異世界にトリップしたと思ったら乙女ゲーの悪役令嬢役でした(8)サオリ

「あー!!もう、あのバカ王子~~~!!あいつのせいでぜんっぜん座れないじゃん💢」

 

 

まぁちゃんが言うにはこのC食堂は1番人気らしい。チャイム鳴ったらすぐ走ってこないと席埋まっちゃうって言ってた。
まぁちゃんのお目当てはチーズケーキだったんだけど、チーズケーキもなくて落ち込んでる・・・。

 

 

「はー💢もうついてない・・・!チーズケーキないし💢席もないし💢あのバカ王子あとで殴るわ💢」
「絶対殴らないで・・・とりあえず席空くの待とうよ。きっと待ってれば空くから・・・」
「ごーはーんーさーめーちゃーうーーーーー」

 

 

 

ブーブーと怒るまぁちゃんをなだめてると

 

 

 

「席探してるん?ここ空いてんで!!」

 

 

 

そう、声が聞こえた。

 

 

(ん?)

 

 

まぁちゃんも振り向いて あ と声をあげた。

 

 

「確か同じクラスの男子」
「確かってなんや!正真正銘同じクラスや!!」
「え、座っていーの?」
「ええで!相席やけどな!!」
「ラッキー🎶さおちゃん、座ろう!!」

 

 

そう言ってまぁちゃんがその席に近寄る。

 

 

(いいのかな?)

 

 

 

私もまぁちゃんに呼ばれるがままその席に向かった。

 

 

 

 

 

 

「え!?」

 

 

 

(!!?)

 

 

 

席に着くと突然驚いた声が聞こえたので
その声の方を見た

 

 

 

 

(うそ・・・)

 

 

 

 

 

ガタッと音を立てて立ち上がるその人
トレーを持った手が震える私

 

 

 

目が合ったまま言葉が出なかった

 

 

 

 

「ん?さおちゃん、どした?」

「シライシ?どないしてん」

 

 

 

 

そう、声を上げたのはまぁちゃんと、席に呼んでくれた男の子だった。

 

 

 

「・・・シンデレラ」

「は?」

 

 

 

 

ボソッと呟いた彼に、は?と瞬時に反応したのはまぁちゃんだった。

 

 

 

 

「あー!!!てか!!!あんた!!あたしが!!食べたかった!!!チーズケーキ!!!!買ってるじゃん!!!!!」

 

 

まぁちゃんが急にそんなふうに叫ぶものだから、私も彼もハッとした。

 

 

「チーズケーキ…うっ…食べたかったチーズケーキ…うぅっ…やっぱこの席無理ー!目の前でチーズケーキ食べてるの見るのツラいー!」

 

 

 

まぁちゃんがそんなことを言うと

 

 

 

「あっ、ち、チーズケーキ、やるわ!!せやから、座って!!!」

 

 

 

と、その人は慌てて言った。

 

 

 

「え!マジ!めっちゃ良い奴だね、ありがと!!」

 

 

 

ご機嫌になったまぁちゃんは じゃあお腹すいたからご飯食べよー と、椅子に座り、私も無理やり座らせた。

 

 

 

この間社交界の時庭で会ったあの男の子の隣に、だ。

 

 

 

 

 

(う、うそでしょーーー!!!)
(ま、まさかまさかまさか!!!!)
(会いたいと思ってたけど!!!)
(同じ学校だったとは・・・!!!!)

 

 

 

 

何たる奇跡!!!!!

 

 

 

 

ドキドキと胸が動いて直視出来ない。
逆に彼からはじーっと見られていて視線が痛い・・・

 

 

 

 

「美味しい・・・やっぱりここの学食美味しいよね、天国かな・・・😭😭😭」
「え、何食うてるん?」
「ステーキ」
「へ~美味そうやんか、俺のと1つ交換せえへん?」
「やだ!ステーキ全部食べる!!」
「え~1口くらいええやんか~」

 

 

 

まぁちゃんと男の子が騒がしくする中、私と社交界で会った男の子はまだ固まったままだった。
彼の視線が刺さる。
まるで蛇に睨まれたカエルだ。
冷や汗が止まらない。

 

 

「ねぇ、アンタどこの食堂が好き?私やっばりC食堂1番美味しいと思う」
「アンタやなくて!ラピッド・オシタリや!んで、こっちは子供の頃からの幼馴染、エフォール・シライシやで」

 

 

そう、紹介されて おいシライシ!と声をかけられた彼は

 

 

「あ、6組のエフォール・シライシです」

 

 

と、自己紹介した。

 

 

 

(シライシくんって言うんだ・・・!)
(名前知っちゃった・・・!)
(てゆーか、また会えるなんて思わなかった・・・!!!)
(どうしよう!!嬉しすぎる!!)

 

 

 

「きみは・・・?」

 

 

 

今度はシライシくんが、食い入るように私に名前を聞く。
やばい、ほんとにイケメンだ。
22年間+こっちの世界で13年間生きてきたけどこんなイケメンには出会ったことがない。
そう、現実世界にこんなイケメンがいるわけがないのだ!
だから彼はどう考えてもゲームの中の登場人物・・・つまり現実にはいない人・・・
やっばモブじゃん!!
はーあ、マジかよ・・・
なんかもう頭の中混乱しすぎてるけど学校同じとか運命すぎる好き

 

 

 

ポーっとする私に
また彼が声をかけた

 

 

 

「あの、名前・・・」

 

 

 

Σ(๑°ㅁ°๑)ハッ!

 

 

 

 

「わ、私はイザ・・・」
「さおちゃんだよ」

 

 

名前を言おうとして まぁちゃんに遮られた。

 

 

「さおちゃん。きみたちはサオリって呼ぶといいよ」
「サオリ・・・」
「アタシ、ティーザー」
「俺と同じ5組やんな!」
「うむ、不本意ながら」
「不本意ってなんやねん!!」

 

 

(なんでだろ?)
(なんで、私のミドルネーム・・・)

 

 

この世界ではあまりミドルネームは明かさないのに。どちらかと言うとファーストネームが名前みたいに使われていて、ミドルネームは大切な人や親しい人にだけ呼んでもらうイメージ・・・だから、最初に会った人に突然ミドルネームを言ったりはしない。

不思議に思いながらも弾むように会話が続くまぁちゃんとオシタリくんの声を聴きながら チラチラとシライシくんを見ていた。

(やっぱりかっこいい)

 

そして彼とバチっと目が合ってしまい、シライシくんが口を開いた。

 

 

「サオリ・・・ちゃんって言うんやな」
「あ、うん・・・」
「あの日のこと、覚えてる?社交界の、庭で・・・」
「覚えてるよ、あの時は本当にありがとうございました」
「や、それは全然!ほんま、あーゆーのは得意やしいつでも言うて」
「・・・ふふ、靴なんてそうそう壊れないよ」

 

そう笑うと、彼は一瞬固まった気がした。

「そうだ、あの日のお礼をしたいんだけど・・・」
「え!?お、お礼!?」
「何かご馳走させて」
「いや、そんなんしてほしくて直したんとちゃうし・・・」
「でも、ずっと後悔してて・・・あの時ちゃんとお名前聞けばよかったな、って。逃げるように帰っちゃって本当にごめんなさい」
「そんなん気にせんといて!」

 

 

そう言ってくれる笑顔が眩しい・・・
天使だ・・・
天使がここにいた・・・
なんて可愛いんだ・・・
可愛いのにカッコイイ・・・

 

 

これはアレだね・・・
間違いなく、ショタ好きの22歳の私の血と、13歳のイザベラの血が騒いでるね・・・

 

 

 

可愛いのにカッコイイなんて複雑すぎてとんでもない・・・

 

 

「さおちゃん聞いて、コイツね、学校中で1番足速いとか嘘つくさ」
「嘘とちゃうて!!俺ほんま足速いねん!!」
「じゃあ明日鐘が鳴ったら1番にこの食堂まで来て窓側の席を取ってチーズケーキも買っといてよ」
「そんなんお安い御用やわ!!!」
「お手並み拝見だな」
「望むところや!!」

 

「え、まぁちゃん待って・・・それって・・・」

 

 

(ただのパシリじゃん!!!!)

 

 

そう言おうとしたけど、シライシくんが笑いながら ほな明日も4人分席取らなあかんな って笑うから何となく言えなくなってしまった。

 

 

 

だって明日も一緒にお昼ご飯食べれるってことでしょ!?

 

 

 

なにそれ最高!
イケメン見ながらの食事!!
まぁちゃんグッジョブ!!!!

 

 

 

そのあとはまたワイワイとお話しながらご飯を食べて、別れ際に

 

「お礼の件、考えておいてね」

 

と伝えておいた。
彼は少し戸惑っていたけど、うん、と頷いてくれた。
やはり、天使だ。

 

 

 

 

「やった~明日もチーズケーキ食べれるし席もゲット出来そうだわ」
「まぁちゃん、きみはほんとに・・・」
「まぁまぁ、やつもやる気満々だからいいじゃないか!」
「いいけどさ・・・でもなんでいきなりミドルネーム教えたの?親しい人にしか教えないのに・・・」
「あのね、きみ」
「うん」
「自分がイザベラ・アヴァンってことわかってる?」
「え?」
「あの!めちゃくちゃ!悪名高い!極悪人の!イザベラ・アヴァンって!自覚あるの!!?全然噂と違うからないかもしれないけどさ!」
「あ・・・そっか、そう・・・だよね・・・」
「イザベラって言ってみなよ、みんな顔色変わるよ。印象最悪」
「そ、そっか・・・」
「ありがたいことにミドルネームは知れ渡ってないからさ、友達作りたいならこれからはミドルネーム名乗りなよ、わかった?」
「うん・・・!」

まぁちゃん、さすがだ。
そんなことまで考えてくれて・・・
やっぱり記憶あるんじゃないか・・・?

 

「まぁちゃん、記憶戻ったの?」
「だからなんのこと?」
「あ~やっぱり記憶は無しかぁ・・・」
「記憶って何さ」

 

記憶とかそんなのないのかもしれない。
現実世界と言ってる22年間が夢だったのかもしれないし、記憶とか転生とかそんなことがもしかしたら最初からなかったのかも・・・
そんなことが頭に過ってなんだか寂しくなる。

 

でも、まぁちゃんの言う通り、極悪人のイザベラが私になったというのは間違いはないから・・・
例えばイザベラが頭を打った衝撃で新しい人格として私が生まれたとかたったそれだけのことかもしれない
元々私はここの世界の人間なのかもしれない。

 

 

でもそうするとゲームとのつながりがわからなくなるぞ、うーむ

 

 

「さおちゃん、何ぼんやりしてんの?」
「え!」
「アタシ教室戻るね」
「う、うん」

 

(あ、そうだ!!)

 

例えばゲームの世界との繋がりとかはたまたまかもしれない。
だから私には確認しなくてはいけないことがある。
もしまぁちゃんが主人公だとしたら、まぁちゃんのクラスの担任の先生は隠れ恋愛対象・・・

つまり、私の知ってる人物なはずなんだ。

 

 

それだけはこの目で確かめなくちゃ・・・!

 

 

「まぁちゃん、何組だっけ?」
「5組だよ」
「そっか、あのオシタリくんって人もいるんだよね?(オシタリくんって子も見たことない子だったけど)」
「うん、なんか名前知らんかったけど顔は見たことあるわ」
「担任の先生は?」
「担任?」
「若い人?」

 

 

ドキドキしながら言葉を待つ。

 

 

「担任はねー・・・」

 

 

 

 

「マナミ」

 

 

 

 

 

 

その時、誰かが名前を呼んで

 

 

私とまぁちゃんは、振り向いたんだ。

 

 

 

「・・・久しぶりだね」

 

 

 

そこには 爽やかに笑う・・・

 

 

 

「「いちにぃ・・・!!!!!」」

 

 

「え、さおちゃん、いちにぃ知ってるの?」

 

 

 

!!!( ゚д゚)ハッ!!!!

 

 

 

思わず、驚きすぎて声を出してしまった。
だっていちにぃが居たんだ!!!
間違いない、いちにぃだ!!!現実世界ではお隣の大家族のお兄ちゃんだったんだ!
私も幼なじみでそれはもう可愛がっていただいたんだ!!
なぜ!!!なぜここに!!!!
いちにぃが・・・!いちにぃ、ま、まさか!!!!!
まさかいちにぃが教師・・・!?やっぱり!!!教師のカルロスはいちにぃ・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

いや、まって

いにちぃ、制服着てるわ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「えっと貴女とどこかでお会いしたことがありましたかな・・・・・・ん?マナミとずいぶん似て・・・」
「たまたまだよ。で、さおちゃんはどこでいにちぃと知り合ったの?」
「え、いや、私は・・・」
「また、記憶がどーのこーのってやつ?」
「う、うん・・・」
「あ~そうかい。この人はアタシと同じ孤児院にいたいちにぃだよ。血は繋がってないけど孤児院のみんなは兄弟だから、アタシのお兄ちゃんだよ」
「そ、そうなんだ・・・あの、ごめんなさい、私人違いみたいです」
「いえいえ、マナミのお友達ですか?いつも妹がお世話になっております。今後も仲良くしてやってください(ニコ)」
「あ、は、はい(どこからどうみてもいちにぃだ!!同一人物!!)」
「私は、ミレー・イチゴ・アワタグチと申します。今は最上級生として生徒会役員をしております。どうぞお見知り置きを」
「あ、よ、よろしくお願いします」

 

 

 

ミレー・・・??????
そんなキャラ聞いたことない・・・
知ってる人なのに攻略対象じゃない・・・?
こんなパターン初めてで・・・戸惑う・・・

 

 

 

「いちにぃはね、孤児院で育ったから本来はイチゴしか名前がなかったんだけど、優秀で色々な研究して賞とか取ってるから特別に名前を与えられたしここの学園にも特特待生で入学してるんだよ!」

 

 

この国の未来に必要な人なんだよ!!

 

 

と、まぁちゃんは子供の頃からの知り合いに会えて嬉しいのかものすごい笑顔で笑って言った。
向こうの世界のまぁちゃんもいちにぃが好きでよく甘えてたし、やっぱりいちにぃはすごいなぁと思いながら

 

 

 

(攻略対象じゃなくても知り合いがいるってこと???)
(一体どう言うことなの・・・?)
(現実世界だと思ってるあの記憶はなんなの???)
(私はオタクのOL・・・まぁちゃんと二人暮しの22歳・・・)
(その記憶は・・・嘘なの?)
(それとも作られたものなの・・・?)

 

 

 

益々訳が分からなくなって
まぁちゃんの担任を調べるのも忘れ、フラフラと教室へ向かった。

 

 

 


 

 

放課後

 

 

 

「ごめんね、待った?」

「いや、俺も今来たばかりだよ」

 

 

ニコリとユキムラは笑った。

 

 

 

ユキムラは私の事嫌いなはずなのに本当に優しくてありがたい・・・

嫌われてるの悲しいから早く信用してもらえるようにがんばらなくちゃ!!

 

 

 

 

 

 

「あの子のことだろ?」

 

ユキムラがそう言って、私はコクンと頷いた。

 

 

 

「誰にも言わないでほしいんだけど、彼女の名前はティーザー・マナミ・アヴァン・・・孤児院に捨てられてたんだ手」

「アヴァン・・・?まさか・・・」

「ネックレスが一緒に置いてあって名前が掘ってあったらしいの」

「そうか・・・サオリと似てるしそれは絶対に関係あるだろうね」

「うん・・・私もお父様とお母様に見つからないように調査を進めるからウィリアム家の方でもお願いできないかな・・・?」

「あぁ、もちろんだよ」

 

 

ゲーム、全然クリアしてないし軽くしかやってないんだけど

双子だったってのが覚えてないんだよね・・・ゲームのイザベラと主人公は全然似てなかったしね。

こうしてユキムラとの極秘任務が始まった。

 

ちょっとコナンくんっぽくて楽しい。

 

下手に動けないしなーとか色々なことを考えなら その日は終わった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

「窓側の一番ええ席取ったしチーズケーキも買うといたで!(ドヤァ)」

 

 

昼休み

C食堂には見事なパシリっぷりでドヤ顔のオシタリくんがいた。
その隣にはクスクス笑うシライシくんも・・・
天使だ・・・

 

 

「お、ご苦労!!よくやった!!」
「な?な!?足早いやろ!?授業終わって鐘鳴ってから教室出たの見たやろ!?」
「見たけど、たまたまじゃない?」
「なに・・・!?」
「今日はたまたま速かっただけかもしれない」
「なんやと!?ほな明日も証明して見せるわ!!」
「うむ、頼んだ」

 

 

(おいおい・・・)
(明日もパシリにするのかまぁちゃんよ・・・)

 

 

「もぉ、まぁちゃん」

 

 

と、注意しようとしたのもつかの間

 

 

「はは、上手く転がされとるなー」

 

 

ってシライシくんが笑うから その笑顔に魅入ってしまい注意できなかった。
オシタリくんごめんね。

 

 

「俺もねぇちゃんと妹によく同じことされとったからよぅわかるわ・・・途中でこれパシリやって気付くんやけど」
「ふふ、仲がいいんだね」
「あー・・・せやな、仲は、よかってんけど・・・」

 

 

そのあと彼は 今日は何を食べるん? って話題を変えたのでそれ以上はつっこまなかったけど
少し淋しそうな顔をしたこと その時の私は気が付かずにいた。

 

 

 

「はー、ご飯美味しすぎる・・・最高・・・肉が美味い・・・最高・・・」
「よっぽど肉に飢えてたんやな、今日もステーキやんか」
「そりゃねー、孤児院だと肉は貴重だから・・・たまに鶏肉は食べれたけど育ち盛りのチビたち多かったしねぇ。こんな大きなお肉一人で食べるなんてたまに足長オジサンが肉大量に送ってくれた時だけだもん」
「孤児院も大変やな・・・俺自分で稼げるようになったら絶対寄付するわ」
「え・・・あんた超いいやつだね・・・ありがとう・・・」
「ええんやで・・・栄養取らないとお前みたいなチビになってまうなんて可哀想やんか・・・」
「は?誰がチビだと・・・?」
「栄養失調で背のびひんかったんやろ?可哀想すぎるわ・・・」
「栄養失調じゃない!!!!!!可哀想とか言うな!!!!!そこまで孤児院困ってないわ!!!!」

 

 

 

またまぁちゃんとオシタリくんがギャーギャーと言い合いを始めたので
私は向かいに座るシライシくんと会話をする。

 

 

 

「・・・サオリちゃんは、社交界におったし孤児院出身・・・とちゃうよな?」
「あ、うん・・・」
「せやんなー、綺麗なドレス着とったもんな」
「や、そんなことは・・・」
「どこの貴族なん?」

 

 

純粋な瞳でそう聞かれて

 

 

『イザベラって言ってみなよ、みんな顔色変わるよ。印象最悪』

 

 

まぁちゃんの言葉が頭に浮かんだ。

 

 

 

(・・・イザベラって言ったら)
(シライシくんも嫌がるかな)

 

なんだかそう考えると胸が痛くて 答えに詰まってしまった。

 

「え、っと」
「あ、俺は田舎の貴族出身で学園に入るためにこっちの寮に越して来たんや。コイツとは同郷で腐れ縁やな」
「そうなんだ」
「サオリちゃんは?」

 

 

う・・・
キラキラの視線が痛い・・・
嘘はつきたくないし素直に言っちゃおうか・・・
でもそれで嫌われたら困るし・・・

 

 

「サオリは、俺の親戚だよ」

ふ、と見上げると そこにはユキムラがいた。

 

(あ、ユキムラ・・・!)

 

再びユキムラとまぁちゃんの出会いだ・・・!
ユキムラとのなんかしらのフラグイベントなのでは・・・!
と、ドキッとしながらまぁちゃんを見たけど、 まぁちゃんは相変わらずオシタリくんと言い合いを続けていた。
なぜだ、まぁちゃんきみは主人公なはずだろう・・・!!
ユキムラも王子も攻略対象キャラなのにもっと何かときめいて・・・!!
いや、ときめかれたら困る、結ばれたら私死んじゃう可能性あるから・・・でも主人公なんだから・・・!

 

 

「あれ、きみは・・・」
「初めまして。サオリがお世話になってます。俺はオリバー・ユキムラ。父はこの国の総裁をしています」
「え、総裁様の・・・!すごいなぁ、めっちゃ有名貴族やんか」
「いやいや、そんなことはないよ。きみのお父様もやり手と聞いているよ、シライシくん」

 

 

突然現れたユキムラは 笑顔で私の代わりにシライシくんと話をしてくれた。

 

 

(ホッ)
(よかった)
(なんとかごまかせた)

 

 

ユキムラはやっぱり優しいなぁと思いながら 二人を見た。

 

 

可愛い。
シライシくんはもちろんなのだが、儚げ美少年ユキムラも可愛い。中1の時に会った時もキレイな人と思ってたけど22歳の今改めてみると可愛い。
ついでにまぁちゃんとバカみたいに騒いでるオシタリくんとやらも可愛い顔してる。
てゆーかモブでこの顔面だろ?
マジで顔面偏差値高すぎる、なんなのこの学園・・・天国?
やっぱりここがゲームの中の世界、だからなのか・・・?
いやそうとしか思えないが、ケンシンくんも美少年だし隣のいちにぃのおうちも全員美少年しかいなかった。
私はとても恵まれた環境に居た。
いたのに22年間彼氏もいなかった。
ただのショタコンのオタクだからな。

 

 

「で、サオリは週末は実家に帰るの?」

 

 

ユキムラに突然話を振られてハッと気づく。
シライシくんがじーっとこっちを見ていた。

 

 

「え、な、何が?」
「週末だよ。週末の過ごし方はそれぞれ自由だけど、どうするのかなって思って」
「あ、あー・・・ユキムラは帰るの?」
「あぁ、弟が俺が帰るの楽しみにしてるしね」
「ケンシンくんが・・・!!」
「よかったら一緒に行くかい?」
「え!あー・・・でも最初の休みは家族で積もる話もあるだろうし・・・私も勉強の復習とかしたいし今回はいいかな」
「そう、じゃあまた連休においで。ケンシンも喜ぶよ」
「ぜひ(食い気味)」
「じゃあ俺は行くね、話の途中で悪かったね」
「いや、楽しかったで。ほな、また!」

 

 

(そっか、週末は自由なのか)
(ユキムラは家に帰るのか・・・今度ケンシンくんに会いたいから絶対連れてってもらおう)
(私は・・・いいかな・・・あの両親に会っても別に楽しくないし・・・)
(まぁちゃんは孤児院に帰るのかな、ちょっと聞いてみよっと)

 

 

食事が終わって(まぁちゃんはずっとオシタリくんと言い合いしてた)まぁちゃんと昼休みを過ごそうと思ったんだけど

 

 

「おい、知っとるか・・・?学校の裏の沼に金の亀がいるらしいで・・・?」
「マジかよ、それを早く言えよ・・・!行くぞ、金の亀探し!!!!」

 

 

と、謎の亀探しにまぁちゃんとオシタリくんが行ってしまったので
仕方なく私は一人で教室に向かった。

 

 

(教室には友達いないしアトベ怖いし教室に戻るの嫌だなぁ~)

 

 

「な、なぁ!!」

 

ボンヤリ歩いてると、 声をかけられて 振り向いた。

 

(え?)

 

「あ、シライシくん!」

 

 

そこにいたのは先ほどまで一緒にご飯を食べていたシライシくんだった。

 

 

「あの、サオリちゃん、ちょっとええかな・・・?」

 

 

(ちょっとどころかもう大歓迎)

 

 

「うん、大丈夫だよ」
「あんな、週末の話なんやけど・・・さっき、実家に帰らへんて言うてたやん」
「あ、うん、しばらくはいいかなって思ってるよ」
「俺も実家遠くてめったに帰られへんし、昨日の言ってたお礼、の話なんやけど、」
「あ、うん!」
「よかったら、週末・・・一緒におでかけせぇへん!?」
「へ・・・!?」
「そ、それが、お礼、ってことで・・・」

 

 

(は!)
(そうか!つまり学校の人がいないところでおごればいいわけね!)
(そうだよね、男の子がみんなの前でおごられるわけにはいかないもんね!!)
(はー、シライシくんマジ天使)
(超絶可愛い)

 

 

 

「わかった!!任せて!!!」
「あ、ほんま?よかった!ほな・・・土曜日と日曜日、どっちがええ?」
「土曜日で!!」
「あぁ、ほな女子寮の入り口まで迎えに行くわ」
「うん、わかった!待ってるよ!」

 

 

 

(ついに靴のお礼ができる・・・!!)

 

 

 

 

お礼をすることで頭がいっぱいで メラメラと燃えている私は
これがデートなのだと全く気付いていなかった・・・(鈍感力が備わってる22歳です!!!)(だから彼氏ができませんでした!!)

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