月9(3-3)21【さおり】

 

 

薬を買って、大きなバンソウコウをつけてくれて

 

 

 

(恥ずかしかった!)

(よかったよ、足の毛剃っておいて・・・)

(あとまぁちゃんの言うとおりペディキュアしといてよかった)

 

 

 

そして、家に帰る車の中。

 

 

 

 

「・・・」

「・・・」

 

 

 

 

 

なんだか今日初めて 無言が続いてるような気がする。

さっきはちょっと意地はっちゃったから

白石くん、怒ったのかなって思った

可愛くないことばっかり言って、ちょっとイラってしてたのもわかった。

 

 

 

(なんで私ってこんな性格なんだろう)

 

 

 

考えると落ち込んで、私も何も言えなくなっていた。

 

 

 

「あー、あんなぁ」

 

 

 

白石くんの声で 顔を上げた。

運転中の白石くんの横顔を見て やっぱりかっこいいな、って思った。

 

 

 

 

「ま、まなみちゃん こないだな、」

「うん、」

「むっちゃおもろかってん、上司にな」

「うん?」

 

 

 

 

(なんだ、急に)

(どうしたの?)

(なんで急に、まぁちゃんの話題?)

 

 

 

 

仲いいなぁ、とは薄々思ってはいたけど

 

 

 

(ここに来て、なんでだろ)

 

 

 

「いや、ほんまビックリしてん、あの子すごいな、最強やわ」

「うん、まぁちゃんはいつもああだよ」

「小さい頃からなん?」

「そうだね・・・なんか我が道を行くって感じだったよ」

「あー、そんな感じすんなぁ」

 

 

 

(・・・そんな顔、しないで)

 

 

 

楽しそうに話す白石くんを見て なんだか胸がズキズキと痛む。

 

 

 

 

(苦しい)

 

 

「ほんま、話しやすいしな」

 

 

(どうせ私は話しにくいよ)

 

 

「むっちゃおもろいし」

 

 

(どうせ面白くない女だし)

 

 

「素直すぎるし」

 

 

(どうせ素直じゃないし)

 

 

「ええ子よなぁ」

 

 

 

ズキンッ

 

 

 

(やば、痛い)

(なんか胸が 痛いよ)

 

 

 

なんで白石くん、まぁちゃんの話ばっかりするの?

 

 

 

「まなみちゃんて彼氏おるん?」

 

 

 

(あぁ そうか)

 

 

 

「・・・いないよ、まぁちゃん彼氏いないよ」

 

 

 

(白石くん、まぁちゃんが好きだったんだ)

 

 

 

だから今日まぁちゃんのこと聞くために私と遊んだんだ

まぁちゃんといるとき、楽しそうで

素の白石くんが出せるもんね

 

 

 

 

(私は、つまらない女だから)

 

 

 

 

「せやな、あの子の彼氏とか大変そうやわ(って俺なんであの子の話ばっかしとるん!?)(話題ないにもほどがあるやろ)」

「大丈夫だよ」

「え?」

「大丈夫だよ、あれでもまぁちゃん結構ちゃんとしてるから。わがままだけど」

「お、おう?(あれ、なんか、)(どないしよこの空気)」

 

 

 

それから白石くんと話した内容はよく覚えてなかった。

マンションについて、いいって言ったけど部屋の前まで送ってくれて

それから、 またな って言って帰っていった。

 

 

 

 

(またな、って)

(・・・私じゃないでしょ)

(また会いたいのは まぁちゃんなんでしょ)

 

 

 

家の扉を開ける前に、ふぅとため息をついた。

そして気合を入れて家に入った。

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

「あ!!!さおちゃん帰ってきた!!!!」

 

 

パタパタと無邪気に近寄ってくるまぁちゃんに もちろん罪はない。

 

 

(悪いのは、私)

(だってつまらないし、素直じゃない女だもん)

(自分になんて自信持てない)

(こんな女、あの素敵な白石くんが 好きになってくれるわけない)

 

 

「ただいま」

「どうだった?」

「・・・楽しかったよ」

「ほんと?」

「うん」

「足どうしたの?」

「靴ずれ」

「あー、今日ヒールだったもんね、大丈夫?」

「うん」

「お風呂入ったらいいよ」

「うん、疲れたからもう寝るよ」

「わかったよ」

「・・・・」

 

 

がんばったんだけど

ちょっと雰囲気が悪いの、気づかれちゃったかもしれない

 

 

(まぁちゃんは野性の感がするどいから)

 

 

「・・・なんか隠してるね」

 

 

(するどい)

 

 

「別に」

「別にって何さー!心配してたんだよ!」

「だって本当に何もないもん」

「うそだー!!告白されてたりしてー!」

 

 

ケラケラ と笑うまぁちゃんに、腹が立ってしかたがなかった

 

 

「告白なんかされてないよ!されるわけないしょ!!」

「え、なにさ急に」

「白石くんが私なんて好きになるわけないしょ!!」

「そんなわけないしょ、遊びに行こうって誘ってきたんだから!」

「まぁちゃんにはわかんないよ!!」

「(むか)わかるわけないしょ!!見てないもんあんたたちの1日!!」

「じゃあ口出ししないでよ!!」

「口出ししてないじゃん!!心配してずっと待ってたのになんでそんなこと言うの!?」

「心配してくれなんて言ってないよ!!」

「心配するしょや!何なのさ!!むかつく!!!そんな性格だからどーせフラれたんでしょ!!!」

「!!」

「人の気持ちもうちょっと考えなよ!」

「考えなきゃいけないのはまぁちゃんのほうでしょ!?まぁちゃんなんて、嫌いだ!!」

 

 

 

なんでそんなこというのさ

 

 

 

「わ、私だって、さおちゃん嫌いだっ」

 

 

 

なんで、そんなひどいこと いうのさ

 

 

「いつも、私がどれだけ 我慢してると 思ってるのさ、」

 

 

じわじわと 涙が浮かんできて

”なんでそないに我慢すんねん!”

白石くんの言葉が頭に浮かんで、 涙がこぼれた

 

 

 

(我慢するしか、ないじゃない)

(だって私、お姉ちゃんだもん・・・)

 

 

 

「どげんしたと?ふたりとも、喧嘩しとるんか?」

 

 

 

千歳が慌てて飛び込んできて

 

 

 

「さおちゃんなんかともう一緒に暮らすのやだ!!」

 

 

 

そう叫んでまぁちゃんは 家を飛び出していった。

涙がボタボタと床に落ちて 崩れ落ちて泣いた。

 

 

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