トリのテニス部ショーは、財前の機転でなんとか盛り上がり(誰や最初ヅラで出よう言うたの)、笑いの渦の中学祭が終わった。
テニス部ショーの後、すぐに閉会式、ほんで片付けになって、俺も閉会式の放送やらんといかんし、バタバタして彼女に連絡することは出来なかった。
ほんまは、顔を見て今日来てくれたお礼言いたかったし、できればこの後時間あればええなぁとか思うてたのに。
無理なら無理でも、連絡だけはしたいと思うて、モヤモヤして、時間を気にして。
(あー、もうホンマに!!)(ちょっとでええのに!!)(ちょっと、顔見て、お礼言って、)(それだけでもあかんのか・・・)
さすがにみんなに任せるっちゅーのができんくて。
だけど、考えることは彼女のことで。
早く彼女のところに行きたいと思うてたところやった。
(せやって、今日めっちゃ楽しかった・・・)
彼女と一緒にいるのは楽しすぎたんや。
こんなに楽しいとか、今まで女子と一緒の時は思ったことなんてなくて。
話してるだけで、楽しいとか、感じたこともなくて。
(話も合うし、ノリも合うし・・・)(かわええし・・・)
ほんで、彼女の言葉にドキドキして。
(子供の頃に伝えてるて・・・、)(あれって、)(”お嫁さんにして”っちゅーやつやろうな・・・)
もし、彼女の言ったことが俺の予想通りだとしたら。
彼女はあんなに小さい頃から、俺のことを良いと思うてくれていたんやろか。今もそう思うてくれたということやろうか。
(せやったら、めっちゃ嬉しい・・・)
相性が100%で表せるなら、絶対俺らの相性は100%やと思う。
それくらい、一緒にいてめっちゃ楽しい。
(あ~ずっと一緒におりたいな・・・)
(今すぐ走って、彼女のそばにいきたい・・・)
(一緒に笑い合って、一緒に話して、)
(楽しいことたくさんしたい・・・)
そう思うと、やっぱり彼女のところに駆け出したくてたまらなくなった。
(けどなぁ・・・)(もう帰っとるよなぁ・・・)
(あーあ、もっと一緒におりたかった・・・)
(けど、これから打ち上げやった・・・)
(俺だけ抜けるわけには行かへんしなぁ・・・)
「あいつら、もう帰ったんかな」
「あいつらって、双子ちゃん?」
「おん、打ち上げくればええのにな」
「え、打ち上げ!」
「おん、誰も気にせんやろ、あいつらいても」
「ユウくんがそんな風に言うの珍しいなぁ、双子ちゃんのこと気に入ったのね♡」
「俺が気に入っとるのは小春だけやで♡そうやなくて、今日あいつら真面目に働いとったからなぁ」
「自分が無理矢理手伝わせたんやないすか」
「けど、たいぎゃ楽しそうやったばい」
「せやねん、めっちゃ楽しそうやったからこっちも調子狂うわな」
「せやなぁ・・・打ち上げはええけど、もう二人とも帰ったんとちゃう?」
「もう来てた客、とっくに帰っとるからな」
「せやろなぁ・・・」
あーさっさと連絡しとけばよかったとか、待っててって言っときゃよかったとか、後悔ばかりが頭に浮かぶ。
(せっかく、大阪来てくれたっちゅーのに・・・)
「なぁ、あれねぇちゃんとちゃうー!?」
そんなことを話していたら、金太郎がジャンプしながら突然言うた。
「え?」
「ほら、あっこにおんのねぇちゃんやろ?」
「いや、わからんわ、お前動物並みに視力良すぎるから、俺ら人間にはわからんわ」
「え~絶対ねえちゃんやで」
「え、ねぇちゃんて、双子の・・・」
「せやで、双子のねぇちゃんや!」
「金太郎、あっこにまだ二人はおるんやな」
「おるで」
白石も金太郎に確認して、
(まだおる)
そう、思うと、自然と足は進みだしていて、
「おい!謙也!」
急いで彼女を追いかける。
彼女が行ってしまわないように、速く、速く。
(まだ、行かんでくれ!)(バスくるな!!)(間に合え!!)
金太郎の言った通り、二人の姿を見つける。
「まって!」
おれは彼女たちに声をかけて、そして、足を止めずに彼女に近づいて、
グッ
彼女の腕を掴んだ。
「待ってって!!!」
彼女が振り向いて目が合う。
(ああああ、)(やっぱりかわええ・・・)
そして俺は彼女に声をかける。
「え、どうした!?」
「いや、あの、もう帰るん!?」
「え・・・いや、飛行機は夜だから、夜ご飯食べてからって言ってたんだけど・・・」
「ほな、まだ時間ある!?」
「う、うん・・・あるけど・・・」
「ほな、打ち上げ来ぃへん!?」
「え!打ち上げって、部活のみんなでやるの・・・?」
「おん、みんなで打ち上げすんねんけど、手伝ってくれたし、一緒にどないやろ!?」
「え、いいの!?」
「もちろんやで」
「え、いきたーい!!ね、さおちゃん行こうよ!!!」
打ち上げの話に彼女は、とても喜んでくれて、
いつの間にか後からついてきたのか、白石もねぇちゃんに話していたのかねぇちゃんもOKし、
そして無事に参加してくれることになった!(やったで!)
彼女たちには待っててもらって、俺と白石はまた片付けに戻って、みんなにも打ち上げに参加してもらうことを言うと快く了承してくれた。
そして、片付けがあらかた終わった時、彼女たちと合流する。
門のところで待っている彼女たちに手を振ると、笑顔で手を振り返してくれた。
(あかん・・・)(めっちゃ楽しみや!!)
ウキウキしながら、その足を進めるのやった。
あのまま「帰ろ~」って言ってたのに、謙也が追いかけてきてくれて。
めちゃくちゃ嬉しくてやばかったです!!!
だって、打ち上げだよ打ち上げ!!
打ち上げって知ってる!?身内じゃないとダメなんだよ!!一緒に学祭頑張った人じゃないと打ち上げって出来ないんだよ!!
それに、謙也が招待してくれたんだよ!!嬉しすぎる!!!
また出来ちゃったよ、レアな体験!!!!
そして!!!!
今!!!!
カラオケに来ました!!!!
これが!!!!
リアルで!!!!!
目の前で!!!!
行われています!!!!!!
(‘ω’
)三
(‘ω’)
三(
’ω’)
最高に楽しい・・・!!
四天宝寺とカラオケ、最高に楽しい!!!
「もっとピザ食いたい~~~!!」
「金ちゃん、食いすぎばい」
「金ちゃん、お腹痛くなっちゃうよ」
「え~~~これじゃ足りひん!!」
「金ちゃん、お腹すいてるなら、おにぎりとか頼もうか?」
「おにぎりより、肉食いたい」
「お肉ばっかり食べるのよくないよ・・・じゃあ、おにぎり食べたらたこ焼き頼んであげるよ」
「ほんま!?ならおにぎり食う!!」
「うん、そうしようね(おにぎりでお腹いっぱいにしてしまおう)」
「(金ちゃんばっかり構っとらんでこっち見てや・・・!)」
「うちの踊りをみなさ~~~い!!イエイイエイ盛り上がるわよ~~~!!」
「小春ーーーー!!L・O・V・E小春!」
「よーし、次アタシが歌うからね!!白石代われよ!!」
「おー!歌うなら盛り上げるのまかしとき!!」
「タンバリンも木魚もいけるで」
「俺もリコーダーいけるで!!」
「はぁ・・・いつもにも増してうるさいっすわ・・・」
アタシが歌い出すと、みんなめちゃくちゃ盛り上がってくれて、笑っちゃって歌えなくなるくらいで。
こんなに楽しくて、笑ったのは久々かも・・・やっぱり四天宝寺最高だな!!
「アタシトイレ」
「私も行こうかな」
「おー行ってこい行ってこい」
「さおちゃん、楽しいね」
「うん、たのしい・・・」
「四天宝寺とこんなにいれて幸せだね」
「うん、しあわせ・・・」
「生まれ変わってよかったね」
「うん、よかった・・・」
「きみそればかりだな」
「うん、最高なんだもん・・・」
さおちゃんとトイレに行って用を済ませて、部屋から戻ろうとした時、白石が待っていた。
(なんだこいつ)
「白石、女子トイレの近くで待ってるのやめろよ」
「え!?あ、すまん!!!」
「なんの用さ」
「あー、いや、ちょっと話したくて」
そういって、白石はチラッとさおちゃんを見た。
あれ?これやっぱり、蔵さお始まりまくってんじゃん。フラグ立てないのさおちゃんのほうじゃん。さすがフラグクラッシャー・・・。
そう思いながらさおちゃんを見る。
さおちゃんは、よくわかっていないようで、キョトンとしていた。
「あの、ちょお外出れんかな?」
「えーっと」
「さおちゃん行って来たら?」
「え、うん・・・別に良いんだけど・・・(また毒草の話かな)」
「ほな、いこか」
こうして、さおちゃんは白石と外に行った・・・
(さおまなの中のアタシなら、止めるかもしれないけど、生まれ変わったんだから蔵さおで幸せになってもらわないと困るからな!!)
(さおちゃん・・・白石をちゃんとゲットしろよ・・・)
蔵さおの未来を願って、部屋に戻ろうと角を曲がると・・・
ドン
「わぁ」
「あ!すまん!」
何かにぶつかったと思ったら、
「けんや・・・」
けんやだった。
「何してるの?」
「あ、いや、ちょお俺も休憩しようかと・・・」
「そうなんだ、じゃあ先戻ってるね」
「え!あ、いや、あの!」
「ん?どうしたの?」
「一緒に、ちょお、話せぇへん!?」
お前もか・・・謙也・・・
そうか・・・
アタシと二人きりになりたいとか・・・
感無量・・・
(謙也から誘われたら・・・)(断るはずないじゃん・・・!)
「うん、もちろん、良いよ」
「え!?ほんま!」
「うん、でも早く戻りたいという気持ちもあるかもしれない」
「ちょ、ちょっとでええから!」
「そう?じゃあどうしようか」
「あ、あの、部屋の借りれて」
「え?」
「ここ行きつけの店やから、店長のおっちゃんが貸してくれてん、他の客来るまでええよって」
「そうなんだ!!(ここのカラオケ屋は行きつけ〆(._.)メモメモ)」
「えっと、ほな、いこ」
そういって、歩き出した謙也の後をついて、アタシも歩き出す。
割と近くの部屋に入って二人で座る。
「・・・他の部屋の歌聞こえるね」
「・・・せやな」
「・・・それで、なんの話する?私の好きなものでも語ろうか?」
「あ、いや、それもええねんけど、時間ないから・・・」
「うん、そうだね、時間はないね」
「あんな、」
「うん」
「ちょっと1つ聞きたかったんやけど、」
「うん」
「あの、今、付き合っとる奴っておる・・・?」
「いないよ」
「あっさりやな!」
「だっていないもん」
「そ、そうか・・・ほ、ほな、好きなやつは?」
「いるよ」
「え!?おるの!?」
「いるよ」
「ええ~~~・・・そ、そうなんか・・・(ガッカリ)」
「ちょっとあからさまにガッカリしないでよw」
「せ、せやって・・・」
「・・・それが自分だとは思わないの?」
アタシがそういうと、けんやはびっくりした顔をした後、
カ~っと顔を赤くした。
(・・・本当にもう、)(可愛いな・・・)
ドキドキドキ
心臓の音が聞こえてくるようだ。
謙也のも、私も。
ドキドキドキドキ
こんなカラオケ屋の一室なのに。
二人の間に緊張が走る。
「う、あ、そ、それって!!あ、え!?」
「いいから、落ち着け」
「お、落ち着いてられへんわ!!!」
「ふふ、あと聞きたいことは?」
謙也は、真っ赤になりながら、こっちを見た。
その真剣な眼差しから、私も目を逸らせなくて。
「!? あ、あの!!」
「うん」
「お、俺な!!」
「うん」
「お、おれ、」
「・・・うん」
「めっちゃ、好きです!付き合ってもらえませんか!?」
ああ・・・
すごい・・・
何度も夢見たシチュエーションが、今、
現実になってる・・・
(なんとなく、謙也の気持ちはわかってたけど、)(わかりやすいからね)
でも、実際言われると、全然違う。
(夢みたいだな・・・)
(夢みたいだ・・・)
夢・・・じゃないのかな・・・
目の前の謙也を見る。
真剣に、少し赤い顔で真剣にアタシを見て。
多分心臓も爆発しそうなくらいドキドキしてるんだろう・・・アタシの答えを待っている。
あ~~~~
好きだなぁ・・・
好きだなぁ・・・謙也のこと・・・
はぁ・・・
「!? ちょ、ちょお!」
こんなの、泣いちゃうでしょ・・・
泣きだした私に、謙也は焦って。
ワタワタしているのがわかるけど、涙は止まらなくて。
謙也が困ってるのはわかるけど、それでも、涙が止まるはずがなくて。
「す、すまん、泣かせてもうた・・・」
シュンとなってしまった謙也に、
アタシはやっとの思いで口を開く。
「ち、違うの・・・う、嬉しくて・・・」
「え?」
「あ、あたし、あたしも謙也のこと、好き・・・」
「!?」
「ずっと、ずっと、謙也のことが、」
ガバッと言葉を遮るように、謙也に抱きしめられた。
「おおお、おれ、」
「・・・うん」
「遠距離になるけど、」
「うん、」
「頑張るから!」
「・・・」
「距離とか、関係なく、頑張るから!!」
「・・・うん!」
「めっちゃ、大事にするから!!」
「・・・うん」
(やっぱり、)(どんな世界線でも、)(謙也と結ばれた!!)
神様に感謝しながら、アタシは謙也の腕の中で涙を流し続けるのだった。