「………(まぁちゃんの言う通りだ)」
白石さんに事情を聞いた私は
すんなりと聞いたこと全てを受け入れていた。
(うそだ、私がそんなこと…!)
(とか、言えるわけない)
(なぜならまぁちゃんの言う通り酔った私はイケメンとショタに対して何をしでかすかわからないからだ)
(正直、白石さんの行動は許せない部分もあるけど私も自業自得な部分があるし…)
そうなると、答えは早い。
「わかりました」
「え、わかったって…」
「では今回のことは私にも非があるとゆうことで、どうか水に流してもらえませんか?」
「な、そ、それは、どーゆう意味で…」
「だから、なかったことにしていただきたいんです」
「そんな…」
私はそれだけ言うとカバンを掴んで立ち上がろうとした
「あ、ちょ、待って!」
白石さんにそれを引き止められたけど
今更もう私の気持ちが変わることは無い。
「なかったことに」したらいいだけ。
そしたらきっとこのモヤモヤも悲しみも全部なくなる。
「すいません、そーゆーことでよろしくおねがいします」
「待って!いやや、俺全部なかったことになんかでけへん!!」
「いやでもそうしてもらわなきゃ困ります」
「え…」
「だって私にも非はあるけど、白石さんの行動も許されるものではありませんよ?」
「それは、ほんまに申し訳ないと思うてるけど…」
「あと忘れてもらわないと今後も仕事で顔を合わすと思うので気まずいじゃないですか」
「いや、そこは気まずくないように俺が、」
「気まずいです、すごい辛くなるのでこれ以上干渉しないでください」
では、全て忘れてください、さよなら
ペコッと頭を下げて部屋を出ようと扉に手をかけた
「好きです」
彼の声が響いて
扉にかけた指が止まった
「まえさん、俺、今はシラフです!聞いてください!」
好きです、大好きです、俺にはあなたしかいないんです、こんな気持ち初めてでほんまにまえさんのことが愛おしいと思います
「…愛してます」
俺と付き合うてください
彼が私にそう 告げた。
「………」
(なぜ、この人はここまで私に固執するのだろうか)
(言ってることは嘘じゃないんだろうけど)
(なんで私?)
からかうにしたってわざわざ私みたいな地味な女に声かける方が時間の無駄だろうし、そもそももう寝たんだから体目当てってこともないだろうし、でも私こんなイケメンに好かれる理由が思い浮かばない…
「………」
動けずにいると、彼はそっと後ろから抱きしめてきた
(!!!!?)
「ほんまに…こんなに好きになったん、はじめてやねん…」
ぞわぁ
(だ、だめだっ)
私この人気持ち悪い…!!
「あ、あのっ」
「おん…」
「離してくださいっ」
「あ、すまん…!」
白石さんがバッと距離を取って
私は体をこわばらせながら白石さんに向き合った
「…申し訳ないけど白石さんと付き合うとか、無理です」
「…せやな、ほんま最低なことしてんもんな、俺…」
「いえ、それは私にも責任がありますのでいちがいには責められないのですが」
「え、ほな…なして?」
「え、いや、そもそも私白石さんのこと好きじゃないですし」
「(がーん!!)そ、そうなんか!好きやない、ならき、きらい、ですか!?」
「いえ、好きとか嫌いとかの問題ではないんです」
「え、ほな、どーゆー問題…で…」
「………気持ち悪くて」
「へ…?」
「なんか…白石さん気持ち悪いんです、あの、前もそうだったけど、抱きしめてくるのとか…あと思い出しただけでぞわっとするんですけどキスマークとか…」
「!! す、すまん!!!!」
「白石さん、女性に優しいからフェミニストかなって思っていたけど…単なるナルシストですよね?自分に酔ってるっていうか…」
「え、いやっ!そんなことは…」
「私お姫様扱いされるの好きだけど、白石さんのナルシストごっこに付き合わされてお姫様にされるのは御免です!」
「………」
「お姫様扱いしてるオレカッコイイとか思ってそうで」
「………」
「あ、ごめんなさい、キツかったですか、私キツイから…すいません」
「や、俺の方こそ…すいません…」
「いえ、では、失礼します」
ペコリと頭を下げてその場から離れようとした。
(言いすぎたかも)
胸がズキズキと痛んだ。
(…悲しそうな顔、してた)
それでも私は扉を開けて
「友達でも、あきませんか!?」
また、彼の言葉で足を止めた。
「…しつこいですね(あぁまたきついこと言ってしまった)」
「そないな風に思われとんのなら、イメージ変えたいし…このまま終わるのは嫌やねん!」
「…私は、出来ることならもうあなたと関わりたくありません。私にも非があるので仕事中は今まで通り接しますので、どうか水に流して全て忘れて下さい」
「いやや!関わりたくないのも、気持ち悪いのも、ナルシストて思われとんのもわかった!けど、それ悪いとこばっかやんか!!」
頼むから、俺のいいところも知って欲しい
そう言った彼の手は少し震えていた。
(………)
きついこと言った自覚あるし
悲しい顔させた自覚もある
私も嫌な思いしたけど、同じことを彼にしてもいいってわけじゃない
(…いいところ、どんなとこかな)
(顔は間違いなく私史上ダントツいいけど)
「……わかりました」
「えっ」
「友達に、なります」
「ほんまに!?」
「でも、それ以上は期待しないでください」
「…おん」
わかったわ、と彼は淋しそうな顔を見せた。
またなんとなくズキンと胸が痛んだ。
「ほな、番号だけ聞いてええ?らいんとかしとる?」
彼と番号交換をして、今度こそっと私は部屋を出る。
「待って、送るわ」
彼がそうついてきて
(あ、そーいえば)
私は振り返って 彼に告げるのだ。
「私、好きな人いますから」
そう告げると
彼は目を見開いて 動くのをやめた。
「………」
「送らなくて結構ですよ、さよなら」
彼はその場からしばらく動けずにいて
私はズキズキと痛む胸をごまかすように早足で家に向かった。