月9(3-1)19【まなみ】

 

 

「さおちゃん今頃楽しんでるかなぁ」

 

 

気になって気になって、パソコンもゲームも、何にも手につかなくて

ただゴロゴロと、携帯を握りしめて ソファでテレビを見ていた(もちろん内容は頭に入ってこないんだけど)

 

 

「連絡ないっちゅーことは楽しんでる証拠ばい」

「そーかな?」

「そうたい。さおりんことやから、つらくなったらすぐ連絡してくったいね」

「・・・だよね」

 

 

(でも気になる)

(気になりますよ)

(そもそも私は心からさおちゃんが幸せになってくれればいいと思っているんだ)

(だけどもし白石のアホが暴走してさおちゃんに何かしたらとか)

(まぁあいつ一応常識あるからさおちゃんを傷つけることはしないだろうけど)

(・・・告白してもう付き合うことになってたらどうしよう)

(展開早すぎだし)

(なんか・・・淋しいし)

 

 

 

「まなみ、考えすぎばい」

「うぅ、さおちん・・・」

「考えんようにせんね」

「でも気になるんだよぉぉ」

 

 

 

うだうだしている私に

 

 

 

「なら、俺たちもデートせんね?」

 

 

 

千歳がそんなことを 言った。

 

 

 

「何言ってんの、」

 

 

 

顔を上げた私は 思わず息をのんだ。

 

 

 

「・・・本気ばい」

 

 

 

気付けば千歳の顔が近くにあって 真面目な顔で、千歳がそんなことを言うものだから。

 

 

 

「・・・な、なに言ってんのさ、ばかぁ!」

 

 

 

恥ずかしくて、そっぽを向いた

 

 

 

「冗談やなかと」

 

 

 

そうして千歳は

 

 

 

「楽しいこと、せんね」

 

 

 

ソファに寝っころがってた私に 追いかぶさったのだ。

 

 

 

(ひえぇぇぇーーーー!!!!)

 

 

 

「ちょ、ちょちょちょっと!!!そ、それはやりすぎでしょ!!!」

「楽しいことしとったら気にならんけんね」

「いや、楽しくないです、いいです、そうゆうのは結構です!!」

「プッ」

 

 

 

(ん?)

 

 

 

「・・・必死たい」

 

 

 

それから千歳は腹を抱えて 大爆笑した。

わかってはいたけど

 

 

 

 

(か、からかわれたーーーー!!!!!)

 

 

 

 

途端に恥ずかしくなって いつもの調子で、怒り狂うのだアタシは!

 

 

 

 

「千歳のバカ!!おたんこなす!!何してんだよ、そうゆう冗談嫌いだよあたしゃ!!」

「ケラケラ」

「笑うなーーー!!!!!」

「すまんすまん、ばってん照れたまなみはむぞらしかね」

「もーーーもーーーーーー!!!!!」

「牛さんになってもうたばい(笑)」

「牛じゃない!!怒ってんの!!!!」

 

 

 

 

ほんにまなみはむぞらしかねぇ

楽しそうに、千歳は私の頭を撫でた。

 

 

 

(くそ、)

 

 

 

2年前、出会ってから

私は千歳のこの穏やかな性格と、長い腕と、頭を撫でてくれることに

非常に、弱いと 思う。(何にも言えなくなっちゃうよ)

 

 

 

(・・・さっきちょっと色っぽくてかっこよかったし)

 

 

 

「・・・まなみ、ほんなこつ冗談やなかね」

 

 

(え?)

 

 

もう一度 顔を上げて千歳を見た

 

 

「なーんて」

 

 

(・・・おい)

 

 

「・・・またからかったでしょ」

「そげんことなかー」

「だって楽しそうだもん!」

「俺にもチャンスばある思うてね」

「え?」

「フッフッフ」

「絶対からかってるーーー!!!!」

 

 

 

もういいよ、バサラでもやろ! なんて、

いつの間にかさおちゃんのことは頭から抜けて いつもと同じような1日を過ごした気がする。

 

 

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