クロスオーバー俺得学園10

4月末。
我が校ではオリエンテーション合宿があるのです。

(長谷部がめちゃくちゃ心配してたな)
(中学校の卒業旅行とかもそうだったけど)
(男と一つ屋根の下など!!って…)
(そんなこと言ったら男だらけの我が家はどーなるんだろう)
(あと光忠もなんかやたらこれ持ってけとか色々勧めてきたなぁ)
(それでなくても荷物多いのに私…トホホ)

バスに乗るまでの時間
まぁちゃんと一緒にいたのだけどまぁちゃんのカバンが異様にでかい。

「きみ、パンツだけありゃーいいとか言ってなかったかい?」
「うん、あとオヤツ」
「オヤツ!?」
「チョコとクッキーとアイスとキャラメルと…」
「え、てかきみアイスってどゆこと」

そんな会話をしていると、ピピピーと笛の音が響き、クラスごとに集合ーと声がかかった。

「あ、7組あっちだから行かなきゃ」
「やだ、行かないでくれ」
「なんでさ」
「同じバスに乗りたい…」
「2組いーしょ、コーイチくんもジロちゃんもいるしょ」
「いや、そーゆー問題じゃない」
「ディアンヌいるしょ」
「いや、きみがいい」
「がんばんなよ…向こうついたらまた君のとこ行くから…」
「苦行じゃ…」

落ち込むまぁちゃんを見送り、7組の集合場所へ向かった。

「さおり、おせーぞ」
「ごめんごめん」
「みなさん、揃いましたか?ではバスに乗って出発します。バスは2クラスずつ乗るのでうちのクラスは8組と一緒です」
「8組と一緒かぁ」
「8組ってアレだよな」
「え?」
「跡部いたよな」
「あ!そっか!跡部と一緒かー!」

そんな話をのんきにしていたものだからバスに乗るのが遅くなってしまって、慌てて乗車した。

「遅いぞお前ら」

跡部が呆れて肘をつきながら言った。
おー、わりいわりいとか言いながらスタスタと亮が跡部の元へ向かう。

そして、話をしながらストンと亮は跡部の席の隣へ座った。
(ありゃ)
周りをキョロキョロ見回すと、

「委員長ー遅いでー」

と、ヒメコが手を振っていた。
ヒメコの隣空いてるかなーと近寄ると

「お、この子が噂の委員長か」
「え…誰…」
「あ、こいつボッスン。同じスケット団しとんねん。隣のクラスやから同じバスやったわ!アホやけどいいやつやで」
「アホは余計だアホは」
「そっかー、よろしくねー」

(って、ヒメコめっちゃ楽しそうにボッスンって人と話してるなぁ)
(えーっと、そしたらどうしようかなー)

亮と跡部はなんかテニスの話してるし
ヒメコはボッスンと楽しそうだし

(えぇっと、)

「あ、まえさん、ここ空いてるで」

そう声をかけてくれたのは

「白石くん」

隣の席のイケメンの彼だった。

(あー、空いてるところここだけっぽいなぁ)
(仕方ないか)

「じゃあ座らせてもらうね」
「おう」

私はおとなしく白石くんの隣に座った。

「ごめんね、白石くん」
「へ?なんで?」
「いや、クラスでも隣の席なのにバスまで一緒だなんて…私の顔なんて合宿中くらい見たくないしょ」
「なんで!?ちょ、めっちゃネガティブやん!なんで!!」

白石くんがまた笑いをこらえながら言う

「いや俺むしろまえさんむっちゃおもろいからまえさんと隣になれて嬉しいわ( 笑 )」

そう彼は言った。

「え、私面白くないよ、つまらない女だよ」
「いや、やめて、これ以上笑わせんで!めちゃくちゃおもろいから!」

ププッと笑う彼を見て

(あぁ、そうか、バカにされてるのかな…)
(こんなイケメンだし、私みたいなブスバカにするよな、そりゃ)

あーあ、イイ人だと思ったのに…

(こりゃますます隣にいるのが申し訳ないわ)

そう思っていたら

「あら~ん、この子がくらりんの言ってた委員長?」

後ろからぬっと声が聞こえてビックリして振り向いた

「はぁい、あたい8組の金色小春よーん♡」
「小春!浮気か!死なすど!」
「…で、こっちがユウくん!」

もう、ちょっと話しかけただけやないのぉ~
とオネエの人は隣の人をつんつんした。
隣の人ひニヤケながら 何すんねんもう小春は可愛いやっちゃなぁと言った。

ホモだ。

すごい。オネエとホモ、生で見たの初めて。

私がポカーンとしていると、オネエの人が
くらりんってばね、と話を続けた。

「あなたのお隣が楽しいみたいで毎日部活に来たらあなたのお話ばかりするのよん」
「ちょ、やめぇや小春!」

(え…部活に行ってまで私のこと馬鹿にしてるのかこの人…)

そう思って、はぁ、と間抜けな返事をした。

「あらっ!?あららららら!?」
「小春!近い近い!!浮気か死なすど!」
「んまーっ!このくらりんに興味持たれてるっていうのに!何とも思わへんなんて!」

オネエの人は私をマジマジと見て、それをホモが必死に距離を離そうとしている。
さっき2人の名前聞いたけどなんだっけな。

「何とも思わへんの!?くらりんのこと!」
「小春!やめや!」
「くらりんって白石くんのことだよね?何ともって何が?カッコイイな、とは確かに思うけど…それ以外には何にも思ってないよ?」
「…」
「あ、白石固まった」
「残酷なことを言うわねこの子…」
「…いや、カッコイイとは思うてくれてたんやな」
「え?うん、そりゃ思うよ、白石くんも自分で思うでしょ?」
「俺?自分で?」
「うん、私はブスだから鏡割りたいくらい鏡見るの嫌だけど、白石くんは自分ではイケメンだと思って鏡見てるでしょ?」
「は!?ちょお待って!?何言うとんねん自分!!」
「え?」
「自分のことブスとか!!うそやろ!?ほんまにあかんでそれ!!!」
「なにが?私は世界一ブスだよ?」
「!!!!!」

白石くんが固まって、またオネエの人とホモの人が話しかけてきた。名前…えっと…

「…ほんま、おもろい子やねぇ」
「確かに今まで会うたことないタイプやな」
「くらりんが気になるのもうなずけるわ」
「まぁなぁ、自信満々の女にばっか囲まれて来たからなこいつ」
「やっぱり白石くんモテるんだね」
「もてるわねぇ」
「本人は迷惑がってるけどな」
「あ、そうなんだ?」
「そりゃそうやろ、こいつキャーキャーいう女嫌いやし」

(え?)
(あ、そうなんだ白石くんって)
(そーゆーの嬉しくないのかなあんまり)

でも私キャーキャー言ってないのになぜか馬鹿にされてるらしいし…
私はどんくさいからかな…

「白石くんってどんな子好きなの?彼女いるの?」
「あら、気になるん!?」
「いや、キャーキャー言う子嫌いって言ってたからじゃあどんな子かな、って」
「そりゃ、あなたみたいな子に決まっとるやないのぉ」

と、オネエの人が言ったところで
ハッと気がついた白石くんが  小春!何言うてるん!! と慌てて言った。

「や、あれやで?そんな、あの、や…」
「大丈夫だよ、白石くん」
「え?」
「冗談ってわかってるから」

そう言った私に

白石くんはなんだか淋しそうな顔をして

「それはあかんな」

って言った。

「なにが?」
「まえさん、自惚れってせえへんの?自分のことなんでそないに卑下すんねん」
「え?そんなことないけど、ホントのことだし」
「自分のええとこ言ってみ?」
「え、私のいいとこ?ないよそんなの」
「あかん!!」
「え?」
「あかんて、まえさん!なんなんさっきから!」
「え、白石くんこそなんなの」
「俺が一緒にまえさんのええとこ探ししたるわ!!」
「ええ!!?」
「せやから、自信持ちや!」
「え、なんでそんなことしてくれるの?いいよいいよ」
「あかん!!!」

(おぉ…)
(なんだこの勢い…)

「いや、いいのに…」
「あかんて!まえさんええとこたくさんあんのに自分が何にも知らんとかもったいないわ」
「え、いいとこたくさんあるって…白石くん私のことどんくさい女と思っているんじゃ…」
「は!?思うわけないやん!!ええとこだらけやで!?いつもみんなにまえさん真面目やしめっちゃええ子って俺が自慢しとるんやから!!」

(へ?)
(バカにしてからかってたんじゃないの?)

そう思ったけど普通に後ろの席の2人が普通に

「そうやで、うざいくらい自分のことのように自慢しとるで」
「お気に入りなんやね笑」

とか言うから

(あ、バカにされてたわけじゃないのか)

と、なんだかすごくホッとする自分がいた。

「せやからな!俺がまえさんのええとこたくさん探して教えたるから!!」
「う、うん…?よろしくね?」
「おう!名探偵に任せとき!! 」

すごい勢いにおされて思わず頷いてしまったけれど、
ニカッと笑った白石くんはやっぱりすごくかっこよかった。

そして

(すごい、名探偵だって…素敵!)

変なとこに興奮する私がいたのだった。

(一緒にいいとこ探ししてくれるとか)
(白石くん優しいな)

その後はなんか気持ちが晴れて
オネエの人(小春と言うらしい)とガチホモ(ユウジと言うらしい)と白石くんと割と仲良く話すことが出来た。

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