パーティーも終盤にさしかかってきた。
お腹もいっぱいだし、ずっと立ちっぱなしで疲れたし、挨拶とかしまくりで本当に気を遣うし・・・
私はどうも貴族の中でもかなり位が高いみたいで、
こんなたったの12の小娘なのに、みんなペコペコとあいさつしにやってくるんだよ。
まだ子供なのに・・・てかクソガキなのに・・・!!
イザベラ、子供のくせに悪魔のような恐ろしい女だったからみんな怖がってるみたい・・・
一言イザベラが両親に話せば簡単に没落させるくらいの権力あるみたいでね・・・
でもクソだよね、ほんとに・・・
イザベラも頭おかしいけど、両親も相当頭おかしいからな。
父親、誰か処刑しろとか言っても簡単に実行するからね、怖い。怖いよぉ。
(はぁ・・・)
(足、疲れちゃったな・・・)
人の多さにも疲れていた私は 少しだけ息抜きをしようとそっとホールを抜け出し、中庭に向かった。
のは いいんだけど。
(やっば・・・)
中庭に出る階段でこけて まぁゴージャスなドレスがクッション代わりになってケガはしてないんだけど
ヒールの靴はポッキリ行ってしまった。
ははは
子供のくせにこんな高いヒール履くからだわ!!!
(・・・いや)
(笑えないぞ)
さてどうしたものかと、とりあえず目に入った大きな噴水に腰かけた。
・・・昔の日本みたいに電気がない時代でもないけど
やっぱり電気はこの時代でも貴重なもので
普段は手元にろうそくを用意して歩いている。
現世には当たり前に夜でも灯りが溢れていたから こうして灯りがほとんどない時代の夜は真っ暗で
星空がものすごく 綺麗だった。
(あー・・・)
(私寝るの早いし、夜に出歩くことってないし・・・)
(こうして空を見上げることもなかったけど)
(すっごく・・・綺麗・・・)
ぼーっと星空を眺めていた。
現世だったらこの庭だって、街灯がたくさんあったり、噴水はライトアップされてたり、木々もイルミネーションが飾られてたりするだろう。
それはそれでもちろん綺麗なんだけどね
人工的じゃない本物の綺麗な風景ってこういうのなんだなーって思うと
なんだか魅入ってしまった。
「あれ?先約おったんか…」
その時。
ぼーっと星空を眺めていた私の耳に突然人の声が入ってきたから驚いた。
私は咄嗟に声の方へと顔を向けた。
「あ、邪魔するつもりはなかってん…すいません」
なんだか優しいその声は、謝罪をするとまた足を翻してどこかに行こうとした。
「あ、あの、」
それを止めたのは 私だった。
思わず咄嗟に声をかけてしまったけど、まぁなんというか・・・
この場を去るなら私の方だと思ったんだわ。
「え?」
その人は振り向いた。
いや、正確に言えば暗くてちゃんと振り向いたかは見えてないんだけどね。
ちょっと離れてるしね。
でもなんとなく気配を察知した、彼は振り向いた・・・多分。
「あの、待ってください」
「なんですか?」
「あ、私、すいません、あの、私がいなくなりますのでどうぞここでゆっくりなさってください💦」
「え?いや、俺が邪魔してもうたから俺が向こう行くんで…」
「いえ、休みに来た・・・んですよね・・・?私もそうだったので・・・でももう大丈夫なので、どうぞ」
「いやいやいや!そないなことせんでも!ほんまに気にせんでください!」
「ほんとに大丈夫ですよ、よかったらここから星を見上げてみてください、すごく綺麗ですよ」
「え!星???星・・・出てませんけど・・・」
「え!?!?あれ、さっきまでたくさん輝いていたのに!!」
「雲が出てきてもうてますね?あ、でもチラホラ見える、雲が無くなれば綺麗に見えそうですね」
「あ、じゃあぜひ!!ほんとに綺麗なので見てみてください!!」
「・・・星を見上げるなんて変わった貴族やなぁ(ボソッ)」
「ん?なにか・・・?」
「あ、いや、なんでも・・・!ほな少しだけ・・・すいません」
「どうぞどうぞ、私もう行きますので・・・!」
そう立ち上がった時、足に違和感を感じた。
(あっ)
(やばい!)
(ヒール!!折れてたんだった!!!!)
明らかに変な音を鳴らした私の足元に
その人が近づいてきたのがわかった。
「あれ?靴、なんかおかしいんですか?」
「あ、かかとが折れてしまって・・・すいません、もう行くとか言ったのに・・・今靴脱いで裸足で帰るので少々お待ちを・・・」
「え!?!?いや!それは危ないんとちゃいますか!?!?てか脱ぐって!?!?え、どーゆーことなん!?!?」
貴族の方ですよね!?そんな貴族おりますか!?
と、彼の声がすごく近くに聞こえて
「座ってください!靴、ちょっと見せてもらいますね」
と、彼がかがんで私の靴を自分のひざに乗せたのがわかった。
「あ、あの!服が汚れてしまうのでそんな、」
「平気です。これでも姉妹にこき使われてなんでもやらされるんで」
その人は、あ~ほんまやヒール取れとる、と呟いたあと
「ちょお、待っててください!!!」
と叫んでどこかに行ってしまった。
残された私はヒールの折れた靴を持っていかれてしまったしめちゃくちゃオロオロしたが、彼が待っててと言った以上きっと戻ってくるだろうし、戻ってきた時にいないととても失礼だから素直にその場で待つことにした。
ボンヤリとまた空を見上げた
(あ、星…)
(よかった、雲が動いたから星見えた)
(月もでたから少し明るくなったかな)
(よかったよかった)
(あの人が後で星見れるな)
「お待たせしました!!!」
ビクッ
声が聞こえて驚いてしまった。
でもすぐにその声の主が先程の彼だとわかった。
息を切らせて戻ってきてくれたらしい彼に
なんとなくホッとした。
(よかった、戻ってきてくれた・・・)
(戻ってきてくれなかったらどうしようかと思った)
そして彼は
「応急処置やけど、」
と
また私の前に屈み、そして足を自分の膝に乗せると
そっと靴を履かせてくれた。
(あれ)
(なんだかシンデレラみたい)
「靴・・・直ってる・・・」
「ここのお屋敷に雑務で働いてる知り合いのおっちゃんおって・・・急いでヒール止めて来たんや」
応急処置なんではよ新しいものに履き替えてくださいね!!
と
彼は
顔を上げて
ニコッと
笑った
(ヒッ………!!!!!!)
今まで街灯もないし
月も雲に隠れちゃってたから
暗くてよく見えなかったけど
声しか聞こえなかったけど
月明かりに照らされて
私を見上げて笑う彼は
あまりにも
美しかった
ドキッ
ドクドクドクドク
心臓がうるさく騒ぎ出す。
(やっば・・・・・)
(何この美少年・・・・・・)
(こんな綺麗な人見たことない・・・)
( 超 イ ケ メ ン )
私今まで平然とこんなイケメンとお話してたの!?!?!
ヤバくない!!?!!?!?
どうやら同年代らしき彼は
マジマジと私を見つめ
相変わらずの素敵な絵顔のまま
「・・・同じくらいの女の子かな、とは思うてたんやけど、こんなに可愛らしいお姫様とは」
と嬉しそうに呟いた。
そうか
私に彼が見えたと言うことは
彼からも私が見えてるっていうこと
(……………)
カァァァァ
恥ずかしくて
そんなこと男の子に言われたの、初めてだし
男性と1度もお付き合いしたことないただのキモオタだし
めちゃくちゃ 彼の顔、好みだし
(・・・やばい)
(急に緊張して 吐きそう)
スクッ
私は直ぐにその場に立ち上がり
彼の方を見ないように星空を見上げながら
「こ、この御恩は必ずお返し致します!!!!」
そう叫ぶと
逃げるように、その場を走り去った。
私、ほんとは22歳なんですよ
大人なんですよ
相手は見るからに小学生高学年くらいなんですよ
なのに、なんでなんでなんで!!!
(あ~~~~~もうっ!!!!!)
22歳独身オタク女
人生初のトキメキは
ゲームの中の人物でした………
(しかも多分モブ)
(ちーーーん( ºωº ))