転生したら推しの世界だった話part13■さおり&白石

たくさん写真撮ったし、wi-fiで少しスマホに写真転送しておこうって思って。一人で大きめな休憩所(どこかのクラスを開放している休憩所)に座ってそれを見ていた。白石くんの女装可愛すぎたし、整理しながらニヤニヤして。

でも、こうして一人になると思い出すのは、

 

(白石くん・・・すごいモテてたな・・・)

 

白石くんがイケメンでモテるというのは公式だからわかる。

わかってたつもりだった。

 

でも、こうして目の当たりにしてしまうと、やっぱりちょっとショックが大きかった。

あの黄色い声援を送ってる子たちはみんな白石くんのことが好きなのだろうか。

きっとかわいい子も、優しい子もたくさんて。

その中から自分が選ばれるなんて思えなかった。

 

(私なんのために転生したのかな・・・)

 

まぁちゃんと謙也は、上手くいっていると思う。

どっからどう見ても、謙也はまぁちゃんに好意がある。どんな世界線でもまぁちゃんに惹かれるんだね、なんて前世でよく話してたんだけど、本当に謙也は見事にまぁちゃんに惹かれていた。

 

けど、白石くんは?

全くそんな気がしない。私も好意を表すのが下手だからきっと私が白石くんのこと好きってことに気づいてないと思う。

連絡先だって交換したのに全然連絡しないし。私もただの友人の一人なんだろうなって思う。

小さい頃に出会っているから優しいだけ。離れてるからたまに会うと優しいだけ。

あの人は誰にでも優しいんだ。

 

 

(はぁ・・・きっと私と白石くんは結ばれない運命なんだなぁ・・・)

 

 

神様、白石くんの世界に転生させてくれたから、てっきり白石くんと結ばれるものだと勘違いしちゃったよ。

(ただ、そばに彼がいる)(それだけで満足しろってことなんだろうなぁ・・・)

 

 

そう思いながら、カメラで撮影した写真を見る。ずっと彼のこと大好きで、前世から好きだったから、好きなことはやめられそうにない。

(でも、これから白石くんが結婚して子供が出来て、幸せな家庭を築くことを私は見ていられるのだろうか・・・)

(そうなるくらいなら、もう白石くんと縁を切って離れたほうがいいのかもしれない・・・)

(漫画とかアニメでは、たしけの温情で女の影なんて一切なかったからな・・・)(やはり二次元と三次元は別物だ・・・!)(二次元は裏切らない、三次元は裏切る・・・)(つらい・・・)

 

 

そう思っていると、

 

 

「・・・やっと見つけた・・・!」

 

 

ドアのところで聞き覚えのある声を聞いて振り向いた。

そこには、少し息を切らした感じの白石くんがいた。

 

 

(白石くんだ・・・)(え、誰か探してたのかな?)

 

 

不思議だなと思ったけど、きっと私のことじゃないと思い込んで、また前を向いてカメラと向き合う。ユウジのこのモノマネバトルの時の写真最高だな・・・。

 

 

「え・・・ちょお!」

 

 

そう声が聞こえて、今度は白石くんが歩いてきて、私の目の前のイスに座った。

 

 

(あれ?白石くんが探してたのって私?)

 

 

白石くんが私を探していたとかありえないと思って、心底不思議な気持ちで彼を見た。

 

 

「いやいや、ちょお、無視せんでや!!自分のこと探してたんやで!?電話も出えへんし!」

「え!?私!?(あ、写真スマホに入れるために途中で通信切れないようにマナーモードにしてた・・・)」

「せやで、あとで案内したるって言うたやんか」

「え・・・」

 

 

嘘・・・あれって社交辞令じゃなかったの?その場の雰囲気で言ったんだと思ってた・・・

 

 

「でも・・・白石くん忙しいでしょ?だから私なんかにかまわなくていいよ」

「私なんかって・・・せっかく遠くから来てくれたんやから、案内くらいさせてや」

「白石くんは優しいね・・・でも本当に気にしないで。遠くから来たとか関係ないよ」

「いやいや、ええから、行こうや。俺、休憩時間あんまりないねん」

「え!だったらなおさらだよ!自分の時間を大事にして!」

「・・・あーもう全く話通じへん・・・」

「ほんと、私なんかには構わず!!」

「・・・つべこべ言わずいくで!!」

 

 

そういって、白石くんが立ち上がる。

あれ・・・白石くんちょっと怒ってる・・・?

私の横に立って、圧をかけてくる白石くんがなんだか怖くて、荷物をまとめて白石くんの後について廊下にでた。

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

んだけど、

 

 

 

 

 

「白石く~ん♥一緒に写真撮ろー!!」

 

 

 

 

 

白石くん、人気者だからすぐに女子に捕まってしまった・・・。

はぁ・・・。ですよね。知ってた。

 

 

私はそっとその場を後にする。

 

 

(かわいい子ばっかりじゃん・・・)(無理無理、あんなかわいい子ばっかりなのに、私が隣にいるとかありえんわ)(すごいいやだけど、白石くんがモテるのは公式だから・・・諦めよう・・・)(諦めるけど、見たくないから一人でいたほうがいいや・・・)

 

 

そう思って、一人でフラフラ歩いている時、

 

 

 

グッ

 

 

 

「待ってって!」

 

 

 

白石くんに腕を掴まれた。

 

 

 

(え?)

 

 

 

さっきみたいに息を切らして。

さっきは、それが私のためだなんてちっとも気づいてなかったけど。

(よく考えたら・・・)(必死に探してくれてたのかな・・・)

 

 

「なんで先行くねん!」

「え、だって、白石くん女の子たちに囲まれてたから・・・」

「囲まれたのは囲まれたけど、断ってる最中にいなくならんでや、また探したやんか!」

「え・・・だって・・・やっぱり私なんかと一緒にいるよりも他の人と一緒のほうが楽しいんじゃないかって思って・・・」

「はぁ・・・なんでそうなんねん・・・おかしいやろそれ・・・」

「・・・」

「俺がこうしたいって思うてるんやから、別にええやんか」

「・・・」

「ほな、いこうや」

「・・・だって、白石くんは優しいから、」

「・・・」

「優しいから気を使ってくれてるのわかるんだもん・・・」

「え?」

「優しいから私のことも気にかけてくれるんでしょ」

「いや、それは、」

「私知ってるもん」

「・・・」

「部長だから責任感も強いし、みんなへの気遣いとか気配りがすごいし」

「・・・」

「周りを見てるし、すごく優しいし、かっこいいし、完璧だし・・・」

「・・・」

「あ、でも完璧に見えるけど、裏ではすごい頑張ってる努力家だし、非の打ちどころのない人間だし、誰に対しても態度変えないし、正義感強いし、それから・・・」

「まってまって、ちょお」

 

 

白石くんが私の言葉をさえぎったところでハッとして白石くんの顔を見ると、片手で顔を隠していて・・・

 

あれ?今私なんて言ってた?

やばい・・・白石くんの良いところめっちゃ語ってなかった・・・?

前世からの白石くんへの愛が爆発して、全然止められなかった!!!!

 

(白石くん優しいから私のことほっとけないだけなんだよって言うつもりだっただけなのに!!!)

 

あんまり話したことないのに、こんなに知ってたら、ただの気持ちの悪いストーカー女だよ!!!

 

 

「ご、ごめんね、変なこといって」

「いや・・・」

「気持ち悪いよね・・・ほんとごめん・・・」

「なんで、そんなに、俺のこと、」

「ごめんね!!!気持ち悪くてごめんね!!」

「いや、そうやなくて、」

「ごめんね・・・でも・・・わかるよ・・・昔から知ってるもん・・・」

「え、」

「・・・テニスの試合見てたらわかるもん・・・」

「・・・」

「一生懸命頑張ったんだなって思ったもん・・・」

「・・・」

「不二くんと試合してる時とか、この人はすごく努力してこんな試合ができるんだなって思ったんだよ・・・」

「・・・」

「完璧に見えるけど、裏でちゃんと努力してる人なんだなってわかるから・・・」

「・・・」

「優しいのだって、気を使ってくれてるのだって、話してたらわかるよ。本当に素晴らしい人なのがわかるから、だから」

「・・・もうええ」

「え(やばい・・・!気持ち悪すぎて怒らせた!!!)」

「もうええから、いくで」

 

 

そういうと白石くんは、

 

 

ギュッ

 

 

私の手首を掴んで歩き出した。

 

 

(やばばばばば)(白石くんめっちゃ怒ってる!!!)(やっちまった!!!

 

 

無口になってしまった白石くんは、そのあと私に校舎を案内してくれた。

本当にいつもよりも口数少なかったし、何より周りの視線が超怖かったけど・・・。

 

 

この後、たこ焼きの早食い大会にたこ焼きを提供するからって言って行ってしまった。

別れ際に、「またあとで会える?」と言われ、帰りたい気持ちになったけど、どうせまぁちゃんも最後までいるだろうし、恐る恐る頷いた。

「今度は電話出てな」と言われ、白石くんは去っていった。(去っていく姿もかっこよかった)

 

 

私は恐怖を感じながら、たこ焼きの早食い大会の会場に向かうのだった・・・

 

 

 

 


 

 

 

小さい頃、迷子になって変な男に声をかけられている女の子を助けたことがあった。

東京から来たというその女の子は、俺が話かける言葉の全てに必死に頷いていた。

周りの女子はけっこう気が強かったり、自己主張が激しい子が多かったから、話をこうやって一生懸命聞いてくれる姿がとても印象的だった。

結局会えたのはその時と、その後彼女と両親がお礼を言いに来た時だけだったけど、毎年彼女の両親から送られてくる年賀状を見て、彼女は幸せに暮らしていることが充分伝わってきてそれだけで心が満たされる思いだった。

 

彼女と再会したのは、今年の夏。

 

まさかの氷帝のマネージャーになっていた彼女は、年賀状で成長を見ていたと言っても、改めて見ると新鮮で。そして懐かしさも感じられた。(初対面で泣かれたり、「会いたかった」って言われた時は驚いたけどな)

なんとなく、昔馴染みのような気がして嬉しくて。

連絡先を交換しても連絡をすることはなかったけど、謙也から前姉妹が学祭に来るって聞いて嬉しくてつい連絡してもーた。

その時から、なんだかワクワクして、心の中で案内したろって決めていて。

 

ミス女装に選ばれて、そのあと少し時間があったから、彼女に連絡しても出なくて。

仕方ないから学校中を探して。

そしてやっと見つけた時、彼女は一人で休憩室にいて、声をかけても何も言わなくて様子がおかしいと思ったけど、口から出るのは「私なんか」という言葉。

 

なんでそんなに卑下すんねん。

昔から、人の話をちゃんと聞いてくれるきみには「私なんか」って言葉似合わないやろ。

 

 

あーだこーだいう彼女を無理矢理教室から連れ出すと、待っていたのは同じ学年の女子たち・・・

あっという間に囲まれて、その間にまた彼女がいなくなる。

 

(あーもう!)

 

「白石くん、こっち向いて、ほら写真!」

「ちょお、すまん、俺いかな」

「えーええやんちょっとくらい」

「白石くんさっきの女装めっちゃキレイやったわ~!あれで写真一緒に撮りたかった~!」

「白石、インスタに写真あげてええ?」

「・・・悪いけど、急いでるから」

「あ、ちょお!」

 

 

なんとか彼女らを振り切って、またさおりちゃんを探す。

のんびりと歩いていているところを発見し、思わず肩を掴む。

 

なぜだかわからない苛立ちで、彼女になぜいなくなったのか聞くと、彼女からでたのはまた

 

『私なんて』

 

という言葉。

その言葉にムッとして、彼女に少し当たりがきつくなってしまった時、

今度は次から次へと彼女の口から俺を褒める言葉が・・・

 

 

(え、)(まってまって、)(この子何言うてるん)

(俺のこと、なんで、こんな、)

 

急に褒められて、顔が赤くなっていくのがわかった。

言葉を遮らんと、これ以上続きそうで、俺は慌てて彼女を静止する。

そしたら、さおりちゃんは急に焦って、今度は謝りだす。

 

 

「ご、ごめんね、変なこといって」

「いや・・・」

「気持ち悪いよね・・・ほんとごめん・・・」

「なんで、そんなに、俺のこと、」

「ごめんね!!!気持ち悪くてごめんね!!」

「いや、そうやなくて、」

「ごめんね・・・でも・・・わかるよ・・・昔から知ってるもん・・・」

「え、」

「・・・テニスの試合見てたらわかるもん・・・」

「・・・」

「一生懸命頑張ったんだなって思ったもん・・・」

「・・・」

「不二くんと試合してる時とか、この人はすごく努力してこんな試合ができるんだなって思ったんだよ・・・」

「・・・」

「完璧に見えるけど、裏でちゃんと努力してる人なんだなってわかるから・・・」

「・・・」

「優しいのだって、気を使ってくれてるのだって、話してたらわかるよ。本当に素晴らしい人なのがわかるから、だから」

「・・・もうええ」

「え」

「もうええから、いくで」

 

 

(昔から・・・)

(子供の頃から、彼女の中ではそういう印象やったんかな・・・)

(あの試合も、)(彼女の目にはそう映っとったんや・・・)

 

 

周りから言われるのは、「完璧だね」という言葉。

 

なんでもできるね、完璧だね、バイブルだもんね

 

ちゃうねん、俺は完璧やない。

”完璧でいたいだけ”なんや。

せやから、俺の努力を感じてくれた彼女に驚いた。

 

(わかって、くれてたんや・・・)

 

そう思うと、熱いものが込み上げてきて、恥ずかしくて、嬉しくて。

そうして、彼女の腕を掴んで先を歩く・・・顔を見られないように。

 

(なんやろ、)(めっちゃ嬉しい・・・)

 

ギリギリまで彼女と一緒におって、おとなしく後ろをついてくる彼女のこと、もっともっと知りたくなって。

思わず

 

「またあとで会える?」

 

そう聞いてしまった。

彼女は戸惑いながらも、頷いてくれて、それがまた、嬉しくて。

 

 

(やばい、)(めっちゃやばい・・・)(こんなん初めてや・・・)

 

 

今までテニスばっかりして、仲間とつるんでばっかりだったから、女の子と一緒にいたいとか思うのは初めてや・・・

こうして、学祭が終わったあとも楽しみになった俺は、軽い足取りで出店のほうへ向かうのだった。

 

 

 

 

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