パーティー当日。
鏡の中には、お姫様がいました。
まぁちゃんがデザインしたドレスは、とてもシンプルだった。
フリフリなんて一切なくて、全身深紅のドレス。
ただし、うしろのウエストのあたりには大きなリボンをあしらって可愛さも入っているそんなドレス。
前世でウエディングドレスによくあったなこういうデザイン!と思った。
それに合わせ、イヤリングとネックレスはシンプルにダイヤをあしらったもの。
髪の毛は侍女さんたちがキレイにアップにセットしてくれました。
髪の毛に真っ赤なバラを差し込んだら、あっという間に出来上がり!
はぁ・・・こんなにキレイにしてもらえるなんて、驚いたよ・・・。
あの森の中の小屋ではいつもボロボロの服しか着てなかったから信じられない・・・。
だけど、嬉しいなと思っている自分もいる。何より、このデザイン、素敵だわ。さすがまぁちゃん。
「さおちゃん、めっちゃきれいだね!」
「きみのデザインしたドレスのおかげだよ、ありがとう」
「何もしてないよ!よかったな!」
「うん」
「じゃあ社交界頑張ってね」
「うん、頑張ってくるよ」
「お土産よろしくね!」
「え・・・お土産なんてないと思うけど・・・」
そんな会話をしながら馬車に乗り込んだ。
お父様とおじい様も一緒の馬車。馬車の中では私がとてもキレイだと二人とも褒めてくれた。お母さまに似てるらしいよ、だから少しお父様が泣きそうになっていた。
出会った頃を思い出したんだって。
私たちシンプソンズは、代々大臣の家系であるということで、王都の近くに屋敷があるのでお城までは馬車で1時間くらい。(王都の中にもお屋敷はあるみたいだけど)
かなり良い馬車のようであまり揺れることもなかったよ!よかった!吐くのめっちゃ気にしてたけど大丈夫だったわ!
馬車から見える景色が新鮮で、外を見ながら移動していた。
王都の中に入ると、たくさんのお店が並んでいて活気がある。
私たちがよくものを売りに行っていた村は、森の近くの少し大きめの町でお父様の領地の中らしい。
ということは、初の領地外に出ましたね。
初めての王都の中を目を輝かせてみていると・・・
「サオリ、あれが陛下のおられるお城だよ」
父がそういうのでもう少し先の景色を見ていると・・・
「わぁ・・・!」
シンデレラ城のような大きな中世のお城がそこにはあった。
(わあああ!!)(すてきぃぃぃぃぃ♡)(お城だ~~~~!!!)
お城に興奮しているとあっという間に門の前まで到着。
大きな門を馬車で通ったら、大きな階段の前で馬車は停まった。
従者の人がドアを開けてくれて、レディファーストで私から馬車を降りる。
続いておじい様、お父様の順でおりると、
「ハリス・W・シンプソン大臣、オルガ・B・シンプソン公爵様、サオリ・R・シンプンソン様がご到着されました!!!」
階段の横にずらっと並んだ兵士の皆さんが、その声で一斉に頭を下げた。
(ひ、ひえ~~~~!!!)(めっちゃ目立つ~~~~!!)
「では、行こうかサオリ」
そう言って、お父様が腕を出してくれたので、そこにそっと手を絡め歩き出す。
お父様が本日のエスコート役だそうです。お父様がそばにいて心強い・・・お父様いなかったら一人注目されて死ぬ。
階段を上り、お城の中に入ると・・・
「わぁ・・・!」
キレイな真っ赤な絨毯に、シャンデリア。中もヨーロッパのお城を連想させるとてもキレイな作りになっていた。(素敵すぎる)
私が中をキョロキョロしてみていると、おじい様から「レディがそんなに辺りを見回すものではないよ」と注意されてハッと気づき、散々予習してきた令嬢モードに切り替えました。
(`・ω・´)キリッ
そしてお城の中を進んだ先にある大きな扉の中には・・・
たくさんの人がいました!!!
(なにこれ、めっちゃ人いる・・・)
そのホールに入ろうとした時、
「ハリス・W・シンプソン大臣、オルガ・B・シンプソン公爵様、サオリ・R・シンプンソン様がご到着されました!!!」
またもや大きな声でドアのそばにいた兵士さんが言うものだから、中にいた人たちみんなでこちらに振り向きました。
(ひ、ひえ~~~)(恥ずかしい・・・!)(どういうこっちゃ・・・!)
「まずは陛下と皇太子殿下にご挨拶に行こう」
ホスト側である王族の皆様にまずご挨拶するのが礼儀だそうだ。
まっすぐ進んだ玉座に座る国王陛下、王妃様、そして王子様が座っているところまで歩いていく。
つくと、お父様とおじい様は、胸に手を当てて「陛下、この度はお招きいただきありがとうございます。皇太子殿下、17歳のお誕生日おめでとうございます」そう言って頭を下げた。
私もドレスの裾を持ち、令嬢のご挨拶をする。
(うまくできているだろうか・・・)(ドキドキ・・・)
なぜかその場は静まり返っていて、これだけ注目されているんだから失敗は許されないとドキドキしてしまった。
陛下は「本日はよく来てくれた。・・・そちらが見つかったお前の娘か。確かにエミリアに似ているな」とほほ笑みながら言ってくれた。
王妃様にも「お名前は何というのかしら?」と聞かれたので、急いで「サオリ・ローズ・シンプソンと申します」と自己紹介して、またペコリと頭を下げた。
大丈夫大丈夫、ロッテンマイヤー先生に何万回もご挨拶の仕方を教わったんだ、大丈夫大丈夫。
緊張のまま顔を上げると、王子様と目が合った。
勉強した中でお名前を知った「ケイゴ・K・アトベ」様。王子様は眼光鋭く私のほうを射抜いていた。
(ひえっ・・・!)
何か粗相でもしてしまったのかとドキドキしていた私だけど、「まぁかわいいお名前ね、ケイゴ、一曲お相手して差し上げなさいな」という王妃様の言葉に、王子様は「わかりました」と立ちあがり、私の前にやってきた。
そして、
「一曲お相手願おう」と手を出してきたのだった。
ああああ・・・
あああああああ・・・!!
ああああああああああああ!!!
ずっと森の中で暮らしてきて、男性耐性は0!
なんなら前世でも彼氏なしの干物女だったので、長年の蓄積された分、むしろ耐性はマイナスと言っても過言ではなかった。
心の中で大暴れである。
三(‘ω’)三( ε: )三(.ω.)三( :3 )三(‘ω’)三( ε: )三(.ω.)三( :3 )ワーーーー
死ぬ。
マジで、吐きそうだヤバイ。
(だけど、)(ここは完璧にしなければ・・・!)(シンプソンズの名が廃る・・・!)
その間、およそ0.5秒。
私は優雅にほほ笑んだ後、
「よろしくお願いいたします」
と、王子様の手を取った。
「ふん、思ったよりも踊れるようだな」
王子様が耳元でそんなことを言うもんだから、私は無心です。無心。
無です。
( ˙-˙ )スン
もちろん、無なのは心の中でだけで、表は営業スマイルで頑張ってますよ。
ここ1か月で一番特訓したのは、実はダンスでも貴族社会のことでもなく、笑顔だったからね!!!!
私のあまりの無表情さにロッテンマイヤー先生大激怒。自分だって全然笑わないくせに!!社交界では令嬢は笑顔を絶やしてはいけません!とか言ってさ!!
家にいる間常に笑顔を義務付けられていたんだから・・・!
(私はやればできる子・・・!)(やればできる子・・・!)(やれば!!!できる!!!)
そう思いながら、必死に笑顔で踊る私・・・今のところ間違ってはいない・・・と思う。
「ありがとうございます、皇太子殿下」
笑顔を張り付けたまま言えたと思う。マジで必死私。
あ、ちなみに社交界ってパートナーとかエスコート以外の男性からダンスに誘われるのは普通。
「一曲踊ってくださいませんか」と言われたら、自分より身分の低い方はお断りしてもいいけど、基本的にはお受けするのがルールらしい。
だから、常に男性とくっついてるわけだ。
唯一誘われないのは食べ物を食べている時だけらしい。これ終わったら、お皿とフォーク持ってうろうろしようと心に決めた。(コルセットが苦しくて全然食べられないと思うけど)
「お前、行方不明になってる間、森にいたんだってな」
突然、王子様がそんなことを言うから、会話を続ける。
なかなかお口の悪い王子様ですね。
「はい・・・そうです」
「ダンスなんて出来やしねーと思ってたがな」
「・・・淑女として当然のことですわ」
「そーかよ、ま、何にせよ森にいて正解だったかもな」
「・・・それはなぜですか?」
「クク、聞いてねーのかよ?お前とお前の妹のどちらかが、俺に嫁ぐ予定だったんだぜ?」
「え」
ここで初めてステップを間違えた。
それに気づいた王子様は楽しそうに笑っているけど、何ちゅー爆弾落としてくれたんだこの人は!!!
「・・・そ、それは存じ上げませんでした・・・」
「だろうな、お前のうちと王家は親交が深いからな、お前の母親が妊娠した時に、うちの母がとても喜んで2人で女の子なら将来俺の嫁にすると相談してたそうだ」
「そ、そうなのですか・・・」
「ま、結局、お前たちがいなくなって話はなくなったけどな。俺も隣の国の姫と婚約してるし」
「はぁ・・・」
「お前、さっきから無理してるのバレバレだ。王妃なんか務まらねぇよそんなんじゃ」
「!?」
「顔、ずっと引きつってるぞ。ま、俺様以外は気づいてないと思うがな」
「え・・・」
「この短期間でいろいろ覚えたと思えば及第点だな」
そして、ステップを間違えたのは2回となった。
(な、なんなのこの王子!?)(もうやだ王子怖い!)
1曲目が無事に終わって、元の場所に戻る。もうやだ、お父様とおじい様とずっと一緒いる・・・
そう思いながら戻っている時に、
「また気が向いたらまた相手してやるよ」
そう耳元で呟いて王子は自分の席に戻っていった。
踊ってくれたお礼を言い、お父様とおじい様のところに戻ると2人は王様と王妃様と談笑中。
もう王族の人たちと話したくない私は、料理がある場所へと向かうのだった。
そして、美味しい料理を手にとろうとした時、
「あの、シンプソン公爵家のサオリ様ですよね?」
と声をかけられた。
見るとそこには、
(あれ?)
とても可愛い女の子の集団が・・・
「あちらでお話しません?」
いい笑顔で言われた。
(うっそ、ナニコレ怖い)
(待って、これ知ってる)
(これ、絶対あれだ!!)
(何王子様と踊ってんのよブス!!ってやつだ!!!)
(社交界デビューの初っ端で王子様と踊ったから、調子乗んなって言われるんだ絶対!!!!)
ガクブルしながら、どう返事をしようか迷っていると、
「さぁ、行きましょう!」と手を引っ張られて会場の外に連れていかれてしまった。
(ああ、やばい)(これ詰んだ)(女子のいじめへの対抗手段は習ってませんよ!!!!)(ロッテンマイヤー先生!ちゃんと教えといてください!!)
人が少ない会場の外で、令嬢たちにいじめられると思ってどうしようかと悩んでいる私に、金色の髪の女の子が発した第一声は、
「あなた、あの王子様と踊るなんてすごいわね!!」
だった。
(???)
何が何だかよくわからない私に、彼女は続ける。
「王子様って、ほとんど誰とも踊らないし、踊っても早いステップを好まれるからついていける人って少ないのよ~!すごいわ!」
「さすが、オルガ様とエミリア様のお嬢様よねぇ~素晴らしかったわ」
「ねぇねぇ、今日の服、すっごくイケてる!どこの仕立て屋さんで仕立てたの?」
「あなたたち、名前も名乗らずに不躾ですわよ!まずは自己紹介からしなさい!」
一気にいろいろ聞かれて困っていた私だけど、青い髪の女の子がそう言うと、みんなハッとして自己紹介をしてくれた。
「私は、アンジェリーク・リモージュっていうの、よろしくね!」
「私もアンジェリークって言うの、アンジェリーク・コレット」
「私はレイチェル・ハートだよ★南のほうの国からやってきたの」
「わたくしはロザリア・デ・カタルヘナですわ。カタルヘナ公爵の長女です。」
「サオリ・シンプソンと申します。よろしくお願いいたします」
「堅い堅い!せっかくだから、仲良くやりましょう!」
「レイチェル!あなたはいつもいつも言っていますが、砕けすぎですわよ!」
「も~ロザリアはお堅い令嬢代表だよね~!」
「それより、サオリ様のお話をお聞きしたい~」
「私も!16年間も誘拐されていたんですよね?」
ゆ、誘拐???
誘拐・・・されたわけじゃなくて、母が私たちを連れて逃げたんだけどな???
「えっと・・・皆さん、その話をどこで・・・」
「あら、オルガ様とエミリア様のお話は社交界では伝説よ、伝説!」
「え・・・」
「あ~本当に素敵なお2人だったと聞いているわ、お2人が会場に現れると、みんなため息が出たくらいお似合いのカップルだったんですって!」
「だけど、あんなことにあって・・・大丈夫だったの?元気に過ごしてらしたの?」
「え、ええ・・・それなりに暮らしてました(言えない、自分たちで狩りに行って生活してたとか、野生児万歳のお話は聞かせられない・・・)」
「それは何よりでしたわ、でも、エミリア様のことは残念でしたわね・・・」
こわいこわいこわい
社交界、すげー噂広まってる、こわっ
めちゃくちゃ噂されてて恐ろしいわ・・・!
多少違うこともあるけど、いろんな噂が広まってて怖い・・・!
ナニコレ、どちらかというと私たちは不憫でかわいそうってことになってるの??それなりに楽しく愉快な生活してたけどな??(お母さんが死んじゃったのは悲しかったけど)
「オルガ様もね、とっても素敵な方でしょ?エミリア様とお子様が誘拐されて行方不明ということで後妻の話もたくさん持ちかけられていたらしいんだけど、全部お断りしてたんですって!」
「どんなに女性からアプローチされても愛しているのはエミリア様だっておっしゃって」
「「「素敵よね~~~」」」
「もうあなたたち!下世話ですわよ!」
そうプリプリ怒るロザリア様。一応このグループのストッパーなのだろうか。
「そうだったんですか・・・私全然そんなこと知らなくて・・・父と母が仲が良かったということは聞いていたのですが・・・」
「お二人は社交界では注目の的だったから、私たちの親世代はみんなオルガ様とエミリア様のようなお二人に憧れていてね、子供のころからお二人のようになりなさいと言われて育ったのよ」
「え!そこまで!」
「オルガ様、今でも素敵な方ですものね~サオリ様のようなお美しいご令嬢がいるように見えませんもの」
「他国に行かれた時に、王女様に求婚されたという話もあるらしいわね」
「やだーモテモテじゃない!」
「うちのお母さまもさっきオルガ様を見てうっとりされていたわ」
「うちのお母さまもよ~」
「「「素敵ですものね~~~」」」
「もう、あなたたち!いい加減になさい!」
はぁ~さすがだのぉ。さすがおディーン様だ・・・。いまだにモテモテなんだなぁ。
私たちのこと溺愛してくれる良いパパのイメージだったけど、こうして外に出ると皆さんと笑顔で話してうまいことやってるみたいだしなぁ~。いつもよりもお仕事モードなのか、キリっとしててやっぱり素敵だもんな~。
婦女子たちの心を掴んで離さないお父様さすがだわ。
そして、この人たち面白いな、コントかな?三人が暴走して、ロザリア様一人がツッコミで・・・なかなか愉快な令嬢で良かったわ!
「それにしても、サオリ様、今日のお召し物とっても素敵!」
「ね、素敵ね!」
「ロザリアとレイチェルに似合いそう!」
「私もフリフリより、こっちのが似合うと思った!」
「ロザリアフリル似合わないもんね~」
「し、失礼ですわね・・・!」
「どなたがデザインしたのか教えていただける?」
「あーこれは妹のマナミが・・・」
「え!マナミ様が!」
「素晴らしいわ、マナミ様センスがおありなのね!」
「ありがとうございます・・・私も気に入ってるの・・・」
「そうよね、とっても似合ってらっしゃるもの!」
「みんなヒソヒソ噂してたから、きっとこれからはこういうシンプルなドレスが流行るかもね!」
「そ、そこまでじゃないと思うけど・・・」
「マナミ様、本日は体調が優れないとお聞きしたけど、大丈夫なのかしら?」
そう、本日はまぁちゃんは体調が悪くて欠席ということになってるんだった。本当に情報出回るの早すぎて、令嬢ネットワーク怖いと思った。
「ええ、大丈夫ですわ、今度は2人で参加出来たらよいのだけど・・・」
「そうですね・・・もしよろしければ、今度我が家にも来てくださらない?お茶でもしましょう!」
「それいいわね!マナミ様のお話もいろいろお聞きしたいわ!ぜひご一緒に」
「え、ええ、伝えておきますね」
「楽しみにしていますわ!」
そんな話をしていた時、
「サオリ?ここにいるのかい?」
「お父様!」
ホールから姿が見えなくなった私を心配して、お父様が迎えに来てくれた。
「ああ、素敵なお嬢さんたちとお話していたのかな」
「はい、お父様、皆様とても優しくて、妹のことも心配してくれていたのですよ」
「そうかい、それは感謝しなければね。ぜひ今後もうちの娘をよろしく頼むよ。友人がいないから、ぜひ友人になってもらえると嬉しいよ」
「もちろんですわ!!」
「お任せください!!」
「はは、今度ぜひうちに遊びに来てださい。では、サオリ行こうか」
「はい、お父様」
令嬢たちに一礼すると、令嬢たちはポ~っとお父様を眺めていた。あのロザリアすら、礼が遅れたくらいにして・・・。
(お父様の威力はものすごいのね・・・)
そう思いながら、お父様のあとについていった。
「僕と踊っていただけませんか?」
戻った私に待っていたのはダンス地獄だった。
食事でも食べて誘われないようにするぞ!!と思ったのに!!!!!
全然食べる暇ないくらい捕まって!!!!
おじい様も一応一緒にはいてくれるけど「●●家の長男の〇〇くんだよ」って教えてくれるけど、ダンスは断らないあたり踊ってこいってことだったんだと思う。なんせ、婚活に積極的なおじい様なので。
お父様は、王族以外は自分たちより身分が低い人も多いし、断っても良いとこっそり耳打ちしてくれたけど、そんなの出来るはずない・・・orz
くそ~~~と思いながらも頑張って踊り続ける私・・・
そして、やっぱりさっきの王子のダンスはステップが早かったんだと気づいた。
なんであんな早いステップで・・・というか、私家でもあのステップで練習してたんだよね。
もしかして、あれって王子対策だったのかな・・・?
ということで、他の皆様はもう少し落ち着いて踊れたので、失敗することもなく踊れましたけどね!!!
でも、疲れたわ・・・。
そう思いながら、フラフラとバルコニーに出た。
(はぁ・・・暑い・・・踊りすぎて体が火照ってきたから、夜風気持ちい・・・)
はぁ、と息をつくと、
「あれ?大臣様のお孫さんやろ?」
という声が聞こえた。
急いで背筋を伸ばして、令嬢モードになり、にこやかに
「こんばんは」
そう挨拶した時、
!!!!!???
私の中の世界が止まった。
私が今まで見た男性たちの誰よりも、素敵な男性がそこにいた。
驚きすぎて固まってしまった私に、彼は自己紹介してきた。
「初めまして、私は西の国から留学してきているクラノスケ・シライシです」
「え、あ、あの、私、サオリです、サオリ・シンプソンと申します」
「さっき、大臣様と一緒におったから、そうかなと思うてたけど、やっぱりシンプソン公爵家のお嬢さんやったんですね」
「は、はい」
(ダメだやばいやばい)(ちょっとちょっと!!さっきの王子様より百倍もかっこいいわ!!)(いや、王子様めちゃんこかっこいいんだろうけど、この人すごい私の中でドストライクだわ!!!!前世で出会ったイケメンたちよりもイケメンだわ!!!!)
や ば い !
心臓がバクバクいって、一気に変な汗が出てきて、この場から今すぐいなくなりたいのに、一緒にいたいって気持ちになって、こんなぐちゃぐちゃな気持ち初めてで自分でも驚いた。
(クラノスケ様・・・!)(私の推しになりました!!!!)
「社交界は今日が初めてってほんまですか?」
「あ、はい、そうです・・・」
「大臣様とオルガ様にはお世話になっとるんですよ。ご令嬢が見つかったって聞いて大喜びしてはったから、私も良かったと思うてて、」
「そうでしたか・・・」
「いろいろ大変なこともあったと思いますが、ご家族に会えて良かったですね!!」
そういって、クラノスケ様はほほ笑んだ
キュ~ン
なんだこれ、めっちゃ胸が高鳴る、やばいこれ、吐きそう・・・
このままでは私は彼の笑顔で殺されてしまう・・・そう思っていた時、
「おい、何してんねん」
同じ方言の金髪の男の子がバルコニーに顔を出した。
「探したで」
「ああ、すまん、中暑いから涼しんどったんや」
「あ、え、大臣様の・・・」
「ああ、オルガ様のご令嬢のサオリ嬢やて」
「え!あ、そうなんか!はじめまして!俺もクラノスケ様と同郷で留学中のケンヤ・オシタリ言います!よろしくお願いします!」
そういって、ペコリと頭を下げた金髪の彼。挨拶がとても好感を持てる感じだった。
私は何度目になるかわからない自己紹介をすませると、
「〇〇侯爵様が挨拶したい言うてるけど・・・」
「お、ほな行くわ」
そう言って、二人が中に戻ろうとした時、彼は
「また、お会いできるとええですね!」
そう、ニコッと笑って去っていった・・・
ノックアウト
完全に、やられました。
さっきよりも火照ってしまった体を抱えるようにその場にしゃがみ込み、しばらく一人でボーっとしていたのだった。
(あんな破壊力のあるイケメン、見たことがありません!!!)