「さおりちゃん・・・俺行くから、あと頼むな」
そう彼が家を出て行ってから数時間
やっと、私は涙を止めることが出来た
あれから、自分のしてしまったことへの後悔と、
ふられたことで胸が締め付けられるように痛い
(つらい)
(死にたい)
(消えたい)
彼からもらったブレスレットの袋がすぐそこに転がっている
せっかく私のためにと選んでくれたブレスレッドも、
一度もつけることなく終わるんだと思った
(その気がないなら最初から、)
(こんな期待させるようなもの、)
(くれないでよ・・・)
ガチャリ
やっと部屋を出て、今でコップ一杯の水を飲む
部屋を見渡すと、整理されたキレイな部屋が見える
(ホント、)
(綺麗好きだよなぁ・・・)
最初の頃、
本当に親元を離れて暮らせるのかとても不安だった
それを支えてくれたのは、
白石くんだった
家事の出来ない私に、たくさんのことを教えてくれて、
たくさん一緒にいられるように、シフト制にまでしてくれて、
(だから寂しくなかったよ)
(家族がいなくても)
休みの日にはいろいろなところに連れて行ってくれた
ポロッ
いつも私のこと心配してくれて
ポロッ
誕生日にはプレゼントの他に、人生初の花束までくれた
ポロッ
(本当に幸せだったよ)
(彼氏がいたら、こんな感じなのかなっていつも思ってた)
もう流したと思ったはずの涙がまた流れてきた
食器棚には、
彼と私のお茶碗が仲良く並んでいる
だけど、
それも終わりにしなくちゃ
(このまま一緒にいることは私には出来ない・・・)
(ふられたのに一緒に住むなんて、)
(私には無理だよ・・・)
彼が東京に出張になったのは、私にはちょうどよかった
(2週間ある)
(白石くんが帰ってくる前に・・・)
こうして私は
”逃げる”
という選択肢を選んだ