クロスオーバー22

「さおちゃん、今日お願いあるんだけどー」

GW最終日。
今日も部活の私に、まぁちゃんが声をかけてきた。

「どうしたの?」
「あのさ、さっきジロのおばちゃんにそこで会ってジロのヤツまた部活のズボン忘れたから持っていって欲しいってさ」
「え?あ、うん、部活あるから学校行くし別にいいけど…」
「またあいつパンツでテニスやってるよな、終わってる」
「いやそんなことよりきみ部活行かないのかい?届ける時間もないくらい急いでるの?」
「いや今日ね、にっかりとデート」
「え!なぜにっかり!不思議な組み合わせだね!」
「あいつマジでウケるからな」
「へぇ…なんかいつも下ネタ言ってるイメージだわ」
「下ネタ言ってるわw」
「そうかい・・・」
「でもあいつ穏やかで優しいからな」
「そうだね、じゃあジロちゃんに届けてくるよ」
「うん、よろしくー」

そう言ってまぁちゃんはてってってと走って行った。
私は支度をして部活へと向かうのだった。

(えっと、テニス部テニス部)

テニス部の集合のが早かったからもうコートにいるはずだと、私はテニスコートへ向かった。
ジロちゃんいつもズボン忘れてパンツで試合とかしてんだよね。ほんと困った人だ。

(あ、やってるやってる)

テニスコートで打ち合いをしているテニス部を見る。
うーん、人数多すぎてわからんなぁ。

(ジロちゃんどこだろ)
(うーん、がっくんか亮でもいいんだけど・・・)

「まえさん?」

(!)

急に声を掛けられて 驚いて手に持ってたジャージを落としてしまった。
この声は!

「白石くん!」

見ると今までテニスしてたのかラケットを握った白石くんが立っていた。
いやーすごい汗だ。どうしよう、かっこいい。スポーツマンかっこいい。

「あれ、どないしたん?テニス部見学?バレー部練習休みなん?」
「ううん、バレー部今日午後からなんだけど・・・今ジロちゃん探してて」
「芥川くん?」
「うん、またズボン忘れたっておばさんに頼まれて」
「あ、そうなんか!ほな俺渡しとくわ!」
「え、でも白石君今テニス打ち合いしてたでしょ?悪いよ」
「大丈夫大丈夫!!それよりあともう1試合あるからもし時間あったら見てって!」
「え、うん、時間は少しあるけど・・・」
「ほんま!?ほな、すぐ終わるから見てってなー!」

そして白石くんは いくで白石ー と言われてコートに戻っていった。
ふぅ、と息を吐いた白石くんは、ボールを高くあげて 思いっきり打った。

(わぁ)

バレー部もすごいかっこいいなっていつも思うけど
テニスもなかなか・・・
てゆーかあれだ、やっぱり白石くんはかっこいいな!!
牛島くんとか黒尾くんとか、バレー部もかっこいいって思う人たっくさんいるけど
(そして研修で仲良くなった新開くんや橘くんもかっこいいと思うけど)
白石くんはあれだな・・・もう・・・ナンバー1だな・・・

(あ!腹チラした!)
(やばい!)
(にやけるわ!!!)
(マスクしてないのに!!)

思わず口元を隠しながら彼の動作に見とれる。
あぁ、白石くん・・・
ほんとイケメン・・・・

「あれ、さおり!?」

声がして振り向くと

「あれ、安定と清光!」

何してるの?と聞くとぜーぜー言いながら二人は 「部活で外周」と答えた。

「へー!剣道部も外周あるんだ」
「当然じゃん!あぁもうやだよ、疲れたー」
「あと少しだぞ馬鹿、走らないとまた先輩にどやされる」
「へぃへぃ・・・あれ、まなみ来てないの?」
「まぁちゃん今日にっかりとデートだって」
「何それ!!!なんで!?俺とはデートしてくんないくせにずるい!!!」
「なんでだろうね」
「行くよ、清光」
「やだもー帰るーーーおれもまなみとデートするぅぅぅーーーー」
「ばっか!お前が帰ったところでまなみはお前とはデートしないよ!」

そう言って安定はずるずると清光を引きずりながら

「じゃあさおり!また後でね!!!帰り一緒だったら一緒に帰ろうね!」

と、手を振って外周に戻っていった。

「・・・まえさん」

びくっ!!

「あ、し、しらいしくん・・・!」
「・・・今の先輩よな?」
「うん、2年生だよ」
「まえさんって・・・イケメンの知り合いたくさんおるなぁ」
「え、イケメン?そう?(まぁかっこいいんだろうけど子供のころから一緒にいるからよくわからない)」
「はぁ・・・うん、まぁええ、うん」
「? あ、終わったんだね、お疲れさま!」
「・・・おおきに、勝ったで。見ててくれた?」
「え、あ、うん!!見てたよ!!(途中で清光たちに邪魔されたけど)」
「そか、どやった?」
「あ、うん、かっこよかったよ」

ほんとにそう思ったから
素直にそう答えた。

てか、どうだった?と聞かれたら本当にそれしか思い浮かばないんだからそんなこと聞く白石くんはずるいよね。

「・・・」

「あの、白石くん?」
「・・・」
「あれ?ごめん、私変なこと言った?」
「・・・うん」

白石くんはしばらく固まった後 口元を抑えて
名前を呼ばれて またコートへと戻っていった。

「まえさんおおきに!午後もがんばれそうや!」

そう、すごくさわやかに笑顔を向けてくれて
そしてわたしはその笑顔に 王子様みたいきゅーーーん!! とかしちゃいながら
ホクホクと部活へと向かうのだった。

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