白石くんが、話があるというので、二人で外に出た。
外はすっかり秋の装いで、風が気持ちよくって、私たちはカラオケ屋さんの前にあったベンチに腰掛けて、話すことにした。(知ってるよ、毒草の話でしょ?)
「すまんな、連れ出して」
「ううん、大丈夫だよ。白石くん、毒草の話だよね?」
「え」
「毒草の話、聞くよ。どんどん話して!」
「いや、そうやなくて・・・」
「?」
「さっき、俺ばっかり話してもうたから、さおりちゃんの話も聞かせてもらいたいな思うて・・・」
「え、私!?」
「おん・・・ダメ?」
「ええ、いいけど・・・何話せばいいんだろう・・・(ダメ?ってくそかわいいなおい)」
「好きなもんとか、趣味でもええで!」
「ええ・・・そうだなぁ・・・写真撮るのが好きかな・・・」
「そうなん!?だからでかいカメラ持っとるんか!」
「あ、うん・・・そうだね。好きなんだ写真撮るの。今日もたくさん白石くんの写真撮ったよ」
「え!?俺!?」
「あ、ごめん!!!勝手に撮ってしまった!!!気持ち悪いよね!!ごめんね!!!」
「・・・謝らんでもええけど」
「いやいやいや、本人に内緒で写真を撮るなんて、これはストーカーと言われても仕方ないことだよ・・・写真はあとでLINEで送ろうと思ってたんだ・・・」
「ストーカーって・・・」
「これなんて、すごいよく撮れてるんだよ」
私はそう言いながら、スマホに転送した写真を白石くんに見せた。
白石くんは「ほんまや」と言って、私のスマホを覗き込んだ。
「あとね、これも、みんなすごく楽しそうなところ撮れたしね」
「おお、ほんまやな」
「屋台でたこ焼き売ってたところも・・・」
「ほんまにめっちゃ写真上手いな」
「いや、上手くはないんだよ!ただ本当に好きなだけ」
「いやいや、スマホで撮る写真とは全然ちゃうわ」
「それはね・・・やっぱりそこは一眼レフだよね」
「うん、めっちゃすごい・・・」
そういって顔を上げた白石くんと目があう。
Σ(゚□゚;)
めっちゃ近かった。
そりゃそうだわ、一つのスマホを覗き込んだら近いわ。距離近いわ当たり前だわ。
(私は無意識でなんということを・・・!)
もちろん反射的にバッとすぐに離れて。
焦って白石くんに謝る。
「ごごごご、ごめんね!!近かったね!!ごめんね!!」
「いや、俺も近すぎたわ、すまん」
「わー本当にごめんね!!!」
「いや、」
「ごめんごめん!最悪だ私・・・」
「・・・もうええって」
「だって、申し訳なくて…」
「なぁ、もう謝らんでや」
「え」
「さっきも言うたけど、謝ったり、”私なんか”って言うたり、俺イヤやねんそういうの聞くの」
「・・・(やば・・・またやっちまった)」
「俺な、ホンマに、さおりちゃんはめっちゃええ子や思うねん」
「えぇ・・・」
「そんなええ子がすぐ謝ったり、私なんてっていうのイヤやねん」
「・・・うん」
「せやから、もう謝るの禁止な!」
「うん、わかった・・・」
「ほな、続きな!」
今日一日白石くんがイライラしていた理由がなんとなくわかった。
(なんだ、私のせいか)
確かに、白石くんの前で気を使いすぎて謝りすぎたり、一歩引いたり、ネガティブ発言したり・・・
私なんかが白石くんに近づいていいなんてどうしても思えなかった。(また私なんかって言っちゃったけど)(思うしょ、BBA思考すぎて・・・)
(確かに、)(白石くんの性格からいって、あんまりネガティブなのは)(好きじゃないかも・・・)
こうやって現実で話すと難しいな。
ドキサバとかも下手だったしな私・・・全然良い選択肢が当てられないわ・・・。
でも、ちょっと、ネガティブ発言は気を付けようと思う。
「ほな、他に好きなもんは?」
「ほ、他~?えーっと・・・」
(困るなぁ・・・)(好きなものなんて、白石くんだよ)(私の一番好きなのは白石くんだよ・・・)
白石くんが好き。
だから、白石くんに関わっている全てのものが好き。
細谷も関西弁も大阪も毒草だって、全部、白石くんが好きだったから好きなんだ。
(私の全てが白石くんで出来ているから、他の好きなもの考えるの難しいな・・・)
「えーっと、えーっと」
「なんでもええで」
「えーーっと、それじゃあ、恐竜」
「え!」
「あと、配線と・・・あ、パソコン触ってるのも好き・・・」
「おお・・・男趣味やな・・・」
「え!?そうだよね!?」
「いやいや、悪い意味じゃないで。むしろ、女の子ってオシャレだの恋だの可愛いものだの、そういうの好きってイメージやったから・・・」
「ああ・・・そうだね・・・オシャレとかは身だしなみとして最低限必要だと思ってるよ・・・」
「まぁ、せやな、身だしなみ」
「日舞とお花とお茶と習字も習ってるよ、あんまりうまくないんだけどね・・・」
「え、すごいな、大和撫子やん」
「そうかな!?(そういってもらえるために頑張りました!!)」
「おん、めっちゃすごいわ、さすがやな」
「でも、お菓子も作ったりするけど、ゲームしてるほうが好きだし、やっぱり私男性脳なのかもしれないね」
「でも、持ち物かわええやん、女子っぽいなぁて思うで」
「持ち物はね、可愛いほうがテンション上がるよ。キャラクターではぷーさんが好きだから集めてるし・・・」
「ぷーさん!ディズニー?」
「うん、ディズニー好きなんだ」
「そうなんや!」
「ディズニーランドも年パス持ってるから、まぁちゃんと良く行くよ」
「おお・・・すごいな・・・さすが榊グループやな・・・」
「うん、榊グループはスポンサーだし、投資もしてるから、いろいろ格安になるんだ。よかったら、今度白石くん一緒に行こう。チケット無料で用意できるから」
「いやいやいや、無料って・・・さすがに遠慮してまうわ!」
「平気だよ?一緒に行けたらいいなぁ」
(前世から何度も夢見てたからね・・・)(白石くんとのディズニーランド・・・)(絶対楽しい・・・)
「せやな・・・ほな、いつか一緒にいこうな」
「うん!一緒に行こう!」
「約束な」
「うん、約束」
「いろいろ、好きなもの聞けてよかったわ」
「白石くんは?毒草の他の好きなもの聞きたいな」
「いや、俺のことは・・・」
「だって、毒草のイメージ強すぎるよ!」
「さっき毒草の話しかせぇへんかったもんな」
「私、白石くんの好きなもの知りたい」
「・・・なんや、照れるな・・・。せやなぁ、カブトムシ飼ってるで」
「カブトムシ・・・(カブリエルか・・・)あれ、跡部のキングサタンと戦ったことある・・・?」
「知っとるん!?俺のカブちゃん選手権っちゅーのがあってな!それで跡部くんと戦ったわ!」
「そういえば、跡部から聞いたことあるよ(うそです、前世に漫画で読みました)」
「そうなんか!もうな、カブリエル最高すぎて、離れられへんわ・・・」
「へぇ・・・(やべぇ、これカブリエル最大のライバルだな!)」
「あとは、最近、小説書くの趣味やねん」
「そうなんだ、どういう小説?(毒草聖書だ・・・)」
「俺新聞部にも入っとるから、校内新聞でミステリー小説を連載しとるんやで!」
「あ、そうなんだ~小説な私もよく書くよ(前世は主にさおまな書いてる人生でした)」
「えぇ!?ホンマに!?めっちゃすごいな!小説書いてる人なかなかおらんで!」
「うん、そうかもしれないね」
「え~すごいわ、ほんまに。ちなみにどんなジャンルなん?」
「えーっと、恋愛とか・・・」
「おお、恋愛か!シェイクスピアみたいな!?」
「あーそうだね、ある意味そんな感じ(大体四天宝寺以外の学校だから、ロミジュリ的な感じだよね・・・)」
「恋愛も素敵やな!」
「ミステリーも好きだよ、よく読むよ。割といろんなジャンル読むかな、まぁちゃんも小説出してるし」
「え?出しとるってどういうこと?」
「え?まぁちゃん、小学生の頃に小説出版してるんだけど・・・」
「えぇ!?めっちゃすごない!?小学生で!?」
「あ、うん。恋愛とか青春小説っていうのかな?そういうの書いてたよ。当時けっこう騒がれたけど・・・」
「あ、あー・・・なんか小学生で賞とったとかいうニュースあったな・・・すごいな・・・」
「うん、でもそれ以外書いてないけどね。二人で小説見せあって楽しんでるのが一番だから」
「へぇ・・・そうなんや、俺にも今度見せてくれる?」
「え゛!?あ、あ~~~~~・・・いつかね・・・(多分一生見せない・・・)」
「おん、楽しみにしてるな!」
「うん、わかった(いや、わからないわ)」
「・・・ほな、そろそろ戻るか」
「・・・うん、そうだね」
せっかくの打ち上げだから、あんまり長く二人で抜けるのもちょっと・・・ということで、二人で話すのはほどほどにして、戻ろうと腰を上げる。
白石くんが二人で話したいって思ってくれただけで本当に嬉しい。
それだけで、満足。
今のちょっとした時間だけでも、彼のことがますます知れて、本当に嬉しいなって思いながら白石くんの後ろを着いていくのであった。