異世界にトリップしたと思ったら乙女ゲーの悪役令嬢役でした(1)サオリ

ゴチンッ

 

 

 

 

 

 

痛い

 

 

 

 

そういう前に、頭の中に まるで走馬灯のように流れた記憶に

 

 

 

私は、痛みも忘れて 愕然とした。

 

 

 

図書室で大きな辞書が頭に落ちてきた 12歳の夏。

 

 

 

 

私は

 

 

 

 

私が私ではないことを 思い出したのだ。

 

 

(やばい、なぜこんなことに)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

辞書が頭に直撃し、色々なことを思い出したショックだろうか。
ぼんやりと目を開けたそこは いつも私が眠っているベッドだった。

 

 

 

(なんか私・・・とんでもないことえを思い出した・・・)

 

 

 

まぁ、思い出したからと言って 冷静でいられるわけじゃないんだけどねっ!!!!!

 

 

 

私はまえさおり!
産まれた時から双子のまぁちゃんととても仲が良くて
2人そろってオタクだからそれはもう二人でキャッキャと楽しく乙女ゲ―をする日々・・・
学生時代から東京で2人暮らしをしてイベントや舞台を見に行きつつ
社会人になってもそれは変わらず給料が出てはアンジェ貯金と言う名の貯金をして二人でありとあらゆる乙女ゲ―を買ってプレイしていた・・・。
本当に楽しい人生を送っている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

はずだったのに

 

 

 

今の私はまえさおりではないのだ・・・・

 

 

 

 

今の私は 非常にきらびやかなドレスを身にまとい お城のような豪邸に住み
たくさんの使用人からは様付けで呼ばれ
そして 年齢もまだ12歳の少女なのだ。

 

 

 

必死こいて働いてたOL生活ではない。

 

 

とても優雅なお嬢様生活を送っているのである。

 

 

そして名前も まえさおり ではなく

 

 

 

イザベラ・サオリ・アヴァン

 

 

 

っつー
とんでもない名前だ!!!

 

 

 

(ほんっとにとんでもない・・・!!!!!)
(明らかに日本人じゃないしょ!?!?)
(けど、サオリが入ってることが救い・・・)
(てかむしろサオリって入ってるのが不思議・・・)
(でも私はまえさおりではない・・・)
(どういうこと・・・?)

 

 

 

なぜ私は異世界に・・・?
これは夢・・・?
それとも私まさか・・・死んだの・・・?

 

 

 

前世の記憶はもちろんだが
こちらの私の人生の記憶も持っている。

 

 

 

12歳の私は
とても高貴な貴族の娘として生まれた。
欲しいものは何でも手に入ったし、どんな人も思いのままに動かせた。

 

 

 

働いたお金を2次元につぎ込む私とは正反対の人生である。

 

 

 

(・・・まぁちゃんは?)

 

 

 

ふと、まぁちゃんのことが気になって体を起こした。
まぁちゃん。
双子で仲良しでずっと一緒にいたのに
そういえばこっちの私は一人っ子でまぁちゃんらしき人も見かけたことがないと思い出した。

 

 

 

 

「イザベラ様・・・!目を覚まされたんですね・・・!!!」

 

 

 

 

その時。
私の傍に 使用人の侍女さんが駆け寄った。

 

 

 

「もうお体を起こして大丈夫なのですか!?痛みはありませんか!?まだ安静に・・・」

 

 

 

(この人・・・)
(先月から私の世話をしてくれてる侍女さんだ)

 

 

 

「あ、ハイ、もう大丈夫です」

 

 

 

ご心配をおかけしましたー  なんて言おうとしたのに

 

 

「大変申し訳ございませんでした・・・!!!!」

 

 

 

彼女が突然床に土下座をするから 驚きすぎて目玉飛び出そうになった。
ど、どうしてしまったんだ彼女は(オロオロ)

 

 

 

「わ、わたくしが傍についておきながら・・・本が落下する事故に合わせてしまい本当に申し訳ございません・・・!!!」
「え、いや悪いのはわた・・・」
「この命をもって償いますので・・・・・・どうか!!!故郷の両親だけは・・・どうか咎めなしにしてくださいませ・・・!!!!」

 

 

 

 

(え?)

 

 

 

 

一瞬、何を言ってるかわからなかった。

 

 

目の前で どうか両親だけはどうか と必死に土下座しながら懇願するこの女性の震える体を見るまでは。

 

 

 

(あ・・・)
(そうか・・・)

 

 

 

 

”故郷の両親だけは咎めなしに”

 

 

それはこの位の高い 貴族として生まれた私の 今までしてきたことだった。

 

 

 

 

我が家は権力の強い貴族だから たとえ12歳の小娘でもものすごい支配権を持つ。
そして私は生まれながらに甘やかされ、チヤホヤされ、そして12歳にして
傲慢でワガママで悪魔のような恐ろしい少女に育っていったのだ・・・。

 

 

 

(そうだ・・・今までの私・・・)
(ちょっとでも失敗したらすぐにその人やその家族まで刑を与えて・・・)
(私・・・なんてことを・・・)

 

 

自分のしてきたことが 今更ながら恐ろしくなった。

 

 

(バカ!!!!)
(今までの私!!バカ!!!!!)
(イザベラバカ・・・!!!)
(最低だ!!!大馬鹿野郎!!!!)
(殴りたい・・・・!!!!!)

 

 

 

ポカッ

 

いてもたってもいられず、私は自分の頭を殴った。

 

 

 

「イ・・・イザベラ様!!?!?」

 

 

 

彼女は震えながら イザベラ様がおかしくなってしまった とますます顔を真っ青にした。

 

 

 

「まさか頭のうちどころが・・・?いやっ・・・そんなの両親だけじゃ済まない・・・私の親族皆殺しだわ・・・!」
「いや、大丈夫 そんなことさせない」
「え・・・」

 

 

私はベッドから起き上がり そっと床で頭を下げる彼女に近づいた。

 

 

「私が今自分を殴ったのは目が覚めたから・・・あなたのこと責める気は微塵もないの、ごめんなさい」

 

 

 

侍女さんはそれはもうきょとんとして私を見つめていた。
私も必死に 今までの傲慢な態度が申し訳なかったこと、図書室での事故は自分の不注意だということを説明した。

 

 

 

そして最後まで話を聞いてくれた彼女は ようやく口を開くのだ。

 

 

 

「・・・や・・・やはり、打ちどころが悪かったのですね・・・・」

 

 

 

私はがっくりと肩を落とし (あぁこれも全て今までの自分の悪行のせいだ・・・) と猛反した・・・。
ひとまず彼女が両親と医者を呼びに行き、
部屋にやってきて早々使用人のお前のせいだと激怒する両親をなだめ、
彼女へのお咎めはナシにしてもらったけど・・・

 

 

まぁちゃんを探すことの前に
まずは今までの自分の行いを戒めることの方が大事なのではないかと 気が遠くなった。

 

 

 

クソッ
異世界の私、どう考えても悪役令嬢じゃないか・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

え・・・?

ちょっと待てよ・・・?

 

 

イザベラ・・・・・・?

 

 

 

イザベ・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「あーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

 

 

突然大声を出した私に両親は驚き やはりどこかおかしいのではとお医者さんに念入りに診察されてしまった。
また使用人をせめる両親をなだめ、無傷であることを確認して医者も使用人も両親も とりあえず部屋から出てもらった。

 

 

 

そして、思い出したことを冷静に頭の中で整理をした。

 

 

 

 

我々双子は高1のときにアンジェに出会ってから
時空を超えるストーリーに感動したはるとき、やりこんだコルダ、そしてネオロマは制覇・・・
ときメモはとても新鮮だった・・・
特にタッチモードと小悪魔天使、なによりも素晴らしい三角関係モード・・・
ドはまりした乙女ゲ―は数知れず・・・
もちろんネオロマやときメモだけでは飽き足らず、オトメイトやD3P、ハニービーやクインローズにまで手を出して
ありとあらゆる乙女ゲーに時間やお金を惜しみなくつぎ込んだ・・・

 

 

 

そして新作の買ったばかりの乙女ゲ―をプレイしていたんだ。

 

 

 

定番の明るい主人公が恋のライバルのいじめを回避しながら恋愛対象たちと素敵な恋に落ちるという・・・
「運命に立ち向かう」系ではなく「ライバルの陰湿で過激ないじめに立ち向かう」という新鮮なシナリオに
ありそうでなかったし悪くないね なんて言いながらまぁちゃんと楽しく・・・

 

 

 

そう
設定はほぼオリジナルだったけど
なんとなく雰囲気は中世ヨーロッパで・・・

 

 

そして陰険で執拗に嫌がらせ(というか犯罪レベルのイジメ)を繰り返すライバルは
高貴な貴族な生まれで・・・性格もとことん悪く・・・同情する余地もない・・・

 

 

 

確か・・・・・・

 

 

名前が・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「イザベラ・アヴァン・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

そう呟いた名前が 虚しく部屋に消えていった。

 

 

 

 

 

え、ちょ、マジ・・・?
まってまって?
え?
ウソだろ?

 

 

私の名前  イザベラ・サオリ・アヴァン なんですけど・・・?
待って・・・?
サオリついただけじゃね・・・?
あと同じじゃね・・・?
たまたま同姓同名なだけ・・・?

 

 

 

 

いや、そんなことあるか!!!!!!!!
イザベラ・アヴァンなんてそう簡単にいてたまるか!!!!!!!!

 

 

 

大体普通の日本でOLしてた私が異世界に居る時点でおかしいと思ってたんだわ!!!
アホかよ!!!クソが!!!!!!!

 

 

 

イザベラ・アヴァン、私だわ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

(・・・・・・・ってことはなに?)
(私・・・乙女ゲ―の世界に入っちゃったってこと?)
(え?しかも主人公じゃなくて)
(悪役で???)
(え、やばくね、それ・・・?)
(ちょっと待てよ・・・?)
(私このゲームちゃんとクリアしてないからうる覚えだけど・・・)
(確かまぁちゃんがやってんの見てた時は・・・)

 

 

 

 

 

イザベラ、最後処刑されるね・・・?

うん・・・確かそうだ・・・

イザベラ・・・
死ぬね・・・・・・・?

 

 

 

(白目)

 

 

 

「・・・まぁちゃん」

 

 

グス

 

 

「まぁちゃーーーーーーーーーん!!!!!!!!!」

 

 

泣きながら大声で まぁちゃんと叫ぶ私は
廊下に待機していた侍女さんたちに、やはり打ちどころが悪かったのでは とまた医者の世話になるのであった。

 

 

 

(どうしよう!!!!)

 

 

 

異世界にトリップしたと思ったら乙女ゲーの悪役令嬢役でした

 

 

 

(まぁちゃん、助けて!!!!!!!!!)

 

 

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