ep.041 -another Kenya-

コンコン

 

 

 

「はい?」

 

 

 

ガラガラ

 

 

 

扉が開くと、そこには三浦が立っていた

 

 

 

「忍足、ちょっといい?」

「・・・おう」

 

三浦はドアをそっとしめて、俺の目の前までやってきた

 

そして、

 

 

 

「・・・忍足、ごめん」

 

 

 

そう、俺に謝った

 

 

(こいつ・・・)

(ちゃうやろ・・・)

(俺やないやろ・・・!)

 

 

「・・・いや、謝るの俺ちゃうやろ」

「うん・・・わかってる、彼女にも謝りたいと思ってる」

「ほな、ここでこうしてる場合やないやろ、早く謝らんと」

「うん、けど俺、本当に最低だったから・・・彼女に謝るのはもう少し時間が欲しいんだ・・・正直、彼女に会うのはまだ怖い」

「・・・さよか」

「・・・俺、あの時、忍足とすれ違って・・・忍足が走って行ったのが見えて・・・」

「・・・」

「俺は彼女を守ろうともせずに逃げたのが、恥ずかしくて、情けなくて、自分が嫌になったよ・・・」

「・・・」

「ほんと、何が医者だよって自分でも思った」

「・・・」

「・・・ものすごく後悔してるよ、今となっては・・・」

 

 

 

(・・・確かにこいつは許せんと思った)(けど、あの状況で逃げたことは、)

(一概に責められへんよな・・・)

 

もし、こいつがあそこにいたら、こいつが刺されてたんかもしれへんからな・・・

 

 

 

「・・・まぁ、怖いっちゅー気持ちはわからんでもないわ」

「・・・おしたり、」

「俺も、きっとあいつやなかったら・・・あ、」

「・・・」

「あ、いや、今のは・・・!」

「・・・わかってるよ、きみも彼女のことが好きなんだろ?」

「え!?」

「わかってたんだ本当は最初から、キャンプの時も彼女をとられたくないからって彼女の友だちを呼んで来たりして・・・ホント、俺って最低な奴だよな」

「・・・」

「けど、俺、もうやめたよ」

「・・・え、やめたってなにを?」

「もう、逃げるのはやめた」

「・・・」

「こんな俺でも、出来ることがあると思うから、もう逃げないで生きていくって決めたよ・・・」

「・・・おん、」

 

 

 

こいつは頭はいい、物腰も柔らかい

きっと、努力すればきっといい医者になれるんだろうと思った

 

 

 

「彼女のことももう諦めたから安心してくれよ」

「え!?」

「・・・やっぱり、きみたちお似合いだよ」

「い、いやぁ、そういうあれやないけどな、まだ」

「だって、好きなんだろ?彼女のこと」

「・・・・・・おん」

「うん・・・きっと彼女にもきみが必要なんだろうな」

「・・・」

「けど、さ、」

「おん」

「俺にも譲れないものがあるんだ」

「え?」

 

 

 

俺が何の話だろうと首をかしげる

あいつのこと以外に譲れないもの・・・なんて・・・

 

 

 

 

 

あ!

 

 

 

 

 

「あの子か・・・」

「そう、あの子だよ・・・」

 

 

 

 

 

 

俺らのイグアナの子ども。

イグアナが俺の子どものようにかわええから、孫みたいでめっちゃかわええ!!

 

 

 

 

 

「やっぱり可愛いし、うちの子もすごい面倒見てるから・・・」

「ああ・・・」

「うちだと家族も面倒見てくれてるし、」

「・・・」

「あの子、このままうちに置いといちゃだめかな・・・」

 

 

 

 

(あー俺は全然面倒見れへんしな・・・)(この場合しゃーないけどな・・・)

(めっちゃ悲しいけどな・・・!!!!)

 

 

 

 

「・・・お前の好きにせぇよ」

「・・・こればかりは俺も譲れないから」

「ああ、せやな」

「本当に忍足には悪いと思ってるけど、」

「・・・ああ」

「あの子は俺がもらうよ」

「・・・勝手にせぇ言うとるやろ」

 

 

 

俺にはもう関係ないことや、今更どうこうするつもりもあらへん

 

 

 

 

俺は寂しさを紛らわせるかのようにそう言った

 

 

 

 

「・・・せやから、また今度会いに行ってええかな?あの子に・・・」

「うん、ぜひ来てよ!もうけっこう大きくなったんだよ!」

「ほんまかぁ!めっちゃ楽しみやわぁ!!」

「うん、待ってるよ」

「おん」

「・・・・・・・じゃあそろそろ俺はいくよ」

「ん?ああ、」

「まえさんそろそろ来るんだろ?」

「せやな」

「今度、悪いけどきちんと彼女への謝罪の言葉がまとまったら、会うのセッティングしてくれるかい?」

「おん、ええで」

「はは、頼むよ」

 

 

 

それじゃあお大事に、何か不便があったら何でも言ってね

 

 

 

そう言って、三浦は部屋から出て行った

 

 

 

 

 

 

(そっかぁ・・・)(あいつも後悔しとるんやなぁ・・・)

(せやんなぁ・・・)

 

 

 

そんなことを考えながらフッと時計に目をやる

 

 

 

 

 

(・・・あれ?)(あいつ、今日遅いなぁ)

(いつもならとっくに来とる時間やのに・・・)

 

 

 

何かあったんやろうか・・・

 

 

 

 

ソワソワソワソワソワ

 

 

 

 

(あ!)(けど、)

(毎日別に約束してるわけちゃうしな!!)

(あいつやって、忙しいよな・・・)

 

 

 

 

ソワソワソワソワソワ

 

 

 

 

(れ、連絡してみよっかなー・・・)

(ああ、けどちょっと来ないくらいでメールするなんて・・・)

(ちょお女々しいというか、なんといか・・・)

 

 

 

 

 

ソワソワソワソワソワ

 

 

 

 

 

(きょ、今日来るよなぁ??)(来ないっちゅーことは・・・)

(いや、アイツかて用事あんのはわかるけど・・・)

(けど、昨日なんにも言うてなかったし・・・)

 

 

 

 

 

ソワソワソワソワソワ

 

 

 

 

 

(なんかあったんかな・・・)(い、いや、どうなんやろ・・・)

(あーけどなぁ)

 

 

 

 

 

ソワソワソワソワソワ

 

 

 

 

 

そうして、結局おれが

彼女にメールできたのはそれから5時間後で・・・

 

 

 

 

メールの内容も”今日は来んの?”というぶっきらぼうなものになってしもうた・・・

 

 

 

 

(あああ!)(よお考えたらもっと他にあったのに・・・!)(アホやおれは・・・!)

 

 

 

 

 

けど、あいつが来てくれて、

顔を見れたことにホッとしたおれは

それだけでめっちゃ浮かれてもうて、

 

 

あいつが元気がないことなんて、全く気付いていなかったんや

 

 

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