仮想世界で最強の双子になった件⑥【さおり】

 

「そういえばね、トラオが住んでた砂漠の砂の中になんかあるから君にあげたいって言ってた」

 

と、まぁちゃんに言われたので
まぁちゃんとトラオと砂漠に向かうとまたいろんな素材とかアイテムとか

 

「あれ、これ・・・」

 

またレアアイテムのような小さな機械系のものを二つ見つけた。

 

 

「お、きみの新たなアイテムだね」
「なんかhelpとstorageに似てるね」
「ほんとだ!アタシにも使えるかな?見せて!」

 

まぁちゃんに渡すけどやっぱりそのアイテムは動かなくて
helpに使い方を聞いてみた。

 

 

「help、これはどうやって使うの?」
『はい。これはcontactとagentです。contactは権限を与えた者と連絡を取れる機能が付いています。agentは権限を与えた者がstorageから内部のモノを出すことができます。どちらもuserが権限を与えてください』
「コンタクトとエージェントだって!」
「これ、エージェント、きみが持ってたらもし万が一私と一緒にいなくても中からフレンズたち出せるってことだね!」
「モンスターボールじゃん!!!!」
「モンスターボールだね!!!!」
「でも出すだけ?出すだけなのかな?出し入れ可能?」
「help、エージェントは中に入れることも可能なの?」
『いいえ、agentに入れることはできません。取り出しのみ可能です』
「でも充分だね!!」
「どうやって権限を与えるんだろう」
『名前を呼び登録をしてください』
「名前?こうでいいのかな、agent」

 

私が名前を呼ぶと ウィン と小さい黒い箱は起動した。
小さいストレージみたいで可愛いな、と思いながら

 

「agent、この者に権限を与える・・・まぁちゃん手を出して」
「うむ」

 

まぁちゃんの手にagentを乗せると パァァと光り、まぁちゃんの手でも起動した。

 

「お、これでアタシも使える?」
「多分!やってみて!」
「うん!agent!薬草取り出して!」

 

 

ペシャ

 

 

「薬草wwwwww来たwwwwwwwwww」
「きみ薬草好きだね」
「シオシオwwwwwwwwww」
「出せたからとりあえずいいね」
「うん!!ありがと!これでおらどこでも大丈夫!!」
「よかったよ!私他にもユーザーの職業で使えるアイテム探したかったし・・・きみは仲間増やしたいだろうし・・・これで別行動できるね!!」
「うん、やったー!これでコンタクトも持ったら完璧だね!あ、でもきみ一回も戦ったことないし激弱だよね・・・一人なのは不安だな」
「でも私ストレージあるからなんかあったらストレージの中入って逃げれるよ」
「いやいきなり来られたらどうにもできんしね・・・心配だからさ、みんなにきみの護衛頼んでおくね」
「え、いいの?できる?」
「うん、きみよくお世話してるしみんなきみのこと大好きだし!ね、トラオ?」

 

トラオは大きい猫みたいにまぁちゃんにゴロニャンと甘える
ネコより犬派だけどみんなは一緒に暮らしてるから可愛いよ・・・
ジョンみたいだよ・・・

 

あれから
白石くんとか謙也くんは毎日会いに来てくれた。
一緒にモンスターをやっつけたり街に行ったり、私たちに付き添って色々行動してくれるようになった。
おかげで最初は緊張してた私も敬語ではなく普通に話せるようになったし、白石くん、謙也くんと呼べるようになった。

2人がログインするとスノーウルフたちが気づいて、仲間同士のテレパシーで通じ合って私たちに来たことを知らせてくれて私たちが迎えに行ったり、近くにいるときはスノーウルフたちが連れてきてくれるんだけど。

 

 

(まぁちゃんはcontact持ちたいみたいだけど・・・)
(私は・・・白石くんがこれを持ってくれたら連絡取れていいなって思うな・・・)
(スノーウルフちゃんたちが近くにいないとログインしたのわからないからね・・・・)

 

 

そんなことを思うようになったのも
彼らが私たちにすごく優しくしてくれるからだ。
居場所を他の人に教えるのはまぁちゃんがすごく嫌がるからちゃんとその約束は守ってくれて
跡部からの伝言を毎日教えてくれて まぁちゃんはウザがってるけど現実の様子がわからない私はすごく助かる。
彼らだって本当は普通にゲームを楽しみたいはずなのに 私たちの方に来てくれて・・・
それに現実世界の学校とか部活とか生活もあるのいつも遅くまでいてくれるし・・・
申し訳ない気持ちの反面正直すっごく心強い。
やっぱりいつ何が起こるかわからないこの状況でまぁちゃんとずっと二人きりだとただ生活して淡々と時間が過ぎていただろし
色々な情報やゲームのこととか聞けるのはありがたい。
まぁちゃんすごい意地を張って氷帝のみんなに会おうとしないから余計に助かるよ・・・
氷帝のみんながいてもこの状況は何もかわらないんだけどね・・・逆に会うたびに幼馴染とか跡部とは喧嘩しまくるんだろうなと思うと憂鬱だから
白石くんと謙也くんは明るくて優しくて働き者で、いつの間にか私たちも彼らにすごく救われている。

 

 

ゲームの中でしか会ったことないけど
確実に私たちの距離は縮まってると思う。

 

(もしこのままゲームをクリアして現実世界に戻れても)
(・・・終わりにしたくないな)
(今度は向こうの世界で・・・)

 

そんな思いが日に日に強くなるから 余計にクリアに向けてまぁちゃんとレベル上げや仲間増やしをがんばっている。

 

 

「今日私アイテム探しに行こうと思ってるんだよね」
「あぁ、こないだ仲間にしたゴーレムが言ってたやつか」
「そうそう」
「じゃあそうしようか」
「でもまぁちゃん水属性のモンスター仲間にしに行きたいって言ってたよね」
「色々仲間にしてきたけどまだ水属性は仲間に出来てないからなー・・・泳げないから怖くて水辺行けないし」
「海王類並みの大きい生物いるらしいもんね」
「怖いよ死ぬね」
「死ぬね・・・じゃあ私が一緒にそっちに行こうか?」
「うーん、きみはアイテムあるの地下だっけ?」
「うん、古代の地下帝国って聞いたよ・・・怖いね」
「それも怖いねwwwどーする!?一緒に行こうか」

 

うーん、と悩んでいると
外でスノウウルフちゃんたちが遠吠えした。

 

「あれ?謙也たち来たのかな?早いね」
「まだ明るい時間なのにね」
「さおちゃん、中に入れてあげて」
「うん、白石くんと謙也くんプットイン」

 

 

中に入れると 家の外に二人がやって来た。

 

 

「おじゃましまーーーす!!今日部活午前中だけやったから早く来れたで!」
「ん?向こうでは今日休みの日か」
「せやで!土曜日や!しかも明日は午後からやから今日ゆっくりできるで!!」
「へぇ・・・足引っ張るなよ」
「俺かて役に立てるわ!!」

 

 

謙也くんとまぁちゃんはいつもポンポン話が弾み、とても気が合うようだ。
まぁちゃんはいつもと変わらないけど謙也くん優しいんだよなぁ。幼馴染だったら大ゲンカだと思う。

 

 

「今日はどないすんの?」
「今日は別行動してみようかって話してて・・・」
「お、効率考えたらたまにはそれもええかもなぁ」
「けど、さおりちゃんおらんと中からフレンズたち呼ばれへんのとちゃうんか?」
「さおちゃんが使える新アイテムでその辺の問題は解決したよ」
「新アイテム!?見せてや!!」
「俺も見たい!!」
「今まで持ってるやつのミニバージョンというかサブ機というか・・・contactとagentだよ」
「おおおー!めっちゃすごい・・・!」
「このゲームの中に最新機器・・・!」
「help見た時もビビったけどなぁ、ゲーム内にスマホあるんや!って」
「さおりちゃんしか使えへんけどな」
「財前めっちゃうらやましがるやろなw」
「私からしたら好きな場所タップすればメニュー画面出てくる方がすごいし憧れるけどな・・・」
「メニュー画面相変わらず開けないからねうちら」
「まぁ確かにこの機能はすごいけどなぁ」
「誰も持ってないアイテム使えるさおりちゃんのがすごいと思うで」
「このagentは中には入れられないけど外から中のモノを出せるからまぁちゃんに渡したんだよ」
「そうなんや!それはめっちゃ便利やなぁ」
「おらは無敵じゃ」
「ほんまにな・・・俺なんて足元にも及ばへん」
「けどなぁ、がんばってレベル上げてもこのゲームのハッキリとしたクリア方法いまいちわからんしなぁ」
「それな!ゲーム自体がワールドネバーランドみたいな自由度の高いゲームなんでしょ?」
「せやねん・・・色々向こうの世界でもみんなと協力して検索しとるけどまだエンディング見た人もおらんし・・・」
「このままやと時間だけが過ぎていってまう・・・」
「ワーネバも主人公は年取って寿命で死んだら終わり・・・ってゲームだったもんなぁ」
「クエストやイベントがちょこちょこあってそういうのやりつつ楽しんでるって感じやしな」
「仕事もマスターしたら次の職業に就いたりな・・・自由度高くてほんまに何してもええ分終わりがないっちゅーか」
「やから人気なんやけどな・・・」

 

もう2週間くらい経つし・・・

と、白石くんと謙也君はすごく不安そうな顔をして俯いた。
2人が心配してるのは私たちの現実の体なんだろう。
跡部財閥がバックアップして最高級の病院の集中治療室に入ってるらしいからすぐにどうこうってわけじゃないみたいだけど・・・
このまま何年も経つのはやっぱり心配だよね。
いわゆる植物人間って状態なんだろうけど・・・延命装置もつけてるらしいし、ゲームの中の私たちが死なない限りは体も大丈夫なんだろうけど・・・
目が覚めた時何年も経ってたらすごい大変だよね・・・。
だって高校生と言う輝かしい時期はもう戻らないよ・・・何年も寝たきりだと動くのもリハビリ必要だろうし、仕事も限られちゃうし・・・
ほんとに未来が奪われるって状況なんだろうな今は。
だからこそすぐに目が覚めるようにみんながんばってくれてる・・・
白石くんと謙也くんにしか会ってないけど、氷帝のみんなも毎日心配して私たちの様子聞くために電話してるらしいし・・・。

 

 

 

「・・・正式な情報やなくて噂程度やから言うか悩んだんやけど・・・」
「うん」
「この世界のどこかには魔王っちゅーのがいて、それを倒せば一応クリアになるらしいで」
「誰も見たことないし魔王の城も闇に包まれてるらしいわ」
「その辺は公式も全く回答しないらしくて謎なんやけど」
「誰もそのクエスト出てへんし、ほんまにごく一部のユーザーの間で話されてるらしいわ」
「へぇ、じゃあほんとに噂程度なんだ」
「せやねん・・・はっきりした情報なくてすまんな・・・」
「いやでも何かのクエストクリアすればもしかしたら魔王の城にたどり着けるってことだよね」
「もしかしたらやけどな・・・」
「なおさらあちこち行ってみる価値あるね!」
「俺らも二人と一緒におって見知らぬ隠れクエストに結構遭遇しとるからもしかしたらあるかもしれんわ」
「とりあえず少し希望は見えたし引き続きがんばろう!!」
「だね!仲間増やして情報聞きつつ魔王の城の話を聞こう」
「私たちは大丈夫だから・・・白石くんたちも心配しないでね」

 

そう言うと、少し困った顔をした後に 彼は笑って

 

「・・・せやな!俺らが不安がってもしゃーない!!俺らは俺らの出来ること全力でするわ!!」

 

って

言ってくれた

 

顔が

 

とてもかっこよかった・・・・

 

 

(はぁーーーーーー)
(これほんと・・・この容姿ほんと課金してないの?マジで?)
(課金もしないでこんなイケメンの人いる?)
(現実にいるわけなくない?こんなイケメン・・・)
(そして優しくて面白くて・・・・)
(課金・・・・課金してるよね?絶対!!)

 

 

まぁちゃんが白石くんは絶対課金してるし男の人はゲーム内とかSNSで思いっきり優しくして実際会うとやべーやつ多いから絶対に引っかかるなと言ってたけど

 

無理だろこんな優しかったら・・・

こんな優しさ男の人から感じたことないよ・・・

顔がタイプってのもあるけど普通に中身で惚れてしまう・・・
私これ・・・
顔はもうほんとに課金だと思ってるけど・・・
きっと彼がブサイクだとしても・・・
この優しさは・・・本物だと思うし・・・
やっぱりゲーム内で終わらせたくないよ・・・!!
例えブサイクだとしても!!!!
現実世界でも会いたい・・・!!!!

 

そんな風に思うくらい彼は優しかったんだ・・・。

 

 

「んじゃーボチボチ行くかな」
「どこ?」
「アタシは水系のモンスター仲間にしたいから海の方行こうと思う」
「ええな、海!」
「遊びに行くんじゃないんだからな!!」
「私は地下帝国に行ってくるね」
「あ、ほな俺も一緒に行くわ!!」
「白石くん大丈夫?地下帝国、結構大変だと思うけど・・・」
「二人と活動しとったら俺もレベル上がってるし大丈夫やで!!」
「白石は頼りないけどアタシのカワイイ子たちがさおちゃんのこと守ってくれるから誰でも好きな子呼び出して!」
「いや頼りないことはないと思うけど・・・うん、ありがとう」

 

 

じゃあ後でね

 

 

そう言ってまぁちゃんと分かれた。
白石くんついてきてくれたけどいいのかな・・・?
まぁちゃんと海の方行かなくてもよかったのかな・・・?

 

 

 

「白石くん、本当に地下帝国でも大丈夫なの?」
「ん?あぁ、むしろ噂に聞いてて行ってみたかったんや。地下に広がる古い遺跡みたいな感じなんやろ?」
「そうなんだよね、私は結構楽しみだったんだ」
「俺も楽しみや!どんなところやろうな」
「ふふ、よかった!白石くんも楽しみにしてくれてるの嬉しい!」

 

そう笑って言うと彼は顔を背けてしまった・・・
あれ私今調子に乗ったかな・・・

 

 

「・・・、・・・・・・、い、入り口はどこやったっけ」

 

調子に乗った私にもこうして普通に会話を続けてくれるなんていい人だなぁ・・・

 

「入り口は確か砂漠の奥にあるって・・・」
「ほなトラオに乗って行ったら早いんちゃう?」
「そうだね、トラオ呼び出して乗せてもらおう」

 

私はhelpで地下帝国への地図を出してトラオにここまで乗せて欲しいとお願いした。
トラオは大人しくしゃがんで背中に乗るように合図した。

 

「すごいなぁ。さおりちゃんも話せるんやな」
「いや私はわからないよ」
「え!そーなん!?」
「うん、でも家で飼ってるペットみたいな感じだから・・・ペットも一緒に暮らしてたら気持ちわかるようになるでしょ?」
「あぁ、せやな!モンスターのことペットって言うのも凄いな!!」
「モンスターは知能高いしペットというかフレンズなんだけど・・・お互い何となく気持ちわかるよ」
「凄いなぁ、こんな能力見たことないわ」
「まぁちゃんのおかげだけどね・・・私は無能力だから・・・なんの役にも立てないし・・・」

 

 

あ、白石くん動くからしっかり掴まって

そう言ったら

 

ぎゅ

 

(!?!?)

 

白石くんは後ろから私を抱きしめるようにトラオに掴まり

 

 

「役に立たないことないで・・・さおりちゃんのその優しさとか真面目なところとか充分すごいと思うねん。それにさおりちゃんにしか使えないアイテムあるのもすごいことやし特別なことや」

 

きっとこれから能力も覚醒するから大丈夫やと思うで!!

と、白石くんの声が耳元で聞こえた。

 

 

 

ほわあぁぁぁ!!!!!!!

 

 

う、うそだろおおおお!!!?!?!?

 

 

男の人に耐性ないのになんてことが起きたんだ!!?!?!?
何が起きたかよく分からない!!!!!

 

 

よくわからないけどなんて返したらいいかわからないしホワホワしすぎて落ちそうでヤバいから必死にトラオにくっつくフリをして何も答えずにいた…
いや、答えられなかった…

 

 

(はぁもうなんなの・・・)
(この手で女の子口説いてるのかな・・・?)
(ガックンたちと中学生の時テニスの合宿一緒だったらしいし帰ったら写真見せてもらお・・・)
(それまで死ねない・・・)

 

 

後ろから回された手にドキドキする。

これはゲームの世界だしこの人はきっと課金してイケメンのアバターを使ってるはずなのに…

ドキドキしてしまう。

優しさも笑顔も後ろから回されたこの大きな手すら
あまりにもゲームとは思えないくらいにリアルな世界だからか
本当に現実で男の子と一緒にいるみたいでドキドキする。
いや、でもゲームの中だからかもしれない、この優しさは。まぁちゃんが言った通り現実で会うと酷いことされるかもしれない。

でも私の幼馴染にはこんなに優しくされたことはないし、女の子扱いされたこともなくて

つまり私が経験不足なんだろう・・・

 

だからこのドキドキは恋とかそんなんじゃない!!!!

 

 

と、頭の中でぐるぐる考えてたら
あっという間に遺跡の入口付近についた。
さすがトラオ…早かった…。

 

 

 

「ありがとうトラオ。早くついたから助かったよ」
「どこに入口があるんやろ?」
「どこだろう?この変なはずなんだけど・・・help、地下帝国の遺跡への入口を教えて」
『はい、入口を開くには半径100メートル一体を冷やしてください』
「え?冷やすの?砂を?」
『そうすれば入口が現れるでしょう』
「砂を冷やすなんて全く想像してへんかったな・・・伝説の遺跡って感じするわ」
「冷やすならウルフちゃんたちの力が必要だね・・・トラオありがとう、おうちに戻っていいよ」

 

私はトラオをストレージの中に入れ、次にウルフたちを数匹呼び出した。

 

「みんな、この辺りの砂を冷やして欲しいんだけどお願いできる?」

 

頭を撫でながら伝えると、彼らは頷いた気がした。

 

(伝わったかな・・・?)

 

 

と、いきなり辺り一面が氷点下ほどの温度になったからすごく驚いた!!!
伝わったのはよかったけど突然すぎるよ・・・!!!

 

 

「わ!!めっちゃ寒い!!!!」
「いきなり冷えた!!すごいウルフちゃんたち!!!」
「いや感心してる場合とちゃうやろ!!さおりちゃん、俺のマント巻き付けて!!」
「え?いや、私は大丈夫だから白石くんが暖まって!」
「大丈夫なわけないやん!!風邪ひいてまうで!?ほら、早う」

 

 

白石くんはマントを外して渡そうとしてくる・・・
確かに死ぬほど寒いけど私は白石くんの体のが心配だよ・・・
私おばあちゃん家北海道だし・・・白石くん暖かい地方の人だもんね・・・

 

 

「さ、寒いけど、大丈夫だよ・・・」
「ぜんっぜん平気そうやないやないか!震えとるで!!」
「だ、大丈夫・・・」
「あーもう!!」

 

 

ガバッ

 

 

そして彼はそのまま私をマントに包み、上から

抱きしめたのだ。

 

 

 

 

(ま・・・っ!!!!!!)

 

 

まって!!!!!!!!!!

 

 

 

慣れてる・・・
これは慣れてるよ白石くん!!!!!
ドキドキして死にそうじゃないか!!!!

スキンシップ多くない!?だってなんか・・・さっきから多くない!!?!?

こんなもんなの!?!?慣れてる男の人ってこんなもんなの!!?!?
いやでもきっとこんなの白石くん優しいから誰にでもやるだろうし、なんてことないことなんでしょ!?
私だけひとりドキドキして・・・

 

 

ズルいよ・・・

 

 

😢

 

 

 

「あ、れ?抵抗されるかと思うたけど、静かやな・・・あっ」

 

 

ゴゴゴゴゴ

 

 

その時砂が割れて地下へと続く階段が現れた。

やった!!
遺跡への入口だ!!

 

 

「ウルフちゃんたちありがとう、戻っていいよ」

 

 

ウルフちゃんたちを戻したらすぐにその場の温度は普段の熱い砂漠の気温へと戻った。

 

 

「・・・白石くん、もう大丈夫だから、ありがと」

 

 

そう呟くと、ハッと気付いた彼はめちゃくちゃ慌てて私から体を離した。

 

 

「すすすすすすまん!!!!!ちゃうねん!!!!下心があったとかやなく・・・!!!」

 

 

 

(・・・)
(そりゃ、なんとも思ってるわけないよね)
(私にだけじゃなくきっと皆にもするんだよね)
(私なんかに・・・下心あるわけないって、)

 

 

 

「・・・わかってるよ」
「え?」
「わかってるから、大丈夫」
「・・・」
「さ、早く急いで行かないとね。思ったより入口狭いね・・・これじゃあフレンド達呼び出せないし・・・階段歩いて降りようか」
「・・・」
「結構階段降りるのかなぁ・・・」
「あ、あの」
「なに?早く行こうよ」
「下心、ないっちゅーのは、ウソで!いや、ほんまにさおりちゃん冷やしたらあかんと思ったんやけど!」

 

 

 

ぐっと彼は私の腕を掴んで
私を引き止めるように
そんなことを言うものだから

 

 

 

「さおりちゃんのこと、抱きしめられてラッキーとか思うたし、他の子やったらそんなん思わへんから!!さおりちゃんやから・・・さおりちゃんだけやから!!」

 

 

 

叫んだあと 彼はすぐに入口に駆け寄って
これだいぶ古いから気をつけなあかんなぁ!なんて話を変えて
背を向けて

 

後ろから見てもわかるくらい耳も真っ赤で

 

 

ブワッと 赤くなったのは
私も同じで

 

 

 

(・・・やだもう)
(また誤解させるようなこと言って・・・)

 

 

これ以上私の気持ちをかき乱すようなことしないで
きっと辛くなって泣くのは私だけだから

 

 

胸がキュウと痛くなって
私もなんでもないふりをして白石くんと地下への入口を降りていった。

 

 

 

 

 

 

「だんだん広くなってきた・・・」

階段を降りながらそんなことを呟いた。

「だいぶ歩いとるけど大丈夫?さおりちゃん辛くない?」

白石くんが心配そうに何度も振り向く。

「くだりだから大丈夫だよ。のぼりだとちょっと無理だったかも」
「おれもこれが上りやと思ったらゾッとするわ・・・」
「帰りは途中までドラコとかに運んでもらいたいよ・・・」
「また登るのはキツイもんなぁ・・・」

 

地下へ続く階段の中で、私たちの声だけが響く。
砂を固めて出来たと見られる階段はずいぶん古くてグラグラと今にも崩れそうで相当怖い・・・

 

「広くなってきたしそろそろ飛べる子誰か呼んで下まで連れてってもらおうか?」
「せやな、その方がええかも」
「誰を呼ぼうかな・・・わっ」

 

その時だった

 

ガラガラガラと音を立てて私の足元の階段が崩れたのだ。

 

 

「さおりちゃん!!!!!」

 

 

崩れた階段の下は

闇。

下が見えない真っ暗な闇の中へ吸い込まれるように

 

「さおりちゃん!!!!」

 

私を咄嗟に掴んだ白石くんと
落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

目が覚めると 辺り一面闇の中で
何も見えなくて 息ができないほど恐怖を感じた。

震えながら 手を伸ばす

 

何かが手に当たり 思わず手を引っ込めた。

 

「し、白石くん・・・?」

 

もう一度そっと手を伸ばすと

 

ガッと

 

腕を掴まれた。

 

 

(!!!!!)

 

 

怖すぎて声が出なかった。

 

 

「大丈夫、俺や・・・」
「白石くん・・・!」
「どうやら下まで落ちてもうたみたいや・・・灯りも落としたしなんも見えへん」
「あ、ちょっとまって」

 

 

私はポケットに手をのばして、helpを取り出した。
よかった、helpはちゃんとポケットにいた。
その事に物凄く安心した。

 

 

「help、ライトモード」
『はい、わかりました』

 

 

helpの灯りが周りを灯した。

 

 

「・・・めっちゃ役に立つなぁ、ヘルプ」
「うん、いつも助けられて・・・」

 

!!

 

「白石くん、血が出てる!!!」
「あー、ちょっと落ちた時の衝撃で・・・でもこんなもんで済んだのはゲームの中なからかな・・・現実やったら即死やで」

 

ハハッと白石くんは笑うけど
その姿があまりにも痛々しくて目を背けたくなるものだった。

 

 

(白石くん、私を守ってくれたんだ)
(落ちる時に手を引いて抱きしめてくれたのうっすら覚えてる)
(・・・私が助かっても白石くんが無事じゃなきゃ嬉しくないのに)

 

 

 

ポロ

 

「・・・白石くんのバカ・・・私の事なんて守らなくてもいいのに・・・」

 

ポロポロ

 

「私を守って白石くんが傷つくなんて・・・やだよ」

 

ポロポロポロ

 

泣きながら白石くんの手を握ると

 

「・・・そんなん俺も同じや」

 

優しい声で白石くんが言った。

 

 

「俺はええねん、痛くてもゲームの世界やから死んでもコンテニューできる・・・けどさおりちゃんほんまに死んでまうかもしれないやん、俺そんなん嫌や」
「でも、私・・・っ」
「・・・守れん方がツラい」
「・・・」
「さおりちゃんのこと守るために一緒におるから俺・・・守れへん方がしんどい」
「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい」
「泣かんとって・・・守れてよかったって思うてるんや・・・どうせなら笑顔でお礼言って貰えた方が嬉しいわ」

 

 

そう言ってくれる彼に

(この人は本当に優しい人だ・・・)
(これは演技でもなんでもない)
(本当に誠実な人)
(信じよう)
(そして、次は私が・・・絶対守る!)

 

 

そう、心から思って

グッと涙をふいて立ち上がった。

 

 

「待ってて!!今荷物探すから!!」

 

 

 

急いでライトを照らしながら荷物を探した。
そんな遠くにいくはずない・・・
荷物さえ見つかれば中に回復薬がある!!

 

 

必死に探してカバンを見つけて
中から回復薬を見つけ、急いで白石くんに駆け寄った。

 

 

「白石くん!!早くこれ飲んで!!」

 

 

近づいても白石くんは反応はない

 

 

(やばい)

 

 

どうしよう

頭が真っ白になった。

 

あんな呑気に泣いて話してる場合じゃなかった。

きっとあれは、あの言葉は
白石くんなりの強がりで・・・
ほんとはしゃべるのもキツかったはずなのに・・・!

 

 

 

(例えゲームだとしても)
(死んでしまうのは、嫌だよ・・・!)

 

 

「白石くん、ごめんね」

 

 

彼の鼻に耳を当てるとまだ僅かに息がある。
こんなの、やることはひとつしかない。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

私は回復薬を口に含み
彼に口付けをして 薬を飲ませた。

 

 

口から回復薬が溢れて
あぁダメなのかも
と、一瞬そう思った。

 

 

ピクリ

 

 

彼の体が動いた

 

 

「白石くん・・・!白石くん!!!」
「・・・あぁ・・・回復薬・・・飲ませてくれたんか・・・おおきに・・・」

小さくそっと彼はそう話した。

よかった・・・
息を吹き返した・・・!!!!

 

白石くん、回復薬はまだあるから!これ飲める!?全部飲んで!!!

そう叫びながら必死に回復薬を飲ませた。

 

彼の体は青く光り、見る見る間に体も治っていった。

 

「・・・さおりちゃん、助けてくれてありがとうな」
「それはこっちのセリフだよ!!守ってくれて・・・ありがとう」
「・・・ハハ、それが聞けただけで無茶したかいがあったわ!」
「やめてよもう!こんな無茶しないで!」
「無茶・・・してでも守りたかったから」

 

優しい声と、その瞳に
じっと見つめられて言葉がつまってしまった。

ほんとに

ほんとに、彼は、ズルい。

 

 

「なぁ、それよりさっきさおりちゃん俺にキ」
「やめて」
「いやでも」
「忘れて!!」

 

 

 

スクッと立ち上がり背を向けて歩き出すと

クククと小さく笑いながら彼が後をついてくるのがわかった。

 

 

恥ずかしさで背中を向けたままだったけど
元気になった彼の姿を見るのが嬉しくて嬉しくて目元に溜まった涙をこっそり拭った。

 

 

(・・・よかった)
(白石くん、無事でよかった)

 

 

そう思いながら今度は横に長く続く洞穴のような道を進んだ。

 

 

そして光が見えてきて

 

 

「え、なに!?」

 

 

私は咄嗟に目をつぶり、白石くんは私を守るように庇ってくれた。

 

 

そっと目を開けるとそこには

 

 

「!!!」

 

 

広く続く地下帝国があった。

 

 

 

+2