ep.038 -another Kenya-

「まえさんっていいよね」

 

同期の三浦がそんなことを言ったのは、あの懇親会の後やった

 

 

あの懇親会でかなり目立ってから、声をかけられることが多くなった

もう一人、同期のレントゲン医師の話によると、それは彼女も同じようだった

 

(まえさんと仲良い子と付き合い始めたからなこいつ・・・)

(いつの間にっちゅーはなしや)

 

 

「じゃあさ、今度みんなでキャンプでも行かない!?」

 

 

そう言いだしたのはレントゲン技師やった・・・

 

 

「俺彼女に言っとくよ、まえさん誘ってもらうように!」

「え、ほんと?」

「ホントホント、忍足も行こうぜ!」

「ああ、せやな・・・」

「じゃあ、彼女に相談してみるわ!」

「よろしくね、まえさんと仲良くなりたいなぁ」

 

 

 

 

(あー三浦)(まえさんのこと)

(本気か?)

 

(・・・いや、)(でもなぁ、)(何考えてるかよぉわからん奴やし・・・)

 

 

 

 

そんなこんなでキャンプの日

おれは三浦を乗せて車でキャンプ地へ向かっていた

 

 

 

「山下先生の電話長かったら約束の時間に遅れちゃうよ」

「大丈夫なんか?なんかあったならすぐ戻んで」

「いや、大丈夫だよ、先生すぐ電話してくるから」

「まぁ、なんでも連絡くれる先生よな」

「あーどうしよう、まえさんに悪い印象持たれないかな」

 

 

 

(んん!?)(やっぱりこいつ本気か!?)

 

 

 

「・・・三浦、お前まえさんのこと本気なんか?」

「もちろんだよ、」

 

いいじゃない彼女、明るくて

きっと結婚したら、うちの病院でもうまくやってくれると思うんだよね

 

そう、三浦はいった

 

 

(けっこんて!)(こいつめっちゃ早いな!!)(そんなこと考えとるんかい!!)

(・・・けど、まぁ・・・)(言うてることは、めちゃくちゃわかる)

 

 

きっと、一緒にいたら楽しいやろな、

 

 

そんなことはなんとなく感じていたんや

 

 

 

「ほな、少し飛ばすで」

 

 

 

俺は目的地までの道のりを急いだ

 

 

 

 

 

そして、着いたら着いたで、やたら三浦とまえさんを2人きりにさせようとするカップルと、

完全にあぶれてしまった俺がいた・・・

 

 

(いや、これ・・・)

(カップルはわかるで)

(ほんで、三浦がまえさんと一緒におるやんか)

(ほんなら俺ひとりやんな!!)

(奇数やったーーー!!)

 

 

そう思いながら、なんとなくまえさんの様子を見ていると、

 

 

(ん?)

(もしかして・・・)

(あの子、三浦のこと嫌がってへんか?)

 

 

 

あきらかに顔が引きつっている

まだ仕事中の方が自然な笑顔出せとるで

 

 

 

そう思って、水を汲みに行った彼女の後をついていくと、

 

 

 

 

「ちょっと!あの人なんなの!?」

 

 

 

 

と、ものすごい剣幕で聞いてきた

 

 

 

(やっぱり!)

 

 

 

「あ~、すまんな、なんか俺ら3人同期やねんけど・・・ほら、あの彼女できたレントゲン技師と三浦と俺と」

「いや、ちょっとこのメンバーないわ!」

「ホンマ申し訳ないわ・・・三浦の奴、あの懇親会でお前のこと気にいったみたいでな」

「はぁ・・・魅力的すぎる自分が恐ろしいわ・・・」

「はは、ほんまやな」

 

 

 

(やっぱり、)(めっちゃおもろい子やな)

(話しててめっちゃ楽しい)

 

 

 

けど、

 

 

 

三浦のこと苦手で、しょぼーんとしてるその顔

 

 

(あかんで、)(そんなに落ちこまんでや)

(俺、お前ともっと楽しく話してたいんやから)

 

 

 

「2人きりにはさせへんから」

 

 

 

あまりにもしょんぼりしている彼女に俺は、そんな約束をして

 

彼女は、「2人きりになりたくない・・・」と俺にだけその心を打ち明けてくれたのやった

 

 

 

 

(おん、)(せやな、)

(そんなに嫌なら絶対2人きりにでけへんな)

(なんでやろ、)

(三浦には悪いけど、)

(ちょっと嬉しい・・・)

 

 

 

 

「あ、あのさ、」

「おん」

「こないだ、」

「ん?」

「飴ありがと」

 

 

 

 

 

 

(・・・・・・・・)

(・・・・・・・・なにそれ)

(・・・・・・・今の顔)

(めっちゃかわええんですけど!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

コロコロと変わる彼女の表情に反応できない

 

 

 

 

 

 

(あかん、こいつ)

(ホンマにあかん)

(ほっといたらあかんやつやこれ!)

(やっぱ、三浦と2人きりにでけへんこれは!!)

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・ん」

 

 

 

 

 

 

照れた俺は、なんて言っていいのかわからず、そんな返事をしてしまった

 

 

やっぱり、こいつと一緒に話してるのは最高に楽しくて

 

 

 

(あーこれが2人きりやったら・・・)

 

 

 

なーんてことを考えてしまった

 

 

 

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