゃんたちに連れられ(心のなかが罪悪感とクッソ可愛いという気持ちで忙しかった)、本丸の周辺をウロウロしていた時、間抜けなことに鶴丸の落とし穴にハマってしまった私・・・。
落とし穴の中は一応クッションになるように落ち葉が敷いてあったんだけど、まぁ関係ないよね。どうせならロンハーとかでよく使ってる、大きめのスポンジ的なやつでお願いしたかった。落ち葉なんてあるようなないような。とにかく落ちた時に足をくじいたようで動けなくなってしまったのだ。
そのまま短刀ちゃんたちが心配しているのを見つめ、ごこちゃんの虎が落ちてきたので抱き締めて助けを待つ。
そこで駆けつけてくれたのが、本丸のおかん、燭台切光忠さんだった。
燭台切さんは、私を見ると、すぐに穴の中に降りてきた。そして、私の抱えていたごこちゃんの虎をまずはごこちゃんに返す。
そして、次に何をするかと思ったら、まさかのお姫様抱っこだったよね。
もう固まったよね。「ちょっとごめんね」とか言ってたけど、マジでごめんじゃないから。ホントやめてよ、落とし穴に落ちた時よりも心臓止まるかと思ったし。
穴は私には高かったけど、燭台切さんは顔が見えるくらいの深さだったので、そのまま、穴の外にポンってやられて、次に燭台切さんが穴から出てきて、そしてまたお姫様抱っこされて離れまで運ばれたよね。意味わかんない。
その時鶴丸さんが謝ってたり、短刀ちゃんたちが泣きながら心配してくれてたの見えたけど、身動き一切出来なかったよ。ほんと、意味わかんない。
そんで離れで、ソファに座らされて、カオナシ脱いでって言われた時は身の危険を感じたから、思わず「こんのすけぇぇぇえぇ!!!」って叫んだよね・・・
純粋に足の怪我を見てくれるだけだったんだけど、かなりの恐怖だったわ。あれは今でも忘れられない。
結局こんのすけもすぐ来てくれて、まぁ燭台切さん足の怪我見てくれて、その時は終わったんだけど、それからすごい頻繁にお見舞いに来てくれるようになって申し訳ないわ。ってか、来なくていいわ大丈夫だから。
鶴丸さんもお見舞い来てくれたけど、まぁちゃんブチギレてたから、逆にかわいそうなことしたなって思ってたけどね。私が鈍いからいけないんだし…。
それよりも燭台切さんが頻繁に来ることの方が私にとっては一大事で、鶴丸さん正直どうでもいい。別に怒ってないし私は。
ただの捻挫だから、一週間くらいで歩けるようになった時、
いきなり、燭台切さんが言ったのだ。
「みんなが戦術についていろいろと教えてほしいって言うんだけど・・・本丸に来てもらえないかな?」
もう、なんというか、脳で考えるよりも反射的に口から「無理です」って出てた。私悪くない。仕方ないもん。反射的に出てたから!
でもめげない燭台切さんは続けて私を説得しようとするのだ。
「もちろん、きみの体調が良ければってみんな言ってて・・・足も治ったみたいだし、どうかなと思って」
「無理ですって言いました」
「大丈夫、何もしないよ。本当に今後の出陣について意見が欲しいだけなんだ」
「何かすると思って無理って言ってるんじゃなくて、本当に無理なんで(精神的に)」
「うーん・・・なんで無理なのかな・・・?やっぱり、僕たちのこと怖い・・・?」
「・・・そうですね・・・ある意味怖いですね・・・(イケメン的な意味で)」
「ああ、やっぱり前に怖い思いさせてるもんね・・・ダメかぁ・・・」
きみを連れて来いってうるさいんだよね・・・と燭台切さんは言った。
いやもう、目の前に男性がいると思うだけで体が恐怖で思うように動けなくなるんで無理ですね!!!!
ちなみに今も普通に話してるようでこんのすけが持って来てくれた政府の書類見ながら話してますからね!!!直視なんて出来るワケないだろこのダイナマイトボディめが!!!ジャージから色気がダダ漏れなんだバカ野郎!!!
「でも、最近、戦術についていろいろ調べてくれるから僕たちも戦場に行きやすくなってるのは事実だし、そういう戦術って今まで審神者に教えてもらったことはなかったから、ぜひきみの意見を聞いて出陣にも生かして行きたいと思ってるんだ」
ぐっ・・・!前任者のことを出されると弱い・・・
確かに彼らはとにかく折れるまで出陣させられてたし、きっと戦術なんて審神者も知ってても教えなかったんだろうなと思ったら胸が痛いわ!検非違使のことも含めて何も教えなかった前任死んでください。
「きみに、絶対に手を出さないと約束する。なんなら本体はきみがいる時には各自部屋に置いてくるってことでどうかな?絶対に危害を加えないし、頼むよ」
本体を置いてくるとか置いてこないとかそう言う問題じゃないんですけどね・・・!!
でも、ここまで神様にお願いされたら仕方がない・・・
(燭台切さん、落ちた私を助けてくれて、いろいろ世話してくれたし・・・)
私は覚悟を決めた・・・
「・・・わかりました・・・それでは参ります」
その一言に燭台切さんはにっこりと笑って、ついついそれを目視してしまった私はまた死ぬかと思った。イケメンの笑顔・・・何それ・・・尊い・・・
明日の午後には伺いますと約束したら、満足そうに燭台切さんは帰って行きました。
そして、今なんですけどね
どうしてこうなっちゃったのかな?
”みんな”というからには、きっと短刀ちゃんとかだろうなワクワク
と思っていた私の純粋(?)な楽しみを返してほしい
そこにいたのは、
燭台切光忠・へし切長谷部・一期一振・江雪左文字・長曽祢虎徹・山伏国広・三日月宗近・小狐丸・太郎太刀・石切丸・加州清光・歌仙兼定・山姥切国広・蜂須賀虎徹・陸奥守吉行・蜻蛉切
わりとガチなメンバーだった。
( ^ω^ )どうしてこうなった
多分弟たちを心配する長男チームと、刀剣たちのリーダーともいえる三日月さん、忠義を重んじる長谷部さんと蜻蛉切さん、現世の戦にはあまり興味がない太郎さんと石切丸さん、初期刀候補の5人
小狐丸さんはなぜいるんだろうね・・・
部屋に入った瞬間「ぬしさま!!」って駆け寄ってきて抱きしめられた時は心臓止まって死ぬかと思った。圧倒的な筋肉の暴力に、心臓止まるかと思った。燭台切さんと長谷部さんが剥がしてくれたけど、本当に死ぬかと思った。
私、彼のフラグを踏み抜いた記憶あるかなと思ったけど、やっぱりなかった。まぁ出会って3秒でぬしさま認定するくらいの人だし、元々相当な主厨らしいから、私のせいではないと思う事にしよう。
「ますたぁ、体調は大丈夫なの?」という加州さんに「大丈夫です・・・」とだけ呟いたけど、多分大丈夫に見えてないと思う。また顔真っ青なんだと思う。だってみんなすごい心配そうな雰囲気漂わせてるもん。自分でも吐きそうだなってさっきから思ってたから知ってた!!
とりあえず、私が昨日一生懸命作ったプリントを配布し、みんなに目を通してもらう・・・怖いよイケメン。上座に座らされているけど、みんなの顔、まともに見れない。プリント見てるしかない。あ、でも刀は誰も持ってないみたいっていうのは分かった。下のほう見てたから分かった。誰も帯刀してない。でもそういう問題じゃないけど。
「・・・じゃあ、今後の戦略について話していこうか。ぜひ僕たちはきみの意見を聞いてみたいんだけど・・・どうかな?」
そう、まずは燭台切さんが口を開いた。もうなんか逃げ出したい気持ちでいっぱいだけど、今後の戦いについては確かに考えていかないといけない問題だから、私頑張る!と決めて口を開いた。
「えーっとそうですね・・・最近は、こちらの指示で出陣していただくこともあるのですが、みなさんに出陣をお任せすると同じ方ばかりが出陣されているのが気になります。まだ正式な発表などはなにもありませんが、今後新たな場所への出陣が確認される場合、今の練度では正直突破は難しいかなと思います。できれば、全員が練度90以上を目指してもらいたいところですね。定期的に行われる政府のイベント・・・催しでは、練度が上げやすくなっていますし、短刀の練度を上げるなら京都の三条大橋、その他の皆さんは厚樫山を回っていただくことが良いかと…。ただし厚樫山はすでに検非違使が出ますので、万全の体制で練度の近い方たちで行っていただくようにまた編成と刀装は見直しましょう」
一息にそう言った私はもちろん、プリントを見ている。顔あげられない怖い。
私がそういうと、ボソッと「出陣ですか・・・」と声が聞こえた。
その声はすぐにわかった。だてにカオナシでいつも本丸に遊びに来ているわけじゃないぜ!とその声の主を見ようとしたけど、やっぱり無理だったから、下を見たまま話した。
「・・・江雪さんは出陣するのが嫌ですか?」
「・・・戦いは・・・嫌いです。戦うことで、何の得があるのでしょうか・・・」
まぁ、正直、ブラック本丸でむちゃくちゃな出陣をさせられていたから、戦うのやだーって刀もいるだろうなって思ってました。思ってましたけど、ね。
「・・・前の審神者に無理な出陣をされて、それがいまだにつらい方はいますか?」
私の問いに答えてくれたのは長谷部さんだ。
「いえ、今は主のおかげでみな、その時の傷は大分癒えているかと・・・。主やますたぁが無理な出陣をされないと言うのはもうわかっておりますので、ほとんどの者が刀剣の本能として出陣をしたいとは思っているはずです」
「ぬしさまの言う事であれば、いくらでも出陣しましょうぞ!」
ふむふむ、なるほどとりあえずは、当時のトラウマは大分ないってことか。小狐丸さんが楽しそうに口出してきたけどスルーしよう。
「江雪さんも、もう前任者から受けた心の傷は落ち着いたのでしょうか」
「はい・・・最近では日々を穏やかに過ごしてきたため、今ではあまり前任者のことを思い出すことはありません。しかし、平和を感じているからこそ、出陣することには抵抗があります・・・」
「わかりました。じゃあ、江雪さん出陣しましょう」
その場にいたみんなが、ビックリして私を見た気がする。相変わらず私の目線は昨晩作ったプリントにいってるぜ!もうプリントの内容なんて自分が考えたから覚えてるけど目が離せないぜ!
「・・・私に出陣しろと・・・?拒否権はないのですか・・・?」
悲痛な声が聞こえた。まるで私が虐めているみたいじゃないか!と思ったけど、イケメンに囲まれてSAN値減ってるの私の方なんだから(# ゚Д゚)プンスコ!
「・・・江雪さん何言ってるんですか、今のあなたには守るものがあるでしょう」
その私の言葉を聞いて、再びその場は静まり返った。
「私は、強さを求める理由は人それぞれだと思いますけど、守るものがいる人こそ強くなった方が良いと思います。いざという時に弟を守れなかったら、死ぬほど後悔すると思いますよ?せっかく強くなれるなら、自分と自分の大切な人を守れるくらいには強くなったほうがいいと思います。
・・・それに小夜ちゃんは強くなる気満々ですよ。いいんですか、あなたは咄嗟の時に弟に守られるだけの存在で。私もお姉ちゃんだからわかりますけど、絶対に何かあった時には妹を助けたいと思っています。
みなさんの事もそうです。私自身は強くなれないけど、誰にもいなくなってほしくないから私は戦術の勉強をします。みなさんのいう強さとは違うかもしれませんが、敵を知ることが勝つことに繋がるなら、私が勉強することも強さの1つかなと思います。こんな小娘の私ですら強さを求めているのに、江雪さんは、何もしないで今のままでいいんですか?」
そう江雪さんに私が問うように言葉を投げかけると、お兄ちゃん’sが揃って納得したかのように同意する。
伏「うむ!ますたぁ殿の言うとうりであるな!」
一「ええ・・・私たちは弟を守りたい・・・!そのために強くならねばと思っております」
長「ああ・・・俺も仲間を守るためなら、いくらでも強くなろう」
狐「主様のお言葉、感銘を受けました・・・!我々のことをそれほどまでに考えてくださっているとは・・・!」
ちょっと小狐丸さん黙ろうか?と思いながら、江雪さんの言葉を待つ。
しばらくの沈黙のあと、江雪さんは口を開いた。
「あなたの・・・言うとおりかもしれませんね・・・私はこの戦いから逃げようとしていました・・・。なぜ戦うために下ろされたのだとも思いましたが、こうして人の身を得て兄弟や仲間たちと共に過ごすことは、今では掛け替えのないこと・・・。この日常を守るためなら、私は戦いに挑みましょう。そして、弟たちを守れるほどには、強くなってみせましょう」
ここに、敵絶対殺すマンの江雪さんが誕生したことは、あとから風の噂で聞くこととなった・・・。
しかし、江雪さんの言葉に深くつっこむことをして話を長引かせるのも嫌だったので、早々に次の話題へ移った。
「では、江雪さん今後ともよろしくお願いします。えーっと、では、次に気になったのが、夜戦に行く際になぜか必ず打刀が3名ほどついて行っているようなのですが・・・これはなぜでしょうか?」
「あ、それは心配だから」
そう声を上げたのは加州さんだった。おのれ、私よりも美人とは・・・いや、ここの人たち全員私より顔面レベル遙かによかった。
心でそう思いつつ、加州さんを見ずに言ってやった。
「もう今後はやめてください。打刀の皆さんが最近では夜戦で軽傷・中傷負ってますよね。夜戦・・・特に市街戦ともなると、完全に短刀が有利です。あの子たちは夜戦では最強です。練度が60代の打刀は逆に足手まといではないかと思います。夜戦についていくなら、打刀の場合、練度は最低でも85以上にしなければいけません」
そう言って、チラッと一期一振を見た。というのも、「弟たちだけで行かせるのは心配です!」って言われるかなと思ったから。
すると、一期さんは満足そうに笑って頷いていたから、「あ、これ弟褒められて喜んでるやつだ」と思って安心した。
でも、安心したのは束の間、めっちゃ泣きそうな声で加州さんが話しかけてきた。
「ご、ごめんなさい、主、俺たち短刀が心配で・・・」
なぜ泣きそうだし。
まるで悪者私じゃんって思ったけど、けっこうきつい事いったから仕方ない。きついけど、命かかってるからね、仕方ないじゃん?
そうしたら、初期刀候補の面々が次々と加州さんを庇うように口を開いてきた。
歌「僕たちも短刀たちが心配だったんだよ、昔は無理をさせられたからね」
陸「でもま、おんしゃぁの言う事ももっともじゃ。今後は短刀だけに任せることにするきに!」
蜂「そうだね、彼らも刀剣だから心配はしてられないよね」
なんだか、納得したようだけど、加州さんがやばい。なんかマジで泣きそうだ。やばい。
「ますたぁ・・・ごめんなさい・・・ちゃんと強くなるから・・・俺のこと嫌いにならないでね」
「嫌いになるはずないじゃないですか」
あ、しまった。本音が即答で出てしまった。
「え・・・?ホント?ますたぁ・・・俺のこと可愛がってくれる?俺可愛い?」
「世界一可愛い」
あ、しまった。また本音が即答で出てしまった。
「へへ♥ありがとますたぁ!」
多分もうこの場のヒロインは加州さんなんだと思った。みんななぜかちょっと唖然としているけど、私がそういうのは意外だったのだろうか。
ついでに小狐丸さんが「ぬしさま!わたしくもぬしさまのお役に立ってみせますので!」とか言っている。はいはい、もううちの子全員可愛いですよ。絶対言わないけど。イケメンに囲まれて心が死ぬから言わないけど!!
そんで続いての話しておくことと言えば・・・
「あー、あと、どうやらまた新しい政府の催しがあって、そこで新しい刀剣男士をお迎えできるみたいなんですよね・・・。詳細はよくわかってないのですが、その際は蜂須賀さんと長谷部さんと山姥切さんには活躍していただきたいと思っています。打刀の戦力は非常に心強いのでお願いします」
なんかまた新しい子がくるっぽいんだよね。どうやら補充計画みたいだから、遠戦の得意な打刀部隊で行ってもらおうかと思ってる。その時には、練度の高い蜂須賀さんと長谷部さんと山姥切さん中心になると思う。
出陣嫌な人いるかなーと思ってたら、
「・・・あんたは、写しの俺を使おうと言うのか」
はい、でましたー!
こじらせ系男士代表山姥切国広くん!この方は至る所でこじらせが問題になっていると見かけますな・・・(遠い目)
「写しとか写しじゃないとか関係ないですよね」
「関係ある。写しの俺に期待されても困る」
「いやいや、あなたは国広の最高傑作なので、期待はしていますよ。素晴らしいじゃないですか最高傑作」
「・・・期待なんかするな」
「え、じゃあ本物の山姥切国広はどうなるんですか?本物の山姥切国広は大根も切れないナマクラってバカにされてたんですよね?こいつ見た目いいだけで全然切れないぞってバカにされて、それで作られたのが見た目も実力を兼ね揃えたアナタなんですよね?ナマクラナマクラって言われ続けた本物の山姥切国広のほうが卑屈になるのはわかりますけど、なんで最高傑作と称されるあなたのほうがそんなに卑屈になっているのかわかりません」
「・・・」
「そもそも、写し写しってこだわってますけど、だったら私はどうなるんですか?私だって妹の写しですよ」
「・・・!」←確かに!という顔
「私だって、いつも明るくて前向きで元気で私がお姉ちゃんなのにいつも助けてくれる妹に対してコンプレックス感じまくりだし、妹がいいなぁって思う事もたくさんあって、山姥切さんのその布、(現在のメンタル的にも)私が欲しいくらいですよ!!山姥切さんはいいじゃないですか!!本物の山姥切国広がここにいないんだから!!私はどうなるんですか!!!自分とそっくりなのに、私よりも遙かに優秀な子が毎日側にいて劣等感感じまくりなんですけど!!!」
なんか、山姥切さん卑屈すぎるから、逆ギレしてやった。
そしたら、山姥切さん黙ったけど、他の人が口々に私を慰めだしたよ!!!!
燭「いや・・・僕きみのほうが優秀だと思うけどなぁ・・・だってあの子、陣形も覚えてなかったし・・・」
歌「ああ・・・こないだも泥団子を廊下に置いてそれを踏んだ和泉守に追いかけられていたしな・・・」
清「堀川がすごい勢いで廊下と和泉守の足拭いてたよね~!・・・ますたぁは優しいよ!俺のこと一番って言ってくれるし!主は絶対おれのこと一番可愛いって言ってくれないもん!」
へ「ますたぁ、俺もあなたの戦術を聞いて学ぶべきところがあると感じています。どうか卑下されませんように・・・」
一「あなたが私たちのことを思い、必死に勉強されていると思うととても誇らしいですよ。主は主で、魅力的ですが、ますたぁも充分素敵な女性かと思います」
月「うむ、ますたあよ。むしろ、そなたは努力家で見ていてとても気持ちが良いものだぞ」
狐「ぬしさま!私にとってはぬしさまが一番です!この小狐丸がぬしさまを一番に想っていることをお忘れなく・・・」
石「きみのその清浄は霊気は本丸の誰もが好いているよ。自分にもっと自信を持ってもいい」
や、やめろ!!!イケメンたちが何を言っても聞こえないぞ!!!
ここは心を閉ざしてやりすごすしかないと思ったその時、それを聞いていた山姥切さんが、口を開いた・・・
「・・・くっ・・・!俺はなんということを・・・!」
「?」
「確かに俺は、写しだからと言い訳していた・・・・・アンタの言う事は一理ある・・・こだわっていたのは俺のほうだ・・・!」
「・・・?」
バサッ
「俺は俺だ!」
なぜか被っていた布をキャストオフする山姥切さん。
布をとった事により見える、彼の美しい金髪。緑の瞳。整ったお顔。
私はそっと正座をし直すと、
「どうぞ、布は被っていてください」
そう言って、頭を下げた。
私のメンタルが限界を迎えた。
そんなこんなもあり、一週間の出陣予定なども組んで置いてきていたので大丈夫・・・かと思いきや、週一で戦術について教えてほしいと要望があった。まじかよこれ、死んじゃう多分私。
ちなみに、
それから、出陣を全く嫌がらなくなった江雪さんと、布を被らずに本丸をウロウロするようになった山姥切さんが目撃されるようになった。
いやもう、ホントイケメン怖い。
私の大事な布は絶対にとらないでおこう・・・そう思って今日もカオナシを脱ぎ捨てることは出来ない私でした。