自分でも信じられんくらい たいぎゃあキレとった。
自分の家に引っ張り込み ドサッと、まなみを ソファに突き飛ばす
「いたっ」
「どげんこつしとったとね!?」
「え、」
「謙也と、二人きりで なんしようと!?」
その上に追いかぶさって まなみの逃げ場をなくして
「俺が一晩中探しとる中、なんばしとったとね!?謙也と!」
声を荒げると ど、怒鳴らないで とまなみが懇願した。
(いかん、こんままじゃ 俺、)
(わかちゅうけど、 止まらん)
嫌われてしまうかもしれんのに
止まらん
「・・・謙也は優しか男たい、優しくしてもろうたね?」
(落ち着け)
まなみの唇を指でなぞる
「こげんこつ、したと?俺にも教えてくれんね」
(落ち着かんね、俺!)
まなみが 嫌だ と首を振る
「いや?」
「や、やめて、」
「謙也はよくて、俺は嫌?」
「違う、そうじゃなくて、」
「ずっと傍にいた俺より、謙也が・・・」
バタンッ
「ち、千歳~!すまんかった!!男としてあかんことしたて反省しとる!!!」
(・・・謙也)
スーっと 気持ちが引いて行くのを感じた
(・・・危なか・・・)
(俺今 誰も来んかったら、このまま)
(まなみんこと、)
「・・・って、お前ら何して、」
扉の前で、謙也が固まる
顔色がヒュっと変わったのがわかる
「あーあ、お取込み中やったみたいやな」
そう言いながら部屋を覗き込んだのは 白石。
「・・・けど、そっちのお姫さんは乗り気や無さそうやなぁ」
「何?どうしたの?」
さおりの声が聞こえて
「あぁなんでもないで、見ひぃんくてええ、一緒にさおりちゃんち行こか」
と、白石はさおりを連れて隣の家に入った。
残されたのは まなみを襲うてるような俺と
謙也に助けを求めるような視線を送るまなみと
怒りに満ちた瞳の 謙也
「・・・なーんて」
スッとまなみから 離れた
「えええええ!?こ、こんなことしといて なーんて で済ます気!?」
「冗談たい」
「う、うそぉ!?超怖かったんですけど!!見たことない千歳だったんですけど!?」
「ハハ、男は怖いけん、注意せんといかんちゅう見本ば見せたと!」
「ま、まじでか!!これが噂の無我の境地かと思ったし!無我だったよね、今!」
「ハハ、無我じゃなかと!驚かしてすまんかったばい」
さっきまであんなに怯えていたのに
すぐさま あっけらかんと答えてくれる彼女の頭を撫でた。
(・・・危なか)
(危なかよ、俺)
(今完全に 理性を失っとったばい)
今まで抑えた我慢が 無駄になるとこだったばい
(ここまで築いてきた2年間が)
(台無しになる)
「おおお本当に驚きましたよあたしゃ・・・男は怖いですね、もうお泊りとか絶対やめます」
「そうすったい」
「び、ビビったで千歳!!お前ほんま何しとんかと思うたで!!」
「迫真の演技やったばい」
「迫真の演技て!迫真すぎやろ、ホンマに!!」
「ハハ(迫真だったけんそりゃそうたい)」
「まぁ千歳が子供扱いしてくるのはいつものことだけどさ!今日はやりすぎよちょっと!」
「すまんかったばい(子供扱いて・・・)」
「あとあれよ!本当に本当にこんな変な男となんかあるわけないし、許さないし手出したら!」
「せやで!なんぼなんでもこんな女に手ェ出すほど飢えてへんで俺!」
「こんな女!?こんなって何よ、あんたに言われたくないし!!」
「はぁ!?どうゆうこっちゃねんそれは!!」
2人の喧嘩が始まって そんなやり取りを見て、ため息が漏れた。
(・・・そりゃそうたい)
(謙也は、そげんこつする男じゃなか)
(長年の付き合いたい、わかっとうよ)
わかって、いたけど
(・・・止められなかった)
あの衝動を。
「あ、せや」
謙也が今にも殴りかかりそうなまなみを 片手で軽く押さえながら
「千歳、お前が怒るんも当然や。軽い気持ちで女の子部屋に泊めたりしてすまんかった」
そう、謙也が 頭を下げた
(!)
「ホンマに、ちゃんとあの時送って行けばよかったわ・・・お前の大事なコやのにな」
・・・・。
「・・・いや、俺も怒鳴って悪かったばい」
(謙也は ズルいたい)
付き合うてもいない女の子に手を出す 男やなか。
そして
優しくて、 ええ奴すぎるたい。
(・・・自分が情けなか)
「よっしゃ!なら仲直りな!」
ニッと笑った謙也に まなみが殴りかかって
俺は笑いながら、それを止めた。
(今はまだ、早かね)
(けど急がんと)
(二人が気持ちに気づく前に)
それでも、2人の笑顔に、 すごく救われた気がする。