「さおり、よかと?」
まなみが出て行きよった。
ばってん、泣いてるさおりを放ておけんくて 傍におった。
「・・・千歳、ごめん」
「よかよ、それよりそげに泣いてどげんしたと?」
尋常やない泣き方に 俺は何かを感じとった。
(ただの喧嘩やなか)
(追い詰められとる)
「・・・私は大丈夫」
「そげんこつ言うとらんで今は素直になりなっせ」
「・・・」
「俺は全部知っとうと、吐き出したらよか」
「・・・う、うん、」
「なんね?」
ひっくひっくと、また涙を流して
さおりは 今日1日で起きた出来事を説明した。
(・・・え?)
(なんでそんなこつ 思うとね?)
「白石が、まなみを好いとうて?」
「うん・・・まぁちゃんの話ばかり、するの」
「さおり」
「ん?」
「・・・泣いちゅうとこ悪いけんど・・・」
「うん・・・」
「これだけは断言すったい・・・」
「え?」
「それは 絶対に なか」
「え?」
さおりは きょとん と、こっちを向いた。
さおりがマイナス思考で落ち込みやすくて諦めるのも早いて 知っとったけど
(ここまでとは、呆れるばい)
ため息をひとつついて 白石はそんな男やなか そう伝えた。
「え・・・でも、」
「白石は、そんなことせんとよ」
「でもまぁちゃんの話ばっかりしてたよ」
「共通の話題やき、しょうがなか・・・」
「でも、楽しそうだったし・・・」
「まなみはあげな性格たい・・・笑いたくもなると」
「でも・・・いつも二人でご飯食べてるって」
「会社のランチだけばい」
「だけど、」
「さおり」
白石は、さおりが思うてるよりずっとずっといい男たい
それにまなみも、ずっとさおりんこと心配して待っとったけん
本気で心配して何にも手につかんかったんよ
そう言うと さおりはまたボロボロと 涙を流した。
「ど、どうしよう 千歳 私、まぁちゃんにひどいこと言った」
声をあげて泣くさおりの背中を何度も撫でて
「大丈夫たい。まなみは誰よりもさおりんこと好きばい、すぐ許してくれるけん」
さおりは か細く うん、と頷くと 少しだけ迷いが吹っ切れた顔をしちょった。
(よかったばい・・・)
「あっ!!てゆーか千歳!!!まぁちゃん出て行っちゃったよどうしようっ!!」
「はっ!そうたい!!!」
さおりは連絡くるかもしれんね、家におったい!
そう叫んで、 俺は家を飛び出した。
(・・・・・・おらん、)
まなみの行きそうなところは全部回った
(どこ行ったと・・・)
もし、たとえば
まなみの身に何かあったら
さおりは死ぬほど泣くだろうし
俺は追いかけなかったことを死ぬほど後悔するだろう
(もう終電もない時間たい・・・こんな遅くまでどこに)
金は持ってないはず
(どこ行ったとね、まなみ)
フラリとたまにいなくなったり 朝帰りするすることもあるけん
心配しすぎなんかもしれんけど
(泣きそうな顔、しちょった・・・)
俺はそのまま陽が昇るまで まなみを探した。