第4話:お料理革命をしましょう!(マナミ)

さおちゃんが、パーティーに出かけてしまった。いよいよあのさおちゃんが社交界デビューだ。

「あのさおちゃん」っていうのもあれですけど。

元々美形の家族だなとは思っていたけど、なんせ森で野生児してた記憶のほうが大きくてね・・・。

 

森に住んでいた頃、さおちゃんとお母さんと3人で暮らしてきた。だから、自分たちのことは全部自分たちでやってきた。

お母さんは体が弱くて、後半は寝たきりだったからお母さんのお世話もして、そうして3人で暮らしてたんだ。

そんな生活も一変して、今では国内でもトップクラスの貴族のお嬢様だ。

本当はお母さんも一緒にいてほしかったけど、仕方ない。大事なことはお母さんからたくさん学んだから、これからもそれを大事にしていこうと思う。

 

いつも通り、敷地内にあるお母さんのお墓に向かって、その辺で摘んだお花をそっと置く。

前にお花摘んでたら、「お嬢様!代わりにやります!」と侍女さんがやってきたから焦ったよ。お嬢様はお花を摘むのはトイレの時だけらしい。

マジでお花を摘んだらいけないんだって。庭師にお願いしてくださいとも言われた。

なんでも自分でやってた生活から、いろいろやってもらえるのは嬉しいけど、自分でやりたいと思ったことはやらせてほしいなって思って、今チャレンジ中。

超イケメンのお父様は「自分の好きなことをしていいよ」って私たちに甘々だから、自分のやりたいことをやりたいと思う。

 

ということで、まず向かうのは・・・

 

 

 

「こんにちはー!」

 

 

 

元気に入ったところには、

 

 

 

「マナミお嬢様、いらっしゃい」

 

 

 

少し困った顔でほほ笑んだイケメンがいた。

 

 

 

「ミツタダーまた来たよ」

「・・・待ってたよ」

「よろしく!邪魔しないし、洗い物ちゃんとしていくから」

「いや、洗い物はいいけど・・・僕にも教えてね」

「うん、もちろん」

 

 

こうしてアタシはキッチンで料理を始めるのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

きっかけは、前世の記憶を思い出した時。

それまで、味付けなんてほとんどなくてね。

町に行って毛皮とかを売ったお金で塩とかバターを買って、それで味付けしてた。

バターは高いから当時はあまり買えなくてね。ほとんど塩ばっかり。

でも、ただ焼いた野菜に塩だけでも美味しいんだよ。当時はアタシたちにとってごちそうだったんだ。

ただ塩をふっただけのナスとかキノコはご馳走だったんだよ・・・本当に・・・。

お母さんもいつも「美味しいよ」って食べてくれてたから本当に世界一美味しいご馳走だと思っていたけど・・・

 

 

 

前世の記憶を思い出した瞬間にこの世界の料理が全てまずいと感じるようになった。

 

 

 

マジでこれ前世を思い出したデメリットだ・・・

森の中で過ごしていた時より、今のほうが美味しいと思うだろ?

 

 

 

そんなことないから

 

 

 

基本的にこの世界の味付けって、めちゃくちゃ薄味なんだよ・・・!北海道の濃い味で育った私をなめるな!!!!物足りなさ過ぎるんだよ!!!!!

コンソメも最近普及してきたらしいんだけど、アタシのしってるコンソメじゃないんだ・・・なんかめっちゃ味うすい・・・。チキンの味がちょっとするくらい・・・。

美味しくないからどんどん食欲なくなってきて、こりゃあかんと思ったときに「そうだ!自分で作ればいいんだ!」とひらめいた。

それから、こうしてキッチンに通い、料理長のミツタダと仲良くなったというわけさ!

 

 

「はは、マナミ様はきょうもはりきっているな、あとでゼリーをたべるかい?」

「たべます」

 

 

ちなみに、キッチンには料理人がたくさんいるけど、パティシエのアズキさんの作るスイーツは美味しい。そういえばマリーアントワネットもお菓子が好きだった話があったけど、この時代のヨーロッパは甘いものは美味しいのだろうか。

スイーツはなかなか食べれるくらいのお味なのに、肝心のごはんが美味しくなくては・・・ほんとまいってくる。

なんせ私、食べるの大好きだからね!!

食べ物のこと一日中考えちゃう自分がいてさ~。寝てる時も食べ物の名前を言いながらうなされてたってさおちゃん言ってた。それくらい美味しいものを欲している私は。

だから、美味しいものを食べたいんだよぉ。

肉料理とかはシンプルに焼いて塩コショウでも美味しいんだけど・・・全体的に薄味で物足りないよぉ。

 

 

 

「それで、今日は何を作るんだい?」

 

ミツタダが不思議そうに聞いてきた。作った料理はなるべくミツタダに教えるようにしてるから、ここの屋敷の料理のレベル超上がってきたから。マジで、美味しくなってきたから。私はとても嬉しい。(ただし、私がキッチンにいるのがバレると祖父母が怒るのでミツタダも手放しで私を歓迎できないようだ)

 

「今日はマヨネーズを作るよ」

「マヨネーズ?」

「うん、マヨネーズ簡単なのに作るの忘れてたわ!」

「材料は足りるかな!?」

「うん、多分普通にここにあるもので作れる」

「何を用意すればいい!?」

 

ミツタダはレシピ用に常に紙と万年筆を持ち歩くようになった・・・うむ、向上心があってとても良いと思うぞ。

 

「ビネガーと油と卵と塩少々」

「全部あるよ!」

「まずは少しずつ作ってみよう」

「OK!」

「材料を用意したら、卵を卵黄と白身に分ける」

「わけたよ!」

「黄身とお酢を混ぜる」

「混ぜたよ!」

「少しずつ油を入れる」

「固まってきた!!」

「最後に塩を入れて味みておしまい」

「え!?これだけ!?」

「うむ、これだけで信じられない美味しい調味料になる」

「ええ~~!!もうできちゃったよ!!?」

「うん、できたら味見してみよう!」

「・・・なにこれ!?美味しい!!」

「だろ?」

「こんなに簡単なのに、こんなに美味しいなんて・・・」

「あのさ、魚のエスカベッシュ(揚げ物)ある?お昼に食べた」

「残ってるよ!」

「それにつけて食べたら死ぬほど美味しい」

「・・・天才か!」

「魚のエスカベッシュ見て思い出したんだよね、魚揚げたやつにつけて食べたら絶対美味しいって・・・」

「よし、じゃあつけて食べてみよう!!」

 

 

ミツタダと一緒にエスカベッシュにつけて食べる。うむとても美味しい。ミツタダも美味しい美味しいって言って喜んでた。

(ちなみにエスカベッシュは魚に小麦粉をまぶしてただ揚げただけの料理だよ!)

 

 

「じゃあ、とりあえず今日の料理はおしまい!」

「ありがとう!こないだ教えてもらったポテチも最高に美味しくて賄いで作ってみたらすぐになくなったよ」

「だろうね、ポテチはさおちゃん用に明日にでも作ってくれ」

「OK!」

「あと、フライドポテトにマヨネーズも美味しいから、今日サイドメニューで食べたいです!」

「わかったよ!任せておいて!」

「よろしく~!」

「アズキくんが作ったゼリーもう少しで固まるからおやつに持っていかせるね」

「わかった!」

 

 

「卵黄しか使わないのか・・・もう少しマヨネーズを作って、残った卵白でお菓子でも作ろうかな・・・」と呟いているミツタダを背にしながらキッチンを後にした。マヨネーズがあれば割と無敵だと思う。卵白でどんなお菓子ができるか楽しみにしよう。

 

 

 

 


 

 

 

さおちゃんが社交界デビューするにあたり、いろいろとレッスンが忙しそうでぼっちになってしまった。

たくさん楽しい物語を書いていたけど、気分転換に庭に遊びに行くことにした。お母さんのお墓参りは毎日してるけど、屋敷の探検とかしようと思って。

それで探検してた結果、屋敷の使用人の人たちといろいろ仲良くなったわ!

ちなみに、我が家こんな感じ。

 

 

敷地内に他にもお屋敷があるし、マジですごいよ・・・

この我々の家族を支えるためだけに使用人が50人くらいいる・・・すごい・・・。

執事、侍女から始まり、庭師、近衛兵、料理人、なんか他にもいろいろ専門の人たちがいる。

ちなみに、この家だけの話だから。他の領地に他にもたくさん雇ってる人いるから、数えきれないほど使用人いるらしいわ。

侍女さんたちの話を聞く限りでは、シンプソン家に勤めたいと願っている人は山のようにいるらしい。

というのも、シンプソン家は代々美形の家系であるのと、使用人を大事にしてくれることで有名らしい。それはお父様とかおばあ様にも教わってたんだけど、使用人がいないと困るのは自分たちだから大事にするんだそうだ。

貴族の中には、使用人を奴隷のように扱う人たちも多いから、シンプソン家は大人気。それゆえ、使用人の中のエリートが揃っているんだって。優秀じゃないと勤められないらしいからね!すげーな我が家。

だからこそ、職場恋愛がとても少ないんだって。

質の悪い使用人ばかりの家は、誰が妊娠しただとか、二股三股で大修羅場で、仕事にも支障を出すおうちもあるそうな・・・。

でも、この家の使用人さんたちは自分たちの仕事に誇りを持っている人ばかりだから、それはなし。恋愛事でもめるのも大変そうだから、それは正解だよね。

そんなおうちなので、本当にみんな礼儀正しいし、とても良い人ばかり。噂話とか絶対しない。口硬いし、とても真面目な人たちばかりで好感持てるよ。

 

 

「あ、マナミ様~!」

「マナミ様だ~!」

「マナミ様どこにいかれるんですか?」

 

 

この子たちは、執事の一人のイチゴの弟たち。

イチゴは優秀な執事なんだけど、庶民の出で大家族でおうちがビンボーだったらしい。あんな王子様っぽい見た目のくせに庶民だったとか!休みのたびに弟たちの様子を見に行ったり、家族に給料のほとんどを仕送りしているのを見て、うちのおばあ様が「うちの別棟のお屋敷にみんなで住めばいいわ!」と提案して敷地内にある別棟に住んでいるらしい。

大きくなった弟の何人かは、そのままうちのお手伝いをしているよ。さっきもナマズオとホネバミが馬の世話をしてたの見た。

他の使用人の家族たちを住まわせることもあって、子供が何人かいるので、大きい子が小さい子のめんどうをみたりしてる。

何より、ここでは手が空いた人が子供たちに勉強を教えてあげている。レベルの高い教育を受けさせることで、将来的に優秀な使用人を育てるのだそうだ。

ちなみにさおちゃんは部屋にいない時は大体ここにいる。さおちゃんは前世でもそうだったが、ショタだ。

 

 

「新しい料理考えてたんだ~おやつのゼリーができるまで、ぼーっと歩いてただけ!」

「新しいお料理!楽しみですです!こないだのポテチも美味しかったですよ!」

「まさかお芋があんなに美味しいなんてね~」

「フライドポテトも好きです!」

「グラタンも美味しかったです!」

「ハンバーグが忘れられません・・・イチ兄も美味しいって言ってました」

 

 

この時代のジャガイモって、家畜のエサだから人間は食べてないんだよ。あんなに美味しい食べ物なのに信じられない。

まぁ芽に毒があるし、仕方ないんだけどね。ちゃんと芽を取って加熱すればめちゃんこ美味しいことを教えてあげました。

というか、さおちゃんがポテチのない世界にキレたwww

「ジャガイモ食べたい」って言ったら「家畜のエサだよ!?」って言われて、「は???」ってなってた。

だからまず我々が教えたのはジャガイモ料理だったかもしれない。

この世界で、まずジャガイモの地位を確立するためにめちゃくちゃ教えた。

だってジャガイモってじゃがバターだけでも美味しいじゃん。塩とバターだけでうまい食べ物って最高じゃん。

 

すでに開発というか作成した食べ物。

 

・ポテチ

・フライドポテト

・じゃがバター

・こふきいも

・コンソメ(元々あるやつを美味しく改造)

・グラタン(コンソメ美味しくなったので)

・カルボナーラ

・ケチャップ(元々あるやつを美味しく改造)

・ハンバーグ

・マヨネーズ←NEW

 

おじい様とおばあ様がお出かけしてる時じゃないとなかなかキッチンにいけないからまだまだこんなもん。

マヨネーズできたから、ポテサラ出来るね!また明日にでも作ってみよう。

フライドポテトにケチャップとマヨネーズつけて食べたいな・・・それもまた作ってみよう。

あ、あと、いよいよマヨネーズできたから、ハンバーガーも出来そうだな。それも相談に行こう。

 

何が悲しいってさ・・・

 

大豆がないことだよね・・・

 

それこそ、米さえあればオムライスとかできそうなものなのに・・・!!!!

大豆もさ~醤油とか味噌とか作るのに大事なわけよ。

我々何が一番食べたいって、ラーメンたべたいわけ。

 

ラーメンの麺はさ、小麦粉あるから大丈夫なの。問題は味付けだよね。

豚骨スープができたとしても、味噌とか醤油がないと味付けがね・・・。ただの豚骨より、味付けが多少あったほうが嬉しい・・・。

米と大豆はマジでほしいよ・・・

米食べたい・・・醤油があればすごいいろんな食べ物作れるって気づいたし・・・。醤油すごくない?ってか、大豆すごくない?

豆腐も厚揚げも油揚げも味噌も醤油も納豆も枝豆も全部大豆だよ????マジで大豆すごいってこの世界にきて実感したよね。

例えば醤油があるだけで料理の幅がかなり広がる。

醤油・・・醤油ラーメン・・・食べたい・・・_:(´ཀ`」 ∠):_

 

ということで、大豆はさおちゃんと探そうと言っている。なんとか貿易関係を調べられればいいんだけど・・・多分パパ上たちにお願いすれば何とかなると思うんだけど、まだ保護されて1か月半しか経ってないからね。いきなり貿易について聞いても変な顔されそうだから、その辺は何とかうまく探っていこうと思う。

 

 

(大豆があれば、ヨーロッパでなかなか良い商売になると思うんだけどなぁ・・・)

 

 

うーんとまた考え出したアタシに、子供たちが群がり、あれが美味しかったこれが美味しかったといろいろ感想を言ってくれている。

ちなみに我々森の中で生活してたから、その時に世間を知らずにいろんな料理を開発していたと思われているので新しい料理を作っても誰も不思議に思わないらしい。

 

 

「マナミ様お料理上手ですからね!」

「賄いのお料理も美味しいものが多くなりました!」

「ミツタダさんのお料理・・・とても美味しかったんですけど、マナミ様とサオリ様が来てからもっともっと美味しくなりました」

 

 

うむ、そうだろうそうだろう・・・確かにまずいわけではないし、むしろミツタダ以外の料理はもっと美味しくないらしいよ。

現代風にアレンジしたり、現代で私が知ってたレシピを教えただけ。それだけでもかなり違うもんな~

なんて、考えていた時、

 

 

「あーあ、町でもあんなに美味しい料理が食べられるといいのに!」

 

 

とミダレちゃんの一言で、

 

私の中で ピカーン! と何かがひらめいた。

 

 

「・・・町ではレストランとかあった?」

「あったけど、高級なところばかりだから、入ったことなかったよ」

「貴族専用みたいな?」

「そうですね、貴族の皆様専用のレストランはありました」

「屋台はありましたよ!」

「でも屋台のお料理はお祭りでしか食べれませんでした」

「たまに食べるお料理が美味しかったです・・・!」

「ふむふむ、なるほど・・・!」

 

 

うーん、この町では庶民向けのレストランはあんまりないのかな。というか、外食自体が貴族がすることで、庶民はそんなことしないんだろうな…。

もう少しこの辺も改善してみれば、もっともっと美味しい食べ物が産まれるかもしれないじゃないか!!?

大体食べ物に無頓着すぎるんだよ!!!貴族だけ美味しいもの食べて、庶民はパンとかばっかり食べてさ!!

貴族だって自分で考えないで、料理人に丸投げだし!!料理人だけが必死にアイディアだしてるから美味しいものは貴族専用になっちゃうんじゃないの!?

この世界のみんなが向上心を持って美味しいものを開拓していけば、私の世界で食べたことがない食べ物だって出来ちゃうかもしれない・・・!

 

食べ物革命を起こすべきなのかもしれない!!!

 

 

 

「いいこと思いついたわ!!きみらと話しててよかった!」

「え?そうなの?」

「と、特に何もしてませんよ・・・?」

「そんなことないよ!ありがとうありがとう!君たちのおかげだ!」

「よくわかりませんが、お役に立てたならよかったです!」

「うむ、きみたちはすでに我々の癒しとなっているから大活躍なんだけどな・・・!」

 

 

そんな話をしている時、

 

 

「お~い、おやつのじかんだぞ~!」

 

 

と、ケンシンが呼びに来た!

アズキさんのゼリー固まったから呼びに来てくれたんだって!

みんなの分もあるって言うから、仲良くゼリーを食べに向かうのであった。

(使用人と我々が一緒に食べちゃダメらしいんだけど、今日はおじい様たちいないから一緒に食べちゃう!)

 

 

 

(なんかこの世界でもやること思いついたぞ!)(さおちゃん帰ってきたら相談してみよっと!)

 

 

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