彼と２人でスタバに入り、小さなソファの席に座った
冷たい紅茶が、空腹の私のお腹を満たした
話しを切りだしたのは彼からだった
「付き合ってもらってすみません、すぐ終わらせますから」
その言葉に、私はコクンと頷いた
「・・・あの、まずはこないだのこと、ホンマにすみませんでした」
彼はあの時のように、再び頭を下げる
「言い訳にしか聞こえないと思いますけど、っちゅーか、言い訳ですけど、」
そう彼は言いながら話を続ける
「あの日、おれホンマに楽しくて、飲みすぎました」
「まえさんのこと見てたら自制できんくなって、あんなこと、してもうて・・・」
「まえさんが出てってから、ホンマに最低なことしたってずっと思ってて、」
すみませんでした、
もう一度彼は私に頭を下げた
（・・・言い訳じゃん）
（なんだよもう、）
けど、
なんだか、
その必死な謝り方から、本当に後悔しているのかなっていうのは、なんとなくわかった
「もう、いいです、覚えてないって言ったじゃないですか・・・だから、もういいです」
「けど、」
「全部忘れますから、大丈夫ですから、」
（大丈夫、なんて嘘）
（でも、）
（やっぱり、私、本当のこと）
（言えない・・・）
「じゃ、じゃあ、話が終わったなら、これでわたし、」
「まえさん、」
「は、はい」
「俺、まえさんのこと好きです」
（え？）
突然の彼の言葉に思考が止まる
（え？）
（え？？？）
（この人何を言ってるの？？？）
ここスタバだよ？
周りの人の視線が集まったのが分かった
（え、ちょっと）
（なんで、この人、こんなことろで、）
（え？）
（ってか、）
（私のことが好きって？）
（うそでしょ？？）
完全に固まってしまった私のことを気にせず、彼は続ける
「俺、入社式で写真を撮るまえさんを見て、説明会の時にいた人やってすぐにわかりました」
「それからずっと気になって目で追ってしもうて、」
「俺たち新入社員にもいつも笑顔で接してくれたり、」
「２週間の広報の研修の時も、前さんのいいとこめっちゃよくわかって、」
「それに・・・俺いつも毒草好きって言うたらおかしいって引かれるのに、まえさんはそんなこと全然思ってへんくて、」
俺、この子しかおらんって思ったんです
そんな風に白石くんは言った
（・・・・・・・）
（やばい・・・）
（どうしよう・・・）
こんなこと言われたの、産まれて初めてかもしれない
（う、嬉しい）
（告白されるのって、すごく嬉しい・・・）
（しかも、こんなイケメンから）
そう、イケメンだ・・・
だから、ものすごく怖い
（騙してるんじゃないのかな・・・私のこと、）
（誰に対してもそういってるんじゃないの）
（自分に振り向かせるゲームなの？）
（そうやって、女の子をいつも口説いて、）
だけど、
やっぱり彼は
私のことを真っ直ぐ見ていて、
（や、やめてよ、）
（その目が、）
（視線が痛いよ、）
私は視線を反らした
「まえさんのこと、ほんまに好きなんです」
「や、やめて、そ、そんなわけないよ、」
「本気ですよ俺」
「だって、白石くんみたいなかっこいい人が、私のこと好きになるなんておかしいよ、」
「・・・何言ってるんですか、俺まえさん以上の人に会ったことありません」
「・・・」
「あれから、俺のこと避けてるってわかってました、けど絶対あきらめられへんかったんです」
「・・・」
「本気で、前さんのことが好きなんです」
（や、やめて、）（もうそれ以上）
それ以上言われたら
私、
おかしくなっちゃう
スタバで（全然ロマンティックじゃないよ）
周りの人にも聞かれてるのに（告白は２人きりがよかった）
こんなブスな私に（似合わないよ、私とあなたじゃ）
騙されてるかもしれないのに（彼を信じられらない）
それなのに、
どうしてこんなに
心臓バクバクいってるの
（どうして私）
（こんなに嬉しいの）
「まえさん、俺」
「や、やめて」
（だめ、これ以上は）
「白石くん、やめて、ほんと」
（ダメになる）
「おねがいだから、」
（彼のこと）
「やめてください・・・」
（好きになっちゃう・・・）
私がうつむいて、小さな声でそう言うと、
彼は、
「わかりました」
そう言って、
「送ります」
とカバンを手に取った
何か、話そうと思ったけど、その後は何も言葉が出なくて、
ただ、
彼に、
「・・・また、明日」
それだけ言うと、家に帰ったのだった
