ep.013

今日は忍足の退院する日だった

 

 

 

「忘れ物はー?」

「大丈夫や!」

「あ、この漫画忘れものじゃない?」

「あ、せやせや、見舞いや言うてあいつら持って来てくれたやつな」

「じゃあ、今度こそ本当に大丈夫?」

「おん、もう大丈夫や!」

 

 

 

ほな、会計も終わったし、行くか!

 

 

 

 

そう言って、忍足と、忍足の荷物を持った私は病室を後にした

 

 

 

 

 

「忍足先生、早く良くなってね!」

「戻ってくるの待ってますから!」

「おおきに!自宅療養少ししたら戻ってきますんで!すんません、迷惑かけて」

 

 

 

迷惑なはずないですよ~

 

 

 

退院する時にナースステーションに挨拶に言った忍足を待ち受けていたのは、看護師たちの残念そうで期待している激励だった

 

 

 

 

(やっぱり、)

(モテるんだよねこの人)

(モテないはずないよね・・・)

(こんなにいい人で、医者だったら)

(モテないはずないわ・・・)

 

 

 

 

ずきんずきん

 

 

 

胸がいたいよ

 

 

 

 

 

そう思っているアタシに、看護師さんたちが話しかけてきた

 

 

 

 

 

 

「まえさんも元気でね!」

「あ、はい」

「また病院遊びにきてよ!」

「はい、お世話になりました」

「ほな、俺ら行きますんで」

「はーい!じゃあお大事に~」

 

 

 

 

 

看護師さんたちに見送られ、病院を後にし、一緒にタクシーへ乗り込んだ

 

 

 

―――――――――――

 

 

そして、到着したのは忍足の家

一応、今まで通りに歩けるくらいには回復しているものの、重い物がまだ持てない忍足の代わりに荷物を持っているアタシ

 

 

「ちょ・・・重いから早く開けて!」

「まって!鍵見当たらへん!」

「やーもう!どこやったのさ!」

「えーっと、どこやったかなぁ・・・久々やし・・・いつもこの辺に・・・」

「早くー!」

「お!あったあった!」

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

扉が開いて荷物を玄関に置く

中まで運ぼうとしたら

 

 

 

 

「ちょおまって!!」

 

 

 

 

と、忍足に止められた

 

 

 

 

「何?中に運ばなくちゃ」

「いや、待って!!!急な入院やったから、片付けもしてへんから!」

「いや、片付けなんていいから寝てなよ」

「アカン!こっちにもいろいろあんねん!」

「ってか、傷開くから片付けやめな!」

「ああ・・・」

「いいから早く寝てなさい!!」

 

 

 

 

そう言って、忍足を避けて中にズカズカ入る

 

 

 

 

ガチャっとリビングの扉を開けたけど

 

 

 

 

「・・・なんだ、綺麗じゃん」

 

 

 

 

思ったより片付いているその部屋の中に荷物を置いた

 

 

 

 

「おお、よかった!あんまり汚ななかった!グッジョブや俺!」

「まぁ、洗濯物その辺にあるけど」

「いや、これ今片付けるわ!」

「散々今まで洗濯ものしてたんだから今更すぎるわ、いいから洗濯しちゃうから洗い物だして」

「え!?」

「何?」

「いや、俺の世話してくれんの、入院中だけやと思ってたから・・・」

「・・・治るまでって言ったよ」

「おん、ええの?」

「いいに決まってるしょ!無職だし!」

「え、っちゅーかそろそろ就活せんでええの?」

「いいの!大丈夫なの!」

「家賃とか平気?」

「お姉ちゃんと住んでるから大丈夫だよ」

「あ、姉ちゃんと住んでんのか」

「そうだよ」

「あー・・・ほな」

「ん?」

「・・・もう少し一緒にいてくれる?」

「・・・・・・うん」

 

 

 

そういうと、忍足はおとなしく「ほな、洗濯機こっちや」と洗濯機の場所を教えてくれた

 

 

 

(当たり前じゃないか)

(治るまでは、一緒にいるよ)

(治るまでね・・・)

 

 

 

 

ズキズキと心が痛みながら、今日の夕飯何作ってあげようかなーなんて思っていた

 

 

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