あの合宿以来、知り合いが増えてよく話しかけられるようになった。
ほんとオリエンテーション合宿大事!
「あ、前さん、おはよう」
「おはよう!」
今のは水泳部の橘くん!
背高くて優しくて素敵だからすぐ覚えたよ!
まぁちゃん好きそうだと思うわ。今いないけど。
まぁちゃんと言えば合宿以来少しは友達できたみたい。良かったね。
本来まぁちゃんのがコミュ力は高いはずだから来月にはまた友達増えてそうだ。
まぁなんだかんだ我々は楽しい高校生活を送れそうだよ!
「まえさん、おはよーさん!」
「あ、白石くん、おはよう!」
(白石くん、朝からカッコイイなぁ…)
(ホクホク)
「白石くん、朝練?」
「せやで!あ、臭う!?汗臭ない!?」
(白石くんのこーゆーとこいいなぁ)
(気さくというか…)
(カッコイイくせに気取らないとゆうか…)
(話しやすくていい人だなぁ…)
「大丈夫だよ」
「そか!よかったわ!」
「むしろいい匂いするよ」
「えっ!?い、にお、え!?」
「洗剤…?いや、シャンプーなのかな…」
いつもとっても爽やかな香りがするよ(イケメンってなぜかみんな臭くないからサイコー)
と、見上げた私に
彼は
「や、」
フッと笑って
「…まえさんのが、ええ匂いやで」
シャンプーの香り、すごく、好きや
と、言った。
(………)
(………え?)
(ちょっと…)
(なにそれ、)
「………」
「…って!ちょ!ま、まえさん!そんな目で見んといて!てか引かんとって!」
「…シャンプーの香りって……」
「いやすまん!ごめんなさい!ちゃうねん、ちゃ、ちゃうねん!いや、ちゃうねん!違わないけどちゃうねん!!」
「うん、いや…うん…白石くんってイケメンなのに変態っぽいよね…」
「や、へ、へんたっ!?いや、変態とちゃいますよ!?」
「うん、わかったよ」
「わかってへん!全然わかってへん、その顔は!」
「わかったから大丈夫(真顔)」
「わかってへんやん、絶対!もー…」
「いや、私、臭いし…」
「へ!?臭ないで!?いや、俺の話聞いてた!?」
「いや、臭いからさ、あまり匂い嗅がないでもらえると助かる…」
「!? そ、そんな、臭ないし!おれかて四六時中嗅いでる変態ってわけではないし!!」
「うん、もーいいから(真顔)」
「ようないわ~!ちょ、まえさん、誤解やわ~!!」
(………ビックリした)
(いや、ほんとに)
(フッて笑った顔が)
(あんなに カッコイイだなんて…)
(ヤバかった)
(にやけそうになった)
(真顔作るのに必至だ私)
白石くんって気さくにガンガン絡んでくるからだいぶ慣れたけど、やっぱり
すごく
すごーーーーく
カッコイイなぁ…
めちゃくちゃタイプだわ…
仁王くんと…どっちが上かな…
うーん、でも仁王くん緊張しちゃうから…白石くんのが話しやすくて…いや、顔だけなら仁王くん…うーむ、白石くんの笑った顔好きだし…あー、でも、仁王くんの笑った顔…緊張し過ぎて覚えてないからフェアじゃない…
真顔でそんなことを考えていた。
だってほんとに今のはかっこよかったわ白石くん。たまに不意打ちでものすごくカッコイイからやめてほしいわ。にやけるから。毎日マスクしてこようかな。
その時
「…さおり」
声をかけられて振り向いた。
「あ、」
「これ、忘れてるよ」
穏やかな笑顔で立っていたのは
「国広…」
堀川の国広だった。
さすが国広、学校では主って呼ばないところが出来る男だね…
「あれ、忘れてた?」
「今日このプリント提出するって言ってたでしょ?」
「うん、ありがとう、助かったよ」
「ほんとさおりは小さい時からどこか抜けてるんだから」
「うん、どーもね」
「夕飯唐揚げらしいから、唐揚げ1個でいーよ( 笑 )」
「え、あ、うん」
「ははは、嘘だよ。じゃ、僕は行くね」
そう、国広は隣の白石くんに会釈し、
白石くんも慌てて会釈し、
そして2年の教室に戻っていった。
「…お兄さん?」
白石くんがなぜだか少し気まずそうに聞いてきた。
「あ、今の?」
「校章の色、2年のやったから…」
「うん、2年生。でも、お兄ちゃんじゃないよ?」
「えっ!?」
「え?なんで?」
「やっ、俺の勘違いやったらごめんやけど、一緒に暮らしてるっぽかったし…」
「うん、暮らしてるよ」
「えっ!!?そ、それって、どーゆう…」
「ん?あぁ、えーっとね、うちで働いてるの、小さい時から」
「働いてる!?小さい時から!?」
「や、なんて説明したらいーのかな…えっと、執事…?いや、ボディガード…?」
「えぇ!?まえさんちってお金持ちなんやな!?」
「そーでもないけど、ちょっと昔から少し変わってる古い家で…」
「はぁ…歴史ある家なんやなぁ、すごいわぁ」
「そーでもないよ」
「…まぁ、執事なら、大丈夫やんな…」
「ん?何か言った?」
「いやっ!なんでも!」
そして白石くんは
早よ教室いそご、と笑顔を見せるのだ。
うん、やはり彼は今日もかっこいい。