「おーい、この本どこに置くんだ?」
「それこっち置いてくれや」
「すごい難しい本ばっかり~」
「うわー全然わかんねぇ、すげーな医者って」
ピクッ
≪医者≫
という素敵な響きの単語が出てきて、思わず部屋の中を覗く
マジで!?
あいつチャラく見えるけど、あれで医者なの!?
(それすげーおいしいw)
(医者なら家賃全部払ってくれよwww)
ジーッと部屋の外から覗いていると、
「おい、お前買い出しいってこいよ」
とガクトに言われた
「なぜ」
「暇なのお前くらいだろ」
「だが断る」
「断るな、行け」
「あ、俺岡田さんちのコロッケ食べたE~」
「お、いいな、あそこのコロッケ美味いよな」
「へぇ、そんなにうまいコロッケなんか」
「前に食ったことあるけど、絶品やったで」
「じゃあ、お前コロッケ買ってこいよ」
「絶対行かない」
「・・・しゃーねーな、ほらこれ」
そう言って、亮が財布から1000円札を出した
「それで買ってこいよ」
「亮太っ腹じゃねーか!あざーっす!」
「え~っと一個60円だから~え~っと・・・何個買えんの?」
「16個くらいやな」
「さすが医者!計算早い!」
「医者関係ないやろ、算数やで」
「・・・で、どうしても行けってか」
「釣りはやるから行ってこいよ」
「ったく、しょうがないなー」
家を出る気もなかったけど、まぁしゃーない
珍しく真面目に働いている3バカの頼みだし・・・
お金ももらったし・・・
(1人1個にして残りのおつりもらうかなw)
(・・・だめだ、ずげー怒られるの目に見えてる・・・)
商店街の精肉店に向かう
確かにここのコロッケは絶品
コロッケだけじゃなく、メンチカツも、肉団子も、焼き鳥も、なんかいろいろ美味しいんだよなぁ・・・
コロッケを買って、
(あ、そうだ)
(ついでに夕飯の買い物していこう・・・)
いろいろ買い物をして帰った
「ただいまー」
「おせーよ!」
「何してたんだよ!」
「うるさいなー、買い物してたんだよー」
「コロッケだけ買ってこいよ!」
「冷めるだろうが!」
「買い物もでけへんのか子豚は」
「うるせー!もうお前ら食うな!」
「食うに決まってんだろ!」
「あらかた片付けたしな」
「じゃ、お疲れってことでお疲れさん会しようぜ」
「謙也のいらっしゃいませ会もね~」
そう言いながら、
ダイニングへとぞろぞろとやってきた
(・・・・・・・・)(この人数だとうち狭いな・・・)
そんなことを考えていると、
「まなみビール」
とジロが言い出した・・・
「は!?ねーわ!」
「じゃあ買ってこいよ」
「今買い物行って来ただろ!!!」
「ビール飲みたい~」
「ビール飲みてぇな」
「ビールないわーーー!!アホかーーー!!」
「いや、これは仕方ない・・・」
「あ、ほな俺買ってくるわ」
そういって立ち上がったメガネのイトコ
「手伝ってもらったし、俺買ってくるから待っててや」
「マジー?悪いね~」
「いや、ジローお前全然悪いと思ってねぇだろ」
「場所わかるんか?」
「小さいスーパーあったやろ、あっこで売っとるやろ?」
「あ!じゃあ!」
アタシは財布から、それを出すと、急いでイトコに渡した
「これ!ポイントカードだから、ポイント入れてきて!」
「おん、わかったで」
「ポイントカード渡すかぁ!?」
「そこまでポイント貯めたいんか」
「だって!もう少しでポイント貯まるんだもん!」
「謙也の金で買い物するんだろ!」
「かまへんよ、ほな行ってくるわ!」
そうして、イトコは颯爽と去っていった・・・
(早いな・・・)
「じゃあ、まなみつまみ作って~」
「コロッケあんじゃん」
「コロッケ冷めてるし、他のものも食べたい」
「何それ!」
「いいからあるもんで何か作れよ」
「食わせろ~」
「あー、もううっさいな!食べたら帰ってよ!」
「わーい、やったー」
「俺、から揚げ」
「注文すんな!」
そうして、仕方がないからキッチンに立つ私・・・
ホント、アタシなにしてんだ・・・
ってか、こいつらなんでこんなくつろいでんだよ・・・
「いやー、前はまなみの友だちいたから遊びに来れなかったけど、これからはガンガン来れるね~」
「謙也だったら遠慮しねーでいいしな」
「気兼ねなく来れるよな」
な、なんだと・・・!?
(やばい・・・!)(イトコと暮らし始めるという事は、)(こいつらのたまり場になるということだ!!)
(´゚ェ゚)チーン
もう、これ、悲しすぎる・・・
(3バカに話聞いてもらうのは楽しいけど・・・!)
(たまり場になったら安らぐ時間がないじゃないか・・・)
こいつら、ほんと・・・
そんなことを考えているうちに、
ピンポーン
とインターホンが鳴った
「あ、謙也じゃね?」
「鍵渡してなかったよな、そういえば」
「あ、そうだね、鍵渡してなかった」
アタシは料理の手を止めて、玄関に向かった
ガチャリ
「おかえり」
アタシがそう言って扉をあけると、
扉の向こうでは
「・・・」
イトコが固まってこっちを見ていた
「? 入って?」
「あ、ああ、すまん!」
心なしか顔が赤いこの男を家に招き入れ、家の扉を閉じた
「家の鍵渡すわ」
「・・・おん」
「オートロックだから鍵なくしたら入れないからね」
「おん、わかった」
「うん」
「ん!?なんやええ匂いするな!」
「あー今つまみ作ってるから」
「マジか!俺も少し買うてきたけど・・・」
「出したらあいつら喜ぶよ、何でも食べるから」
「おん」
「適当に座って飲みな」
「おん、・・・・・・・あんさ、」
「ん?」
「甘いもの好き?」
そう言って、袋の中から・・・
ガサゴソ
「これ、食うかな思うて買うてきたんやけど・・・」
取り出したのは・・・
「あ!やわもち!」
「おん、アイス好き?アイス食う?」
「これ、めちゃくちゃ好き!」
「お、ほんまか」
「ありがと!!」
アタシがそのアイスを受け取ると、
「・・・おん」
イトコも笑った
(うわっ)
(笑うとめちゃくちゃ)
(いい男・・・)
これから一緒に暮らすこの男は、どうやらめちゃくちゃいい奴っぽいので、アタシも安心したんだけど・・・
(やばいな)(こいつ、)(めっちゃ優しいわ・・・)
まだ出会ってから数時間なのに、その優しさが身に染みてしまった
(普段ろくでもない奴ばっかりだからな!)