「お前が三浦のこと嫌がっとるのに、会えなんて言うてすまんかった」
そう忍足は言った
(・・・)
(そうだよ、)
(ホントムカつくよこいつ)
アタシが三浦嫌なの知ってんじゃん!
ムカムカムカ
やっぱりまたイライラしてきた
忍足はこちらの気持ちなんて当然わからないまま、言葉をつづけた
「三浦にこないだのこと、お前にちゃんと謝りたいって頼まれてん」
俺が入院してる間はまだ怖くて会えんかったみたいやけど、あの時逃げたことあいつ後悔してんねん
そう、忍足は言った
(え・・・?)
(アイツ、後悔してたの??)
(謝りたいって???)
(そんなこと、)
(本当に言ってたの・・・?)
だけど、頭の中でフラッシュバックされるのは、あの時の忍足と三浦の会話だった
(勝手にせぇって言ってたじゃん)
(何を今さら・・・)
「あいつと2人きりにはさせへんから、一回会ってもらえんかな?」
「・・・」
「あいつ、ホンマはええ奴やねん」
「・・・」
「ホンマに後悔してて、」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・って、いるわけあらへんよな、チャイム押してもでぇへんし・・・」
「・・・」
「はぁ・・・」
そうため息をつくと、
コツコツと
歩きだす音がした
(あ・・・)
帰っちゃう
きっと、帰っちゃうんだ
そう思っても、声をかけられないアタシ
(いつもみたいに)
(思ったこと言えたらいいのに)
(あの時の言葉が邪魔をしてる)
怖かった
”勝手にせぇ”という一言が怖かった
三浦と会えってしつこく言われるのももう嫌だ
そう思った時、
ツカツカ
再び、大きくなる足音
そして
ドンッ
(ビクッ)
扉を叩く音がして、思わず体が強張った
扉一枚を隔てて
彼がいるのがわかる
そして、彼はそのまま
「好きや・・・」
そう呟いた
(・・・)
(え?)
思考が追い付かない
追い付かないけど、
確かに聞こえた
”好き”という2文字
アタシは思わず、
バンッ
ドアを開けた
「え?」
驚いた顔をしているのは、忍足のほうで、
「えええええ~~~~~~~」
顔を真っ赤にした忍足はその場にしゃがみ込んでしまった