木10 ~VOL.23~

(ん・・・)

 

チュンチュン

 

目が覚めたらそこは

 

(あ、ほてる)

 

ホテルでした。

 

 

いや私も経験豊富ですしそこそこ。
…てかこれ2回目だしな!!!!こないだやったからなこれ!!!!!!!
どーせ隣に寝てんの謙也だろ!ほらな!布団から金髪見えてるわ!
全くあたしもいい加減記憶なくすから飲みすぎんの控えなきゃならんな…
昨日はえぇっと……

 

 

 

 

「んー…起きたッスかぁ、まなみっちぃー…」

 

 

そうそう黄瀬と…

 

 

え?

 

ちょ

 

 

「オハヨーッス…今日も可愛いッスね♡」

 

 

んな

 

な、

 

なんでっ!!?!?黄瀬!!!?!?

 

 

「ちょ!!なんでいんの!何してんのあんた!!何したのあたしと!!!!」
「え?やだなぁ、忘れたんスか?あつぅーい昨夜を…」
「……殺すぞ(真顔)」
「こわっ!そんなマジでキレなくてもイイじゃないっすか!!」
「早くホントのこと言え、やってないよな?やってないだろ?やってないって言え!」
「脅し!?何なんすか!こわい! 」
「やってないって言えば助けてやるよ、じゃなきゃ瞬☆殺」
「えぇぇ!やめてよもー、まなみっちほんとに覚えてないんスか?」
「………」
「…言っとくけど、おねだりしてきたのまなみっちのほうっすから」
「てめぇしにたいのか」
「…ホントっスよ。まなみっち死ぬほど可愛かった」

 

う、う、う、う、ウソだろ(滝汗)
黄瀬はただの同じ会社の同僚で昨日は確かに会社の飲み会あったけど
まさかそんなあたしが黄瀬と!?
いやいや、ありえない、絶対にありえない、ないよね、うん、ないよね?いやないわ!!!

 

(いくら酔ってるからって…)
(けんや以外と…)

 

けんやいがいと、するわけ、ない…

 

(するわけないよ…)

 

「……そんな泣きそうな顔されたら本気で傷つくッスよ」

 

ごめん、からかいすぎた  と、黄瀬が突然抱きしめてきた
ひーっ!!!

 

「離せよ!!!」
「ほんとまなみっちブレないッスね…少しはトキメクとかないわけ?」
「誰がお前相手にときめくかよ!!」
「…ハァ、ウソっすよ」
「え?」
「まなみっち、デロデロに酔ってるからホテル連れ込んだのはいいものの、酔ってるくせに全く触らせてくんないから…」
「あ、当たり前だろ!!!(グッジョブ!!酔ってるあたしグッジョブ!!)」
「まぁ寝てる間におっぱいだけは揉んどいたッスけどね…」
「いや、おっぱいだけでよく踏みとどまった、えらいぞ黄瀬、よくやった」
「褒められた!いや、さすがに寝込み襲うのは犯罪ッスから…」
「ほんと黄瀬の馬鹿なくせに常識人なとこ好きだわー」
「…なら付き合ってよ」
「ソレは無理」
「ですよね!」
「あーもうなんか気持ち悪い」
「まなみっち飲みすぎっすもん」
「飲みすぎなきゃお前とホテルなんて泊まんないわ」
「もー、冷たいっす!」
「あーあ」

 

携帯を手に取る。
(ん?)
めっちゃ来てるラインのメッセージに目をやる。

 

(あ・・・)

 

『まだ終わらん?』
『大丈夫か?』
『迎えいくで?』
『今どこ?』

 

けんやからメッセージだけで何十通、電話も何件もかかってきていた。

 

(そうか、昨日はけんやと会う約束してて)
(でも会社の飲み会入っちゃったから終わったらけんやんち泊まり行くって約束してたんだった・・・)

 

けんや心配してるよなぁ、と思いながら

 

「ここどこ?」
「渋谷のホテルっす」
「渋谷ね」

 

『ごめん、酔って寝ちゃってた・・・本当にごめんね。今渋谷にいるからすぐけんやんち向かうね』

 

そうライン送って 帰り支度を急いで始めた。

 

「え、帰るんすか!?」
「そう、急がなくちゃ」
「まだ6時半っすよ!?せっかく今日土曜日で休みなんだからゆっくりしていこーよ」
「いかねぇよ!ホテル代出すから早く帰るよ」
「えー、ホテル代は別にいいんすけど、待って、俺シャワーしたいっす・・・」
「もー!じゃあ先帰る!」
「まなみっちもシャワー浴びてったほうがいいんじゃないっすか?」
「いーから行くよ!」

 

ブツブツ言う黄瀬を連れて 帰り支度をする。
はーこんなとこ会社の人に見られたら大変だ、どんな噂されるか・・・

 

「黄瀬先に出な!見られたら困るし!」
「大丈夫っすよ、朝の6時半に渋谷うろうろしてる人なんてホストかホステスくらいっすから」
「確かに」

 

じゃあいいか、と 黄瀬と一緒にホテルを後にする

 

「あー、おなかすいた」
「なんか食べていこうよまなみっちー!」
「馬鹿言わないでよ、あたしはもう行くっつー・・・・」

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

なんで?

 

 

ホテルを出ると  そこで

 

 

ばったりと

 

 

「け、けんや・・・・」

 

 

けんやに、 遭遇してしまったのだ。

 

 

 

 

絶句して固まる謙也
動けないあたし
何かを察したのか静かになる黄瀬

 

 

(やばい)
(これは)
(笑えないレベルでやばい)

 

 

「・・・」
「え、なんで、けんやがここに」
「・・・渋谷で飲み会言うてたから、心配で、ずっと 探しとって、」
「うそ・・・」
「・・・酔って寝てたってこーゆーことやったんやな」
「ち、ちがうの!」
「なんも違わないやん・・・結局俺以外にもそーゆー関係のやつおったんやろ?」
「ちがうってば・・・」
「俺だけや言うから・・・信じとったのに・・・・」
「だから、違うの、聞いて、話を、」
「話すことなんて ないわ」
「!」
「・・・もう、終わりや」

 

 

怒ったけんやが 背を向けた

 

 

「ま、待って、けんや・・・!」

 

 

追いかけようとして

 

 

「行かないでまなみっち!」

 

 

黄瀬に抱きしめられた

 

 

「ちょっと・・・離してよ!黄瀬!!離せ!」
「いやだ!!離さないっす!」
「離してよ・・・!お願い、けんやが行っちゃう、早く、誤解といて、」
「お願い、行かないで・・・」
「黄瀬、だめ、たのむから、はなし、て」

 

 

黄瀬に抱きしめられながら けんやの後姿を見つめていた

 

 

自業自得なのはわかってる
いつかはこうなる気もしてた

 

でも けんやの表情を見て 思った。

 

 

彼はもう 本気で会わない気だ。
きっとあたしに失望している。
嫌われたかもしれない。

 

 

(・・・本当にもう終わりになっちゃう)

 

(そんなの、   やだ、)

 

やだ、ごめん、けんや、おねがい

 

 

行かないで

 

 

けんやの背中がどんどんちいさくなって
そしてそれが涙で霞んで 消えていった。

 

 

0