月9(3-4)22【謙也】

 

 

(今日白石、りんごちゃんと遊ぶ言うてたっけ)

 

 

金曜日電話して

明日遊ばへんー?なんて言うたら

さおりちゃんと遊び行くねん て答えが返ってきた。

 

 

は?なんですか?それってデートですか?自分らどんだけ進んどんですか?

そう聞いたけど、何言うてんねんそうゆうんとちゃうで って白石は笑っとった

 

 

け ど も !

 

 

(・・・あいつ絶対好きやろ、りんごちゃんこと)

(ニブいとこあるからなー)

(なんで気付いてへんねん)

(まぁ俺は応援しますけども)

(陰ながら上手く行くよう祈ってますけども!)

 

 

・・・上手く行ったんかな、結局?

 

 

(あかんそやなぁ・・・、まず白石が自分の気持ちに気付かないとあかんよなぁ)

 

 

運転しながら、ずっとそんなこと考えた

 

 

(電話したろかな、どうやったって)

(いやいやあかん、万が一上手くいっとってイチャイチャしとったらたまらん!)

 

 

赤信号で、止まった。

 

 

(おもろいなー、上手くいったらからかったろ)

 

 

橋の上、信号が青に変わるのを待つ

 

 

(あー、早よ青になれやー!待ち時間嫌いや!)

 

 

 

 

ふ、と

 

その時、目に入った。

 

 

 

 

(・・・ん?)

 

 

 

 

橋の上

今にも飛び降りそうな

女の姿

 

 

 

 

(・・・ちょ)

(え?)

(えぇ!?)

(うそやろっ ちょっと!!)

 

 

 

 

俺は急いで車を端に停めて その女の元に走った

 

 

 

「し、死んだらあかんで!!!」

 

 

 

そう言いながら、その女を捕まえて

そして振り向いたそいつに ギョッ とした

 

 

 

 

「おま・・・っ みかん女・・・!!」

 

 

 

 

さ、触るなヒヨコ頭

なんて嫌味を必死に言うみかん女は 涙と鼻水で、ぐちゃぐちゃの顔やった。

 

 

 

 

(一体何が!?)

 

 

 

「どないしてん、お前」

「う、う、」

「ちょ、泣くなて」

「さ、さおちゃんに 」

 

 

 

 

さおちゃんに、ひどいこと言ったーーーー!!!!!

 

 

 

 

と、みかん女は  俺に抱き着いてきて号泣した

 

 

 

 

(ええぇぇぇぇぇ!!?)

 

 

 

 

どうしてええのかわからず、固まることしかでけへん

 

 

 

 

 

(え、なにこれ!)

(なにこれなにこれ!)

(どないしたらいいんすか!)

(だ、抱きしめたらええんですかこんな時!)

(けど、みかん女やで!)

(あのクソナマイキな女やで!)

(絶対抱きしめたところで セクハラ! とか言いそうやん!)

(え、てか、こいつでも泣くことあるん!?)

(な、泣いて、る、よなぁ)

(・・・ちゅうか)

(やわらかいんですけどとっても)

 

 

 

 

 

結局、みかん女が泣きやむまで 俺は色々な葛藤と闘いながら 茫然と立ち尽くすしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん。お茶でええか」

「・・・どーも」

 

 

 

ほんで通行人に見られたのを機に、ひとまず車に乗せ うちに連れて来た。

 

 

 

(連れ込んだんとちゃうで!)(神に誓ってそれだけはないっ!)

 

 

 

 

「・・・もっとお医者さんっていいとこに住んでるかと思ってた」

「なんやそれ、一応オートロックやで」

「セレブみたいな生活かと思ってたけど」

「んなわけないやん、そんなんごく一部しかおらんっちゅー話や」

 

 

 

まだ鼻をグスグス言わせながら それでもナマイキなことしか言わんこの女にティッシュを渡した。

 

 

 

「落ち着いたか?」

「うん」

「で、どうしたん」

「・・・別にあんたに」

「関係ないなんて言わせへんで、ここ俺んちやもん」

「・・・」

「関係ないなら出てってもらうで、そんな恰好で外うろついとったら寒いと思うけどなぁ」

「・・・嫌な男」

「お前に言われたないわい」

「・・・泣いてる時くらい優しくしろよ、馬鹿」

「泣いてる時くらいしおらしくしろよ、お前も」

「・・・」

「んで?姉ちゃんと喧嘩したんか?」

 

 

 

確信をつくと、また瞳がうるうるしてくる(あかん、また泣いてまう!)

上着もはおらず、つっかけサンダルで飛び出してくるあたり

相当慌てて出てきたんやろうけど 一体何がどうしてんやろ(仲良しよなぁ、この双子)

 

 

 

 

「ちゅうか今日白石とりんごちゃんデートやったんとちゃうの?」

「そーだよ」

「せやろ?ほんでなんでお前と喧嘩してん?」

「わかんないよ、帰って来たらすごい機嫌悪かったもん・・・」

「え、なんで?」

「知らないってば!」

 

 

 

(ちょ、そ、それって)

(白石がなんかしたんとちゃいますか)

(おー・・・まずくないかそれ)

(半分は白石のせいよなぁ?)

 

 

 

「・・・機嫌悪いりんごちゃんと喧嘩してもうたんか」

「だってさおちゃんが嫌いって、言うから」

 

 

 

そして、また 涙をポロポロこぼして

 

 

 

「さおちゃんに、嫌われた」

 

 

 

うわぁー! と、みかん女は泣いた。

 

 

 

(泣くなら言わんきゃええのに)

 

 

 

「あー、はいはい、泣くな泣くな」

「め、めんどくさそーに、言うなっ」

「そりゃ正直めんどいけど・・・(ほっとけない俺もおるしなぁ)」

「な、なにさ、それ、ほんと ムカつく」

「正直に言うただけやん!」

「じゃあ、ほっといてよ 家に連れこむなんて、最低」

「あんなとこで泣いてる女ほっとくほうが最低やと思うけど」

「うっさい、あんたは最初に会った 時 から、 最低だっ」

「あー、もう、泣いてんのに文句垂れる口はこの口か!」

 

 

 

 

そうして俺は みかん女のほっぺたを ビローン と引っ張った。

 

 

 

 

 

「・・・プッ」

「(イラッ)」

 

 

むっちゃ変な顔に吹き出したら、結局殴られて(全力やったで)

みかん女はひざを抱えて顔を上げなくなった。

 

・・・はい、やりすぎました。

 

 

 

「・・・悪かったて」

「・・・」

「すまんかった」

「・・・」

「なぁ、顔 見して」

「・・・やだ、また笑うから」

「笑わへん!もう、笑わへんて!」

「・・・やだ」

「ごめんてぇ~」

 

 

 

 

 

 

ごめんて

 

 

 

(ほんまに、ごめん)

 

 

 

お前、泣いとんのに

 

 

 

 

俺今 なんだかむちゃくちゃ楽しいねん

 

 

 

 

(・・・おかしいな俺どないしたんやろ)

(え、どSやったん俺)

 

 

 

 

 

 

「なぁ・・・」

「・・・」

「なぁ、て」

「・・・」

「なぁ、ま、まなみ」

「呼び捨てするなっ!!!!」

 

 

 

 

(!?)

(めっちゃコワッ!)

(今噛まれそうやったで!?)

(いや、顔上げたけども)

 

 

 

 

 

「・・・お前、意地っ張りやなぁ」

「・・・」

「素直やないなぁ」

「・・・」

「でも、」

「・・・」

 

 

 

 

(でも、)

(ねぇちゃんにヒドイこと言うたとか)

(嫌われたて、泣いてんのとか)

 

 

 

 

可愛すぎひん?

 

 

 

 

(いつも会うたびに暴れて言葉づかいも悪くて)

(せや!こないだのカラオケの時かて、人の心もてあそんで!)

(悪魔やって 思うてたけど)

 

 

 

 

唇とがらせて、俯く姿が可愛く見えんのは なんで?

 

 

 

 

 

(・・・笑顔、見たいな)

(笑って くれへんかな)

(俺そういえば まだこいつに笑顔、向けられてへん)

 

 

 

 

「でも、何さ」

 

 

 

 

じっとこっちを見つめるこいつに うかつにも俺は ドキン とした。

 

 

(涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔やのに!)

 

 

 

「や、何でも。それより、こんな遅くまで平気なん?いい加減ねぇちゃんも心配し・・・」

「泊まるから」

「へ?」

「今日、泊まってくから」

「・・・はい!?」

 

 

 

(な、)

 

 

 

「絶対帰らないからっ!!!」

 

 

 

 

 

何を言いだすねん コイツーーーーーーー!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「なんで!?一体なんで突拍子もないことばかり言うのよこの子は!!」

「だってもう眠くなったし」

「えぇー!?眠いて、そんだけで男の家に平気で泊まっちゃう子なんかお前は!もっと自分を大事にせぇよ!」

「は?馬鹿じゃないの?手出したら殺すし」

「そーゆう問題ちゃうて!送って行ったるから!」

「やだよ」

「なんでやねん、まぁ布団はあるけどももう一組・・・ちゃうくて、なんで、泊まるとか・・・!」

「・・・だって」

「なんや!?」

「・・・だって、さおちゃんに会ってどんな顔していいかわかんないんだもん」

 

 

 

 

 

 

えーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

(こ、子猫みたいな顔して言わんといてーーーー!!!!!)

 

 

 

(捨てられなくなるやんけーーー!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

「・・・一泊だけやで」

 

 

 

 

 

 

 

 

甘いな俺ーーーー!!!!!!!!(自分でもビックリの甘さやで!)

 

 

 

 

まぁ、拾ったのは俺やし

拾ったもんは最後まで責任とらんといかん、て 言われて育ちましたが

 

 

 

 

(こ、今夜寝れるんかなぁ俺・・・)

 

 

 

 

 

自信がありません!

 

 

 

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