涙が、止まらなかった。
電車に乗って帰るとき みんなにジロジロ見られた。
我慢しようとしたけどぽろぽろと涙が溢れた。
まぁちゃんも心配してるだろうし、急いで家に帰ると 家には誰もいなかった。
慌てて携帯を見ても まぁちゃんから連絡はない。
(まぁちゃんも昨日飲み会って言ってたから そのままどこかで寝てるのかな・・・)
(まぁちゃんはたまに朝帰りするけど…私は初めてだったよ)
(なぜこんなこと・・・)
(いや、記憶もないし・・・白石さんだけを責めることはできないんだけど)
でも、怖かった。
デザイン関係の会社に勤める私が担当してるのがたまたま白石さんの会社だった。
ホームページだけではなく、社内ネットワーク、チラシやDM、ポスター、ハガキ、封筒…
他にも色々、会社のデザイン関係は全て担当していて
新しいもの好きのこの会社では毎週何かしらの業務を頼まれ、打ち合わせをしに同じチームのメンバーと訪れていた。
少なくても週1、多くて週5。
業務内容にもよるけど、数年間これだけ通っていれば私たちはここの会社では「部外者」ってゆーより、もう身内みたいなものでよくしてくれる人もたくさんいた。
何より、特別に与えられた特権
ちまたでも有名のこの会社の社員食堂で食事をすることを許されているのだ。
とてもおいしいここの社食を食べるのが楽しみで、本当にこの会社の担当になれてよかった、と感じていた。
白石さんは、もう一つ。
社食の他にこの会社に来るのが楽しみな理由だった。
社内会報のためにインタビューしたのがきっかけで知り合い、たまに会うと気さくに話をしてくれていた。
って言っても、私は話すのはあまり得意じゃないし、同じチームの先輩めっちゃコミュ力高いからほとんど話すの先輩だけどね。
私はイケメン緊張するから見てるだけで幸せだし別にそれでよかったんだ。
たまに気さくに話しかけてくれて本当に白石さんいい人だなって思っていた。
そんなある日、
先輩が白石くんたちと飲みに行くからまえちゃんも来てねー
なんて言うものだから、特に断る理由もないし行くことにしたんだ。
白石さんすごいいい人だとかみんなが言うから
中身の伴ったイケメン…
それはつまり私の好きなミュキャスたちのような…
なんとゆーか、アイドル的な感じで彼を見ていたので
その日は密かに楽しみにしていたのだけど。
結果、これだ。
やはりね、イケメンなんてみんな女慣れしてんだよ。
酔ってお持ち帰りとかほんと最悪だからね…
私みたいな地味な女は狙いやすかったんだろ…
くそ・・・
自分も許せない!!なにやってんのわたし!ばか!
白石さんはもっと許せないけど・・・!!
(お酒に酔った女の子お持ち帰りするとか!)
(最低すぎてほんと気持ち悪いわ!!)
(・・・ミュキャスたちも遊んでるのかな・・・)
(イケメンだもんな・・・遊ぶよな・・・)
(悲しいわ・・・)
情けないやら切ないやら 初めての経験にものすごく罪悪感を感じて
ソファにうずくまってしばらく泣いていた。
(・・・まぁちゃんに、引かれるだろうか)
(どうしよう・・・こんなこと 言えないよ)
ガチャ
まぁちゃんが 帰ってきた
(やばい・・・)
慌てて目をごしごしこすった。
「ただいまー・・・あー連絡しないで外泊してごめん、よ、・・・・」
「お、おかえり」
「こらきみ、なに泣いてるの」
「え!いや、泣いてないよ!」
「てかきみ、昨日と同じ服じゃん」
「あ、」
「・・・朝帰りしたの?」
「や・・・」
「そもそもきみから 全く連絡来てないから心配してたんだけど」
「うん・・・」
「何があったのさ!!」
「う、うわぁーーーん!!どうしようーーー!!」
私は泣きながら まぁちゃんに事情を説明した。
――――――――――――
「とりあえず白石は死刑だね」
「う、うん・・・」
「やっぱね、お互い記憶ないなら仕方ないけど、きみが酔ってて向こうはわかってたら確信犯だわ。それマジくそだわ」
「だよね・・・」
「そうだよ、お互い記憶なかったら仕方ないけど」
「うん、そこ協調するね・・・」
「いやだってきみの場合仕方なくないしょ、それある意味強姦だからね、レイプだよレイプ」
「うん・・・いやでもさすがに、私も記憶が全くないからどーゆう流れでそうなったのかよくわからないから100%向こうのせいにはできないんだけど・・・」
「いやきみ酔ってるんだから向こう100%悪いしょ」
「そうか・・・」
「そうだよ、大体ね、記憶ないとかあるとか以前にお酒を飲んでそのあとに見知らぬ女の子とやるとか最低だよ」
「まぁね、それはそうだよね」
「飲んだら乗るな、性的な意味で」
「なんだよそれ・・・」
「ほんとな・・・酔って知らない女の子とな・・・くそだよな」
「いや、知らなくはないよ、知ってる人だから余計いやなのさ」
「あ、そうか!それを思えば見知らぬ人だとむしろラッキーだね・・・」
「さっきからきみは何の話をしているの?てゆーかきみは朝までどこで何をしてたの?」
「・・・花壇で寝てたよ」
「いやうそだ、もう寒いもん、死ぬしょ花壇で寝てたら」
「だよね」
「てかきみすっぴんで帰ってきたし、どこで化粧落としたのさ・・・」
「あ、うん・・・実はおらも・・・朝チュンしてきた・・・」
「は!?マジで!?なにそれ!誰と!?昨日の合コン相手!?」
「いや昨日の合コンはカスしかいなかったんだけど、どーやら2次会の後にひとりでダーツバーに行ったらしく」
「え・・・」
「そこで出会った男と・・・」
「うそでしょ・・・よく見知らぬ男と・・・」
「いやいや!!!知ってる男とするほうが終わってるからwww」
「・・・だよね(ずーん)」
「来週から向こうの会社行くの気まずくない?きみ向こうの会社いくの楽しみにしてたのにね」
「うん・・・」
「社食と白石さんっていつも言ってたのに・・・」
「うん・・・」
「でもよくよく考えたら白石、しんたとかひでとしよりめっちゃタイプのイケメンとか言ってたしよかったしょwww」
「いや言ってたけどさ!!」
「イケメンとできたらいいしょw」
「なんもよくないよ!!イケメンなんて軽くて女ならだれでもいいんだ・・・」
「まぁでもさ、話聞くとさ、付き合ったとか言ってたんでしょ?」
「うん・・・」
「きみイケメン過ぎて酔って告白でもしたんじゃないのwww」
「え!」
「いやきみのことだからイケメンでかっこいいとか連発して好きとか言ったんじゃないのかなってwww」
「あー・・・」
「酔ってるきみなにしでかすかわからんしw白石のあほはそれで浮かれちゃったんじゃないの?でもそれなんか童貞っぽいなwww」
「いや白石さんが酔って浮かれたかはわからないけど・・・確かに酔ってたらかっこいいとか好きとか言ってたかもしれないね・・・」
「でしょwww」
「でも!!!酔ってエッチするとか絶対よくないと思う!!!!」
「それはまぁ同感だけどwww」
「とりあえず、怖いけど月曜日会社行ったら先輩とか同僚になにがあったか聞いてみるよ・・・」
「そうしな!とりあえず周りに聞くべきだわ!」
「うんそうするよ、少し気持ちが晴れたよ」
「よかったよ」
「やっぱりきみに相談するのはいいね、てかきみはそしてその男の人とどうなったの?」
「どうもこうもないしょwww見知らぬ男と寝たというだけだよwww」
「割り切ってるね」
「見知らぬ男だからね!連絡先も名前も知らないよwww」
「マジで・・・じゃあもう二度と会わないんだね・・・いいな・・・」
「そうだね!見知らぬ男でよかったよ!イケメンだったしラッキーだわ!きみ可哀想だわ知り合いでwww」
「うん最悪だよ・・・」
まぁちゃんは 眠いから寝るわー と部屋に行ってしまった。
私も・・・少し話したら気が楽になったから眠くなってきた。
シャワーを浴びて 寝ることにしよう。
私は お風呂場に向かった。
そして 鏡を見て 絶句するのだ
「・・・なにこれ、きもちわる・・・・・・」
体中につけられたキスマーク。
まるで 自分のものだと主張しているかのような そのマークに
私は 嫌悪感を隠しきれなかった・・・。
(・・・きもちわるい)
(あのひとイケメンだけど)
(最悪・・・)