木10 ~VOL.8~

「あー、美味しかったぁー」

 

今日は例のセフレと一緒にご飯を食べた。

 

「むっちゃ食うてたやん」
「そっちこそ!」
「いや、まぁおれは早食いやから…」
「ガツガツあんなに食べるのにこんなに細いとは…」

 

あたしがそいつの横腹を触ると  やめてやー! と体を少し離した。いじりがいのあるやつだ。

 

「んで、このあとどーすんの」
「飲み行く?」
「いや、そーじゃなくて」

 

あたしは裏路地のネオン街を指さした。
それを見て彼は何かを察したのか、あぁ、っと呟いた。

 

「なんだよ、やる気ないのかよ」
「いや、そーゆーわけとちゃうけど…逆にそないやる気満々なのが何でかわからんわ…」
「いや、別にやる気は特にないよ、でも飲みたい気分でもないし今日は帰るわ、むしろ眠い」

 

じゃ!と、帰ろうとした私の腕を彼が掴んだ

 

「ちょ、ちょい、待ってや!」
「なに」
「や…もーちょい一緒におらん?」
「いやだから今日はもう飲む気分じゃないし」
「ほ、ほな、いこか」
「え?」
「ん」

 

今度はやつがキラキラのネオン街を指さして

 

「あー、ご休憩ね」

 

あたしが言うと、  ハッキリ言うのやめて!  と彼は顔を赤くした。変なヤツ。

 

「行くなら行こー。途中で寝ちゃったらごめんww」
「え、なんやそれ」
「いや、そんな感じ今wwwてか安いとこにしよーね、今日あんま手持ちないし」
「あ、ほな…毎回行くのもアレやし、俺んち来る?」

 

その一言で、お金のない私は  ぜひ!と食いついた。

 

 

 

そしてタクシーに乗ってやつの家に来て
きちんと整ったその部屋に腰を落とした。

 

「へー、男の割に部屋綺麗だな」
「そうか?見えへんとことかはゴチャゴチャしとるで」
「ふーん」
「なんか飲む?」
「いや、いい」
「えーやん、1杯くらい」
「えーまぁいいけどさー」

 

そう言うとやつは家にある酒という酒を持ってきた。

 

「おい、1杯じゃないのかよ」
「えーやん、えーやん!のも!」
「いや、今日飲む気分じゃないのさ」

 

お腹いっぱいになったし、もう眠いし…

 

「はー、帰ろっかな…」

 

呟くと、え!?っと言われた。
だからさっきから何なんだお前は…(イラァ)

 

「さっきから何なの飲もうって」
「え、いや、お前と飲むん楽しいし…」
「いや、そーゆー問題じゃなくて、のものもばっか言ってさ」
「あー…」
「結局なんなの!?するの!?しないの!?」
「……する、けど………」
「けど、なに?」
「いやっ…あー…」
「なにさ」
「いや…ちゅーかさ、」

 

こーゆー関係のやつって他にもおるんか?

やつは俯きながらそんなことを言った。

 

(え…)
(なんだそれ…www)

 

「いるわけないじゃんwww」
「え、ほんまに?」
「過去にもいないわwww」
「そ、そうか、」
「何でそんなこと聞いたのさ」
「いや…慣れてるなー、て思うて」
「そんなことないけどな」
「そうか?」
「つーかなにwww処女の女の子みたいなんだけどwww」
「いや、気になっただけやん!」
「ふーん、ま、なんでもいーけどさ」

 

 

あたしはあんただからいいなって思ったんだよね

 

そう告げて

 

 

「じゃ、シャワー浴びてくるよ、タオル貸してね」

 

 

立ち上がった私の手を
彼が思い切り引いて

 

 

「わっ」

 

 

あたしはベッドに倒れ込んだ。

 

 

「ちょっと、なにす…」

 

ぎしっと、音を立てて
彼があたしにおいかぶさって

 

(お、おぉ…)

 

「…シャワーとか、ええから」
「えっ」
「…しよ」

 

そしてキスを落としてくる彼に

 

(…こいつ、急に男になるんだよな…)
(このギャップは…ヤバイ…)

 

そう思いながら目を閉じた。

0