「大阪から来た毛利や!よろしゅう頼んます」
親の都合で、夏休み明けに転校した俺
驚くことに、今まで通っていた学校とは全くと言っていいほど、校風が違った
(ま、これはこれで楽しむねんけど)
クラスの奴は、関西から来た俺を遠巻きに恐る恐る見ているものもいたが、
興味津々に話しかけてきてくれる奴もいて、まぁなんとかうまくやっていけそうやと思った
そして、
(ゴクリ)
ここが、
例の部室の前だ
(全国トップレベルの学校・・・)
(さてさて、どんな奴らが待ってるか見ものやな♪)
ガラッ
その扉を開けると・・・
「お疲れ様です!」
そう、なにやらちっこい女子が話しかけてきた
「・・・(ちっこい)」
「あれ・・・?あの、ここテニス部なんですけど・・・」
初めて会うた俺に、彼女は恐る恐るそう訪ねてきた
おそらく見たことのない顔だったから驚いたんやと思う
俺はニコッと笑いながら
「今日からテニス部に入部した、2年の毛利やで、よろしゅう」
そう言うと、彼女は
「あ、1年のまえです、よろしくお願いします」
と、ペコリと頭を下げた
(礼儀正しい子やな)
「まえさんは、マネージャーなん?」
「はい、そうです!」
「そうなんか、女の子のマネージャーがおって嬉しいわ!よろしゅう頼むで!」
「はい!」
「さおり?どうしたの?」
「あ、幸村くん、お疲れ様!」
「ん?そいつは誰だ」
「今日から入部する先輩だって!」
「2年B組毛利寿三郎、本日大阪から転校してきた人物だ」
「さすが柳、詳しいな…」
「プリッ」
「へぇ、先輩でしたか、俺は1年の幸村です、よろしくお願いします」
(幸村・・・)(こいつが・・・)
今年の全国大会で、立海を優勝に導いたと言われている噂の1年
立海の1年3人組は、大会の後「3強」と呼ばれとるらしい・・・
「ほう・・・俺は真田源一郎、俺は誰にも負けんぞ!」
「柳蓮二だ、よろしくお願いします」
「1年D組の柳生比呂士です。よろしくお願い致します。」
「仁王じゃ、よろしゅう」
「丸井ブン太です☆シクヨロ☆」
「ジャッカル桑原です。おなしゃーっす!!」
3強の3人、それから他の1年共も俺に自己紹介をしてくれた
(へぇ、なかなか可愛いやつらやんか)
「じゃあ私着替えて来るね」
「うん、部室の掃除、ありがとう」
「ううん、仕事だからね!じゃあ後でね~!」
そう言うと、まえさんはそそくさと部室を出て行ってしまった
「かわええ子やな、まえさんやっけ?」
ギロリ
ゾクッ
俺がそう言うと、その空間が殺気立ったのがわかった
「・・・先輩、まさか彼女に手出すつもりじゃないでしょうね?」
ニコリとした笑顔なのにものすごいオーラを放っている幸村
(おーおー殺気立っちゃって♪おもろー)
「いや・・・そういうわけやないけど、ただ単純にかわええなと思うて」
「そう、さおりは可愛いんです」
「(おもろー)ああ、めっちゃかわええな」
「俺たち、彼女がかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくてかわいくて仕方がないんです!」
幸村は、驚くくらい熱烈に彼女のことを語りだした
「あの清純で、人を信じて疑うことを知らないところ!」
「いまだにサンタを信じている純粋な心の持ち主だ」※えみこに打ち明けられてない設定
「うむ!今時古風な考えを持っていて素晴らしい!」
「すっげー天然だし」
「真面目じゃしの」
「正直で頑張り屋なところも好感が持てますよね」
「俺たち、彼女を悪の手から守りたいんです!」
ブッ!!!!!!!!
幸村がそう言った瞬間、ついつい吹出してしまった俺・・・
そんな俺を幸村達は睨んだ
(真剣なんやな!!)
「・・・笑いごとじゃないですよ先輩」
「す、すまん!(こいつらもたいがいやんか!おもろー!)」
「同級生や先輩が彼女に近づこうとするのも、全部阻止しますんで、毛利先輩も気を付けてくださいね」
「うむ、けしからん奴が多いからな!」
「毎日交代で送り迎えしてるしなー」
「偶然を装ってな」
「彼女をチカンの間の手から救わなければいけませんからね。それでなくても家が遠いので、危険はたくさんありますし」
「俺たちが彼女を守ることで、彼女は笑顔で部活を続けられる、そしてそれが俺たちの力になる」
「あの天使は俺たちが守るんです!!!」
なんやこの集団
おもろーーーーーーーー!!!!
ゲラゲラゲラゲラゲラ
(真面目なやつらばっかりやと思っとったが・・・)
(めっちゃぶっ飛んでる!!!)
(おもろすぎやろ!!!)
(て、天使って・・・!)
ゲラゲラゲラゲラゲラ
「・・・いつまで笑ってるんですか?」
「・・・すまん!」
「さぁ、早く着替えましょう、部活が始まってしまいます」
「そうだね。・・・さ、毛利先輩、俺たちが先輩に立海テニス部のこと、いろいろ教えてあげますからね」
そういって、幸村はまた、ニコリと笑った
(あ、あかん、)(これ死ぬやつや)
——————————
その日は、3強にボロボロに完敗
(めっちゃ強かったで!)(そら、全国優勝もするわな!)
ほんで、帰りの身支度をしている時やった
着替え終わって、部誌を書いているまえさんに声をかけられた
「毛利先輩」
「なんや?」
「毛利先輩って、関西弁ですよね?」
「おお、せやな、正しくは兵庫弁なんやけどな」
「兵庫?兵庫に住んでたんですか?」
「いや、出身は兵庫やけど、大阪から転校してきたで」
「へぇ!大阪のなんていう学校ですか?」
「四天宝寺っちゅーんやけど、知っとる?全国もでとった学校やで」
「え!!!!四天宝寺!!!!」
彼女は驚いて大きな声を出しながら、座っていた椅子から立ち上がった
(そないに興奮するとこかいな?)
「え、え、じゃあ、しらいしくんって知ってますか!?」
「ん?ああ、白石な、1年のやろ?」
「はい!!」
「なんや、知り合いなん?」
「はい!お友達なんです!」
「ほ~、あのハンサムくんとか」
それを聞いて、ピクッとなった幸村たちの反応が、
見なくてもオーラで感じられた
(めっちゃうけるw)
「先輩、全国大会出てましたか?会場で会ってたのかな?」
「ああ、俺は7月末で四天宝寺をやめて、8月から立海に在籍っちゅーことになっとったから、ちょうど全国大会には出られへんかったんや」
「あーなるほど・・・」
「っちゅーか、どこで白石と知り合ったん?」
「全国大会の会場です」
「そうなんか!」
「しらいしくん、優しくて、じゃにーずみたいにかっこよかったです!」
「・・・へぇ、その話詳しく聞きたいなぁ」
教えてよ、しらいしくんについて
そうニコッと笑った←コイツの顔は、今までの中で一番おそろしかったwww
(どんだけ過保護やねん!!)
「しらいしくん、すごく優しかったんだよね、拾い物した時手伝ってくれたり、迷子になってたの助けてくれたり!」
「へぇ・・・それで、しらいしとは今でも連絡とってるの?」
「ううん、連絡先なんて知らないよ、もう大会から会ってない」
「そうか、ならいいね」
「ん?何がいいかわからないけど・・・」
「さおりは気にしなくていいよ。さ、部誌手伝うから早く帰ろう、遅くなるよ」
「うん、早く帰ろう!」
お前は娘がいる父親か!!
と心の中でつっこんで、笑いを必死にこらえた
(あかんわ、ほんまめっちゃうける!!)
(まさか、あの3強がこんなキャラやったとは!!!)
(おもろすぎるわ!!!!www)
(こっち来ても飽きへんわ!!!)
四天宝寺のノリから一転、真面目な学校に来てもうたな~と思うてたけど、どうやら退屈せんですみそうや!
明日からの生活も楽しみに、俺は部室を後にした