「すごい・・・」
あまりの光景に眼が奪われた。
地下に広がる地下帝国の遺跡・・・
地下なのに夜空に星が浮かぶようにキラキラと明るく光っている。
「あれは・・・ヒカリゴケやな。暗くて湿気の多い場所に生えるやつや」
「すごい綺麗・・・」
「ほんまに綺麗やな・・・」
「あ、ぼんやりしてないで早くアイテム持って帰らないと」
「せやな、探してはよ戻ろか」
なんか嫌な予感すんねん、と彼は呟いたけどそれ以上は何も言わなかった。
「help、新しいアイテムの場所わかる?」
『はい、この先の城の中にあります』
「あそこに見えるお城の中か・・・」
「分かりやすくてええやん、行ってみよか」
私たちは遺跡の街を通ってお城を目指した。
「昔はほんとにここに人が住んでたんだね・・・」
「こんだけ家があるなら賑わってたやろな」
「面白いねぇ、まぁちゃんとか宝探しするって言いそう」
「あー、宝ありそうやな!てかアイテムがそもそもお宝やもんな」
「そうだよね!他にも色々ありそうだし今度まぁちゃんも連れてきたいな!」
「せやなぁ。あ、これ珍しい毒草や」
「毒草?」
「光が当たらんと育たへんのに・・・ヒカリゴケの力か?それともすごく土の栄養が強いんかな?」
「綺麗な花だねぇ・・・見たことない花だよ」
「あぁこっちの世界でしか見たことないからオリジナルとちゃうかな?ゲーム始めたばっかの頃に博物館に行ったことあって・・・」
「え!?このゲームの中に博物館があるの!?」
「せやねん!モンスターの化石とか生物の標本とか色々あるけど、博物館の中に植物園もあってこの世界にしかない植物たくさん見れんねん」
「そーなの!?知らなかった!!行ってみたい!!」
「あ、そーいうん好きなん?」
「うん、博物館大好き!化石も好きだけど植物園も大好きで現実の世界ではよく行ってるんだよ」
「え!ほんまに!?俺も好きやねん植物園!」
「わー同じだね!(やっぱり白石くんアバターなのかな?こんなイケメンが植物園行くわけないよね)」
「俺らの歳くらいで植物園好きな子初めて会うたわ・・・」
「確かになかなかいないよね・・・まぁちゃん博物館は行ってくれるけど植物園は行かないからいつも1人で行ってるよ」
「え・・・ひとり・・・?」
「うん1人で・・・植物園来てる人って年配の方とか穏やかな方が多いし静かでいいよね」
「わかる・・・薬用植物園行ったことある?」
「あるよ、無料で入れるし毒草って綺麗な花咲かせるよね」
「ま、マジか・・・!せやねん、ほんまに!毒草綺麗よな!!まさかわかってくれる子がおるなんて・・・」
「東京にも植物園多いけど関西にもたくさんあるよね!私あそこ行ってみたいんだ・・・淡路夢舞台温室」
「あーーーーーーめっちゃ綺麗なとこ!!俺も行ったことないから行きたいねん・・・!!あー、あーーーっと・・・あの・・・せやったらさ、この世界から戻れたら・・・一緒に行かへん?」
「え?」
「あ、いやまずは東京の植物園からでも!」
「えっと・・・」
「お、俺、東京行くし、よかったら!」
「白石くん東京よく来るの?」
「いや、あんま行かへんけど・・・」
「え、大丈夫なの?」
「全然平気やで!むしろ行きたいし!!朝早く新幹線乗って向かって夜帰ればええし!」
「親御さんに怒られない?心配させちゃうんじゃない?」
「いや親は別に・・・ちゅーか、今のさおりちゃんのほうが心配かけまくってると思うで・・・」
「ほんとそれ・・・ここの世界も楽しいけど遊びに来るくらいでいいよね・・・さすがに帰りたいよ」
「・・・大丈夫や、必ず俺が守るし・・・跡部君たちもがんばってくれてるしな」
「うん・・・」
「絶対帰ろうな!」
「うん・・・そしたら植物園行こうね」
「え!!!・・・ええの?」
「うん」
「よ、よかったぁ~・・・返事なかなかもらえへんからあかんかと思った!」
「あ、でもまず」
「まず!?」
「まずは・・・この世界の博物館も一緒に行きたいな」
「!! も、もちろん!!」
「すごく楽しみ」
「ほんまやな!遺跡のアイテム手に入れたらすぐにでも・・・」
「ふふ、まだ気が早いね」
「そ、そうやろか」
「うん・・・・・・ん?」
その時だった。
小さくだけど 遠くから何か ブーーー と機械音のようなものが聞こえた。
「・・・何の音だろう」
「・・・なんやろ?とりあえず建物の中に入って様子見よか」
私と白石くんは近くの廃墟へ入って、窓からそっと様子を伺った。
「機械かな・・・?」
「いやこれ機械音やなさそうやな」
「だんだん大きくなるよ?」
「・・・ちょっとまずいかもしれん」
ブーーーーーーーン
音が大きくなって
音の方を 見ると
!!!!!
そこには 空を飛ぶ大きな蜂の姿が・・・
(ウソ・・・!)
(めちゃくちゃ大きい!!)
(私より大きいかもしれない・・・!)
(何これ、モンスター!?)
(めっちゃ怖い・・・!!)
「あれ・・・何なの!?」
「蜂型のモンスターのようやな・・・」
「お城の中に入って行ったけど・・・」
「何か運んどったよな・・・もしかして城の中に巣が?」
「え・・・無理・・・無理無理無理!蜂は無理だわ!!」
「あー・・・ちょっと分は悪いかもな・・・」
「一旦帰って出直す?」
「うーん・・・せっかくここまで来たしな・・・また来るのも大変やから俺一人で行ってくるわ」
「え!?」
「俺、一応姿消せるアイテム持ってるし、多分二人で行くより俺が一人で行った方が上手く忍び込めると思うねん」
「いやまぁ・・・私がいても足手まといになるのはわかってるけど・・・でも危ないよ!無理しないで戻ろ!!」
「けど、俺さおりちゃんたちと一緒におってからめっちゃレベル上がったし新しい魔法も覚えとるし、ここ植物も生えるから俺の特殊能力ならあんま近づいて攻撃とかもでけへんと思うねん」
「待ってお願い!行かないで・・・!行くなら私も一緒に・・・!」
「大丈夫やって、ほんまに」
「待ってそしたらせめて!これ持って行って!!」
「これ、さっきの・・・」
「これで通信できるの!今権限を与えるから待って・・・contact、この者に権限を与える」
そう言うとcontactが青く光った。
白石くんは驚いてたけど、これでさおりちゃんと連絡取れるんやな?と嬉しそうに笑った。
「でもやっぱりいいよ・・・アイテムなんてほんとになくてもいいんだしさ」
「平気平気!これでも結構強いし、運動も得意やから!」
せやから大丈夫やで、ここで待っとってな
そう言って白石くんはタタタと軽い身のこなしでお城に向かってしまった。
(いや・・・)
(いやいやまずいでしょ)
(蜂のモンスターの生態はわからないけど)
(普通の蜂の生態ならわかるよ?)
(巣の中にすっごいたくさん兵隊いるよ?)
(しかも肉食じゃん!!)
(でかいし!!)
(いくら白石くんが姿消せるアイテム持ってても厳しいんじゃ・・・?)
(contact持ってってもらったけどそれでも心配だよ・・・!!)
(どうしよう、次は必ず私が白石くんを守るって決めたのに・・・!)
「ニョロちゃん、プットアウト」
目の前にニョロちゃんが出てきた。
ニョロちゃんは隠密に長けていて、パーティー全員の姿を消せる能力がある。
それに加えてニョロちゃんの特殊能力は白石くんの側にいるのにすごく役立つんだ。
戦いに特化してないけど、戦いに特化してるモンスターがいると目立ちやすいからとりあえずお城につくまではニョロちゃんと私だけでいい。
気配を消して近づける。
「help、ここにいるモンスターについて調べて」
『はい。ここにいるモンスターはハニービー。城の中に巣を作っているようです』
「お城の中には女王バチとかいるのかな?」
『はい。女王がお城の中で卵を産みそれを守る兵隊がお城の中にはたくさんいます』
やっぱり普通の蜂と一緒だ・・・!
どうしよう・・・白石くん絶対危ないよ・・・!
助けに行かなきゃ・・・!!
「help、そっと姿を消してお城に近づくから道を教えて」
『わかりました。地図アプリを起動します』
地図アプリが起動すると見たこともない青い丸い光が点滅していた。
「help、この青いのは?」
『これはcontactの位置です』
「へぇ!連絡取れるだけじゃなくて位置もわかるんだ。便利だね」
contactの青い光は白石くんの居場所。
もうお城の内部に行ってるようだった。
(めっちゃ早い!!)
(え、ガレキとかもあって進めない道もあるはずなのに・・・?)
(白石くんめっちゃすごくない???)
(ちょっと私お城につくまでにすごい時間かかりそうだよ・・・!)
(私もすぐに追いかけないと!!)
「ニョロちゃん行くよ!!」
私はニョロちゃんとhelpを頼りにお城へと向かった。
さおりちゃんが助けてくれたんや。
俺はさおりちゃんとちごて死んでもゲームオーバーになるだけでまた始められるのに。
さおりちゃんこそ死んだら終わりやのに、あんな必死に・・・
めっちゃ泣いとったけど、迷いもなく俺を助けてくれた彼女は 綺麗やと思った。
(・・・それにゲーム内やけど)
(・・・キスしてもうた)
俺を助けるために彼女は俺にキスをして回復薬を飲ませてくれた。
そりゃゲームの世界の話かもしれんけど
俺の中では立派なファーストキスやった。
女の子にとってキスって大事なものなのに、わざわざ俺を助けるためとはいえそこまでさせてもうたんやから
俺は責任をとらなあかんって強く思うた。
(いやさおりちゃんは案外気にしてへんかもしれんけど)
(ゲームの中やしな)
(俺はめっちゃ気にするで・・・)
思い出したらカァと顔が熱くなってきた。
せやって・・・!
無理やん!!!!!
気になる女の子に助けてもろうて!!!!!!
キスまでしてもろうて!!!!!!!!
好きにならんわけないやん!!!!
好きやわ、めっちゃ好きやわ!!!!!
元々さおりちゃんみたいな子ええなと思うてたのにいざという時の行動力とかしっかりしたところとかもうあかんやん!!!!
完全ノックアウトやわ!!!!!!
(・・・せやから植物館誘ったとき全然 ウン て言うてくれないからヒヤヒヤしたで)
(現実では会うてくれへんのかな、とか、やっぱゲームの中でしか会うたことないのにキモイよなとか)
(普通に会話してるように見えて頭の中めっちゃグルグルしとったし!!)
(・・・けど、一緒に行ってくれるて言うてくれた)
(ゲームの中の博物館も・・・)
(楽しみにしてるて言うてくれた・・・)
(そんなん可愛すぎてもう、絶対にさおりちゃんのためにアイテム取ってこなって思うやろ・・・!!!)
「・・・・はぁ、我ながら単純やな」
ぼそっと口からそんな声が漏れて 急いで口を抑えた。
城に来るまではたまにハチがなんか持って城に入るだけやったけど城の中に入ると兵隊っぽい蜂がぎょうさんおった。
運んでたやつは餌を運ぶ働きバチなんやろなと思うた。
城の中におる兵士のハチは働きバチよりデカイ。なんか体もいかついし外で見たのとは大違い・・・
さおりちゃんこんなん見たら倒れてまうやろな、と思いながら 俺はアイテムを探しいろんな部屋を見て回った。
奥の方に薄暗い部屋を発見した。
(ここにならあるかも・・・)
中に入ると人間の持ち物みたいなガラクタがたくさん置いてあった。
(ビンゴ!)
(外から持ってきて食べれへんから保管しとるのかな)
(それとも収集?)
(多分この部屋にあると思うから探してみよ・・・)
ガサゴソ ガサゴソ
(しっかし変なんばっかやな)
(ゴミみたいなんもあるし)
(これ無駄やで!)
(捨てたろかな)
(えっと・・・こっちは・・・)
ブブっと ポケットに入れ取ったcontactが震えた。
(お!?)
(着信か!?)
contactを見てもなんともない。
けどまたさっき手にした箱を触ると ブブ と震えた。
(・・・あぁ)
(これ、当りやな)
(contactが反応しとる)
その箱を手に持って
そんで部屋を出ようとして足になんか当たって・・・
(これは?)
それを拾い上げた時、ガラクタの山が突然崩れて大きな音が鳴った。
(ヤバ)
(急いでこの部屋出ぇへんと・・・!)
急いで姿を消すアイテムを使って、ほんで部屋を出た。
兵士蜂たちがその部屋に向かう中、俺は出口まで走った。
(あれ・・・)
(なんや、確かこっちの道やったよな?)
(なんでやろ)
(さっきからずっとグルグルと同じ道を・・・)
しまった
そう咄嗟に思った時にはもう手遅れやった。
俺は 大きな輝く扉の前におった。
(おいおいおいおい)
(これ・・・あかんやろ)
(間違いなく・・・あかんやつやろ)
扉を開けないように後ろを振り向いたけど、後ろも横も全部壁で
(・・・やられた)
俺は仕方なくその扉の中に入るしかなかった。
【いらっしゃい、ぼうや・・・】
あぁやっぱり
きっと最初からバレとったんやな
そう咄嗟に思うた。
「・・・女王蜂さんか?なんや人の言葉話せるんか」
【ふふ、なんぜんねんといきているからね・・・ひとのこのことばもおぼえたわ】
「姿隠しててんけど」
【あいてむのこうかなど わたしにはきかないわよ】
「すまんけど今急いでんねん、帰らせてもらうで」
【・・・ふふ、かえれるとおもって?】
「まぁ・・・無理や思うてたけど。ほな・・・倒させてもらいますわ!!」
特殊能力 ポイズンプラント!
俺が叫ぶと その部屋は一斉に草花で覆われた。
ポイズンプラント‐毒草‐
ゲームを始めた時、俺が女神から与えられた特殊能力。
瞬時に毒草を咲かせ、その花や葉、茎から毒を出しその辺一帯の生き物を殺す。
空に飛んでる敵も蔓を伸ばせば捕まえて毒で溶かすことが出来る。
この技を使えばほぼ無敵なんやけど、無差別やから味方も巻き込むことがあって一人やないと使えへん。
まぁこれは最終兵器みたいなもんやからほとんど普通に戦って倒すから使ったことはないんやけど。
その”最終兵器”を最初から出さんと逃げることすらでけへんと 俺は判断した。
それほどにこの女王蜂は 強い。
これだけの数の これだけの兵を治めてるだけある。
体も規格外にデカイ。
普通に戦っては勝てへん、一瞬でも隙を作って逃げ出せればと思うた。
思うたのに。
【ふふふ、ぼうや おわすれかい?はちも どくを もっているんだよ】
ぼうやのどくは わたしにはきかないよ
そう、女王蜂が呟いた瞬間 俺の体は激痛と共に 床に倒れこんでいた。
(なっ・・・!)
(早い!!)
(攻撃されたのも見えへんかった・・・!)
ヤバイ
さおりちゃんのことが心配で 必死に抵抗しょうと剣を握って立ち上がった
(あぁけどこれ)
(多分もう)
次の見えへん攻撃に 俺は意識を失った。
(どうしよう)
(嫌な予感がする)
白石くんがずっと同じ場所から動かないの。
(もしかして何かと戦ってる?)
(contact落としただけならいいけど)
その場に留まり続ける理由がわからなくてマイナスなことばかり考えてしまう。
お城にはなんとかついたんだけど 通りにくい道のせいでずいぶんと遅くなってしまった。
(白石くん、無事でいて・・・)
私は 白石くんがいる場所までニョロちゃんと走り続けた。
「・・・ここ?」
大きな扉があった。
すごく美しい扉。
この奥に青い光が止まってるから きっと白石くんもいるはずなんだけど・・・
なんだか こわい
(・・・でも行かないと)
(白石くんを守らないと!)
私は勇気を出して そっと扉を開けた。
キィ
大きな扉は 思ったよりも軽く私の力でもあっさりと開くことが出来た。
「ニョロちゃん、離れないでね」
ニョロちゃんをしっかり肩に乗せて 私は部屋の奥へと進んだ。
(・・・おかしい)
(だってこれ白石くんの特殊能力じゃない?)
(一度だけ彼が使ったところを遠くからまぁちゃんと謙也くんと見ていたことがあった)
(部屋中こんなに毒草で覆われて・・・)
(ニョロちゃんがいなかったら私ももう終わってたな)
ニョロちゃんには瞬時に解毒をする能力がある。
チョロちゃんにはどんな毒も効かないのだ。
もしかして白石くんがこの能力を使ってるかもしれないと思いニョロちゃんを連れてきた。
(ニョロちゃんを連れてきたのは正解だったな)
(でも・・・白石くんはどこ?)
(白石くん・・・)
(どうして部屋中が毒草で覆われてるの?)
ニョロちゃんが何かを感じ取ったのか方向を教えてくれたから私はその通りに進んだ。
「・・・え?」
でもその先でこんな光景目にするとは思わなかった。
「白石・・・くん・・・?」
「さ、さおり、ちゃん・・・なんで・・・・・」
にげて・・・
そう小さく呟く白石くんの両手足はなくなっていた。
ない手足を糸のようなもので縛られ 彼は宙吊りにされていたのだ
「いやああああ!!!!!いやああ!!!白石くん!!!!!!」
「さおりちゃん・・・ほんまに・・・あかん・・・これもって・・・にげ・・・」
白石くんがコトっと箱を落としたけど
あまりのショックな光景に私は我を失っていて 箱を拾うことができなかった。
その時だった
【あら・・・?もうひとり ひとのこがいたの?なぜかしら しろにはいってきてもけはいをかんじなかったわ】
声が聞こえた。
「じょうおう・・・ばちや・・・さお りちゃ・・・にげて・・・」
白石くんがぼろぼろと涙を流す
「たのむから・・・にげて・・・いきて、たのむ・・・」
俺は死んでも平気やから、 と彼は言った。
【しなせないわよ?ぼうやはきれいだもの・・・えいえんにここで わたしのこれくしょんになるのよ】
「コレクション?コレクションってなに?そのために白石くんは手足を切られたの・・・?」
【だってひとのこのてあしは きもちわるいじゃない なんでてのさきがわかれているの?いらないわそんなの】
「そのために白石くんを・・・?死なせないままコレクションに・・・?」
【えぇ、ぼうけんしゃとよばれるものたちはころしてしまうと またいきかえるでしょ?それにてがつかえると しゅうりょう というのをしてきえてしまうのよ】
「そんな・・・」
【しゅうりょうを させないためにも てはいらないわ】
「・・・」
【それとね このしろには とくべつなまほうをかけてるの】
「・・・」
【ひとのこは じかんがたつとかってにきえてしまうでしょ】
「・・・8時間経った強制終了のこと?」
【だから えいえんにきえることができないように ここにはそとのせかいのちからはとどかないの】
「!?」
【わたしだけのくうかん・・・ずっとかわいがってあげるわ・・・】
「・・・なにそれ」
【なぁに?なにかいった?】
「ふざけないで!!!そんなこと私が絶対に許さないから!!!!!」
【ふふ、ひとのこに ゆるしてもらわずとも】
あなたはいらないからすぐにころしてあげるわ
そう女王蜂が言った
(・・・白石くんを 殺さずに傍に置く?)
(終了もさせないように手を切って?)
(その上強制終了もさせないなんて)
(頭おかしすぎる!!!!!!)
ゲームの世界だって傷ついたら痛いのに!!!!!!!!!!
「あんたなんか私が倒してやる!!!」
とらお!ドラコ!くまごろー!ウルフ!!プットアウト
そう叫んで まぁちゃんのフレンズたちを呼ぼうとした
「・・・え・・・?誰も出てこない・・・?」
【ふふふ なにをしてるのかしらないけれど いったでしょ?そとのせかいとはつながらないのよ】
「うそだ!help!プットアウトできない!でもcontactで場所はわかったしつながるでしょ!?」
『はい。contactは同地点にいるため繋がります。ストレージの中は強力な魔法の影響で繋がりません』
「そんな・・・!」
じゃあ今ここにいるのは戦えない私と、最初に出してた隠密に特化したニョロちゃんだけ!?
「どうしよう」
そう思った瞬間 見えない何かが私を突き飛ばした
「いたっ!!」
【ふふふ じかんをかけていたぶってあげるわ】
(・・・こいつやばい)
(魔力が高いから話すしすごく強いのがわかる)
(きっと倒さないとここからは抜け出せない)
(でも私じゃ何も・・・)
(どうしたらいいの・・・!?)
(白石くんを助けたいのに!!!)
なんで私はこんなに無力なんだろう
戦うのもいつもまぁちゃんやフレンズ任せだった。
helpを手に入れてから少しは役に立てるようになったけどやっぱり戦うのは人任せにしてた。
(何やってるんだろう私・・・)
(なんでもっと力を磨いてなかったんだろ)
(武器を持ってもっと戦えばよかったのに)
(このままじゃ 白石くんを助けることが出来ない)
(私が死んだらもう生き返れない・・・そしたら誰にも居場所を知られずに白石くんは一生ここで・・・)
(白石くん、私のお手伝いしてくれてただけなのに)
(なんでこんなことに巻きこんじゃったの?)
(私、どうしたら・・・)
バシン!
音が聞こえて ハッとなった
「ニョロちゃん!!!!」
ニョロちゃんが床に叩き潰されていた
私はニョロちゃんに駆け寄った
【まもののくせに ひとのこをまもるとは・・・おろかな】
「ニョロちゃん・・・私を守って・・・?」
起き上がろうとするニョロちゃんを抱きかかえた
でもすぐにニョロちゃんは私から離れてしまう
そして敵の攻撃から私を守るように 見えない何かに何度も何度も吹き飛ばされ続けた。
「ニョロちゃん!!!!もういいよ!!!!もうやめて!!!!!」
泣きながらニョロちゃんに近づいたけど ニョロちゃんは悲しそうに白石くんを見上げるだけだった。
(・・・そうだ)
(私が死んだら白石くんも・・・)
(ニョロちゃんは守ってくれてるんだ)
(私のことも、白石くんのことも)
どうして私はこんなに弱いの?
私の武器の剣なんてなんの役にも立たない
飾りでしかない
それでも必死に刀を握りしめる
「もうやめて!!ニョロちゃんにも白石くんにも何もしないで!!」
【まずはヘビをころして・・・それからおまえをゆっくりころしてあげようね】
「殺さないで!!やめて!おねがい!!!私はいいから・・・二人は助けて!!」
【さいごにおまえはわたしのかわいいこどもたちのえさにしてやろうね いきたままようちゅうにたべられてしまいな】
「私はそれでいい!!それでいいから・・・ニョロちゃんと白石くんだけは・・・」
【ひとのこのいうことなど きくわけなかろう】
ふふふ と笑いながら 女王蜂はニョロちゃんをいたぶる。
悲しくて悲しくて涙が止まらなくて
でも怖いけど立ち止まっちゃいけなくて 必死に立ち上がって剣を振った
そんなの何の意味ももたないのに
(なんで私はこんなにダメなの?)
(大切な人を守る力もない)
(能力もないし)
(まぁちゃんに止められたのに勝手にゲームをはじめたのは私だ)
(・・・・・そう、だから 私がなんとかしないと)
(私が・・・)
涙を止めて 周りを見た
あの見えない何かはなんなんだろう
ものすごいスピードで攻撃してくるけど・・・
女王蜂の手?足?何があんなに早く
その時だった。
(あ、あれは)
さっき白石くんが落とした 箱が見えた
(そういえば白石くんが あれを渡そうとしてた)
(・・・まさか、あれはアイテム?)
スマホとか通信機とか
そんなのばっかりだけど
でも
もしかしたら
【・・・さて へびもうごかなくなったことだし つぎはおまえだね】
そうして楽しそうな女王蜂の笑い声が聞こえる
私は
見えない何かに攻撃され
倒れるふりをしながら
箱に近づいた。
(あと少し・・・・!!)
取った!!!!!!!!
私がそれを取ると まるで敵の気を逸らすように ニョロちゃんがまた起き上がった
(ニョロちゃん!!)
(ありがとう!!)
私はすぐに箱を開けた
「・・・! これは!!!!」
そしてもう 迷ってる暇はなかった
【しぶといヘビだね!!!!とどめをさしてやるよ!!!】
ニョロちゃんが危ない
そう思った時 私はそれを手に取り そして引き金を引いた。
バンッ
ギイイイイィ!!!!!!
甲高い声が響いて 見るとニョロちゃんの横に小さな蜂が倒れていた。
(あ、当たった・・・!)
目にも見えない速さで攻撃を繰り出していたのはどうやら小さな蜂だったらしい。
そしてそれはこの部屋にまだまだたくさんいるみたいだ。
でも これなら行ける気がした。
私が開けた箱。
中に入っていたのは 銃 だったのだ。
(・・・これで私も)
(戦える!!!!!)
狙わずに売っても弾は当たった。
それに実弾が入ってる感覚はない・・・
きっとこれも魔法道具なんだなと感じた。
「白石くん!ニョロちゃん!!!今助けるから!!!」
私は手当たり次第に銃を撃ちまくった
バンバンバン! と音が鳴ってそのたびに ギイイイイィ と高い声が響き小さな蜂が姿を現す。
(この銃すごい!!)
(軽いし、適当に撃っても絶対に敵に弾が当たる!!)
(それに補充しなくても無限に弾が出る!!)
床中に蜂の死骸が落ちた時 女王蜂が大声で叫んだ
まるで仲間を呼ぶみたいに
【ふざけおってこむすめめ!! これでしろじゅうのへいしがくるわ!おまえはおわりよ!!】
「終わりはどっち?見てればさっきからあなたは一切動いてないじゃない。まさか動けないの?」
【ぎ・・・!なにをもうすか!!】
「そりゃこれだけの見えない蜂がいたらやられるわ・・・でももう終わりね。全部やっつけたもん。あとはあんただけだよ!兵士が来る前に終わらせる」
私の大切な人たちを傷つけないで!
私はそう言って 女王蜂に銃を打ち込んだ。
軽く 30発ほど。
【ぎゃああああああ】
さすがに大きな女王蜂でもこれだけ打ち込めば生きていられないだろう・・・
というかこの銃、確実に急所を狙うらしい。
30か所の急所に銃を撃たれた、と思うと ゾッとする話だ。
「白石くん!!ニョロちゃん!!」
私はすぐにニョロちゃんに上質な薬草を食べさせた。
モンスターでも薬草は効くからね。人間ほどではないけど、少しは回復は回復したようだ。
そしてニョロちゃんに蔦をつたって白石くんに回復薬を飲ましてもらい、手足を縛ってる草を切ってもらった。
「・・・さおりちゃん?」
「白石くん!!!!」
途中から痛みで気絶していたらしい白石くんは 回復薬を飲み手足も生えて元気を取り戻していた。
「・・・白石くん・・・・・」
「さおりちゃん・・・俺、また助けてもろたんやな・・・」
「白石くん・・・白石くん・・・!!!!こわかった!!!白石くんがいなくなっちゃうかと思った!!」
私は思いっきり白石くんに抱き着いた。
「さおりちゃん・・・すまんな、俺・・・弱いのに、強くなったと思い込んで・・・結局さおりちゃんにまた助けられて・・・」
「違うよ白石くん!!白石くんが助けてくれたんだよ!白石くんが持ってきてくれたあの箱にこれが入ってたから・・・」
「銃・・・?はは、この世界で銃か・・・やっぱさおりちゃんのアイテムやったんやな。よかった・・・ごめんな余計なことして・・・あの時さおりちゃんの言う通り戻ってれば・・・」
「ううん・・・私今回のことで自分がどれだけ弱いか思い知った・・・大切な人を守る力も何にもなかった・・・でも白石くんのおかげでこのアイテムが手に入って、これで私も大切な人を守れるようになったから・・・本当にありがとう」
「いや、俺は・・・」
「ごめんね、痛くてつらくて怖い思いしたよね」
「それはさおりちゃんのほうやろ!?怖かったやろ?ほら、ここケガしとるで!?さおりちゃんも回復薬飲んでや!!」
「うん・・・うん・・・白石くん、本当に助かってよかった・・・」
ビエーーーー と泣いたら白石くんがワタワタして そして戸惑いながらも抱きしめてくれたから
なんだかおかしくて笑いそうにな・・・・
いや
待って
ニョロちゃんが めっちゃ慌ててる
そうだ あの女王蜂 最期に仲間呼んでた・・・!!!!
「やばい!兵士の蜂くる!!」
「あ!!ほんまや!!・・・けど、この女王蜂強かったで!?このままでええ!?」
「あ、そうか!!もう女王蜂倒したからきっと城にかかってる魔法とけたよね!?」
(使えるかわからないけど)
(やってみるしかない!!!!!)
まぁちゃんとけんやくんプットイン!
そしてまぁちゃんとけんやくんここにプットアウト!!!
そう私は大声で叫んだのだ。