木10 ~VOL.22~

土日ゆっくり休んだら風邪は完治!
次の週は普通に出社した。
木曜日まで白石さんの会社に行く用事もないので
白石さんとはたわいもない会話をラインでやり取りしているものの、特に仁王くんのことについて触れることは無かった。

 

まぁちゃんに話をしたら モテモテじゃんやるぅー とかノーテンキなことしか言われなかった。
まぁちゃんならどちらを選ぶ?と聞いたらどっちも選ばないって。
白石はあんなことしたし、仁王はもうオワコンだって。
それはその通りかも、と少し勉強にはなったけど、やっぱりそんなことで気持ちが割り切れるほど今の私は冷静ではなかった。

 

 

 

さて、水曜日。
明日は白石さんの会社で打ち合わせがあるからきっと彼にも会うんだろうな、そんな気がした。
白石さんに仁王くんのことを聞かれたら全部正直に話そう、そう思っていた。

 

ピコン

 

メールが届いた。

 

(あっ)

 

仁王くんからだ。
仁王くんとも毎日メールのやり取りをしている。風邪引いてたから心配してくれたり、たわいもない会話ばかりだったけど。
仁王くんからのメールに少し胸が高鳴りながらメールを開いた。

 

『おつかれさん。今日も1日がんばったのぉ。えらいえらい。風邪も治ったみたいじゃし、そろそろ俺とデートしてくれんか?今週末の予定はどうじゃ?』

 

(で…)
(デート!!!!)

 

その文字を見るだけで体が カァ と熱くなった。
ど、どうしよう!
ついに!
デートに誘われてしまった!!
あぁぁ、どうしよう、いや、行くけど、断る理由ないから行くけどっっ!!!

 

(えっと、日曜日は舞台見に行くからダメだから)
(土曜日なら…)

 

土曜日なら大丈夫、とメールを送ると
エスコートはまかせんしゃい。楽しみじゃのぉと返ってきた。
楽しみにしてくれてる!

 

(わー)
(仁王くんとデートだっ!!!)
(久々だ!)
(昔は緊張して全然話せなかったからがんばらなくちゃ!!)

 

こうして私は仁王くんと土曜日の予定を取り付けたのだ。

 

そして次の日。
私は打ち合わせで白石さんの会社を訪れた。
打ち合わせは滞りなく終わって、先輩と一緒に帰宅しようとして

 

「あ、まえちゃん!資料忘れたからちょっと取り戻るわ!」
待っててねー!と先輩が走っていったので
ボンヤリと待っていると

 

「さおりちゃん、おつかれさん」

 

と、白石さんが現れた。
あ…なんか久々な気がする。

 

「お疲れ様です」
「風邪、ほんまにもう平気?」
「おかげさまで、完治しました」
「よかったぁ!やっぱり健康第一やな!」
「ホントですね」
「………っと、」
「?」
「あー、ほな、元気なったなら遊びに行かへん?土曜日とか、空いてる?」

 

言われた日に  悪いことしてるわけじゃないのにドキッ!とした

 

(土曜日は…)
(仁王くんと…)

 

「えっと、その日は、ちょっと、」
「あ、そぉか、ほな日曜日は?」
「日曜日…も、用事あって」
「あー、ほなまた連絡するわ!とりあえず、来週どっかで飯食いに行かん?」
「はい、それなら」
「ん、よかったわ…。ほな、また連絡するわ!」

 

白石さんは優しく手を振りながら 自分の職場へ戻って行ったけど

 

(…なんでだろ)
(胸が、痛い…)

 

ズキズキと痛む胸をごまかすため
急いで会社に戻って夢中で仕事に没頭した。

 

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