木10 ~VOL.29~

(・・・しつこいだろうか)
(まぁいいか・・・)

 

これで最後とかさっき手紙に書いたくせに
最後にもういっこだけ伝えたいことを伝えるの忘れてたことに気づいて
追加で手紙を書いた。
それをまたけんやの郵便受けに入れようと けんやの家に足を運んだのだ。

 

(もう最後とか書いたけど・・・いっか!)
(もうこれで本当に最後だからいーよね!)
(はぁ、けんやちゃんと生きてるかな・・・)
(もしけんや死んでてこれ親族とかに見られたら)
(死のう・・・!)

 

そう思いながら手紙を握りしめて
アパートの階段を昇ろうとした。

 

バタンッ!!!

 

大きな音が響いて ビックリして上を見上げた。

 

「・・・・あれ、けんや?」

「!!!  まなみ・・・!!」

 

そこには 今まで姿を消したいたけんやの姿が・・・
あれ、なんで?やばい、姿見られた。こんなはずではなかったのに・・・!!

 

(こっそり手紙入れて消えるはずだったのに)

 

そう思って焦っていると
けんやはもう落ちるくらいの勢いで階段をおりてきて
そして  あたしを

 

 

抱きしめた。

 

 

「・・・けんや、よかった。生きてたんだね」
「生きとるわ!!!」
「心配したよ、すごく」
「・・・すまん」
「どこ行ってたの?」
「海外研修・・・」
「そっか、ならいないわけだよね、よかった、ほんと何かあったらどうしようかと思ってたよ」
「・・・おん」
「あれ・・・けんや、泣いてる」
「・・・ん」
「どうしたの?」
「・・・おまえな、ずるいわ、ほんまに」
「うん?」
「・・・あんな手紙見たら、 大事にしたい、って思うやんか」
「え?」
「もう、俺、だまされとってもええわ」
「えぇ?」
「・・・好きやで」

 

 

俺に、大切にさせて

 

そう、けんやは 言った。

 

 

(わ・・・)

 

やばい

 

泣きそう

 

 

「・・・なにそれ」
「なんでもええ、大切にしたい、します、好きや」
「やめて、そんなの」
「・・・せやんな、迷惑かもしれんけど、」
「違うよ」
「へ?」
「あ、あたしだって、けんやのこと 大事にしたいのに」

 

いやなおもいたくさんさせてごめんね

 

そう言うと 強く強く けんやはあたしを抱きしめた。

 

「・・・もうええ、信じる」
「うん、ほんとに黄瀬はただの同僚でマジでなんもなかったから大丈夫」
「・・・それはちょっとまだ疑っとるけど、大丈夫、お前の気持ちは信じる」
「疑わないで!けんやだけだよ、あたしほんとにけんやすきだよ!」
「・・・おう、俺も好きやで、めっちゃ、めっちゃ、好きや」
「うん」
「付き合おう、な?」
「うん」
「・・・よかった」

 

うなずくとけんやはやっと安心したのか 体を離した。

 

「てゆーかまなみ何しに来たん?家出たらおるからビックリしたわ」
「あ、いや書き忘れたことあったから最後に手紙もう一通出してからサヨナラしようと思って」
「え、なになに!?書き忘れたことなに!?むっちゃ気になる!!」
「いや、気にしなくていーよ、もう必要ないし・・・」
「え、いやや、見せて!!」
「いや・・・いーよ・・・。それよりも許してくれんなら家に入れてよ、寒いわ」
「お、おう・・・」

 

けんやと家に入って 玄関でキスをして
はぁようやく結ばれたなぁ、とホッとしていたのだけど。

 

「・・・これやな、手紙!」

 

カバンから、スッと 手紙を抜かれてしまった。

 

(う、うおおぉぉぉ!!!!)

 

「いや、見ないで!見なくていいって!!!見るな!!!!」
「けどこれ俺宛やろ!?なら俺見てもええやん!!」
「いやあれだよ、もう会わないと思ってたからだよ!!もう会うつもりもなかったし、だから・・・!」
「いや、見るわ!大丈夫!」
「大丈夫じゃないって!!」
「言いたいこと全部言うてくれへんとまた不安になるで俺!!」
「うっ・・・卑怯な・・・」
「よっしゃ、見る!!」

 

 

けんやはその手紙を 開いて

 

そして

 

絶句した。

 

(あーあ・・・)
(だから見なくていいって言ったのに!!)
(失礼なやつだな・・・)

 

 

「・・・だ、だからさ、見ないでって言ったのに」
「・・・」
「引いたでしょ?もういいよ、忘れて!」
「いや、」
「ん?」
「ええな、これ」

 

 

ぺらっと けんやの手に握られた手紙

 

そこには

 

「結婚、しよか」

 

でかでかと書かれた  『結婚して!!』 の文字が。

 

 

(・・・いやいやいや)
(だってさ)
(もう結婚してほしかったんだもんw)
(それだけ伝えなきゃ、って)
(おも・・・って、)

 

 

「・・・え?」
「結婚しよ」
「な、なに言って、」
「いや、付き合うの怖いんやろ?」
「いやそうだけどさ」
「ちゅーか、別れんの怖いんやろ?ほな、結婚しよや」
「え、でも、」
「今までで俺のこと、知ってくれたやろ?そんでええなって思うてくれたんやろ?」
「うん」
「好きになってくれたんやろ?」
「うん」
「ほな、結婚しよ」

 

・・・・

 

「そんな、アッサリ 決めることなの?」
「いや、ずっと俺好きやったしな!?ずっと一緒におりたいな、とかずっと思うてたし!!」
「え、でも、別にあたしの不安取り除くためとかならいいから・・・」
「ちゃうで!?俺か不安なんやで!?なにあのイケメン!長身でかっこええしどんだけ絶望したか!!」
「黄瀬かwww」
「めえちゃイケメンやん!かっこよかったやん!ビビるわ!もういややわあんな思いすんの!!」
「・・・うん」
「俺、思ってたよりヤキモチやきみたいやわ!!・・・せやから、俺のもんになってくれへん?」
「あー・・・」
「・・・え、あかんの?」
「・・・いや」

 

 

そして あたしは

 

思いっきり

 

けんやに 飛びついて

 

「めっっっっっっっっちゃ、うれしい!!!!!!!」

 

ぎゅうううううう と強く、抱きしめた。

 

 

「え、え!」
「どうしよう・・・!!!うれしすぎる!!!幸せ!!ありがとう、けんや!!!」
「つか、」
「えーーーー!もうもう!もう!!!嬉しい・・・めっちゃうれしい!!」
「初めてやな、笑ったの!!」
「え?そんなことないだろwww」
「いや、ほんま」

 

心から笑ってるの、初めて見た気がする
と、けんやは 驚いて言った。
え、マジかwww

 

「なに、あたし心から笑ってないのかいつもwww」
「いや、まぁ、なんかいつも人生諦めてる顔しとったわ」
「なんだそれwww」
「死んだ魚の目しとったで、男は誰も信用してない感じの」
「ちょwwwひどいなwww」
「いや、ほんまに!!でも今ほんまに心からの笑顔見せてくれた感じやわ!!」
「失礼www」
「や、嬉しいわ・・・少しは不安な気持ち なくなった?」
「・・・あー、うん」
「一生大事にするから!信じてな!」
「・・・うん!」
「俺は、うらぎらへん」
「うん」
「あ、指輪とか、ないんやけど、」
「あぁ、いいよ別に、てか急だしね、むしろあったら怖いわw」
「・・・誓いのキスでもしよか」
「ちょwwwなにそれwww」
「ええんや!形だけでも!今度ちゃんと指輪買いにいこ!ええな!」
「・・・うん」
「・・・まなみ、好きやで、ずっと笑かしたるからな」
「はは、楽しみにしてるわ」

 

そして彼は 私にキスをした。

 

彼の背中に手をまわして、そっと目を閉じて
幸せに酔いしれるのだった。

 

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