004***まなみ

ジローんちやガクトんちみたいに、うちは商売をしているわけじゃない

ただ商店街の裏に住んでいて、亮んちの隣で、

そして歳が同じアタシ達は、自然と「幼なじみ」と呼ばれる関係になったんだ

 

 

(さおちゃんが部活に行ってしまった)

(暇だ)

 

 

せっかくの夏休みだというのに、さおちゃんは結局あまり家にいなかった

お盆とかは休みだったから遊んだけどね!

北海道のじいちゃんばあちゃんのところにも行ったんだ

けど、戻って来てからやっぱりさおちゃん忙しくて遊べないし・・・

暇だし・・・

暑いし・・・

やることないし・・・

(3バカも部活中でいないし静かすぎる)

 

アイス食べたいからお母さんにお金をもらってアイスを買いに外に出た

駄菓子屋のはるばぁのとこのアイスはアタシの好きなアイスばっかり置いてくれてるからね!

いつも「まなみちゃん、これどうぞ」っておまけくれるしね!はるばぁ大好き!

 

すぐ近くの駄菓子屋までの道がなんだか揺れているように感じる・・・

暑い・・・

とにかく暑い・・・

フラフラと商店街を歩いていたら、肉屋の山本のおっちゃんから声をかけられた

 

「おう!まなみちゃん」

「よ!おっちゃん!こんにちは!」

「こんにちは、まなみちゃん、暇だろ?」

「おっちゃんひどい!暇って決めつけないでよ!」

「だって他の4人は部活だろ?まなみちゃんだけ帰宅部じゃねーか」

「そうだけどさ・・・」

「はは、じゃあまなみちゃんにおつかいをお願いしよう」

「は!?やだ!!」

「いいからいいから、この子、今困ってるんだ」

 

そう言って、店の横に立っていた男がペコりと頭をさげた

金髪の派手な頭からは想像できない感じの、礼儀正しさだった

(ヤンキーじゃないのか?)

 

「氷帝学園に行きたいらしいんだが、道がわからないんだとよ」

「え!?案内しろってこと!?」

「揚げたてコロッケ2個でどうだ」

「のった!」

 

 

山本のおっちゃんの作るコロッケは世界一美味しい

しかも揚げたてなんてホント死んでもいいくらい美味しい

 

食べ物につられて、ついついOKしてしまった

 

 

「すまねぇな、俺も店があるからいけなくてよ」

 

ほれっと、手渡してくれたコロッケ

まだアツアツだ

 

 

「あちち」

「はは、気をつけろよ」

 

ほら、お前にもやるよ

 

そういって、おっちゃんは金髪の男にもコロッケを1つあげた

 

「え、ええの?」

「いいってことよ!これも何かの縁だからな!」

「おおきに!」

「まなみちゃんにしっかり道案内してもらえよ!」

 

 

(はふはふ)

(暑いし熱いけど)

(サクサクしててサイコーにうまい!)

 

 

「ひたらふいてひて」

 

 

コロッケを頬張りながらアタシは男に道案内を始めた

 

 

「ほっち」モグモグ

「・・・」

「はのね、」モグモグ

「・・・」

「ほほのひち、あふいからね、」モグモグ

「・・・」

「ふうはくはいのほお、とおってひくとはへはってふふひい」モグモグ

「ぶはぁ!!」

 

いきなり、その男は吹出した

なんだ、失礼な奴だな!

 

「・・・」

「す、すまん!」

「はふはふ言っとるからめっちゃおもろくて!」

「ひふれいなやふたな」モグモグ

「しゃべるか食べるかどっちかにしたらええやん!」

「ほのはげたてのほいひさは、ゆふれん」モグモグ

「ぷはぁ!!」

「ひたねぇ!わらふな!!」モグモグ

「せやって自分、」

 

 

めっちゃおもろいなぁ!!

 

 

そういって、笑った時、

初めてちゃんと顔を見たかもしれない

 

 

(あ、)

(キレイ)

 

 

夏の眩しい太陽に

金色の髪がキラキラ光って、

 

なぜだか一瞬、

 

そんな風に思ってしまったんだ

 

 

「まなみちゃんやったっけ?さっきのおっちゃん言っとっやろ?」

「まなみでいいよ、ちゃん付けキモイ」←食べるの落ち着いた

「ほな、まなみって呼ぶわ。俺、けんやって言うねん」

「けんや」

「おん」

「まぁもう二度と会わないと思うから忘れると思う」

「ぷはぁ!!」

「また吹出す!きたねぇな!」

「す、すまん!!」

 

そうしてゲラゲラ笑ったあと、「俺のイトコこっちに住んどるから、また遊びにくるで」そういった

 

「ああ、氷帝行くのって・・・」

「せやねん、イトコのとこ行くねん」

 

おかんにおつかい頼まれてなー、おばちゃんに渡すものあるから氷帝で待ち合わせしとんねん

 

そう、けんやは言った

 

 

「大阪からわざわざ来たのか、大変だな」

「うちの親共働きやし忙しいからしゃーないわ」

「へぇ」

「全然興味あらへんやろ!?」

「うん、ないよ」

「ずいぶんハッキリいうな!!」

 

 

めっちゃおもろ!とまたけんやはゲラゲラとわらった

 

 

(何が楽しいんだろうか)

(そういえば、箸が転がっても笑える時期っていうからな)

(仕方ないな)

 

 

そうこうしているうちに、氷帝学園の校門が見えてきた

ここまで来たらもう大丈夫だろう

 

 

「あんたのイトコって名前なんていうの?知ってるかも」

「ああ、ゆうしって言うねん」

「え」

「しっとる?忍足侑士」

「え!?」

「おしたりゆうし」

 

 

ガ━━━( ゚д゚ ;)━━━ン

 

 

あ、アタシは・・・

知らぬ間に・・・

あいつのイトコを案内していたのか・・・

(アイツのイトコとわかっていれば、)

(案内しなかったのに・・・!)

 

 

そんなことを考えていたら、

 

 

ゲッ!!!!

 

 

校門の前に、会いたくないその人を発見してしまった・・・

 

 

(マジで最悪・・・)

 

 

こちらに気付いた奴は、怪訝な顔をしながらこちらに近づいて来た

(来んでいいわ!)

 

 

「・・・けんや」

「お!ゆうしやんか!やっぱりこっち全然わからんかったわ!」

「せやから俺駅まで行こか言うたやろ」

「せやってお前部活会ったからしゃーないやん!俺待つの嫌いやしな!!」

「・・・はぁ・・・最悪やわ、なんでコイツと一緒におんねん」

「まなみ?案内してもろうたで!何?知り合いなん?」

「同じクラスや」

 

 

はぁマジで最悪だわ

夏休みにこいつの顔を見なくて幸せだったのに・・・

これ、山本のおっちゃんにコロッケもう一つ貰わないとダメだわ!

この精神的ショックはコロッケ2個じゃ足りない!

 

 

「おい、お前謙也に変な事言うてへんやろな?」

「はぁ?何もいってねぇよ!クソメガネ!!」

「え、めっちゃ仲悪いやん!」

「いつも俺言っとるやろ、めっちゃ最悪な女がおるって」

「え!お前が言うてた子か!」

「せやで、こいつやで」

「え、でも、お前言うてたより全然かわ・・・」

 

い、いや!!何でもあらへん!!!

 

何か言おうとした途中で真っ赤になって焦りだした金髪を横目に、

(クソメガネがムカつきすぎて全然聞いてなかったわ!)

 

「帰る!!」

 

そうして、アタシはその場を去った

 

(あーもう!せっかくの夏休みなのに最悪だ!!)

(もう一個コロッケもらって)

(はるばぁのとこでアイス食べよっと!)

 

この後、はるばぁのところでのんびりアイスを食べていたアタシのところに3バカがやってきて、

また賑やかになってしまったのだった・・・

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