「まえさん、彼氏おるん?」
片付けも一段落!ベッドも無事に届いて、これで今夜は寝れるな~と思いながら、
白石さんが入れてくれた紅茶を飲んでいたら聞かれた
(そうだ!!)(まぁちゃんとルール決めなきゃって言ってたんだった!!)
(彼女いるか聞かなくちゃ!)
すっかり忘れていた私は、白石さんのその言葉で思い出したのだった(のん気な私!)
「いえ、いません!」
「せやんなぁ、彼氏おったら男と住めへんよな」
「白石さんは!?」
「俺?俺も彼女おらんで」
「あ、ああ、そっか・・・・・・絶対いると思ってました」
「いや、いたら女の子と住めへんやん」
「そう、ですよね・・・」
「おん、とりあえず安心したわ」
「白石さん、彼女出来たら言ってくださいね」
「え?なして?」
「私すぐに出ていきますので・・・!」
「え!?出ていくつもりなん!?」
「え、もちろんですよ、ここの家賃ほとんど白石さんが払ってるんですから私が出ていくほうがいいじゃないですか」
「いや、大丈夫やで!俺、しばらくは彼女とか作らへんし!」
「でも、いい人がいたらわからないじゃないですか」
「・・・いや、ホンマに、女の子はええわ」
女の子に嫌な思い出でもあるのか、ちょっと暗くなった白石さん
とりあえずは、信用したいと思います・・・今のところは
「あの、白石さん、」
「なぁ」
「はい?」
「その”白石さん”って言うのやめへん?」
「え?」
「あと、敬語も」
「え・・・でも・・・」
「いや、同い年やんか」
「ああ・・・」
「まず、敬語やめようや」
「癖なんですよね、敬語・・・」
「そこをなんとか!ずっとこのまま敬語なんて寂しいやんか」
「うーん、まぁそうですね・・・」
「せっかくやし、仲良くしたいやんか」
「・・・うん、じゃあ敬語はなしにするね」
「おん、ほんで、俺のことは好きに呼んでええで」
「えっと・・・友達には何て呼ばれてるの?」
「あーまぁ普通に苗字で白石って呼ぶやつが多いんやけど、仲良いやつは くらのすけ とか くら って呼ぶなぁ」
「あー・・・」
「まえさんは?」
「私はまえさんって大抵呼ばれてます」
「え、そうなん!?」
「まえって苗字が珍しいので、みんなまえさんとかまえちゃんとかって呼んでくれてるかな・・・」
「そうなんか・・・」
「学生の頃の友だちはさおちゃんって呼んでるけど・・・」
「ほな・・・さおりちゃんって呼んでええかな?」
「え!?」
(そんな、名前で!?)(男の人に名前で呼ばれたのって何年ぶり!?)
(いや、生徒さんたちみんなさおりちゃんって呼ぶけど!)(おじいちゃんばっかりだから!!)
「あかん?」
あっさり、私のことを名前で呼べちゃう彼を見て、女慣れしてるんだなーなんて思った
(ってか、よく考えたら、男友達みんな私の友だちのこと名前で呼んでるな)
(私だけだな!?苗字で呼ばれてるの!!)(なんでかな・・・まぁいいや・・・)
「いいよ」
「ほな、さおりちゃんって呼ばせてもらうな!」
「うん・・・」
「俺のことは好きに呼んでや」
「大石」
「え!?」
「やっぱり”くらのすけ”って言うと、大石内蔵助だよね・・・」
「忠臣蔵かい!確かによぉ言われるけど!」
「くらのすけ・・・くらのすけ・・・うーん・・・くらのすけ・・・」
「めっちゃ考えてる!」
「うーん・・・うーん・・・くらら・・・いや・・・くら・・・くら・・・」
「お、頑張れ!」
「くら・・・くら・・・」
「お、でるか!でるか!?」
「白石くん」
「!?」
「私、白石って苗字好きだから、白石くんって呼ぶね」
「え!?あれだけ下の名前で考えようとしとったのに!?」
「うん、くらのすけでいいあだ名考え付かなかったからごめんね」
「いやー、すごいな!すごいななんか!」
「何が?」
「めっちゃおもろいわなんか!」
「そう?」
「おん、おもろいわ!」
「変わってるとはよく言われるけど、おもしろいとは言われたことないよ」
「いや、充分おもろいで!(笑)」
「そうかなぁ・・・」
「おん!めっちゃおもろい!」
「じゃあ、お腹空いたからご飯食べに行こうかな」
「え!?急やな!?(笑)」
「お昼ごはん食べてないんだもん・・・」
「ほな、一緒に行ってもええ?」
「うん、いいよ、何食べたい?」
「何でもええで」
「じゃあ・・・ラーメン」
「ラーメン!ええな!美味いとこ紹介してや!」
「任せといて!ラーメン大好きだから!」
「おお!頼もしいな!」
「じゃあルールはラーメン食べながらだね・・・」
「ルール?」
「一緒に住むにあたってのルールだよ、ラーメン食べながら相談しよう」
「ラーメン食べながら相談するんや(笑)」
「お腹すいたから、食べに行こう」
「おん、わかったで」
白石くんがとってもフランクな人でよかったと心から思った
(敬語じゃないってだけで、)
(仲良くなれた気がするよ)
心配ばっかりの新生活だったけど、ルームシェアも楽しいかもしれないと、
この時のバカな私は浮かれていたのだった