「お世話になりました」
昨日の今日で、まだ院内がざわついていて、休院する本日
仕事を辞めることにしました。
あの人の病室に行く前からずっとカバンに入れていた”退職届”を上司に出してそう言った
事件の恐怖でカウンターにはもういられないこと、出来れば自分の代わりに刺された彼の看病をしたいこと、
それを伝えると意外にも
「だよね!続けてられないよね!」という反応であっさり辞めさせてもらえることとなった。
「ホント、すみません・・・」
「いやいや、ちょっといつから再開できるかわからないし、出来てもこの騒ぎだと患者さんも減ると思うから大丈夫だよ」
「・・・すみません」
「あんなこと、なかなか忘れられないかもしれないけど、きちんと前を向いて生きていけるようにね」
そう言葉をかけてもらった
なんていい上司だ
今まで勤めた会社の中でナンバーワン
(むしろ、この人がいたから長く勤められたってもんだよ・・・)
自分のロッカーの荷物を持って、後日また挨拶に伺いますとみんなに挨拶した
それから、また忍足の病室へ戻った
ガラッ
「え、お前どないしたん」
忍足はものすごく驚いた顔をしていた
「なにが?」
「いやいや、仕事中ちゃうの?」
「やめてきた」
「は!?お前、なんで!!・・・いって」
「・・・大きい声出しちゃダメだよ」
わき腹を押さえながらこちらを見ている忍足にそう冷静に言った
「何で辞めんねん!?」
「え、だって・・・」
「お前のせいちゃうって言ったやろ!」
「いや、」
「お前が責任感じることでもないやろ!」
「だから、」
「お前おらんくなったら、俺仕事来る楽しみ減るやんか!」
(え?)
そう言ったあと、忍足は
(゚д゚)!ハッ
とした顔をして、「い、いや、 ちゃうねん、いや、その」とモゴモゴ言い訳を始めた
(ふふ、)(面白い)
「・・・違うよ、あんたのせいじゃないから」
「ほな、なんで・・・」
「あんなことがあったんだもん・・・怖くて来れないよ」
「・・・まぁそうやんな」
「あそこに座るのはしばらく無理」
「・・・おん」
「あと、あんたの看病したい」
「え!?」
「・・・だめ?」
「だ、ダメとちゃうけど・・・!」
ちょお、そんな展開考えとらんかったわ・・・とブツブツ言い始める忍足が面白くて
「ふふ」
ついつい笑いがこぼれてしまった
「・・・」
「・・・どうした?」
「あ、いや、やっと笑った思うて」
「ああ・・・」
「・・・お前が笑えるようになるなら、辞めるのも正解なのかもしらんな・・・」
「うん、そうだよ」
「・・・けど世話て言うてもなぁ、そこまでさせられへんし・・・」
「洗濯とか、必要なもの買ってくるから」
「けど、」
「暇なときは話し相手になるから!」
「んー」
「お願い!!」
「・・・」
「おねがいします!!」
「・・・プッ、必死やな」
ほな、今日から俺のパシリになってもらうで?覚悟はええか?
そうやって、ふざけて忍足が言うものだから、
「のぞむところだ!」
アタシも万遍の笑みで返してやった