月9(3-8)26【さおり】

 

 

 

 

千歳が 帰って来ない。

 

 

 

 

(どうしよう、どこまで探しに行ったんだろう・・・)

 

 

 

夜中、まぁちゃんを心配して千歳が家を飛び出した後

1通のメールが届いた。

 

 

 

”まぁちゃん”

 

 

 

 

ディスプレイにそう表示されたメールを慌てて開くと、送ってきたのは別の人からだった。

 

 

 

 

(・・・え!?あの謙也って人の家にまぁちゃんいるの!?)

(なんで!?)

 

 

 

 

 

心配しとると思うのでメール送っておきます!

ビックリせんでや!あ、俺白石の友人の忍足謙也や。

りんごちゃんのあほな妹は泣きわめいて今うちで寝てます。

変なことはしてへんで!木下藤吉郎に誓って!

心配せんでも明日ちゃんと送り届けるから。

あとめっちゃ泣いて反省しとったで!嫌われた~言うて。

許したってな!

 

 

 

 

 

(・・・とりあえず無事なんだね)

 

 

 

ホッと肩の力が抜けた。

 

 

多分、謙也って人の家に行ったのは偶然なんだろうけど

まぁちゃんのことだからどうせ泣いて騒いで、帰りたくないとか言ってそのまま寝たんだろう。

 

 

 

(簡単に想像できるよ)(また人に迷惑かけて・・・)

 

 

 

こうなってくると、今度心配なのは千歳の方だ。

男だし、あの体格だから、何か起こることはないだろうけど

この寒さの中でもし探し続けてるんだったら、本当に心配でしょうがない。

 

 

 

(どうしよう・・・携帯も置いて行っちゃってるし・・・)

 

 

 

結局私は千歳が心配で全然眠れず

朝まで二人が帰って来るのを待ってるしかなかった。

 

 

 

 

そして朝が来て。

 

 

外に車が停まる音が聞こえた。

 

 

 

(あ、きっとまぁちゃんだ!)

 

 

 

私は上着を羽織って、急いでマンションの前まで走った。

 

 

 

 

「まぁちゃん!!」

「さおちゃん・・・」

「心配したしょやばかぁ~」

「ご、ごめんよぉ」

 

 

 

仲が良くても生まれた時から一緒だ。兄弟ゲンカだってよくある話。

 

 

 

「いやぁ、こんなアッサリ許してもらえるんだったら白石とかいらなかったな!」

「えぇ、なんなんそれ・・・」

「ハハハ、さっさと帰っていいよチミ達!今日はさおちゃんとゆっくり過ごすから!」

「ホンマ引くわお前のそうゆう自己中なとこ・・・」

「ハッハッハ」

「え・・・てゆうかなんで白石くんがいるの・・・?」

「え!?(どき!)ち、違うよ!?さっき会ったんだよ、本当だよ!?別に一晩過ごしてないからねもちろん!さっきさおちゃんに謝りたいって言ってたから一緒に来ただけだよ!?」

「いいよ、別にそんな動揺しなくても・・・」

「あー、さおりちゃん、」

「え?」

「今日・・・空いてる?」

 

 

 

 

時間あったら一緒に・・・

って、白石くんは言ったんだけど

 

 

 

 

 

「・・・ごめんなさい、今日寝てなくて眠いの」

「!!!」

「プッ、フラレテイル・・・www」

「不憫やな白石・・・」

「い、いやっええねん!昨日遊んだばっかやしな!」

「動揺してるしwww」

 

 

 

 

なんとなくほのぼのと会話が進んでるから 気付かなかったんだけど

 

 

 

 

 

「まなみっ!!」

 

 

 

 

 

 

振り向くと

息を切らした 千歳が立ってた。

 

 

 

 

 

 

(あっ、千歳!!)

(よかった帰ってきて・・・)

(って、いいのだろうかこの状況は)

 

 

 

 

 

 

「あ、千歳ーおは・・・」

 

 

 

 

のんきに挨拶したまぁちゃんに

すごい勢いで 近づいた千歳は

 

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

 

思い切り まぁちゃんを、

抱きしめた。

 

 

 

 

 

「「「!!!!!」」」

 

 

 

 

 

もちろんその場にいた全員が固まって 辺りが静まり返った。

 

 

 

 

 

「ち、ち、ち、ち、ちとせっ!!!(*OoO;*)ハワワワワ 」

「よかっ、たばい・・・っ」

 

 

 

 

 

ギュウゥ と力を込めて

千歳はまぁちゃんを離さなかった

 

 

 

 

 

 

「ご心配をおかけしましたがっ!く、苦しいですっ!」

「まなみ・・・」

 

 

 

 

(う、うわあぁぁぁ!!!!(*゚ロ゚*))

(じょ 情熱的ぃぃ~!!!!)

(千歳ってこんなに情熱的だったの~っ!!?)

 

 

 

 

千歳とまぁちゃんを見てるとドキドキしてくる。

本当に、千歳でいーじゃんって 思うんだけど

 

 

 

 

(けど)

 

 

 

 

後ろで同じく固まっている 謙也くん を見た。

 

 

 

 

 

(えー、何あの顔)

(変な顔して固まってるし・・・)

(ってゆーか一晩で何があったんだろう?)

(何もないって言ってたけど・・・)

(大体木下なんとかって誰よ、そんな人に誓われても・・・)

(メールくれるのはいい人だけどさ・・・)

 

 

 

 

 

 

だって、まるで 彼女を取られた! って顔してるじゃないの。

 

 

 

 

 

 

(変な人!)

 

 

 

 

 

 

「ち、千歳!お願い離して!苦しいし恥ずかしいし熱いし死にそうだし!」

「離さんばい。ばってん力はゆるめちゃるよ」

「はぁ・・・」

「まなみ、心配したと・・・どこに行っとったんじゃ、一晩中?」

「え、どこって・・・」

「俺んちや」

 

 

 

 

(え?)

 

 

 

 

今まで固まっていた その人は、真っ直ぐに 千歳を見つめて言った。

 

 

 

 

「謙也・・・」

「昨日まなみは俺んちにおった」

 

 

 

 

 

(え、ええぇぇ!?)

(ちょっと待って!)

(なにこれ!修羅場!?修羅場なの!!?)

 

 

 

 

 

まぁちゃんを取り合う男たちの ラブファイトなのーーー!!?

 

 

 

 

 

(モテモテでしょまぁちゃん!!!!!)

(いや、謙也って人はわかんないよまだ・・・)

(私はまだ認めてないよ!!)

 

 

 

 

 

「・・・どーゆうことね、謙也」

「俺もようわからんけど橋の上で拾って」

「拾ってって・・・まなみは犬やなか!」

「わ、わぁっとるけど」

「一晩中 2人きりやったと?」

「そ、そうや・・・」

 

 

 

 

「・・・見損なったばい謙也!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

(!)

 

 

 

千歳が  怒鳴って

私も、腕の中のまぁちゃんも

驚いて、目を見開いた。

 

千歳が怒ったとこなんて

千歳が怒鳴ったとこなんて

見たことない、初めて見た

 

 

 

 

(千歳・・・)

 

 

 

 

「こげん女の子つかまえて、どーゆうことね!?」

「え、」

「沙織ば心配しとったとよ!?」

「いや、」

「何ばしよっとね、夜!」

「え!?」

「手ェ出しちょったら俺が・・・絶対許さんたいっ!!!!」

 

 

 

 

 

そして、千歳は まぁちゃんを連れてマンションの中に入って行ってしまった。

残された私たちはしばらく 唖然 としていて

最初に口を開いたのは、謙也だった。

 

 

 

 

 

 

「どどどどどどないしよう白石~!千歳怒らせてもうたぁ~!!(;□;)」

 

 

 

 

Σ(゚口゚;

 

 

 

ヘ タ レ す ぎ る だ ろ っ ! !

 

 

 

 

 

(そっか、この人別にまぁちゃんの事好きじゃないんだ・・・)

(好きだったらもっとかっこよくさ・・・)

(俺が守ったんや! とか言えばいいのにさ・・・)

(千歳にキレられてオロオロしてるもん・・・)

(ホント変な人)

 

 

 

 

 

でも、きっと すごく優しい人。

 

 

 

 

(それは間違いないんだろーね)

 

 

 

 

 

「大丈夫や・・・まぁ俺もビックリしたけども。謝ればわかってくれるで!」

「え、俺そもそも悪いことしたん!?あいつやで泊まるって聞かんかったん!俺あかんて言うたもん!!」

「とりあえず謝りにいこか」

「い、いやや!許してくれへんかったらどないするん!?」

「千歳はそんな頑固やないて」

「確かに俺もあれでも一応女の子を家に入れて一晩過ごしたとか、ちょっとだけ反省しとるけども!」

「なら謝ればええやんけ」

「いややーーー怖いやろあれ見た!?白石くん、見た!?鬼かと思うたで俺ーーー!!」

「ヘタレ阿呆!ほら、謝りにいくで!!」

「い、行きたない!あぁでも一生許してくれへんかったら悲しいから謝るしかないか!!」

 

 

 

 

(いらっ)(行くならさっさと行けよ)

 

 

 

 

と、思ったけど、言わずにおいた。

 

 

 

 

「はぁビックリした、千歳が怒鳴るなんて・・・」

 

 

 

 

さっきの千歳を思い出して 私たちの部屋の窓を見上げた。

 

 

 

 

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