休みの日に、急いで全て手続きをしてしまった
今の家は白石くんの名前で借りていたから私がやることは何もない
とにかく新しい部屋を借りればすぐに出てくことが出来る
そう思って、すぐに家具付きのマンスリーマンションの契約を済ませ、自分の荷物を宅急便で送った
ベッドやテーブルはもう置いてあったから、自分の部屋に置いてあった白石くんに処分してもらうことにした
(買ったばっかりなのに・・・)(ショックだけど仕方ない・・・)
(白石くんそれくらいしてくれるよね・・・)
彼がいない間に出ていくなんて、少し申し訳ない気もしたけど、
それでももう顔を見るのもつらいので仕方がないと思う
(ちなみに、白石くんと繋がってる謙也には家を出たことは内緒にしてほしいとまぁちゃんにお願いした)
(今のところちゃんと内緒にしてくれているみたい)
(まぁちゃんに落ち着いたら住所教えるねって言ってたんだ・・・)
ちなみに明日(4月)から職場が変わる
新しく出来る教室のほうの講師になるので、万が一何かの用事で白石くんが職場に来ても私はいない
そして、前の職場の同僚にも「白石という人が来たら場所を教えないで」とお願いしているので私の居場所はバレナイと思う
逃げるしか出来ないなんて情けないと思うけど、今の私にはこれしか出来ない
(だって、今だに涙が出て来るんだもん・・・)
彼といた時間は確かに楽しかった
男の人とこんなにたくさん一緒にいたことはないし、
彼が私をいつも心配して助けてくれていたのはわかっていたから、
本当に付き合っているみたいに思えていた
(1年間楽しかったな・・・)
(それを思うと、本当につらい)
ラインも電話も拒否している
彼と私を繋ぐのは、まぁちゃんと謙也だけ
(でもまぁちゃんは「離れて正解」って言うから多分謙也には言わないと思う)
(おかげで逃げられるよ私)
一人ぼっちのこの部屋は、なんだか少し怖くて、毎日ゆっくり寝ることも出来ないけど
(今まで、白石くんがいるってだけで安心できたんだな・・・)
(夜いないことも多かったけど、)
(それでもなんだか安心できた)
(守られてたよ私・・・)
それでも頑張っていかないといけない
彼に教わったおかげで家事も出来るようになった
1人で暮らせるようになったのだ
だから、
頑張る
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そして、それから1ヶ月後
私はやっと新しい生活にも慣れようとしてた
(世間はゴールデンウィークか)
(函館・・・行きたかったな・・・)
まだ完全に彼のことを忘れたわけではない
けれど、”ふられた”という事実があるので、これ以上頑張ることもできないし、あとは時間が解決してくれるのを待つしかないと思っていた
(あ、そうだ)
(DVDデッキ買いに行かないと・・・)
(今テレビはあるけどデッキないから・・・)
(ポータブルDVDプレイヤーでDVD見てたけど、録画もしたいし・・・)
(とりあえず、ビックカメラにリサーチしに行こうかな)
(それから価格.com見て値段比べて・・・)
(最近ずっと行ってなかったし、行ってみよう)
この一カ月、
彼が近くに住んでいてる札駅にはどうしてもいけなかった
もし会ってしまったらとずっと思っていたけど
でもよく考えたらそんなことはありえないのだ
だって、札幌に住んでいてもお友達と偶然会う事もあまりないし
こんだけ人がいれば会う事なんてない
だから、私はその日
久しぶりに大好きなビックカメラに足を運んだのだった
「さおりちゃん!」
(って、)
まさか会うと思わないよね?
絶対会わないと思ってたのがフラグだったの?
どうしてこうも簡単に出会ってしまうのか
最悪だ
ビックカメラをウロチョロしていたら、
会ってしまったんだ
一番会いたくない彼に
それはそれは、
最悪な出来事で、
家電を見るのに必死な私は後ろから声をかけられるまで気が付かなかった
こんな至近距離では逃げたくても逃げられない
詰んだ
「・・・さおりちゃん・・・」
「・・・(え、どうしよう、何て言えばいいんだろう、お久しぶりですっていうのも変だし)」
「・・・良かった会えて・・・」
「・・・(え?何で良かったんだろ、あ、私忘れ物したのかな、あ、お金足りなかったから請求されるのかな、こわい)」
「・・・さおりちゃん、ちょおええかな、話あるんやけど」
「や、無理です」
「え、」
「ごめんなさい、お金足りませんでしたか?あの払いますので足りない分、教えてください」
「いや、そうやなくて、」
「え、じゃあ忘れ物ですか?もう別にいらないので、処分してください」
「ちゃうって、そうやないって、」
「ごめんなさい、私いきます」
だって、
泣きそうだから
(やっぱりつらい)
彼の顔を見るのはツライ
だって、私はフラれたんだもの
私は泣きそうなのがバレないように早足でその場を立ち去ろうとしたんだけど、
グッ
彼に腕を掴まれてしまった
(・・・なんで・・・)
(なんで今更、)
(なんなの、この人)
「離してください」
私は腕を振りほどこうとしたけど、
彼は全然離してくれなくて、
「・・・頼むから、話させて」
そう、私に告げた
(話なんて)
(聞きたくないよ・・・)
(怖いよ・・・)
(またふられるの怖い・・・)
「無理、です、怖いです」
私はそう言うのが精いっぱいで、
どうしていいかわからなくて、
とにかく逃げ出したい気持ちでいっぱいだった