引っ越しの日、揃っていた顔ぶれが懐かしかった
ユーシだけでなく、氷帝3人組も俺の引っ越しを手伝ってくれるというから有難い
(ええ奴らやな・・・)
「ユーシも来たんか、わざわざ横浜からすまんな」
「ええねん、あいつの嫌がる顔見に来てん」
そう言ったこいつに心底驚いた
いや、やって、こいつめっちゃフェミニストで、女の子にこんなこと言うやつやなかったんやで!?
「珍しいな!お前が女の子にそんなこと言うなんて…」
「あいつは女やない」
「お前までそれ言うんか!それみんな言ってたで!」
「ホンマに女やないで、っつーか、アホやであいつ」
「お前がそこまで言うとは・・・」
「遊びに来た時一緒に飲んだんやけど、初対面でやで!?キモイって言ってメガネ割られたんやで・・・」
「え!?」
「スペアぎょうさんあるからええけどな・・・ほんで、帰り道にからかっとったら、いきなり叫び出してな、」
「お、おお・・・」
「あれめちゃくちゃ面白かったよな!メガネ割られて怒ったユーシがあいつに足太いとかめちゃくちゃ言いまくってたら、急にあいつ大声で キャーチカン!!って叫んで、近くにいたおまわりにコイツ突き出したんだぜwww」
「えええ!!!??」
「おかげで人生初の事情聴取や・・・」
「いや、からかうお前もどうかと思うで・・・」
「そもそも一緒に飲んだ時、酔ってまなみの肩に手置いたのが悪かったよな」
「黙っとればかわええと思ったんや、ホンマに許せんで、あのアホ・・・」
「結局俺らが酔っ払って間違っただけって説明して帰ってこれたんだよなー」
「そ、そうなんや・・・」
「それからアイツと俺は敵同士やで、謙也も気をつけなあかんで」
「いや、俺はからかったりせぇへんけどな・・・」
「もう亮とジロのやつ行ったから、俺らもここ見たらいこうぜ」
「すまんな、家電見させてもろうて」
「いーや、うちで買ってもらって感謝だぜ!」
「ほな俺先にいっとるわ」
ユーシがそう言ってマンションへ向かった
ホント、向日の電気屋からめっちゃ近いそのマンションは、見た目もキレイなマンションやった
(ええな、商店街近いって)
「んじゃ、とりあえず掃除機とパソコンケーブルと加湿器はあとで運んどくわ」
「おん、よろしく頼むわ」
「あれ、引っ越しのトラックじゃね?」
「あ、ほんまや」
外に出るとちょうど引っ越しのトラックが見えた
俺と向日は急いで部屋に向かう
すると、部屋の玄関の前で、何やら話している氷帝組を見つける
そして、その先には・・・
(え・・・)
ドアのところにいた、一人の女の子
(ええ~~~!?)
こちらを見ているその子は
(どこがアホなん!?)
きっと、ここの家主だ
(め、めっちゃ・・・!!)
あいつらに”かわええ”とは聞いていたけど、
ほんまに
めちゃくちゃかわいかった・・・
(いや、確かに黙ってればかわええとは言うてたけ・・・)(ユーシのメガネを割ったとは思えんくらい可愛い・・・)
そう考えていたら、隣の向日に紹介された
「まなみ、こいつがお前のルームシェアの相手」
「あ、どうも、はじめまして!」
忍足謙也言います!!
そう、大きく挨拶をした
(第一印象が大切やからな)
しかし、彼女は俺を気に留めることはなく、ユーシと言い合いを始めたのだった
(ホンマに仲悪いんやな・・・)
ほんで、
引っ越し業者が来て、引っ越しが始まる
氷帝組も手伝ってくれたおかげで、思ったよりも早く片付けが終わったんやけど・・・
(俺・・・)
(やっぱり早まったかもしれん・・・)
俺は、少し
後悔していた
どうしても、
彼女が
「アホ」に見えないのだ
みんなのためにコロッケをきちんと買ってくるところも、
(ちゃんと買ってきたやん)
ポイントカードを財布から出すところも、
(しっかりしとると思うけど、)
「おかえり」って言ってくれたことも、
(正直、嬉しすぎた)
家にあるもので料理が出来てしまうところも、
(めっちゃ家庭的やん!)
アイスを買ってきた俺に「ありがとう」と見せた笑顔も、
(・・・たまらんかった)
全部、あいつらが言うほど悪くない・・・
というか、
(めっちゃ”女”にしか見えへんけど・・・)
(どこがアホなん!?)
(いや、確かに面白いのはわかる!)
(あいつらが気兼ねなく話せてるのもわかる!)
(・・・わかるけど、)
やっぱり、
彼女は可愛い
(あかんわ、)(最初の印象がちっとも変わらん)
(アホって思えへん・・・)
(どないしよ・・・)
話しのテンポもめっちゃ合うし・・・
話しててホンマに楽しい
(楽しいっちゅーのはめっちゃ合ってたな!)(合っとったけど・・・)
(あかん、このままやと、)
楽しすぎて、彼女に落ちてしまうそうや
酒が入っていたこともあって、思わず「休みの日とかでかけるの誘ったらあかん?」なんて聞いてもうて、
それでも悪い返事をされなかったことに、俺はめっちゃ浮かれてて、
(あー、どないしよ)
(初日でこれやったら俺、)
(ほんまにどないすればええんや・・・)
これからのことなんて、何も考えられずに、
その日は眠りに着くのだった