その日はあまりのショックに一睡も出来なかった
(やっぱり、)
(あーいうことしたかったからなのかな・・・)
彼女がいるのに、私にキスをしてきたあの人のことが、
頭から離れない
最悪だよ、
本当に最悪
(ファーストキスだったのに・・・)
大嫌い
あの後、LINEのメッセージも受け取りたくなくてすぐにブロックした
電話もメールも教えてないから、彼と私を繋ぐものは何もなくなった
会うとすれば、明日、会社で
(ダメだ・・・)
(私だめだ・・・)
もうあの人と会いたくない、
(でも、)
(教育係も終わったし、)
(しばらくは会わなくてすむかな・・・)
ショックすぎてつらい
(まぁちゃん何時に帰ってくるんだろう・・・)
(ああ、でも、)
(まぁちゃんに言ったら絶対怒り狂うな・・・)
(せっかくキャンプに行って楽しい思いをしていたのに、こんなことで怒らせるのもかわいそうだし・・・)
(言うのやめよう・・・)
(もう話題に出すのも嫌だし・・・)
そうだ、もう忘れよう
ショックだったんだ
本当に
仕事はすごく真面目だった
だから、実は彼はものすごく真面目でいい人なんじゃないのかって思ってた
(彼女はいたけど、)
でも一緒に話しているとなんだか楽しくて、
すごく気を使ってくれているのも分かったし、
女関係の彼への評価は変わらなかったけど、
それでも、
あんなことする人じゃないって、
心のどこかでは信じたかった
(信じたかったんだよ・・・)
(だけどやっぱり、)
(最低だった・・・)
(もう、嫌だ・・・)
(彼のことなんて、考えたくない、)
(疲れた・・・)
何度も何度も拭ったはずなのに、
彼のことを考えると涙が勝手に出て来ていた
落ちつこうと何度も深呼吸して、涙を止める
「はぁ・・・」
(大丈夫、)
(もう大丈夫だから、)
(涙も止めた)
(大丈夫)
私はソファで静かに目を閉じた
その時、
「ただいまー」
(あ!)
まぁちゃんが帰ってきた
(よかった!!)
(これで気が紛れる!!)
(もっと遅く帰ってくると思ってたよ!!)
「あれ・・・早かったね、まだ午前中だよ」
思ったより早いお帰りに、そんな言葉が出てきた
「もう少し遅くなると思っていたよ」
「・・・・・・・・きみ泣いてたね」
「え?」
「目と鼻真っ赤だよ」
「うそ!」
もうとっくに乾いたと思っていた涙なのに!
どれくらいの泣き顔なのか、鏡で見てみた
(うわ・・・)
(ひっどい・・・)
(ブス・・・)
(目も鼻も真っ赤じゃん・・・)
トボトボソファに戻ると、まぁちゃんに聞かれた
「何があったのさ」
「・・・いや、何もないよ」
「何か合ったしょ、泣いてんだから」
「・・・いや、映画見たのさ」
「・・・」
「A.I.見たのさ。そんで号泣したのさ」
「・・・」
「私のことは気にしなくていいよ」
「・・・」
「それよりどうだったキャンプ、虫大丈夫だったかい」
「・・・きみの嘘はバレバレだよ」
「・・・」
「きみ、正直に言いなよ」
(やっぱり、まぁちゃんはするどい)
(あーダメだな私)
ポロッ
流したくないのに、
涙は勝手に流れてきた
「大丈夫、疲れちゃっただけだから」
私はそんなことを口にした
(そう、疲れた)
(もう、全てが嫌になってる・・・)
(簡単に騙されて、)
(自分がもう、嫌だよ・・・)
「何に疲れたのさ」
「・・・仕事とか」
「とかってなにさ」
「・・・人間関係?(いや、主にそれしかないけど)」
「会社でつらいことあったのかい」
「・・・大丈夫だよ、慣れてるよ(そうだ、慣れてる我慢するのには)」
「慣れてないしょ、きみは人見知りもしないし、優しいし、みんなの人気者なんだから!」
「いや、きみ私を高評価しすぎだから(笑)」
「ホントのことでしょ!」
「いや、違うんだよ、ホント大丈夫なのさ・・・ちょっと思い出したくないからまた今度話すよ、全然大したことではないんだわ」
「会社の誰さ、上司かい」
「いや、後輩」
「あ、例の後輩?」
「うん」
「何さ、告られた?」
「え!?告られるはずないしょ!(体目当てだったんだから!!)」
「そうかい、後輩ムカつくね」
「むかつくんだよ、もういいよあの人のことは・・・忘れたいから一緒にゲームでもしようよ」
「アンジェがいいね」
「アンジェがいいよね」
「もうキャンプなんて言ってる場合じゃなかったよ、女王候補だったから真面目に育成しなきゃいけなかったわ!」
「いや、きみデートばっかりしてあんまり真面目じゃないしょwww」
「そうか」
(よかった)
(やっぱり、まぁちゃんがいると笑える)
その日は、ずっとまぁちゃんとアンジェをやって遊んだ