はい!ということでね!
無事に彼女とお付き合いをすることが出来たんですけれども!
(っつーか、付き合ってたと思うてたって!)
(周りみんなそう思うてたとか!)
(めっちゃ恥ずかしいわ!!)
でも、そんな幸せ絶頂のおれにも、1つ不満なことがある。
彼女に「好き」って言ってもらえてへん!!!
いや、まぁ向こうもな、態度とかあるやん?
たまに照れたりしてかわええからさ、俺のこと好きなんかなーって思うてるんやけどさ、
けどな、あれやねん
今までとあんまり変わらへんねん!!
相変わらず3バカはすぐに家来よるし、彼女もめんどくさがりながらそれに対処してるし、そして俺は相変わらずパシリに使われることも多いしな…
なんやろ・・・もっとあるやん・・・
こー恋人たちが出す甘い雰囲気っちゅーの?
あるやんか!2人でイチャイチャする感じ!
それがないっちゅーんが不満やねん
多分それって、彼女の気持ちをハッキリしとらんからやと思うねんなー
せやから、今日は頑張ってみようと思う!!
(よしっ!)
おれは、気合いを入れて部屋を出る
「おはよーさん!」
そう、爽やかに言いながら部屋を出たんやけど・・・
(あれ?)
彼女がおらへん…
まだ寝とるんやろか?
そう思って部屋の前をウロウロしてみる
(いや、おかしな…)
(あいつ意外と日曜日は早起きなんやけどな…)
(朝のスーパーヒーロータイムになんや好きなイケメンでとるから…っていつも見とるのに…)
(おらへん…)
・・・と、そこで机の上の書置きを見て、俺はガックシ肩を落とす
『今日はトムくんのファンクラブのバスツアーにいってくるーーーーー(変な絵いっぱい)』
なんや…
朝早く出かけとったんかい!
(トムくんって、誰や…)
(は!?まさか!トム・クルーズのことか!?)
(アイツめっちゃグローバルやんか!!)
(外人のファンクラブはいっとったんか…)
にしても、
(ぷっ)
(なんやこの落書きは…)
(宍戸とかめっちゃ似とるやん!)
(跡部もめっちゃわかるし!)
(この飛んどるのが向日で、寝とるのがジローか)
(…めっちゃご機嫌やんか)
(楽しみにしとったんかな、トムクルーズのバスツアー・・・)
彼女がいないことは寂しいけれど、なんだか彼女が残した落書きまで愛おしくなる
きっと、嬉しくて機嫌よくて、いろいろ書いてたんやろなっちゅーんが、よぉわかる
(・・・あーあ)
(はよ、帰ってこぉへんかな・・・)
彼女がおらん部屋は寂しくて、
彼女がおらん時間が長すぎて、
俺はそんな時間をどう潰そうか考えていた
————————————————
(ん、寝てた)
夕方、1人でソファに座ってテレビを見てたら寝てしまったようや
(あー…暇すぎるわ…)
彼女から、昼飯やら景色の写真やらは送られて来たけど、それ以外はなんも送られてこないところを見ると、相当楽しんでるんやなというのがうかがえる
(いや、イケメン関係は全部さおちゃんに連絡しとるから、俺よりさおちゃんに連絡しとるのかもしれん)
気付けば、スマホがピカピカと光っていた
俺はスマホを手に取り、中身を確認した
そこには、
(今日、飲んでくから)
そう、一言だけ書いてあるラインを見つけた
ガックシ
(はぁ~)
(やっぱ、タイミング悪いな…)
(なんやねん!)
(俺が覚悟決めると、なんであかんの!?)
(フラグなん!?)
(もうどないしたらええっちゅーねん!!)
ほんまは今日、彼女とイチャイチャしたかったのになー・・・
残念・・・
(トムクルーズに負けたわ…)
(世界的スターやからしゃーないけど…)
モヤモヤ
(けど、飲みに行くって…誰とやねん…)
(男とか…おらんよな?)
(まさか…トムクルーズか!?)
(まなみかわええからってファンに手ぇだしたんか!?)
モヤモヤ
(…ってそれはないな…)
(けど…)
(なんか、心配…)
モヤモヤ
(アイツモテるしな…)
(変なやつに絡まれとらんやろか?)
(気になる…)
(めっちゃ気になる)
モヤモヤ
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!もう!!!」
俺は上着を羽織ると、車の鍵を持ち、彼女にラインを送りながら家を出た
————————————————
(はぁ…まだかいな…)
そして俺は、まなみが飲んでいるという居酒屋の前で彼女の帰りを待っていた
車は駐車場に止めて、店の前のガードレールに腰掛ける
(おっそいなー)
(まだかいな)
(まぁ…来てるとは言うてへんからしゃーないけどな…)
(楽しく飲んでる時に邪魔したないし…)
(けど、)
(家で待ってるより全然いいわ)
(こうして行動してるほうがええ)
待つのは嫌い
そう言っていた俺やけど、彼女のためなら、なんのその
いくらでも待ててしまうから不思議や
(はよ、出てこんかな…)
(昔はこんなんありえへんかったんやけどな…)
(俺は俺で友達と遊んだり、時間いくらでも潰せたし)
(なんやでも、)
(アイツは違うねんな、)
あいつといるのは、ほんまに、
1人でいるよりも、何十倍も何百倍も楽しいねん
せやから、
はよ会いたい
(あと、)
(めっちゃ野生の勘がすんねん!!!!)
(今日はなんかやな予感すんねん!!!!)
(ホンマ、ざわざわする!!!!)
そう思いながら待っていると、
やだー
なーカラオケいこーぜ
あはは
店から出てくる男女の声がする
そして、俺がその集団に目をやると…
(!!!???)
(おった!!)
(まなみ!!!)
(おった…)
(…けど…)
(誰やねんそいつ!!!)
まなみは、
なぜか
知らない男に
今にも肩を掴まれそうなくらいの距離で
(え、え、)
(何しとるん!?)
(やっぱり!!!)
(俺の今日の勘当たったわ!!!)
俺は思わず、
「まなみ」
そう、彼女の名前を呼んでいた
「…けんや?」
ビックリした様子で俺のほうを見る彼女は
(あれ?)
心なしか、少し安心したような、ほっとしたようなそんな表情だった
「…なにしてるのさ!どこで飲んでるか教えてって言うからおかしいと思ったら!!」
「いや、迎えに来てんけど、」
「え!!まなみの彼氏!?」
「ちょっと聞いてないよ!!まぁちゃん紹介してよ!!」
そう、寄ってくるのは女の子たちだけで、
男たちはなぜだか呆然としていて、
「あー、したら、アタシ帰るわ」
「えー、彼氏さんも一緒にカラオケいきましょーよ!」
「いや、明日仕事早いんで…」
「そっかぁ…残念だけど、まなみまたね!」
「ばいばい、まぁちゃん!!」
「いこ、けんや」
まなみはそう言うと、さっさと歩き出した
「はぁ…助かった…」
「え?何?男もおったけど、誰?」
「いや、知らん」
「え!?」
「なんかナンパされてさ」
「は!?」
「でもなんか友達彼氏いない子多いから、すごい喜んじゃって」
「えー…なんやそれ…」
「嫌だったけど、しぶしぶ一緒に飲んでただけ」
「そ、そうなんや~」
「よかったぁ、助かったわ謙也来てくれて!」
ありがと!!
そういう彼女の手を、ギュッと握った
「…おん、ほな帰ろか」
「うん…今日何してたの?」
「今日は…」
「うん」
「今日…」
「なにさ」
「…」
「…」
「今日何しとったんやろな?」
「は?」
「いや、洗濯したり掃除したり仕事したりしとったけどな」
「うん」
「なんか、お前いないだけで、一日長くてな」
「…」
「めっちゃ寂しかったわ」
「…」
「やっぱ、お前といるのが一番やわ」
「…」
そう言いながら、
たまたま通りかかった、お店の
ショーウィンドウを横目で見ると
!!?
俺に手を引かれながら、
なんとも嬉しそうな顔をした
彼女が見えた
(うわー)(なんやそれ)(その顔、)(反則やろ…)
なんだか、つられてこっちまで顔が熱くなってきて、
彼女に好きって言ってもらえてないだとか、
彼女はちゃんと俺のこと好きなんやろかとか、
そんなこと、今の彼女の顔で気持ちが充分わかってしまった気がした
(…言葉に出さんでも)(ちゃんと思ってくれとるって)(思ってもええんやろうなぁ…)
「…今日、楽しかったんか」
「え?うん、そりゃぁ」
「トムさんどうやった、トムさん日本語喋れるん?」
「ぷはっwww トムさんwww」
「外人やろ?」
「日本語ペラペラだわトムさんwww」
「そうなんか、すごいな、グローバルやな」
「ぷはっwww」
「さすが世界のトムクルーズやな…」
「www ちょwww もう 喋らんでwww」
「え?なして?」
「www」
「トムさんとの写真ないん?」
「www」
散々笑った彼女が、「やっぱりけんやといるのが一番楽しい」と言ってくれた言葉だけでも、今日は良しとしよう
(けど、)
(いつかきっと!)
(好きって言ってもらえるように!)
(忍足謙也頑張ります!!)