金曜日
仁王くんにきちんと伝え、謝った。
もちろんすんなりは納得してもらえなかったけど
最終的に 私の頭を撫でて「幸せになりんしゃい」って言ってくれた彼の優しさに、それはもう嗚咽レベルで号泣した。
でも、死ぬほど泣いたらスッキリした。
そして今日はいよいよ、白石さんとデートの日なんだ。
話が話なので、白石さんのおうちにお邪魔することになったんだけど
いきなりおうちにお邪魔するとは・・・
何かされやしないだろうか・・・(警戒)
「いやそんな警戒せんでも」
お茶を淹れてくれた彼が苦笑いしながら そう声をかけた。
(いやいや、始まりがあんなだったしね)
(これは警戒レベル4だよ)(5段階のうち)
「いきなり家って」
「いや話したいしゆっくりするならうち来る?って聞いたらさおりちゃんもうんって言うたやんか!」
「言ったけど冷静に考えたらいきなり家はおかしいかと思って」
「そないなことないて!ちゅーかええ加減そのカーテンの裏に隠れるのやめて・・・!」
はい、ちゃんとこっちに来て、話するで! とテーブルの前に連れてこられてしまった。
まぁ今更だけどなんか恥ずかしくて話すのもちょっと逃げていたんだけどね。
「・・・で、ちゃんと仁王くんと話して来たんやろ?」
「うん」
「・・・惑わされへんかった?」
「・・・」
「そこで無言!?」
「まぁ心は揺らいだけど・・・」
「揺らいだんや!?」
「でもちゃんとお断りしてきたよ」
「そ、っか(ほっ)」
「安心した?」
「するわそりゃ!仁王くんかっこええしな!!」
「かっこいいって思うんだ!(白石さんほどの人が!)」
「思うわそりゃ!かっこええやんか、見た目はもちろんやけど中身も」
「・・・うん」
「・・・ちょお嬉しそうにせんといて」
「いやなんか嬉しかった」
「元カレ褒められて嬉しいとか」
「私の見る目は間違えてないと思っただけだよ」
「そう・・・やな・・・」
「白石さんもだよ」
「え?」
「仁王くん、白石なら安心って言ってた」
「え、な、」
「私、男の人見る目あるみたい」
笑うと 彼はホッとしたように笑顔を見せて
「・・・ほんま、仁王くんには敵わへんなぁ」
でも、ここだけは譲られへん、と 顔をあげて
「・・・さおりちゃん、好きやで。俺と付き合うてください」
そう、言った。
(・・・)
私は幸せ者だね。
仁王くんと付き合えて幸せでたまらなかったのに
今度は白石さんと付き合えるなんてね。
ほんと 幸せすぎて
涙、出ちゃうね。
あれだけ泣いたのに、おかしいね。
「・・・うん」
頷くと
そっと、白石さんは 近づいて
ちょっと戸惑ったあと
ギュッと 私を抱きしめた。
「・・・ありがとう。後悔はさせへんからな」
「うん」
腕の中で溢れる涙をぬぐって
彼のぬくもりに 酔いしれた。