「お、おるなら返事せぇよ！！」
顔を真っ赤にした忍足がちょこんとうちのソファに座っている
ホホホ
形勢逆転
今はアタシのターンだ！
「そもそも仕事どうしたのさ」
「今はまだ無理せんでええって言われて早退させられたんや！」
「あ、そう」
「もーホンマ恥ずかしいわ・・・ホンマ、開けてくださいよ・・・」
「だって、会いたくなかったんだもん」
「三浦と会え言うたからか」
「それだけじゃないし」
「え？あとなんかある？」
「はぁ！？わかんないの！？」
「わからん！心当たりないわ！」
「アタシ三浦じゃなくてアンタに怒ってんだけど！」
「え！？俺！？なして！？」
「・・・・・・あんたと三浦が話してるの聞いたから」
「え？なんて？」
「・・・・・・入院してた時、病室で、」
「え、あ、あれ！？」
「・・・多分それ」
「・・・・・・あれ、え？あれ！？あれお前に関係ないやん？」
「はっ！？」
（関係ないだと～～～～～～！！？？？）
（勝手にせぇっていってたじゃん！！）
（何それ！）
（じゃあやっぱりアタシのことじゃなく、元カノのこと話してたんじゃん！！）
それはそれでムカつく！
「バカ！！！」ポカッ
「いてっ！なんやねんもう！！」
「もう知らん！！」
「知らんてなんやねん！」
「関係ないかもしれないけどさ！！！」
「関係ないなぁ」
「それでもムカつくの！！！」
「え～やって、あれイグアナの話やで」
「・・・え？」
「うちのイグアナと三浦んちのイグアナ会せたら子供出来てん、ほんで、子供は俺にくれる言うてたんやけどな」
「・・・」
「三浦んち実家で面倒見る奴おるし、そもそも産んだの三浦んちのイグアナやから三浦んちに預けてたんやけど」
「・・・」
「あいつ、もう愛情湧いてもうて俺には譲れん言うてきてな。まぁ母親から離すのもかわいそうやし、泣く泣く諦めたわけっちゅー話や」
「・・・」
「もう、俺からしたら孫やで孫！かわええ孫とられた気分やけど、仕方ないなぁ思うて」
「・・・」
「で、今の話、」
「・・・」
「お前、何か関係ある？」
「・・・」
（い、いぐあな・・・？）
（そ、それは・・・）
「・・・・・・・関係ないな・・・」
「せやろ」
「・・・・・・・」
「え、何？自分のことやと勘違いした？」
「・・・・・・・」
「自分が取り合われてるって勘違いしたん？？」ﾆﾔﾆﾔ
「う、うるさい！！」ポカッ
「いてっ！もー叩くなや！」
「う、うるさいバカ！！」
アタシがそう言って、忍足から背を向けると、
「まなみ」
（あ、）
はじめて、
名前を呼ばれた
そして、さっきまでのふざけていた時の声じゃなく、
それはとても真面目な声で、
「・・・・・・・・・渡さへんから、お前のことだけは絶対誰にも」
反応できないアタシを気にせず、
忍足は言葉を続ける
「一緒にいてくれた時、ホンマに楽しくて、もう付き合っとるんやないかと錯覚したわ
・・・・・・・・・これからも、傍にいてください」
そう、忍足は言った
（・・・・・・）
（うそみたい）
（あれだけ悩んだのに）
（アタシも楽しかったから、めちゃくちゃ悩んだのに、）
だけど、
やっぱり一緒にいた時は、楽しいと思っていてくれたんだ！！
（うれしい！！）
（この人の）
（特別になれた！！！）
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・え、ちょお」
「・・・」
「え、反応してや」
「・・・」
「なぁ、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・好きって言ってくれたらいいよ」
「え、さっき言ったやん」
「あんなの無効だよ、大体アタシいなかったらどうしてたのさ」
「そ、それは・・・」
「大きい独り言だよ、はずかしー」
「やめぇや！」ｶｰ
「ってか、隣の人とかいたら全部聞かれてるし！」
「や、やって、」
「ビックリだよねホント」ﾆﾔﾆﾔ
（あーたのし！）
（やっぱりアタシは、）
（落ち込んでるより、こっちのが性に合ってる！！）
そう思っていたのも束の間、
「あーーーーーもう！！！！」
ガシッ
忍足に抱きしめられた
そして、
「なんべんでも言うたるわ！！！めっちゃめちゃ好きやねん！！大好きです！！付き合ってください！！！」
真っ赤になった忍足の顔は、抱きしめられていたから残念ながら見えなかったけど、
真っ赤なアタシの顔も見てほしくないから、これで良しとするか
アタシは彼の腕の中で、
静かに頷くのだった
――――――――――
世界はつまらないものだと思っていた。
だけど、
世界はつまらなくなんてなかった！
HAPPY END
