あれから数日
毎日早く帰っていたおかげか、特に会社では会う事もなく平穏無事に過ごすことが出来ていた―――――――――
「まえさん、ご飯食べてかえろ~」
「うん、そうしよう!」
(まぁちゃん、研修医の看病で帰って来るの遅いし、いいか)
友だちと一緒にご飯を食べに行こうと、会社を出た
エントランスを出ると、
(あれ、どこかで見たことある・・・)
以前見かけたことのある可愛らしい女性がいた
その隣には、モデルのようなものすごい美人な女性の姿も
「すっごい美人だね・・・モデルさんかな・・・?」コソコソ
友だちが話しかけてくる
「私もそう思ってた!」コソコソ
そんなことを2人で話しながら、その場を去ろうとした時・・・
「あ!くーちゃん来た!」
と可愛らしい女の子のほうがそう言って、
「蔵ノ介」
モデルのような美人な女性がそう、名前を呼んだ
(え・・・?)
(くらのすけ、って、まさか・・・)
「何会社まで来てんねん」
その声に思わず振り向いた
「・・・」
「・・・」
そして、彼と目が合う
(最悪)
(そう言えば、)
(この子、前に白石くんがお金渡してた子だ・・・)
(今日は、もう一人増えて・・・)
(二股?)
(最悪)
(信じられない)
私がそんなことを考えていると、
「・・・お疲れ様です」と、彼は私に会釈をした
私は軽く頭だけ下げて、そのまま歩き始めた
(最悪だよ)
(会社に彼女とか)
(あんな綺麗な人たち、)
(勝てるはずないじゃん)
ん?
勝つ?
何に?
何を考えているのか自分でもわからない
(なんか、私おかしい)
(なんか、すごくモヤモヤする)
そう、思っていたら
「あの!!」
白石くんが私を追いかけてきていて、
グッ
私の腕を掴んだ
私は思わず振り向く
「姉ちゃんと妹ですから!!」
白石くんは私にそう言った
(え・・・)
そして、「・・・じゃあ、お疲れ様でした」また頭を下げて、彼女たちのところへ行った
「え、何今の!!まえさん!!」
隣で友達がキャーキャー騒ぐ
(え・・・)(妹と、お姉さんって・・・)
(た、確かに)
(言われてみたら、何となく似ているかもしれない・・・)
3人並ぶと、ますます芸能人じゃないかと目を疑うほどの空間になるけど、
美形なのはみんな同じ・・・
(んー・・・)
(じゃあ、彼女は別にいるのかな・・・)
そんなことを考えていた私に「ちょっと、ご飯食べながらいろいろ聞くからね!」という友達に、どうやって説明しようか悩んでいた
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次の日
最近早く帰り過ぎていたので、さすがに仕事もたまっていて、今日は残業
(あー久々の残業)
(もう9時過ぎたし、まぁちゃん帰ってるかな・・・)
そんなことを考えながら、一旦手を止める
作業を中断し、保存して、パソコンを落とす
(そろそろ帰ろうかなー)
そうして、私は帰り支度をして、エントランスに向かった
(あーまぁちゃんからLINEきてる)
(今帰るよって連絡して・・・)
(早くかえろっと・・・)
携帯をポチポチいじりながらだったから、気づかなかった
「まえさん!」
(え?)
そう名前を呼ばれて思わず振り向いた
「・・・お疲れ様です」
(げーーーーーー!!)
(なんでいるの!!!???)
そこには、今一番会いたくない 彼 がいた
(わー!!完全に油断してた!!)
(いや、最近早く帰ってたし、)
(昨日はたまたま会ったけど、特に待ってる様子とかなかったし、)
(絶対、もう話しかけられないと思ってたのに・・・!)
そんなことを頭の中でグルグル考えた
「・・・あの、」
「・・・はい(何だろ、早く帰りたいのに)」
「ちょっと話、ええですか?」
「え!?」
あの時のことが鮮明に蘇る
(・・・ダメ!!!)
(絶対ダメ!!!)
(2人きりになったら危険だ!!!)
警戒すべき人という立ち位置であるこの人を前に、私の口からは
「ダメ!」
という言葉が出ていた
(あ、)
(思わず、全否定しちゃった)
その言葉に彼は、(見間違いじゃなければ)少し悲しそうな顔をした
「・・・そうですよね、」
「・・・あ、すみません」
「いえ、」
「じゃあ、あの、お疲れ様でした」
それだけ言って私がその場から去ろうとすると、
「ちょお、待ってください!」とまた声をかけられた
(な、なんだよも~~~)
(ちょっともーしつこいなぁ!)
「・・・なんですか」
「あの、そこのスタバでええですから!ほんまにちょっとだけええんです」
(・・・スタバって・・・)
(2人きりにならないから大丈夫ってこと!?)
(ダメダメ、男は信用できないよ)
(力づくでは勝てないもん)
(どっか連れ込まれたら負けちゃう!)
「いえ、あの急いでるので・・・」
「少しだけでも、ダメですか?」
(もう、なんなの!)
(しつこい!!)
ムカムカムカムカムカムカムカムカ
「白石くん!」
「はい、」
「白石くん、何してるんですか」
「え」
イライラした私は、思わず
説教
を開始してしまった・・・
「私なんかに話しかけてる場合じゃないでしょ!」
「いや、」
「家で彼女も待ってるのに!」
「え?」
「そもそも、昨日だって、わざわざ妹さんとお姉さんのこと言わなくても良かったんです!」
「・・・」
「白石くんと私は何も関係ないんですから!!」
「じゃあ、お疲れ様でした!」と、私は歩き出す
(もうやだ!)(しつこい人嫌い!!)
(なんで、そんなに話しかけてくるの!?)
(なんで、そんなにいつも必死で、)
(なんで、私のこと、)
いつも、真っ直ぐ見てるの・・・
そう思うと、足が止まった
「・・・おれ、彼女おりません」
(え?)
その言葉に、思わず振り返る
「まえさん、」
そして、彼は私の目の前に来て
「ちゃんと、話させてください」
そう言ったのだった