その日は、一睡も出来なかった。
いつもより1時間も早く出勤した私のこと、病院のスタッフたちも理解してくれてすぐに忍足の病室まで案内してくれた。
ガラッ
扉を開けると
そこには
「お!どないしてん、こんな時間に!」
朝食をとっている忍足の姿があった
(よかった・・・)
ポロ
(よかった、)(生きてた・・・)
ポロポロポロポロ
安心したアタシの目から、大粒の涙が溢れ出てきた。
「ちょお!何ないてんねん!」
ほら、元気やから泣くことないて!
そうやって笑顔を見せる忍足の言葉は相変わらず優しくて、
やっぱり私の涙は止まりそうにもなかった
「ご、ごめんなさい」
「ん?」
「ごめんな、さい、アタシの せいで」
「え、お前のせいちゃうやん、いっこも悪ないで」
「でも、 アタシをかばった せいで・・・」
「あーあんときはまぁ・・・」
体が勝手に動いてたっちゅーか・・・
モゴモゴと言葉を詰まらす忍足
良かった、本当に
この人が無事でよかった
・・・またこうして一緒に話すことができてよかった
「・・・怪我、大丈夫なの?」
「おー全然やで、わき腹かすっただけで何針か縫ったけど内臓には傷もついてへんし」
昨日麻酔で寝とって何も食ってへんからめっちゃ腹減ってなぁ
そう言う忍足のご飯はすでに完食しそうな勢いだった。
(食欲、あるなら大丈夫そう・・・)
(よかった・・・)
やっとホッとした私は忍足の食べていたご飯を見て
ぐーーーーーー
(!?)
お腹が鳴ってしまった
(ちょっと!)
(なんだ私の腹!!)
(空気よめ!!!)
「・・・プ」
「!?」
「アハハハ っいて!」
「!? 大丈夫!?」
「ああすまん、笑うと響くわ、ハハ自分こんな早く来て腹へっとるんとちゃう?ちゃんと食べてきたん?」
「・・・全然ご飯食べる気になんてならなかったよ・・・」
「・・・そうか、心配かけてすまんな」
「し、心配って、元はと言えばアタシが悪いから、」
「悪ないって・・・・・・看護師さんからめっちゃ泣いてたって聞いたわ」
「・・・」
「すまんかったなホント、三浦呼びに行こうとしたらあんな騒ぎになっとってな」
「・・・」
「なんかお前の顔見たら、守らな思うて・・・って俺なに言っとるんやろ!忘れて!!」
「・・・」
「・・・・・・・けど、ホンマ」
無事で良かったわ
少し顔を赤くしてそういったこの人を見て
私の目から再びポロポロと涙がこぼれた
(ああ、)
(なんて優しい人)
(自分のことより、人の心配が出来る人)
(・・・アタシ、)
(アタシ、この人の)
特別になりたい
「・・・ご、ごめんね」
「ええて!ええから泣くなて!!」
「・・・つ、次はアタシが、守るから!!!」
「え、」
「守るから、ぜったい!!!」
「・・・」
「・・・うっうっ」
「ハハ、おん、ほな俺は」
守ってくれるお前をまた守るわ
そう言いながらそっとアタシの頭に手を伸ばし、頭を撫でてくれるこの人に
”特別な感情”が湧きはじめていた