そういえばリアルの世界はどうなったんだろう・・・
私がいなくなってるとしたらまぁちゃんすごい心配してるだろうな・・・
いやでも私今12歳だし・・・
12・・・
12年はこっちで過ごしてるわけだし・・・
リアルの私22歳だったから向こうだと・・・34歳・・・?
え・・・?
マジで・・・?
34!?
もう結婚してるんだろうか?いやまさかこんなオタク一生独身だよな・・・
誰もこんなオタク嫁にもらってくれるわけないわ・・・
いやそもそもリアルの世界とかないのかもしれない・・・トリップしたのか?それとも転生したのか?
私は死んだのか?一体どういうことなんだ・・・?
「・・・はぁ」
まぁそんなことはぶっちゃけどーでもいいのさ今は。
いやよくないけど。
よくないな?
元の世界に戻れないとヤバイよな???
私このままじゃ死ぬな???
戻りたい・・・
まぁちゃんがいて2次元に入り浸りのあの平和な時代に・・・
平和・・・
だった・・・・・・・・・
(どうしよう・・・)
(このままじゃ私、死ぬ・・・)
まぁちゃん助けて・・・・・・
グスン
涙が溢れた。
自分が”まえさおり”だと記憶をとりもどした数日前から泣いてばかりいる。
正直、記憶はまだボンヤリしていて全てを思い出したわけではない。
こっちの世界の記憶も性格悪すぎてよっぽど消し去りたかったんだろうか・・・若干曖昧だ・・・
(でも自分が人を虫けらのように扱うクソヤローってことは覚えてる・・・)
(そしてまぁちゃんに会いたい・・・)
(このままではいつか処刑されるという恐怖でどうにかなってしまいそうだ・・・)
グスグス
泣いてばかりいる私に 心配そうに侍女さんが声をかけてくれた。
「イザベラ様・・・」
「サオリって呼んで・・・その名前は嫌いなんです・・・😢」
「は、はい、サオリ様・・・あの、まだお体の具合がよろしくないようですが・・・」
「ううん、体はどこも悪くなくて・・・むしろ若いからかな・・・なんか体が軽くてありがたいと思ってるくらい・・・」
「えっと・・・」
「あ、なんでもないです・・・すいません・・・」
「いえ・・・こちらこそすいません・・・」
そして急に侍女さんは フフ と笑みをもらした。
「???」
そして不思議そうに彼女を見た私に 慌てて頭を下げた。
「し、失礼しました!」
「いえ・・・あの、なにかおかしいことでもありました・・・?」
「いえっ!!あ、あの・・・、その・・・」
お、怒らないでいただきたいのですが
そう侍女さんが話し始めた。
「あの、イ・・・サオリ様が図書室で倒れてからすごく変わられて・・・やっぱりどこか打ったのではないかと思っていたのですが・・・」
「え?」
「ですがお体も元気なようですし・・・えっと・・・」
「私・・・?変わりました・・・?」
「それはもう!今までとは別人のようです!!!」
(まぁほぼ別人ですからね・・・)
そう思いながら彼女が続ける言葉に耳を傾けた。
「わたくしは・・・その・・・以前のサオリ様は少し怖かったのです・・・完璧な方ですし・・・少しのミスで首になったり罰を与えられたり両親ごと処刑された同僚もおりましたし・・・」
うっ・・・
その話は勘弁していただきたい・・・
とてつもなく耳がいたい・・・😢
心も痛い・・・😢
クソガキのせいで命を落とす人がいたかと思うとマジで自分を殴りたい・・・😢
「ごめんなさい・・・私ひどいことばかりしてきましたよね・・・」
その報いがこれから起こりえる処刑だもんな・・・
はぁもう・・・
今すぐ死にたい・・・
つらい・・・
申し訳なさすぎるし私にもう生きる価値はない・・・
ないけど死ぬとわかると本当に怖くてどうしようもない・・・
まぁちゃん・・・・
「い、いえ!!謝らないでください!!あの、その・・・他の使用人とも話していたのです・・・変わられたサオリ様はとても穏やかで素敵だと・・・」
え?
その言葉に顔をあげた。
「あの、本当に失礼なことばかり申して申し訳ございません・・・ただ・・・わたくしは今のサオリ様が、とても好きで・・・お傍にいて嬉しく思います」
なので元気がないことが気になって・・・お力になれることがあったら何なりとお申し付けください
と、彼女は頭を下げた。
(・・・え?)
(ちょっと待てよ・・・?)
確かゲームの中のイザベラは 使用人にも相当嫌われてて両親以外の味方は誰一人いなかったはず・・・
むしろ使用人たちにしてきた非道の限りも暴露されて処刑されたはずでは・・・?
でも彼女は今 私を好きだと言った・・・?
(ちょっと待って?)
(それって・・・・)
「あ・・・あの・・・・!もう一度・・・聞かせてください!!わ、私を、好き・・・ですか!?」
「えぇ、最近のサオリ様はまるで天使のようで・・・とても好きです」
「!! この!イザベラ・アヴァンをですか!!?!?」
「そ、そうです。イザベラ・サオリ・アヴァン様を、です」
彼女はニッコリと優しく微笑み、 お困りのことがあればなんでもお力になりますね と言ってくれた。
(・・・これって、)
ゴクリ
(ストーリーが・・・変わってる?)
今までのイザベラは横暴の限りを尽くし、極悪非道で血も涙もない悪役だったはず・・・
それが私が記憶を取り戻したことで もしかして少しずつ状況が変わってきてるのかもしれない・・・
てことは
今後の私の努力次第では 処刑を回避できるってこと・・・?
(わ・・・!)
(うわぁぁぁ!!!!!!!)
「あ、ありがとう!!!ありがとうございます!!!」
「え?サオリ様」
「私も!!私も貴女が大好き・・・!!」
驚いた彼女の手を取りながらそういうと 彼女は嬉しそうに笑った。
( ゚д゚)ハッ!
そうとわかればこうしちゃいられない!!!!
「あのっ!紙とペンを用意していただけませんか!?」
そう言って、しばしの間彼女には席を外してもらった。
部屋に一人きりになった私は 机に向かって
紙を睨みながら うーん とひとりブツブツ呟いた。
「とりあえず私が今覚えてるこのゲームの内容をメモしておこう」
紙にペンを走らせる。
「まず、イザベラは13歳で学園に入るんだよね・・・」
そしてそこでライバルとなる主人公をあの手この手でいじめぬく・・・そしてそれを助ける攻略キャラたちの活躍で主人公は救われ悪役のイザベラは処刑される・・・
考えれば考えるほど落ち込むな・・・あかんぞこれ・・・
確かこのゲームには4人の攻略キャラがいたはず・・・
どのルートも主人公が結ばれたらイザベラは処刑されたんだっけな・・・?
記憶が曖昧だし、正直クリアまだしてないから覚えてないんだ・・・
イザベラに関してはまぁちゃんが マジくそ女だな死ねや ってずっとイライラしながらプレイしてるのが印象的で
最後に処刑されたときは「はーよかったよかった、荼吉尼天もイザベラも悪い女は消えろ」ってスッキリしてたのも印象深い・・・
イザベラに比べたらロザリアとレイチェルってマシなんだなー狙ってる守護聖とデートしてるとこ目撃したら殺意芽生えるけどってまぁちゃん言ってたもん。
まぁ本当にまぁちゃんがブチ切れる通り、イザベラは救いようのない悪女だった。
そりゃ乙女ゲ―ごときで処刑までされるんだからよっぽどだよね・・・
しかし、イザベラはとにかくむかつくんだど正直イザベラは最後に処刑されるって記憶しかないんだよね・・・
だから主人公目線のストーリーを必死に思い出してみよう・・・
まず・・・主人公は孤児院で育った優しい天使のような少女で
孤児院のシスターと共にまだ小さな同じ孤児院の子供たちの面倒を見ている・・・
貧乏な主人公はとてもじゃないけど貴族が多い学園に入るなんてできるわけないんだけど
足長オジサン的な何者かのおかげで学園に入学することを許される・・・
そこで出会ったメイン攻略キャラの王子と恋に落ちるんだっけな・・・
これは私覚えてるぞ・・・
この王子、庶民のことは何も知らない世間知らずだったけど主人公に庶民の暮らしや貧困層のことを聞いたり色々するうちにどんどん国の事を考えられるいい王子様へと成長していくんだよね・・・
この王子と主人公が結ばれるルートでは間違いなくイザベラは 死ぬ。
王子様を怒らせて処刑される。間違えはない。
・・・間違えはないけど・・・間違っててほしかった・・・
まだ死にたくない・・・
いや私なんぞ死ぬべき人生を歩んできたくそ女なんですけどね・・・
でも怖いんだよ・・・死ぬってわかってて死ぬのは怖い・・・
あとまぁちゃんに会わないと心残りだよ・・・
(あ、そういえば!)
どのキャラルートにも、エンディングは何種類かあったはず・・・
確か王子様のHAPPYENDでは主人公を溺愛した王子がイザベラの悪事を裁くって感じで処刑になったよね・・・
でも・・・
BADENDはどうだった・・・?
BADEND・・・
そうだ・・・
思い出した・・・!
主人公が王子様と結ばれず迎えるエンディング・・・!
王子と両片思いになった主人公に嫉妬して、イザベラが主人公を殺すエンディングだ・・・!!!
そして主人公が死んだとわかって逆行した王子はイザベラを殺し自らも命を絶つ・・・・・・・・・・・・・・・・
なんてことだ😨
王子のBADENDバヤすぎだろ・・・!!
誰一人助からないじゃないか!!!全員死ぬ!!!!
そういやまぁちゃんがやっぱネオロマかコナミじゃないとあかんな、このゲーム病むって言ってた・・・!
私は嫌いじゃないよ~とか言ってたけど
ごめん、嫌いだったわ!!!!!!!!!!
誰も死なないコルダもアンジェもときメモも最高だな!!?!?!?
死んでも時空超えられるはるときすごいな!?
白龍・・・・!!私にも逆鱗をひとつ・・・いやあかん!あれ白龍の命と引き換えだった・・・!!重いな!意外とはるとき重いわ!!!!
でも時空超えられない分このゲームの方がよっぽど重いな!!!!!!
(やだよ~~~~)
(やっぱ死ぬんじゃん~~~~)
(やだよぉ~~~)
(こわいよぉぉ~~~)
いや、大丈夫・・・!
まだゲームの世界と決まったわけじゃない!!!
たまったま同姓同名なだけかもしれないし!!
たまったまゲームの中の雰囲気と似てるだけかもしれないし!!!
そもそもこれは現実ではなくて夢なんだと思うから😄
きっと目が覚めたら私はいつもどーり会社に行くし土日はまぁちゃんと楽しく舞台見て過ごすんだ😄
えへへ😄
・・・・・
ダメだ・・・!!!!
現実逃避したいのに、入学する予定の学園に王子様も一緒だって言うのさっき両親から聞いた!!!!!
どうあがいてもゲームと同じように時が進む・・・!!!
学園に入るところからゲーム自体はスタートするけど・・・もう私の物語は始まってる!!!!!!
あぁぁ、どうしよう・・・!!!!
どうしよう!!!!!!!
(こ、こうなったら・・・!!!!!!)
意地悪でひどいことはもうしない・・・・・・!!!!!!
主人公とも仲良くなって死亡フラグを自ら折りまくってやるしかない!!!!!!
マジでそれしかない・・・!!!!!!!
(そして死亡回避して)
(早いとこ現実世界に戻れるように調べまくらねば・・・!!!!)
(まずは図書室に行かないと・・・・!!!!)
その日から私は図書室でどうにか現実世界に戻る手立てはないものかと必死に探した。
まぁそんなこと書いてある本どこにも見当たらないんだけどね。
ただうちの図書室、美女と野獣の図書室並みに広いから・・・もしかしたら何かヒントがあるかもしれないし!!
あと、使用人さんたちともなるべくめっちゃ仲良くするようにしてる・・・!!
過去にした悪行は取り消せないかもしれないけど😢
どうにか・・・少しでもみんなに罪滅ぼしをしたくってお手伝いも率先してやるようにした・・・😢
本当に皆様には申し訳なく思っております・・・12歳のクソガキのイザベラがすいません・・・。
コンコン
その日も 図書室にこもって、私は本を探していたんだ。
異世界から戻るヒントはないだろうかと、必死に・・・・
そんな時にドアをノックする音が聞こえて返事をした。
使用人の彼女が来たのかと思って
はーい!
とのんきに。
ガチャリ
ところが、扉が開いて 中に入って来たその人物を見て
目ん玉飛び出た。
だって
中に入って来たのは
「・・・お久しぶりですね、イザベラ」
読めない笑顔はそのままで、そして美しさと気品は何一つ変わりもしない・・・
「ゆ・・・幸村!!!!!!?!?!?」
同じ立海高校出身の 幸村精市が立っていたのだから・・・!!!!!!
「ゆ、幸村!!幸村ぁ!!!!!!」
私は思わず彼に駆け寄って、そして思いっきり抱き着いたのだ。
「幸村!!あたなもこっちに来てたんだね!?よかった、私もう一人で不安で不安で、毎日擦り切れそうなくらいの精神力でやっと生きてたの・・・!」
あなただけがこっちにきてるの?ほかの人は知らない?現世はどうなったか知ってる?ねぇ、まぁちゃんは!?まぁちゃんどこにいるか知らない!?ねぇ、幸村!幸村!!!
そう幸村をぎゅうっと抱きしめながら泣いて彼に問い続けた。
幸村は相変わらずの美しい顔で 私の事を見下ろしていた。