ep.023

まぁちゃんに年下イケメンの教育係になったといったら「マスクしていきな」とアドバイスをもらった

さすがだわ、その発想はなかった

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「あれ?風邪ですか?」

挨拶もそこそこに、白石くんに聞かれた

 

「ああ、うん、ちょっと喉痛くて」

「大丈夫ですか?昨日酒飲んで無理したからやろか・・・」

 

そんな心配する言葉も、

女慣れしてるとしか思えなくて、

 

(あーもう)(何してても悪い方にしか考えられない・・・)

 

「あーもしかして、クーラー寒いですか?」

「ああ・・・そうだね、クーラー寒いね」

「そうですよね・・・」

「だ、大丈夫だから、そんな心配しないで」

 

 

これは演技なのか、

それとも

 

(本気で心配してる?)

 

(いやいや、)

 

(そんなことあるはずない・・・)

 

 

 

「じゃあ、今日は写真を編集します」

「はい、よろしくお願いします」

 

 

 

こうして、午前中はマスクのおかげで感情を読まれずに済んだと思う

 

 

 

 

――――――――――

 

昼休み

 

 

「白石く~ん♥」

 

 

(きた!)

(女子社員の集団!)

(今時の若い子は積極的だなぁ)

 

 

 

「今日も一緒にお昼どお?」

「一緒に食べようよ~♥」

 

 

 

(友達が「同期だから他の女には渡さない!」っていう気持ちなんだよって言ってたけど)

(本当にそうなのだろうか)

(恐ろしいな・・・関わらないようにしよう・・・)

 

 

 

 

「あ、すまん」

 

 

 

 

そういうと、白石くんは意外にも誘いを断り、

 

 

 

 

「今日は無理やわ、ホンマにすまん」

 

 

 

 

そういうと、すたすたどこかに行ってしまった

残された女子社員たちは「えー」「残念ー」「また明日誘ってみよー」と言ってすぐにいなくなった

 

 

 

 

 

(へぇ意外)

(女の子好きじゃないのかな)

(あ、外で彼女と食べるとか?)

(うーん、あんなに焦ってどこかにいくとは、何かあるだろうな)

 

 

 

 

 

けどまぁ興味ないし、

私もランチいこーっと

 

 

 

こうして、食堂に向かった

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

昼休みが終わり、席に戻ると

 

 

(あれ?)

 

 

いつも先にいるはずの白石くんがいなかった

 

 

(いつもなら先にいるのに・・・)’(どうしたんだろう?)

 

 

そう思っていると、

 

「遅れてすみません!」と少し息を切らした白石くんがやってきた

 

 

(あれ?こんなに焦って・・・)

(やっぱり彼女と待ち合わせしてたのかな?)

 

 

「ううん、大丈夫だよ、まだ時間あるし」

「よかった・・・」

「そんなに焦らなくても大丈夫だよ」

 

 

私がそういうと、白石くんは

 

 

「あの、俺、これ買いに行ってて」と何かを差し出した

 

 

 

 

(え?)

 

 

 

 

「えっと・・・」

「これ、良かったら使ってください」

「え?」

「ひざ掛けなんですけど、クーラー対策に、」

「え!?」

「女の人は体冷やしたらあきませんよ?」

 

 

そうやってハハっと笑う

 

 

 

(え、嘘!!)

(これ、買いに言ってたって・・・!?)

(え、外にランチいってたんじゃないの・・・!?)

 

 

 

 

「え、わ、私、外にランチしに行ったと思ってた・・・」

「ああ、外でおにぎり買って食いましたよ」

「え、でも、私これもらえないよ・・・」

「でも、俺まえさんのために買ってきたんで」

「・・・」

「受け取ってもらえないと、俺の昼休み時間ムダになりますやん」

「・・・」

「受け取ってくださいよ」

 

 

そう言って白石くんは、いつもの笑顔で笑った

 

 

 

(どうして、)(どうして、彼女がいるのにこんなことするの?)

(女好きだから?)(女性に優しいフェミニスト?)(誰にでも優しいの?)

(それとも先輩に取り入って点数稼ぎ?)

 

(これは本当に、偽物の優しさなの?)

(それとも・・・)

 

 

 

 

 

「・・・・・・ありがとう・・・じゃあ、使わせてもらうね」

「はい、どうぞ」

 

 

 

 

そういって、彼の買ってきた袋を開ける

中にはキャラメル色の上品なひざ掛けが入っていた

 

 

 

(え、か、カシミア!!?)(高そう・・・!!)

 

 

 

彼氏でもないのにこんなに高い物をもらってしまって、いいのだろうかと悩んだけど、

女性社員との時間を断ってまで、彼の時間を使わせてしまったから

 

 

 

私はそれをソッと膝にかけた

 

 

 

「ありがとう、白石くん・・・」

「やっぱりその色、似合いますね」

「え、」

「早く風邪治るといいですね」

 

 

 

そういう彼の笑顔を見て、

 

 

 

(ごめん、まぁちゃん・・・)

(明日から、マスクできなさそう・・・)

 

 

 

心の中でまぁちゃんに謝った

 

 

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