最近、会社でも流行っていたルームシェア
急な転勤が決まった俺は、札幌では絶対にルームシェアをしようと思っていた
(まさか北海道とは・・・)(知り合い1人もおらんで・・・)
1人でおるのも悪くはなかった
けど、
やっぱり賑やかなほうが俺にはあっとる
たまたま会社の先輩の知り合いがやっていた、ルームシェアが募集できる会社のサイト
うちの会社でもみんな登録しとって、俺も紹介されたから登録した
できれば同性・・・いなければ異性でも思うてたけど、さすがに急な話やったから今は紹介できる人がいないと言われた
けど、数日後、
ちょうどタイミングよく新しい職場に挨拶と、新しい家を決めるために札幌に言っていた俺に連絡が来た
新しいルームシェアの相手が見つかったらしい
女の子と聞いて少し躊躇ったけど、会社の人たちも男女関係なくルームシェアをしている人が多くて、ルームシェアってそんなもんやと思っていた
とりあえず、まずは会ってみようと思い、彼女と待ち合わせの場所に向かう
待ち合わせ場所にいた女性は、
(おとなしそうやな)
そんな第一印象やった
(うん、けど)
(真面目そうや)
(真面目な子がええからな)
「よかったです、無事に会えて、わざわざすみません」
「・・・・・・あ、いえ・・・」
緊張しているのか、少し顔を赤くして答える まえさん
「あの、ホンマにええんですか?」
「・・・え?」
「ルームシェアとか、俺はめっちゃ助かりますけど・・・」
「あ、えっと、はい、私もお相手を探してて、」
「ほな、これから不動産会社にマンション見せてもらう予定なんですけど、一緒にどうですか?」
「・・・え?」
「用事あります?」
「い、いえ・・・」
「ほな、いきましょか」
ぎこちなく、俺の隣を歩く彼女
あれ、
全然ええやん
(ホンマ、真面目そうでめっちゃええやん)
(めっちゃグイグイ来る子やったらどないしようかと思うてたけど、)
(あれ、これええんとちゃう?)
こちらの質問にはきちんと答えてくれて、
けど、余計なことは一切話さない彼女に
なぜだか、好感を抱いている自分がいた
(うん、この子はええ子や)
もう少し仲良くなりたいと思って、家を決めた後に誘った食事の席でも、
彼女はやっぱりしっかりとした、真面目な女性だということがよくわかった
(実家なくなるんや・・・)
(大変やな・・・)
(一人暮らしも大変やし、)
(俺で良かったら守ってあげられるかな)
真面目な彼女のボディーガード
最初はほんまに、それくらいしか考えてなくて、
ルームシェアの相手も決まって喜んでいた俺だった
けど、
一緒に暮らして1ヶ月
そんな”真面目”という印象に加え、
他の部分がどんどん見えてきた彼女
彼女は思うてたよりも、かなりおもろかった
ほんで
かなり手がかかるということがわかった・・・
(こんなん想像してへんかったで!)
――――――――――
コンコン
「さおりちゃん、ちょっとええ?」
「あ、白石くん久しぶり」
「おん、久しぶりやな・・・やなくて、あんな話あんねん」
「あ、はい・・・なんでしょうか・・・」
「ちょおこっち来てくれる?」
部屋でゴロゴロしながらゲームをしていた彼女を呼び出して居間に連れてきた
「これ、どういうこっちゃ?」
キッチンのゴミ箱の中にあるゴミを指さす俺
「えっと、え?ゴミの分別間違えてた?」
「いや、かろうじて合っとるよ、細かいこと言えばペットボトルはキャップの下についてるこの丸いリングも外して分別せなあかんで」
「あ・・・はい、ごめんなさい・・・」
「いや、ええねん、ちゃんとペットボトルのラベル剥がせるようになったんはえらいで」
「はい・・・」
「そうやなくて、なしてこんなにカップラーメンとポテチのゴミあんねん」
「え・・・食べたから・・・」
「アカンやろ!!体に悪いもんばっかりやで!!」
「・・・え、でも、自分のためだけに作るのめんどくさくて・・・」
「いや、食べてもええんやで?ええけど、これ1食や2食の問題やないやろ?毎日食べとったやろ?」
「・・・うん・・・」
「なしてこんなバランスの悪い食事すんねん」
「・・・だって、白石くんもお仕事でいなかったし・・・」
「俺はおらへんかったけど、それでもちゃんと食べてや、体に悪いで」
「・・・」
「さおりちゃん料理でけへんわけやないやろ?」
「・・・まぁ・・・」
「ほな、ちゃんと料理しようや、冷蔵庫のもん俺の買ったのも使ってええねんから」
「・・・」
「あと、洗い物するのはめっちゃえらいけど、ガラスのコップを大きいものの上に乗っけたらあかんよ、割れてまうで」
「・・・」
「せっかく食洗機ついてるんやから、食洗機使ってもええんやからな」
「・・・」
「あー、あと洗濯機見たけど、柔軟剤こぼれとったで、すぐ拭かな固まってとれんくなるで」
「・・・」
「あと、DVDデッキがかなり熱くなっとったけど、いつからつけてたん?見終ったらちゃんと消さなあかんやろ」
「・・・」
「それから・・・・・、」
「・・・」
「・・・さおりちゃん?」
俺がそこまで言った時、
彼女の異変にやっと気づいた
ボロボロボロボロ
彼女の目からは大粒の涙がこぼれていた
(あ!!!!)(しまった!!!!)
(つい昔のくせで!!!)
(部長やってた時のノリで言ってもうた!!!)
(いろいろ家事のこと教えとったし、)(ついつい、いろんなこと教えたろうと思って・・・!)
今度は、その涙を止めるために必死になる俺
「あ、ご、ごめんな言い過ぎたわ!!」
「・・・」
「ほ、ほんまにごめん!!泣かすつもりなかってん!!ごめんな、言い過ぎたわ!」
「・・・」
「すまん!ホンマにすまん!!」
「・・・」
しばらく、謝って謝って謝って、
ようやく、少し落ち着いた彼女が口を開いた
「・・・ごめんなさい、やっぱり出ていきます」
(!?)
「い、いや、そんなこと言わんで!!」
「私、ホント情けないよ・・・こんなに自分が出来ない女なんて・・・」
「い、いやでも、さおりちゃんはいろいろ頑張ってるで!」
「私はダメな女だ・・・」
「そんなことあらへんよ!」
「わ、わたし、ここまで自分が出来ないとは思わなかったし、」
「いや、大丈夫やで、ホンマ、」
「し、白石くんとこのまま暮らしていける自信ないよ・・・」
「え!?俺のことは気にせんといて!!」
「だって、白石くん、私の行動が目に余るんでしょ?」
「目に余るっちゅーわけやなくて、俺はいろいろ教えようと・・・」
「だって、白石くんうちのお母さんみたいだもん」
「お、お母さんて・・・」
「えみこと一緒で口うるさいよ・・・」
「口うるさい・・・」
「白石くん、このまま私と住んでてもイライラするだけだと思うし、」
「いや、おれイライラしてへんで」
「そもそも、ルームシェアってこうやって言い合うものなの?」
「え?」
「もっとお互い干渉しないものじゃないの?」
「まぁ・・・それは・・・」
「確かに気になるとこは言っていいと思うよ」
「お、おん」
「でも、私言われ過ぎだもん、多分ここまで言われる人なかなかいないと思うよ」
「あ、あーそうでもないで、きっと・・・」
「私、すごくだらしがないし、白石くんは几帳面な人だから根本的に合わないと思うんだ・・・」
「いや、それは、」
「・・・だから、私1人で暮らしたほうがいいと思う」
きっと、その方がお互いの為だよ・・・
そう、彼女は言った
(あかん!)(まだ1ヶ月で・・・!)
(すでにルームシェア解消の危機!!)
でも、あかんねん!!
絶対にそれだけはあかん
俺はルームシェアを解消することがでけへん!!
(なぜなら、この子は)
おそらく、
一人で暮らしたら、死んでしまうからや・・・
(食生活もこんなに悪くて・・・)
(外にも一歩も出んくて・・・)
(いや、あかんな)
(この子一人にしたら絶対にあかん!!)
俺はこの子を守らなあかん!!!
「あかん」
「え?」
「俺はさおりちゃんとまだ一緒におりたい」
「けど・・・白石くんと住んでたら、私も心が休まらないというか、ものすごくいろいろなこと気にしてしまって・・・」
「それは悪かったわ・・・これからは俺も気を付けるわ」
「・・・」
「嫌だから直してほしいって思うてたわけやないねん、家事教えてほしいっちゅーてたから、一人で暮らすっちゅーことを教えてたつもりやったんや」
「・・・」
「今まで、俺が言ったこと、誰がやっててくれたんや?」
「・・・お母さん」
「せやろ?お母さんも普通にやっとったことやから、俺にとっても普通のことを教えてあげようと思うてただけやねん」
「・・・」
「せやけど、確かに口うるさくなっとったわ、ホンマすまんな」
「・・・」
「別に気にしてるわけやないねん、それでさおりちゃんのこと嫌になったとかそんなんとちゃうよ」
「・・・うん」
「むしろ俺が普通よりも綺麗好きなんは自覚あるで」
「・・・あるの?」
「あるよ、昔から言われとったしな」
「・・・」
「けど、これが俺やねん、どうしてもきちんとしたいのが俺の性格やねん、これは理解してもらいたい」
「・・・うん、」
「・・・ほな、これからは気になったことは俺が全部やってもええ?」
「え、でも、それじゃあ白石くんに負担がかかるでしょ・・・」
「いや、俺好きでやってんねん、仕事でいないこと多いけどな、気付いたら勝手にやらせてもらうで、ええな?」
「う、うん」
「どうしてもこれだけはっちゅーことだけ教えるようにするわ、それでええ?」
「うん・・・」
「まだ1ヶ月やんか、俺はもう少しさおりちゃんと一緒に暮らしたいと思うてるで」
「・・・」
「せやから、もう少しルームシェアしてくれへんかな?」
「・・・・・・・・・私、だらしないよ」
「おん、ええよ」
「ゴロゴロしてるの大好きだし」
「おん」
「ゴミの分別も上手くできないんだよ」
「おん、俺がするで」
「電気だって忘れてつけっぱなしにするよ」
「気付いたら消すからええよ」
「・・・本当にいいの?」
「ええよ、もう少し、楽しくやろうや」
「・・・うん」
「ほな、今から夕飯作るけど、食べる?」
「・・・うん、食べる」
「おん、ほな待っててな」
「うん」
なんとか無事に彼女を思いとどまらせることが出来た
けど、
(ちょっと言い過ぎたな・・・)
俺も反省やな・・・
1人では死んでしまいそうな、この彼女を
どうしたら彼女を傷つけることなく1人で暮らしていけるようにするかが、今後の俺の課題やと思っていた
(あかん、)(こういうの)
(ものすごく燃えるわ)