木10 ~VOL.12~

そして今日は白石さんとなぜかディズニーランドに来ているのだ。
誘われたから仕方ない。
うん。
ディズニーランド好きだし、仕方ない。

 

 

「次何乗る?」
「えーっと、少し買い物したいかな、帰りだと混むし…」
「お、ええな!買い物行こか!」

 

どこもかしこも混んでいるけど
なんとなく白石さんが楽しませてくれるから退屈はしない。
こーゆーの慣れてんだろうな、イケメンだし。モテるだろうし。
話も上手いし気も使えるし。
ほんとあんなことがなければ中身の伴うイケメンホワホワ~と私の中の順位は高いままだったのに。
残念な人だな。
今はキモいって認識だよ。

 

「なぁ、こんなんどお?」

 

浮かれた彼は変な帽子をかぶって見せてくる。

 

「…いいんじゃないですか」
「わー、真顔やめてー、全然ええと思うてないやろ!」
「そうですね」
「ハッキリ言われた!」

 

全然くじける様子のない彼は  これはどうやろ、とかおそろいにせーへん?、とか言いながら次々とアイテムを持ってくる。ウザい…。

 

「あの私買い物集中したいので静かにしてもらえませんか」
「あっ!す、すまん!」

 

(はぁ、やっと静かになった…)

 

そして私は真剣に買い物を続けた。

 

(まぁちゃんにクッキー買っていこうかな…)
(チョコクランチのがいいかなぁ)
(あ、これ美味しそう、これにしよ)
(あとお揃いのストラップ…)
(ストラップたくさんあるんだよなー)
(画面拭けるやつがいーな!)

 

たくさんあるストラップの中から
チップとデールのストラップを発見し、それに手を伸ばした。

 

(うーん、もうちょっと)

 

取ろうとして

 

スッと  綺麗な手が先にそれを取って

 

「コレでええ?」

 

白石さんが、私の欲しかったそれを笑顔で渡してくれた。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

(簡単に届くんだな)
(背が高いっていいな)

 

お菓子やストラップをレジに持って行って
大きな袋に入れてもらったら

 

それを取ろうと手を伸ばして

 

スッ

 

「………」

 

またしても、綺麗な手が私より先に袋を受け取ったのだ。

 

「ん?どないした?早う行こうや?」

 

買い物もう大丈夫?これロッカー入れに行こか、と彼は笑顔で歩き出した。

 

 

(……やっぱり慣れてる)
(当たり前のように優しく出来るなんて)
(ほんとナルシストこわい)
(こりゃ騙される女子たくさんいるわ)

 

 

「白石さんって今まで何人彼女いたんですか?」
「えっ!?いきなりなに!?」
「いや、慣れてるから…20人くらいですか?」
「は!?そんなおるわけないやん!!」
「え、じゃあ18人ですか?」
「全然減ってないやん!なにそれ!」
「いや、どー考えても女性慣れしてますし」
「してへん!そりゃまぁ付き合うたことはあるけど…ほんま全然ないし!慣れてるとしたら姉と妹いるからやわ!」
「え…姉妹に挟まれて…」
「せやねん!みっちりパシられてそりゃ気も利くようなるで!」
「へぇ…」
「信じてへんな!?」
「いや、信じますけど、元カノの話は濁されたなー、と」
「え、や!そこハッキリせなあかんの!?」
「いや別に」
「えー…大しておらんしな…」
「片手で足りますか」
「片手で余るくらいです」
「ふーん」
「そーゆーさおりちゃんは?」
「さおりちゃんって…」
「あっ!いや…と、友達やからええやろ!?あかん!?」
「いーですけど…」
「ほな、さおりちゃんは何人と付き合うたん!?」
「1人ですけど」
「あ、そーなんや…」

 

(片手で余るくらいかー)
(絶対嘘だろ)
(まぁ姉妹いるのは正しいとしても)

 

「ロッカーここでええ?」
「あ、はい、お金…」
「あ、ええで」

 

俺細かいのたくさんあるから使いたかってん、とスムーズにお金を入れるその人を見て

 

(…いややっぱりこれ慣れてるな)
(女慣れし過ぎでこわいわ)

 

そんなことを思いながら

 

「よっしゃ!ほな、パレード始まるから見に行こか!」

 

穴場調べてきてん~と嬉しそうに笑う彼のあとを追った。

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