「めっちゃ美味いわ！この肉じゃが！ホンマ料理美味いな・・・」
毎日食べてたいわ・・・
ボソッと謙也が呟いた
そんなこと言われたら悲しくなるだけだから、やめて
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退院してから１０日
無理をしなければいつも通り過ごすことが出来るようになった忍足は、明日から復職する予定だ
「はぁめっちゃ休んでもうて、明日なんか菓子折り持ってかんと」
「そうだね」
「よっしゃ、ほな行こか」
「え？」
「んー、イオンモールでええか」
「え？」
「車の鍵車の鍵・・・」
「・・・・・・アタシも？」
「当たり前やん、一緒に選んでや」
そう忍足に言われ、
（・・・最後だもんね）
（これで最後だ）
（楽しい思い出、ちょうだい）
最後の思い出として、アタシもついていくことにした
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「いやー、俺一人やったら何買うかわからんかったわ！おおきにな！」
「いいよ別にこれくらい」
「いやいや、病院って９割女性やんか。女の好きなもんわからんて」
そういう忍足は女慣れしているのか、していないのか
（わからない・・・）
（女関係だけは怖くて聞けなかったから・・・）
（わかんないよ・・・）
「よっしゃ、今日はおっちゃんのおごりや！たらふく食べてってな！」
「おっちゃんよろしく」
「誰がおっちゃんやねん！」
「自分で言ってたんでしょーが」
「ハハ、やっぱりお前といると楽しいなぁ」
お前のツッコみ最高や
そう笑う忍足の顔を見ながら、胸がどんどん苦しくなる
終わりが近づいていると思うと、ツラくて仕方がない
（でも、）
この人は、アタシに興味ないから
だから、アタシはもう今日で終わりなんだ
（便利なやつって思ってただけかな）
（別に好きにならなくていいよ、あんなこと聞いた後だもん）
（だけど、）
少しは一緒にいて楽しいって思ってくれてたのかな・・・
そんなことを考えながらぼーっと出てきた食事に箸をつけた
その時、「あ、そうや」と忍足が思い出したように、話しかけてきた
「あんさ、」
「ん？何？」
「そういや、お願いあったんやった」
「え？何？」
「あー・・・ちょっと、言いづらいねんけど・・・」
「うん、」
お願いって、
お願いって何！？
（もしかして、）
（もう少し側にいてとか！？）
（何だろ！？）
（お願いってなんだろ！？）
ドキドキしながら、次の言葉を待った
言い出しづらそうにするこの人の言葉を待った
だけど
その人の口から出た言葉は
更に私の胸を締め付ける言葉だった
「三浦がお前と会いたい言うてんねんけど・・・さ、会ってもらえへんかな？」
（・・・）
（・・・え？）
ここにきて三浦の話？
なんでいきなり？
いきなり、三浦の話なの？
（ああ、）
（やっぱり、彼は）
私のことなんて、何とも思っていなかったんだ
ガタッ
思わず、椅子から立ち上がった
そんな私を忍足は驚いた顔で見ていた
「え？何？どない・・・」
「かえる」
帰ろうとしたアタシの腕を、忍足が掴んだ
「え！？急にどないしたん！？」
「・・・離して」
「え、や、なんでそんな顔してんねん」
「・・・離してよ、」
「あかん、やってお前、」
「離してよ！！！」
大きな声を出したアタシに、一瞬ひるんだ忍足の手を振りほどいで急いでタクシーに飛び乗った
（やばい・・・）
（涙とまんない）
家に帰った私は、ずっとずっと泣き続けた
